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幹細胞生物学から加齢性疾患を考える

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Academic year: 2017

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幹細胞生物学から加齢性疾患を考える

遺伝子病制御研究所・大学院医学研究科 教授

近藤

こ ん ど う

とおる

専門分野 : 幹細胞生物学

研究のキーワード : 再生医療,神経科学,神経幹細胞,癌化,老化 HP アドレス : http://www.igm.hokudai.ac.jp/stemcell/

どんな研究をしているのですか?

「最近なかなか怪我が治らなくて」、「物覚えが悪くなって」、「白髪が増えて」など、加 齢とともにいろいろな変化が体に生じます。更に、痴呆症や癌は、老化に伴い増加する病 気です。このような体の変化や病気は、体の機能維持に働いている組織幹細胞の機能不全 や異常が原因の1つと考えられています。

体内の全ての組織に存在する組織幹細胞は、自分自身を生み出しながら(自己複製)、そ の組織内で働く細胞(機能細胞)を生み出しています(分化)。数十年以上も体内で維持さ れ、増殖し続ける組織幹細胞にはやがて変異が蓄積して、本来の機能を失ったり(老化や 枯渇)、癌細胞に変化すると考えられています(図1)。

図1 組織幹細胞は加齢に伴い、老化や癌化し、病気の発症に関わっている。

私たちは、脳に存在する神経幹細胞をモデルとして、組織幹細胞に起きる異常がどのよ うに加齢性疾患(癌とアルツハイマー病)の発症に関わっているのかについて研究してい ます。また、これらの病気に対する新しい治療方法も探しています。

特に、幹細胞が癌化して生み出される癌幹細胞は、抗癌剤などの治療法に抵抗性を持ち、 再発の原因細胞と考えられています。いわば、癌の“親玉細胞”です。私たちは、神経幹

出身高校:愛知県立豊橋南高校 最終学歴:大阪大学大学院医学系研究科

医療

修復能力、記憶力等の低下

老化に伴う疾患、障害等の増加 加齢に伴う体の変化

組織幹細胞の自己複製能力・数・質の低下

老化細胞・変異細胞の増加

組織幹細胞 老化細胞・癌細胞

組織幹細胞の変化と老化

― 182 ― ― 183 ―

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細胞から癌幹細胞を作り出し、その特徴を研究しています(図2)。同時に、癌幹細胞を標 的とする候補因子を探して、新しい治療法と診断法の開発を進めています。

幹細胞の老化も非常に興味深い研究分野です。私たちは、神経幹細胞に老化を誘導する 実験系を構築し、老化に関わる複数の因子を見つけました(図3)。これらの因子と神経疾 患の関わりについても研究を進めています。

図2 人工癌幹細胞の樹立 図3 加齢脳の神経幹細胞は、老化因子を発現している。

何を目指していますか?

私たちは、新しい実験系を組み立て、他の研究者が発見・解析していない遺伝子の働き を検討しています。それは、全ての研究過程が新しい発見の連続となり、そのワクワク感 が研究を推進する原動力になるからです。そして、研究テーマは“誰もが興味を持てる研 究”であり、その成果が“社会に貢献できる研究”であることを目指しています。

癌の語源は、古代ギリシャのヒポクラテスが乳がん患者の手術をした際、癌を取り巻く 血管の様相を見て、“カニ(ラテン語で「キャンサー」)が張り付いたようだ!”と言った ことに由来します。癌は、人類創成以来の克服すべき最重要疾患なのです。

秦の始皇帝、万有引力で有名なニュートンや古今東西の多くの科学者らが“不老不死の 薬”を探していたように、老化のメカニズムの解明もまた人類にとって最も興味深い永遠 の探求テーマです。ハリーポッターにも不老不死の薬として“賢者の石”が登場していま す。

新しい発想、現代科学の研究手法、手持ちの札(発見した因子など)を使ってこれらの 難問にどのようにアプローチしていくか、私たちの目指す研究です。

参考書

(1) 近藤 (企画)「癌幹細胞と微小環境をめぐる分子機構」,『実験医学』26(8),(2008

癌遺伝子 CMVp

移植 癌幹細胞 p53-/- 神経幹細胞

脳腫瘍モデル

*10個の癌幹細部を移植することにより、脳腫瘍が形成 される。

プルキンエ 細胞

脳幹 CA1-3 歯状回 大脳皮質 脳梁

僧帽細胞層

15ヶ月令マウス脳の 老化因子発現部位

(緑:神経幹細胞/ 前駆細胞、黄:神経 細胞)

加齢に伴い、老化因子(赤)が神経幹細胞(緑)に蓄積する。 老化因子/幹細胞/細胞核

2ヶ月令 15ヶ月令 SV

40 EG p FP

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参照

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