平成 22 年度「市長と車座談議」記録(要旨)
・明日への会(8名)
※ 当会のアドバイザーである医師、臨床心理士も参加
・開催日時 平成 23 年1月 12 日(水)午前 10 時∼11 時 30 分
・場 所 総合保健福祉センター
懇談の内容
【発達障がいについての説明】
《医師》 近年、発達上の障がいを抱えているお子さんが増えてきており、「身体障がい」
「知的障がい」「精神障がい」とは別の、「発達障がい」という第4の障がいと言えます。 発達障がいには、言葉や運動面、歯を磨くなどの身辺処理、対人関係などの社会性が年 齢相応より全般的に発達が遅かったり、また、社会性だけとか運動面だけが遅れていたり してバランスが取れていないなど、様々な症状が見られます。その症状のうち、言語の理 解・表現、そして対人関係などの社会性に問題があり、こだわりが強い傾向にあるのが「自 閉症」と呼ばれ、言語の理解・表現は可能だが、社会性に問題があるものは「アスペルガ ー症候群」と呼ばれています。また、頭の中で空想したりして集中できなかったり、衝動 的な行動を起こしやすい症状などが「注意欠陥/ 多動性障がい」と呼ばれ、読み書きなどの 習得や使用に著しい困難を示す症状が「学習障害」と呼ばれています。
アメリカの有名な俳優であるトム・クルーズは学習障がいと言われており、文字が読め ないそうです。そのため、映画の台本などを記憶する場合には、台本をテープに吹き込ん でもらって聞いて覚えたりしているそうです。私たちの中にも、理系は不得意だが、芸術 系は得意だという方がいるように、そういった特性が顕著に現れているのが発達障がいで あると言えます。
8年程前に、文部科学省が全国に発達障がいの疑いのある児童がどれくらいいるのかを 調査したところ、当該児童の割合は、一般児童の中の6%ぐらいであることが分かり、こ れは一大事だということで、国も対応してきたところですが、まだまだ他の障がいと比較 して概念的に新しく、支援方法について確立していないのが現状です。
【子どもの状況と保育・教育環境等の問題について】
《参加者》 私の子どもは、保育園の時、みんなと一緒に輪に入って行動することができ ませんでしたが、その保育園では、みんなの輪に入るよう無理強いするようなことはなく、 自分から入りたいというまで待ってくれていました。また、子ども同士でけんかをしてい ても、しばらくけんかの様子を見ていて、きちんと理由を聞いてくれるところでしたので、 卒園する頃には、「友達の家に泊まりに行ってもいい?」と言う様になって、それも先生が これまで無理強いをしないで、自分でできるようになるまで面倒見てくれたことが良かっ たのだと思っています。現在通っている小学校での友達関係も、とても良好です。
また、こだわりが強く、特に数字にこだわりがあり、テストは 100 点が取れないと、「100 点じゃなかった」と授業中は大きな声を出すような状況でしたが、先生から「今回のテス トは難しいので 100 点は取れません」と事前に言ってもらえると 100 点取れなくても大丈
夫なので、そういった一言だけでも違ってくると感じています。
《参加者》 幼稚園や保育園では、先生や保育士さんが児童と生活をともにしてくれるの で、割と子どもの様子を見てくれて、ケアしてくれますが、学校に入ると勉強が中心とな るので、そういう先生ばかりではなくなるように聞いています。
私の子どもは小学校低学年ですが、手遊びにこだわりがあり、授業中もずっと手で飛行 機のまねなど手遊びをしていますので、その間はノートが取れませんし、先生の話も聞け ない状況です。本人には授業中の手遊びは禁止と言ってはいますが、本人の中で切羽詰る と出てしまうようです。今も担任の先生に度々相談していますが、これから高学年に上が って行くと、単純な勉強だけでなく、相手の言葉を理解して、自分の意見を言う機会のあ るグループ学習などが始まりますので、いろいろと不安です。
《参加者》 私の子どもは、小学校の時、いじめの対象になってしまって、精神的に傷つ いて落ち込むことが多くなり、先生にも相談しましたが、なかなか対応が難しいようでし た。
中学校に入って、自分のことを認めてくれる理解のある先生に出会って、家庭でも今ま でできなかったことが学校に行ってできるようになり、親と本人だけでは限界があるとい うことを思い知りました。他人に頼るということではないですが、周囲の環境が整うと子 どもたちも着いていけると実感しました。みんなと違うという部分はありますが、時間が かかっても目的をやり遂げればすごく自信になる。今、すごくいい状態ですので、逆に中 学校を卒業した後に、高校などに行った際の不安が大きいですが、周囲の皆さんの理解が あれば大丈夫だと考えています。
《参加者》 私の子どもは普通学級にいますが、同じクラスの子どもと比べると、ちょっ としたことで泣いたりして子どもっぽいので、よくからかわれます。学校に相談に行くと、 先生方に余裕がないように見受けられます。副担任が減らされたような話も聞いており、 フリーでいられる先生が少なくなっているため、他の子が問題を起こすとその子にかかり きりになってしまい、授業が自習時間になった時、先生がいない時に標的にされる。先生 方に余裕ができれば、子どもを見ることもできるのではないかと思います。
《参加者》 私の子どもは、幼稚園の頃から、他の子どもと遊びたい気持ちがあっても約 束ができず、やっと約束できたとしても、友達のお母さんから、「その子とは遊んじゃダメ」 と言われたらしく、断られたことがありました。その時、悔しい気持ちがあったのか、そ の子に石を投げて当ててしまい、その子の家に謝りにいったこともありましたが、その際 には、私も子どもの気持ちが分っていたため、悔しい気持ちもあり、子どもの気持ちを代 弁したことがありました。
私の家族は、夫の仕事の関係で転勤をよくしていましたが、学校の先生の言動や対応に よって、周りの子どもたちの対応が変わってくることを経験しました。
いわきに戻ってきて、小学校6年の時に、すごく良い先生に巡り会うことができました。 その先生は、子どもの様子を見て、もしかしたらと、専門の医師を紹介してくれて、診察
の際には一緒に来てくれました。その一生懸命やってくれる先生の影響で、最初はクラス 内でも変な子だなと思われていましたが、卒業間際の学習発表会では、クラスメイトが心 配して、私の子どもが無事に発表できたことを自分のこと以上に喜んでくれました。
しかし、中学校に上がった時に、担任の先生に特定の子と席が近いと被害妄想で何もし ていないのにトラブルになる可能性があると説明し、隣と席を離してほしいとお願いしま したが、名前を覚える時期だという理由で離してもらえず、予想していた通りトラブルに なりました。そういったことがあったため、担任が変わる度に主治医にお願いして、新し い担任の先生に発達障がいのことを説明していただきました。私が行くと、過保護な親と 思われるだけに留まる可能性がありましたので、主治医の力をお借りして、学校にお願い したいことはしっかりお願いしました。主治医には、お忙しい中、対応していただき、大 変ありがたく思っています。
《参加者》 私の子どもは高校生ですが、社会性がないというか、こういうふうにしなく ちゃいけないということを、回りを見て覚えることができないため、学校でもトラブルが 絶えません。また、高校ということもあり、担任の先生と密にというのが難しい状況です ので、先生には発達障がいについて理解して対応していただければと思いますし、これか ら学校を卒業して社会に出た際にも、信頼している方からのアドバイスなどがあればと思 っています。
《参加者》 大学の先生が、講演の中で「発達障がいを持っている方とそうでない方とは、 メディアの違うパソコンであり、相互に理解し合うためには通訳が必要」と言っていまし たが、社会に出ていくためにも、そういったサポートが必要だと感じています。
《参加者》 私の子どもは高校生ですが、場の空気を読めないことがあり、放課後、多く の生徒が残って静かに勉強している教室で、放課後は自由時間だと思って大声で話をして しまいます。友達がひそひそ話をしていても大声で話すので、子どもには、友達の声の大 きさに合わせるように教えています。
《参加者》 子どもの成長が、関わってくれる方によって大きく変わってくるということ で、ある意味、社会の縮図を見てきた気がします。親との連携の部分でのやりとりが難し い先生だと、子どもの状況が見えないため、不安になって、さらにやりとりが不味くなっ て行く原因になっていく。先生は先生なりに対応していても、対応しきれない部分があり、 そういうことをわかってくれる先生が間に入ることで、変わってくる。
また、発達障がいに対する認識については、自分の家庭の中はもちろん、周囲にも個性 として理解してもらえるように努めていくことが必要だと考えます。
《市長》 実は、私も県議会議員時代に、多動性障がいの件で相談を受けたことがありま した。先ほど皆さんから、学校の先生で発達障がいを理解してくれる先生とそうでない先 生がいるという話がありましたが、その時は、学校の先生から「お子さんを専門医に診て もらってはどうか」と言われた親御さんからの相談で、「先生がうちの子どもを障がい者扱
いした」というものでした。話を聞けば、学校の先生も念のために医師に診てもらっては どうかというような状況だったようなのですが、自分の子どもが障がいを持っているとい うことを親が受け入れてくれるかどうかという話もあります。
発達障がいについては、国が本格的に精神障がい者として位置付けしてシステムづくり をしてきたのがここ 10 年くらいの話であり、私自身は理解していたつもりですが、世間で はまだまだほとんど理解されていないのが現状だと思いますので、今よりも障がい手帳を 交付してもらえるよう国に求めていくことも必要だと思います。また、先ほど学校関係に ついて、皆さんからもいろいろ話がありましたが、市としても具体的な対応策の一つとし て支援員を配置し、毎年人員も増やしてはいますが、まだまだ数としては少ないのが現状 ですので、可能な限り対応していきたいと思います。
【就労問題について】
《参加者》 小・中・高校までは、親が一生懸命関わって支えることができますが、子ど もが大きくなるにつれて、親だけではどうしようもないことが出てきます。その一つが就 労問題であり、私の子どもは、現在高校2年生ですが、高校を卒業して、自立して、最後 は一人で生きてもらわないといけない。そのためには、就職して、仕事をして、自分で生 活していかなければなりません。無事に就職できるのか、また、就職したとして、仕事を 続けていくことができるのだろうか、子ども達が困ったときに相談する場所があるんだろ うか、そういった不安がたくさんあります。
《障がい福祉課》 障がい者の雇用について、一定規模以上の企業は、法律で障がい者の 雇用を義務付けられています。この対象者は、各種障がい者手帳を持っている方になりま すが、発達障がいの場合、障がいの程度等によって手帳を取得できる場合とできない場合 があります。
障がい者枠でない就労については、発達障がいであることを伝えた上で就職活動を進め るのであれば、ハローワークに求職登録する際に、医師からの診断書等を提出することで、 どんな作業や事務に向いているのかという職業能力を判定してくれる「福島障害者職業セ ンター」という施設を利用することができますので、そこでアドバイザーが関わって助言 してくれます。また、ある程度コミュニケーションができる場合には、直接企業に相談し ながら進めていくという方法もあります。
障がい関係の福祉サービスについては、発達障がい者の方の場合、精神障がいの範疇に 含まれるので、18 歳以上の方は障がい者手帳を取得していなくても、医師の診断書があれ ば利用可能です。一つは2年間の訓練を受けて、基本的には障害者雇用枠での就労を目指 す「就労移行支援」というサービス。もう一つは、一般的な就労が難しいような方の場合 に、工賃は下がりますが特定の作業所で作業する「就労継続支援」というサービスです。 なお、市内の平均工賃は月額2万円に届かないのが現状ですので、工賃だけで生活するの は難しいと考えられます。
また、ハローワークに準ずる機関として、いわき障害者就業・生活支援センターがあり、 仕事や生活面での相談等を行っています。
《市長》 企業による障がい者雇用については、一定規模以上の企業は、障がい者を雇用 する法的な義務があり、雇用しないのであればお金を納めるということになっています。 ただ、法定雇用に関係なく障がい者を雇用している企業もたくさんあり、そういった企業 の方々が「職親会」というものを作って、雇用しています。ハローワークの話だと、そこ は企業が求人をしたかどうかだけの話になってしまうので、ここを議論してもなかなか難 しい。
市長に就任して、企業に求人のお願いをして回っていますが、人事担当者からは、就職 した子ども達が、仕事に我慢できず、簡単に辞めてしまうことに困っているという話を伺 います。先ほど皆さんから話がありましたが、発達障がいのお子さん達はこだわりがすご くあるということですので、自分に合っている仕事であれば、すごく続くと思います。今 は1度就職して辞めたら、再就職がもっと大変な状況なのですが、それが今の若い人は「も う少し良いところがあるんじゃないか」と、すぐに辞めてしまう傾向にあり、就職難であ る現状の厳しさが分っていないのではないかということで、もっと就職について指導して ほしいと逆に企業からオーダーされました。
お子さんがどの職種に向くかということを見ていくことが就労に繋がるのではないかと 思います。向いている職種を見つけるというのは簡単なことではないと思いますが、希望 の職種なども踏まえて、日頃の生活の中で観察し、いろいろなケースの中で、親の気持ち だけではなく、冷静な判断で、「この子はこういう職種が向いているんじゃないか」という ことを、皆さんが注視していくことも大事だと思います。仕事によっては、一つの作業に こだわって取り組んでいける人材を企業は必要としていると思います。また、今までは発 達障がい者の雇用という形で経済団体にお願いしたことはないですので、企業への求人を お願いする際に、そういった形でお願いすることもできると思います。就職が近くなった 時期には、主治医にも相談しながら、また、福島障害者職業センターなども活用しながら、 お子さんの職業能力の適正を見て、就労に繋げていくことが大切だと思います。
また、就職の際のサポートについては、子育て支援などについてもそうですが、関係団 体やNPO含めて、市としてこれからいろいろ検討していかなければなりません。市が直 接やることが難しいものについて、理解をいただいている方、そして保護者を含めて、そ れらの活動に対して市がどう支援していくのかということが課題です。ただ、福祉行政に ついては、国がしっかりとした方向性や仕組みを決めていくことが肝要であり、発達障が いについても、法律の枠組みの中で充実した支援を行っていくためには、国が法的雇用の 位置づけなど、システムづくりをすることが肝要ですが、国に要望してもなかなか進まな い部分がありますで、市が単独でできる部分については、いろいろ検討させていただきた いと思います。
《医師》 障がい者の方の就労については、2つ問題があって、1つには入口の問題、も う一つは継続の問題です。
障がい手帳については、発達障がいの症状や程度によるところがあるため、全員が該当 するとは限らないのが現状ですので、身体障害者手帳、療育手帳、精神保健福祉手帳のほ かに発達障がい者手帳があればと思っています。また、横浜市などでは、療育手帳をIQ 90代でも交付しているそうですので、そういった運用の段階で対応できるものもあるかと
思います。
また、県内に1つしか障害者職業センターがないですので、ジョブコーチできる施設が 市にあればいいと思います。また、大きな企業は、障がい者を雇用するために特例子会社 制度を利用する場合がありますが、小さな企業でも特例子会社を作れるように規制緩和し ていただけばと思っています。
【懇談のまとめ】
《市長》 本日、皆さんから話を聞いて、私自身、発達障がいについて改めて認識したと ころであり、勉強させていただきました。ただ、勉強させていただいたと言っても、行政 の責任者ですから、そこは一歩でも二歩でも進めていかなければならないと思っています。
教育現場での問題については、教育委員会が教員の指導を行っていますので、大方の先 生は発達障がいを理解しているとは思いますが、前向きに捉えている先生もいれば、そう でない先生もいるということですので、なお一層、研修などによる教員への指導を教育委 員会にお願いしていきたいと思います。
就労の問題については、子どもの適職判断について、現行の関係機関の役割なども踏ま え、簡易な判断ができる機会について研究してまいりたい。また、就職してからの支援、 本人が仕事や職場に慣れるまで、最初は一緒に行動し、その後は陰から支え、最終的には 自立できる仕組みなど、そういったものを含めて研究してまいりたいと思います。