試験問題(平成17年度 「現代法」)
試験時間 60 分 担当教員 大越義久
以下の大法廷判決を論評しなさい。
最高裁昭和二十四年十二月二十一日大法廷判決
(昭和二十三年(れ)第二〇六三号強盗殺人未遂 銃砲等所持禁止令違反被告事件)
(刑集三巻十二号二〇四八頁)
<事実の概要>
原審東京高裁が認定したところによると、本件被告人は国鉄の常務車掌が勤務中に所持する運輸省貸与 の懐中時計欲しさからその強奪を企図し、昭和二三年四月二三日午後一〇時過ぎ頃常磐線下り二六七号貨 物列車に乗務する車掌Yの好意で千葉県松戸駅から乗車を許されたことを奇貨とし、乗車後間もなく、列 車最後部車掌室において右同車掌の前頭部を所携のハンマーで殴打し、さらに殺害の意図の下に匕首をふ るって同人の肩部、顔面等に数回にわたって斬りつけるなどし、結局、同人が所持していた前同種類の懐 中時計を強奪したが、それに止まらず、列車が牛久駅と荒川沖駅の中間点附近を通過する地点で同人を車 外に突き落とすなどの加害に及んだというにあった。そして原審は、右認定事実に法条擬律をなし、刑法 二四〇条後段、二四三条を適用のうえ、被告人を無期懲役刑に処した。
右原審判決に対し被告人・弁護人は上告に及んだが、四点にわかれる上告趣意の中で第三点には、無期 懲役刑は犯人の生涯を通じ永続的に人間存在の前提となる自由を剥奪し、必要以上に精神的・肉体的苦痛 を与える点で憲法三六条に所定の「残虐な刑罰」の禁止条項に違反する旨の主張がなされていた。この上 告理由に対する最高裁大法廷の判断が本件判決の判旨である。
<判旨>
「死刑そのものは憲法第三六条にいわゆる『残虐な刑罰』に当たらないとすることは当裁判所の判例と するところである(昭和二三年(れ)一一九号昭和二三年三月一二日大法廷判決参照)。既に現行制度にお ける死刑それ自体が然りとすれば同様に現行制度における無期懲役刑そのものも亦残虐な刑罰といい得な いことは一層当然であろう。[中略] わが刑法においても現代文明各国の立法例と共に死刑を以て最重の刑 として無期自由刑をこれに次ぐものとしている… … 。のみならず科刑の目的は受刑者その人を対象とする 特別予防の外に社会を犯罪から防衛せんとする一般予防の面もあるのであるから、刑の種類及び量の適否 と要否とについてもこの両者の立場から考察されなければならない。そして又犯罪と犯人とがその型と質 とを異にするに従いこれに対応する刑罰も亦その量及び種類を異にせざるを得ないのである。死刑を以て しては過酷に失し有期の自由刑を以てしてはなお足りないとする場合もあり得るのであるから、法律が無 期自由刑を認めたからというて、唯特殊の受刑者の個人的立場からのみこれを目して必要以上にその精神 的肉体的苦痛を与える残虐な刑罰を規定するものとし、違憲であると断じ去ることはできない」
なお、「自筆ノート」と「六法全書」の持ち込みは可能である。
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