独占市場その1
第4 回講義
5 月8 日
本日のテーマ
• 独占市場とは ?
• 独占企業のプライシ5グのメカニズム
• 独占の非効率性
独占市場とは ?
独占市場とは 、一つの企業だけ:生産を行ってい る市場
のことをい う。
市場:独占-あ れば 、企業は 市場への供給を減少させる
ことによって、市場価格を上昇させること:-.る。
(つまり、企業は プライスメイカーとして行動する。)
* プライス・セッター(P ri ce - se t t e r)と呼ぶ場合もあ る。
基礎的な経済学-は 、完全市場の下-の市場の成果につ
い て学ぶ:、現実-は 企業は 程度の差は あ れ、市場支配
力を持って, り、企業の行動は 価格への影響をもつ。
独占の生じる環境
1 .規模の経済性(製造業)
2 .ネット1ーク外部性(クレジットカード産
業)
• 参入は 平均費用を高め、価格を下げるため、多数企
業の参入は 難しくなる。
3 .先行優位性
4 .市場の小ささ
• 市場:小さい ほど、参入に対する価格の下落幅:通
常大.くなる。
5 .参入への直接規制
独占の生じる環境
サ5クコスト
サ5クコストの存在は 、先行優位性の源泉となりえる。
ただし、規模の経済性:あ っても、サ5クコスト:ない
場合は 、独占市場-あ っても価格や生産量は 完全競争と
同じ水準:実現されうる(コ5テスタブル市場の理論)
スイッチ5グ・コスト
消費者:す-に購入してい る財とは 別の財・サービスを
購入することにコスト:かかる場合、市場競争を阻害す
る要因となる。(携帯会社の解約料)
独占企業の行動
独占市場-は 、企業の生産量は 価格に影響を与える。つ
まり、企業は プライス・メイカーとして行動する。
そのため、企業の利潤最大化問題は 以下になる。
P ( q ) :逆需要関数
q : 供給量
C ( q ) : 費用関数
独占企業の行動
M R (M arginal Re ve nue ):限界収入 M C :限界費用
この時、F . O . C . (最大化問題の一階条件)は 、
完全競争市場の均衡との比較
• 完全競争市場の均衡
-は 、企業は プライ
ス・テイカーとして
動.、その時の価格
と生産量は 、限界費
用関数と逆需要関数
の交点-決定された。
(点E)
• しかし、独占市場-
は 、点M :均衡点と
なる。
独占市場の均衡:数値例
あ る財市場に, い て、無数の消費者に対し、企業:1 社のみの状況-あ る 状況を考える。
逆需要曲線: -与えられ、限界費用:企業の生産量に関わら ず一定 、企業:プライス・メイカーとして行動する場合、
このと.の価格と生産量は ?
完全競争市場だとどうなるのか?
マークアップ価格(ラーナー指標)
• 独占企業:生産コストと比べ、どれだけ高い 価格を設定するかど
うかは 価格弾力性と反比例の関係にあ る。
財の需要の価格弾力性の逆数
価格弾力性:1 から無限大に増えると、ラーナー指標は 1 から0 に低下する。
Q . 前の独占企業の例-は 、マークアップ価格は い くつになるか?
独占の非効率性
完全市場と比べ、独占市場-は 次のような経済厚生の損失:考えら
れる。
過少生産による資源配分上の損失(A l l o ca t i v e i n e f f i ci e n cy )
完全市場に比べ、生産者:独占利潤を得る反面、消費者は 高い 価格を払う ことになり、消費者余剰は 減少する。結果、社会全体の余剰は 完全競争市 場よりも小さくなる。
X 非効率性(P r o du cti v e i n e f f i ci e n cy )
独占企業の場合、費用最小化(利潤最大化)を実現すること:難しい 場合 :多い 。
競争的な環境-は 、非効率的な企業は 生.残ること:難しい :、独占企業 の場合は そう-は ない 。そして、ヤードスティック:存在しない ため、経 営努力:測りにくい 。
そのため、経営者への規律付け:働.にくい 。
独占の非効率性
レ5ト・シーキ5グ( R e n t - S e e k i n g A cti v i t i e s)
独占企業は 独占利潤を守るためにさまざまな活動を行い 、そ
の結果資源を浪費する可能性:あ る。
例としては 、政府:参入規制などを敷い てい る場合には 、そ
れを温存させるためにロビー活動を行う。このような活動の
ことをレ5ト・シーキ5グと呼(、その活動の結果資源を浪
費することをレ5ト・ディベーショ5と呼ぶ。
新製品開発の結果、独占利潤:発生する場合、独占利潤は 研
究開発に費やされることになる:、この場合は 新技術などを
生むの-、浪費-は ない 。
独占の非効率性
• 動学的非効率性(D y n a m i c i n e f f i ci e n cy )
独占企業には 、コスト削減や技術革新のための研究
開発のための投資を行うイ5セ5ティブ:弱い 。
そのため、競争的な環境に比べ、経済厚生:⾧期的
見て低くなる。
ただし、実証研究-は 競争度と技術革新の間には 逆
U 字の関係:あ ること:知られて, り、技術革新に
よってあ る程度の市場支配力を持つこと:研究投資
を活発に行うイ5セ5ティブになりえる。
企業:2 財以上生産してい る場合
( M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y )
• さ.ほどの1 財独占モデル(si n gl e - p r o du ct
m o n o p o l y )を2 財生産する独占企業のモデル
に拡張する。
• 供給側の範囲の経済性や需要側の財の代替性:
独占市場の均衡価格にどのように影響:あ るか
を考える。
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
• 企業の利潤最大化問題を以下のように定義する。
Fi r st o rde r co n di t i o n w i th r e sp e ct t o :
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
ケース1
コスト関数に範囲の経済性:なく、2 財:代替
的あ るい は 補完的な関係の場合。
つまり、
とい う条件:成立すると.。
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
その時、最大化問題の一回条件は 以下になる。
直 直
直 直
直
直
直 直
直 直 直
直 直 直
1) 2 財:代替財の場合(
直 の場合)
ラーナー指標は 逆価格弾力性よりも大.くなる。つまり、価格を1 財生産す る場合よりも高く設定する。
これを2 財の間の競争効果(compe tition e ffe ct)を内部化するとい う。市場に それぞれ異なる代替関係にあ る財を供給する2 つの企業:存在する場合、競 争により、価格を下げるイ5セ5ティブ:存在する:、独占的に2 財を供給 する場合そのようなイ5セ5ティブは ない 。
ラーナー指標
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
2 )2 財:補完的な場合( の場合)
この時、ラーナー指標は 財の価格弾力性よりも低くなる。
つまり、独占企業は 価格を低く設定する。この時、独占
企業は 正の需要効果( p o si ti v e de m a n d e f f e ct ) を内部化して
, り、価格を下げるイ5セ5ティブ:働く。
この場合、企業は 補完性のあ る財を限界費用より低い 価
格、あ るい は 無料-供給すること:あ る。
例としては 、フリーのソフトウェア、ビデオゲームのデ
モ映像、2 部料金制など
• コスト関数に範囲の経済性:あ り、2 財に対す
る消費者の選好:無関係の場合
つまり、
とい う条件:成立すると.、
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
M u l t i - p r o du ct M o n o p o l y
直 直 直
直 直
とい う関係:得られる。
この時、範囲の経済:働くことにより、独占企業は 価格
をあ げ、 の生産を増やすことにより、製品 iの限界コスト
を下げ、マークマップ価格を上げること:-.る。
結果、別々の企業:それぞれ異なる財を生産するよりも低い
価格:実現する。(範囲の不経済性の場合は 反対の結論)
買い 手独占
ここま-は 、売り手の独占市場を考えて.た:、
買い 手の独占市場の場合も原理は 同じ-あ る。
例)あ る地域に主要な雇用主:1 社だけ-あ る
場合
労働生産性
限界収入 限界支出
FO C .
買い 手独占
買い 手独占企業は 一人 雇用を増やした時の限 界収入と限界支出:等 しくなるように雇用を 設定する。
労働者の意欲に不均一 性:あ り、
-あ る限りは 、買い 手 企業の限界支出は 労働 曲線よりも大.くなる。 結果、買い 手独占企業 は 完全競争市場よりも 雇用を抑制し、賃金は 安くなる。
• 買い 手独占の実証研究としては 、アメリカの野球選手
の労働市場の研究有名-あ る。
• 以前は 、球団側は 独占的なカルテルを形成し個々の選
手は 一度入団すると自分の意志-移籍は -.なかった。
• この結果、賃金交渉-は 球団側:強い 交渉能力をもっ
てい た。
• フリーエージェ5ト:導入される前は 、選手は 自らの
限界生産収入よりもかなり低い 賃金しか受け取ってい
なかったとい う研究:あ る。(S cu l l y , 1 9 7 4 )
買い 手独占
独占と規制のケーススタディー
金利キャップ (Inte re st rate cap)
• 企業:市場支配力を持つ場合、価格は 完全市場競争に, ける価格よりも 高くなって, り、消費者の余剰:小さくなってしまってい る。
• 特に、銀行市場-は 規模の経済性:働くことや情報の非対称性から銀行 :市場支配力を持ちやすい 。
銀行:市場支配力を持ってい る場合に、貸出供給量を増やすことを目的と して金利の上限規制:設けられること:あ る( M aimb o& Galle gos, 2013) 金利規制によって、非効率的な銀行の退出を狙うことを目的とする場合も あ る。
R e f e r e n ce a n d f u rt h e r r e a di n gs
独占企業の行動と非効率性
• ⾧岡・平尾(2 0 1 2 )産業組織の経済学:基礎と応用. 日本評論社. (第 3 章)
• B e lle flamme , P ., & P e itz, M . (2015). Industrial organization: markets and strate gie s. C amb ridge U nive rsity P re ss.(C hapte r 1)
• M otto, M assimo (2004) C ompetition P olicy: The ory and P ractice . C amb ridge . (C hapte r 2)
買い 手独占につい て
• S cully, G. W . (1974). P ay and pe rformance in major le ague b ase b all. The A me rican Economic Revie w, 64(6), 915-930.
金利キャップの事例
• M aimb o, S . M ., & Galle gos, C . A . H . (2014).Inte re st Rate C aps around the W orld: S till P opular, b ut a B lunt Instrume nt.W orld B ank P olicy Re se arch W orking P ape r