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青木清『金属』8月号論説概要pdf 最近の更新履歴 wwwforumtohoku3rd

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別紙

青木清北見工業大学名誉教授の『金属』8 月号論説(「最先端研究論文 の不正疑惑と名誉毀損裁判―吸引鋳造法による直径 30mm のバルク金属ガ ラス合金作製(96 年論文)の検証―」)概要

青木清氏の標記論説では、「研究者コミュニティーと司法とでは研究不 正に対する立証責任が真逆」であることを明確にした後、日野氏らは、「再 現性が無い」ことのみを根拠に井上氏の96年論文に研究不正の疑いがあ ると告発したのではないとし、裁判で争点となった井上氏の96年論文に 内在する5つの疑惑、(a)合金重量の増大(質量保存則違反)、(b)成果物の 写真の掲載方法、(c)ガラスであることの 確認方法と確認場所 、(d)きの こ状の試料形状、(e)異常に低いアルゴン圧 について、逐一詳細に取り上 げ、最高裁で確定された高裁判決の内容が、如何に予断と偏見に満ちたも のであったか、またこの高裁判決では、井上氏の論文不正疑惑は何ら解消 されていない事実を明確にされています。

まず「(a)合金重量の増大(質量保存則違反)」とは、井上氏の 96 年論 文には200グラムの原料を用いて直径30mm、長さ50mmのインゴット

( 成 果 物 ) を 得 た と 明 記 さ れ て い る こ と に つ い て で す 。 成 果 物 で あ る Zr55Al10Ni5Cu30 合金の密度は 6.82g/cm3 であることを井上氏自身が報告 しているので、この値を使用すると成果物である直径30mm、長さ50mm のサンプル作成に必要な原料重量は、最低 240.95g となります。原料重 量より成果物の重量が増加している96年論文は、明白に質量保存則に反 する結果でありデータのねつ造・改ざんが疑われる有力な根拠です。

井 上 氏 は こ の 批 判 に対 し て 、 論 文 の 数 値は 記 載 ミ ス で 、 試 料重 量 に は 20%の誤差があるとErratum(訂正)を96年論文の掲載誌、日本金属学 会欧文誌に掲載したのでした。青木氏はこれに対して次のようにコメント しています。「日常生活で 240g200gと誤差範囲内で同じとの弁解が通 じるだろうか。まして、最先端科学の世界でこのような曖昧さ、好い加減 さが認められるとは到底思えない」。また、井上氏がErratum で示した「ア ーク溶解吸引鋳造法では、ボタン状の小さな合金試料を複数個をあらかじ め作製し、その一定数を同時に再溶解して大きなインゴット(成果物)を 鋳造・作製すること。96 年論文の実験では、再溶解に用いられた小さな 合金試料は12326gであり、再溶解には 89 個を使用した。」とい う点にも矛盾があることに触れておられます。

もしこの Erratum通りだと、原料重量および得られる直径30mmの円

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柱状試料の長さは、最小の場合、23g/個)×8 個=184g38.2mm、 最大の場合、26g/個)×9 個=234g48.6mm となります(長さは、 合金密度6.82g/cm3から算定)。最大の場合でも、長さは48.6mm50mm を満たしません。高裁判決は、井上氏にもっとも有利な 26g9 個の場 合でも長さが 50mm に達しないので疑問が完全には氷解しないとした上 で、「96年論文の成果物の直径および長さは、写真自体から一見した明ら かであるところ、井上らが96年論文の実験に実際に用いた機材で作製さ れるはずのない大きさのものを、そのまま成果物として論文に写真掲載す るということはにわかには信じがたい」としたのでした。青木氏は、この 高裁判決の説明に対して、次のように述べています。「質量保存則に反す る か ら 科 学 的 にあ りえ な い こ と だ と日 野ら が 学 術 的 に 批判 した の に 対 し て、論文に書かれているのだから、できるだろうとの判示は、予断と偏見 に満ちたものだとの誹りを免れないだろう。何度も作製に挑戦し、ようや く1回だけ得られた試料の長さ 50mm が想定される実験条件の範囲外で あったことを、裁判所が軽視、無視したことが問題である」。

関連して、青木氏はさらに、「(b)成果物の写真の掲載方法」を取り上げ ます。

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図1は96年論文のFig.1の再掲です。96年論文ではこの図にキャプシ ョンがあり、製作試料の「表面外観および断面」と記されています。製作 試 料 は 単 数 形(“a”)で示 さ れ て い る の で 、こ の 図 は 一 個 同 一 の製 作 試 料 の

「断面と側面」を示すものと理解できます。そうでなければ写真の意味が ありません。そうだとすると、96 年論文の Fig.1 には看過しがたい問題 が生じます。図に組み込まれたスケールで右の試料側面の長さを測ると全 長が約 50mm と算出できます。同時に、左の断面の写真には影があり、 厚みがゼロだとは考えられません。青木氏は名誉毀損裁判で提出した陳述 書の中で、この影の高さに着眼して、左の断面を示す写真の試料の厚さは

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15mm-20mmであることを明確にされました。もし96年論文のキャプシ ョンで述べる記述が真実であれば、96 年論文の Fig.1 に与えられている 写真の製作試料は、切断前には65-70mmあったことになります。この場 合に必要な原料重量は313-337gとなり、96年論文の質量保存則違反がさ らに大きくなり、科学的にあり得ない内容となります。

この青木氏の疑問に井上氏は、写真を撮影するに際し、「成果物を2つ 作製した上で、そのうち 1 つは切断して断面写真に利用した。もう 1 つ は横から撮影して外観写真に利用した」としたのでした。また井上氏は「学 術論文における写真は補助資料に過ぎず、日本金属学会の論文投稿に関す るルール上も写真の撮影や掲載に関する規程は特段設けられていない」と したのでした。つまり、キャプションで一個同一の製作試料の断面と側面 の写真としている結果について矛盾点を指摘されると、井上氏は2つの別 個の試料写真であり、一方は断面、他方は側面写真である、と説明するこ とで矛盾から逃れようとしたのです。問題を指摘されると「ミス」だと言 って逃れるという井上氏のいつもの遁辞ですが、高裁判決はこの遁辞を受 け入れ、次のように判示したのでした。「96年論文はFig.1 の右側の試料 の長さが約50mmであることは写真自体から明らかであるから、Fig.1は 左 側 の 断 面 の 試料 と右 側 の 側 面 の 試料 が別 々 の 試 料 で ある こと を 何 ら 隠 蔽していない。このように、写真の掲載方法は96年論文の趣旨からする と不適切であるが、不適切であることが写真自体から明らかだから、この 点は論文の質の問題である」。

この点に対して青木氏は、96 年論文の Fig.1 について別々の試料であ ると読み取れる記述は存在しないので、96 年論文の Fig.1 は「別々の試 料であることを隠蔽していると言える」のであり、この高裁の判示は、ね つ造改ざんの疑義を「論文の質の問題にすり替えた」と指摘されています。

青木氏によれば、この写真はさらに大きな問題を孕んでいます。論説の 主 論点 「(c)ガ ラスであ るこ との 確認方 法と 確認 場所 」につ いて 紹介 しま す。96 年論文では、試料が金属ガラスであったことを証明するために、 試料断面に、つまり図 1 左に断面写真が示されている試料を用いて X 線 回折検査をしたとなっています。この内容を是認した場合、別に作製した 直径30mm、長さ50mmの右の写真の試料が確かに金属ガラスであった という証拠は何もありません。青木氏は以下のように述べておられます。

96 年論文 Fig.1 の右側の写真の試料内部を調べていないから、内部が ガラスであるか否かわからない。それにも関わらず、ガラスであると主張 するのは虚偽、すなわち捏造改ざんである。一つの試料を切断し、その一 方の断面がガラスであれば、他の断面もガラスであるというのは妥当であ

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る。他方、別々の試料では、一方の試料の断面がガラスであっても、他の 試料の断面がガラスであると言えないことは自明である。なお、井上氏の 弁解のように、断面と側面とを示すのが別々の試料であった論文に記して いれば、掲載不可になっていた公算がある。なぜなら「右側の試料につい て ガ ラ ス で あ るこ とを 調 べ て い な いに も拘 わ ら ず ガ ラ スで ある と 判 断 し ているからである」。

以上、青木氏論説の主論点を 3つ取り上げ、立ち入って紹介しました。 以上からでも、名誉毀損裁判で確定した高裁判決が、学術的な妥当性を甚 だしく欠いていること、また、この判決によって、96 年論文に関する不 正 疑 惑 が 解 消 した わけ で は 決 し て ない こと が 改 め て 明 白に なっ た と言 え るでしょう。紹介を割愛した 2 論点(「(d)きのこ状の試料形状」「 (e) 異常に低いアルゴン圧について」)については、『金属』誌8月号の論説を 直接参照されることを期待します。

[補足]

フォーラムは、本年42日付けの新着情報No.1において、フォーラム代表日野秀 逸氏らの「声明 最高裁決定に強く抗議する」(2016318日付け)を掲載し、最高 裁判所が、日野氏らと井上明久東北大学前総長との名誉毀損裁判に関する上告を棄却し、 昨年 2 月の仙台高等裁判所の日野氏ら敗訴判決が確定したことに強く抗議しました。 この抗議声明にあるとおり、告発された研究不正への対応責任の扱いが、裁判所と大学 等の研究機関とでは真逆です。

『研究活動における不正行為への対応ガイドライン』(文科省)には、「被告発者が告 発内容を否認する場合には、自己の責任において、研究が科学的に適正な方法と手続き に則って行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであること を、科学的根拠を示して説明する」必要がある、と疑惑を指摘された研究者の側に、疑 惑を払拭する説明責任があることが明記されています。

一方、名誉棄損裁判では、被告(この場合、告発者)に研究不正の立証責任を求めま した。論文を書いた研究者(被告発者)側に、実験設備の仕様、実験条件の設定、デー タの採取や整理の詳細があるのに対し、そのような情報がない告発者側に研究不正の立 証を求めることに無理があることは自明です。疑惑を指摘された研究者側に、疑惑を払 拭する説明責任がないのでは、内部告発者でもない限り、研究で不正が行われたかどう かなどの子細を明らかにすることは極めて困難と言うほかありません。

2007 年春に東北大学や文科省、マスコミ関係に井上氏の 96 年論文には再現性が無 いという趣旨の匿名投書が届きました。井上氏の96年論文は、自らが新たに開発した アーク溶解・吸引鋳造法という方法でZr55Al10Ni5Cu30という組成の合金について、直

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5 / 5 30mm長さ50mmのバルク金属ガラスの製造に初めて成功した、というものです。 ちなみにこの直径30mm長さ50mmのバルク金属ガラスの成果は、ジルコニウム(Zr) 基合金としては、現在でも世界のチャンピオンデータとされています。匿名の研究不正 告発は、大学は公式に対応しないというのが原則ですが、問題が現役の大学総長(当時) の研究不正であったことから、文科省の指導もあり東北大学は庄子哲雄理事(当時) 委員長とする調査委員会(以下、庄子委員会)を立ち上げました。

再現性がない、と言う批判に対する最も効果的な反証の一つは、当時と科学的に同等 と考えられる実験条件・材料を用いて、実験誤差の範囲内で同じ結果を得て示すという ことです。STAP細胞問題が浮上した場合も、理研サイドで相当の人材を投入し、 間もかけて再現実験が試みられたことが、そのよい例だと思います。

井上氏の場合も、チャンピオンデータという重要な成果だったのですから、アーク溶 解・吸引鋳造法で作製できたという直径30mm長さ50mmZr55Al10Ni5Cu30バルク 金属ガラスサンプルは、(何らかの形で)保管されていて当然で、そのサンプルを公開 して、必要な再検査して批判に応えることが重要だったはずです。しかし、サンプルも 実験記録も海難事故で紛失したということでした。さらに驚いたことに、当時と同じ素 材がなく、実験装置が存在しないこと、また当時の実験担当者が不在であることから、 井上氏は「再現実験は出来ない」と申し出て、それを庄子委員会は受け入れたのです。 同時に、庄子委員会は、96 年論文の吸引鋳造法ではなく、アーク溶解・キャップ鋳造 法という最新の方法で直径30mm長さ30mmZr55Al10Ni5Cu30バルク金属ガラスが 作製されたと報告した井上氏らの07年論文の成果を根拠に、96年論文に再現性はある とし、匿名投書に科学的根拠はないと宣言したのでした(20071225日、庄子委 員会「報告書」、参照)

この庄子委員会の挙げた根拠には、2つの課題がありました。1つは、96年論文の吸 引鋳造法と07年論文のキャップ鋳造法が科学的に同一と判定できるものなのか、否か。 もう1つは、バルク金属ガラスの製造で決定的に重要なサイズの問題です。07年論文 の成果は、直径30mm長さ30mmであり、体積で約1.7倍相当も大きな直径30mm 長さ50mm のバルク金属ガラスの製造(96 年論文の成果)を証明できるのか、否か。 2つとも庄子委員会の挙げた根拠を妥当とするかどうかは甚だ疑問です。

このような理由により、吸引鋳造法とキャップ鋳造法とでは実験方法が違うので、 者によって出来たことが前者によっても出来るとは決して言えない、やはり96年論文 の再現性は確認されていないと言うべきだ、等々の批判が噴出しました。こうした批判 が庄子委員会の「報告書」やそれを補完する「追加報告書」2081 31 日)に対 して生まれました。ちなみに、名誉毀損裁判において、07 年論文の筆頭著者で井上氏 と共に日野氏らを仙台地裁に提訴した横山嘉彦東北大学金属材料研究所准教授が、この 庄子委員会の「報告書」「追加報告書」の核心部分を否定する証言をしました。青木氏 は、『金属』9月号の続編論説でこの問題の詳論を約束されていることを申し添えます。

参照

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