2012年第
2回
関西 地 区例 会日時
: 6月
9日 ( 土) 16: 0019: 00
於 : 関西 学 院大 学 大 阪梅 田キ ャ ンパ ス 10 階1002号室
1. 音
と映像 との「対位 法 ( コン トラプ ン ク ト) 」 再 考 ―初期 トー キー 映 画理論 を軸 に 長 門洋 平 ( 国際 日本 文化 研 究 セ ン ター機 関 研 究員 / 京 都 外 国語 大 学)映画 理 論 で使 われ る対位 法 は、 映像 の意 味 内容 と対 立・ 対 照 的 な音 を重 ね 、 映像 の 意 味 を強調 す る こ とで あ る と一般 に は理 解 され て お り、音 楽 にお け る対位 法 とはそ の 意 味 が異 な る。 こ うした 映 画 にお け る対位 法 の例 と して は 、悲 しい場 面 に明 るい 音 楽 を重 ね る こ とで悲 し さを強調 す る とい った もの が あ り、 これ は映 画 にお い て広 く見 ら れ る演 出で あ る。
この対位 法概 念 に対 して 、音 楽 学 者 の長 木 誠 司氏 は『 戦 後の音 楽 』( 2011) の 中で 、 音 楽 にお け る対位 法 を参 照 しつ つ 、
A) 上
記 の よ うに理 解 す る場 合 それ は「対位 法J と
い うよ りは「異化 」 で は ない か 、
B) 伝
統 的 にオペラ文 化 を持 た な か っ た た め 、「対 照 性 」 を用 い る発 想 が 日本 にお い て過 剰 に注 目され た の で は ない か とい う見解 を述べて い る。 この長 木 氏 の2つ
の見解 に反 論 す る 形 で長 門氏 に よ る対位 法概 念 の再 検 討 ・整 理 が進 め られ る。 対位 法 は①: ( ミ シ ェル・ シオ ンの言 う) 「 イ ンJ 以
外 の音 を有機 的 に 映像 に結 びつ け る方 法 、②: 映像 と音 楽 との 対 照性 とい う2つ
の水 準 で把 握 で き る とい う。 長 木 氏 は、 日本 で は② の側 面 が一 人歩 き してい る と述べた。 しか し、長 門氏 は西 洋 にお い て も② が一 般 的 な対位 法 理 解で あ る と反 論 し、 ま た この手 の演 出が 日本 で新 奇 な もの で あ った か ど うか も疑 間 で あ る と す る。 こ こで ソ ヴィエト映 画 理 論 にお け る 対位 法理解 の変化 や30年代 日本 映画 を参 照 しつ つ 、① が実 質 的 な有 効 性 を持 つた の は トー キー 初 期 のみ で あ る こ とを示 し、 また 今 日用 い られ る対 位 法② の側 面 と異 化 効果 とは別 の水 準 で考 察 され るべきで あ る と述 べた。 対位 法 ② の対 義 語 は並 行 法 、 そ して 異化 の対 義 語 は投 錨 ( 映像 上 の意 味 の た ゆ た い を音 楽 で 固定) で
あ って 、対 位 法 ② が 必 然 的 に異化 効 果 を生 む とは 限 らない とい う。 ま た 、結 論 にお い て は、 映 画 を視 聴 覚 的 に分析 す る場 合 は対位 法② よ りも異化 が よ り重 要 な概 念 で あ る と考 え うる と した。質 疑 応 答 で は 、 例 え ば 映 画 製 作 の 時 間 的・予 算 的制 約 に 関す る考 察 が見 られ ない
こ と、 ブ レ ヒ トの異 化 効果 が 日本 の芸 能・ 芸 術 に ど う影 響 を及 ぼ した の か 、対位 法 と 異 化 が理 論 的水 準 と して い か な る関係 に あ るの か 、 ま た 、本研 究 が 映 画 の対位 法 を め ぐる言説 研 究 で あ るの か長 門氏 自身 に よる 意 味論 的分 析 で あ るの か 、 あ る場 面 の あ る 音 楽 が対位 法 で あ るか ど うか な どを客観 的 に分 類 可能 な の か とい っ た指 摘 や 質 問が 出 た。 長 門氏 は 、 自 らの研 究 は意 味論 的分析 を 目的 と して 出発 した が 、現 段 階 で は それ と言 説研 究 とが共存 して い る状 態 に あ る と 述べた。 客観 的 な分 析 ・ 分 類 に 関 して は 、 長 門氏 もそ の 困難 さを認 め て い た が 、 フ ロ ア か らは フ ィ リップ・ タ グの用 い た ミュー ジー ム な ど、 手 が か りとな る分析 概 念 につ い て指 摘 が な され た。
本 発 表 は、 映 画 以 外 、例 え ば音 楽 ビデ オ や アニメー シ ョンにお け る音 響 と映像 との 関係 を考 え る上 で も示 唆 に富 む もの で あ っ た。 また長 門氏 は、「映画 音 楽 」誕 生 以前 の 日本 の芸 能 にお い て対位 法 ② 的発 想 が あ っ た か とい う問題 を今 後 の課題 と して挙 げ て い た が 、 こ ち らの問題 もた い へ ん興 味深 い もので あ る と思 われ る。
( 報告 岡 田正樹