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第 8 章 市場における消費分析
8.1 市場の需要曲線
市場の需要曲線: 個々人の需要曲線を集計
X P
X P
+
X P
+ ・・・
図 8.1: 市場の需要曲線
8.2 余剰
消費者余剰: 消費者が取り引きから得る利益
• 1,000 円払っても良いと考えていたモノを 300 円で買えたら 700 円の利益 生産者余剰: 生産者が取り引きから得る利益
• 300 円の費用で作ったモノが 500 円で売れたら 200 円の利益
X P
D 消費者余剰 S
生産者余剰
図 8.2: 消費者余剰と生産者余剰
上級ミクロ経済学:影山純二 税による余剰の変化: 間接税が課された場合
X P
D a S
b c
X P
D a S
c
税収 b 税収
図 8.3: 間接税による歪み
• 税金による価格上昇は、税金額より小さい
• 消費者余剰と生産者余剰は減少
• 死荷重 (dead-weight loss) が発生:社会的損失 輸入制限による余剰の変化: 政府が輸入量を制限すると
• 余剰の一部が消費者から生産者へ移転
• 死荷重が発生 (総余剰が減少)
8.3 パレート効率性
エッジワース・ボックスの意義: 2 人 2 財のケースを利用して資源配分の効率性を考察できる
• ここでわかることは多数多財でも有効
無差別曲線: 個人 1、個人 2 (上下反対にひっくり返したもの) を考える
Y
個人 1 X
効用↑
Y
X 個人 2
効用↑
図 8.4: 無差別曲線
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上級ミクロ経済学:影山純二 予算制約: x 財、y 財を個人 1、個人 2 で分け合う
個人 1 X
YX 個人 2
Y 個人 2 の X の消費量
個人 1 の X の消費量
個人 2 の Y の消費量
個人 1 の Y の消費量
X の総量 Y の総量
図 8.5: 予算制約
エッジワース・ボックス: 個人 1, 個人 2 の無差別曲線、予算制約を結合して作成
個人 1 X
Y X 個人 2
Y
図 8.6: エッジワース・ボックス
パレート効率的: 誰かの効用を改善するのに,他の誰かの効用を悪化させてしまう状況
• ポイント A:両者が交換することにより、お互いの効用を改善できる
• ポイント B (両者の無差別曲線が接する点):相手の効用を下げずに自分の効用を上げる ことはできない
– パレート効率的 (パレート最適)
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上級ミクロ経済学:影山純二
個人 1 X
Y X 個人 2
Y
・ ・
A
B
・
C ΔY ΔY
ΔX
ΔX
契約曲線
図 8.7: パレート効率的
厚生経済学の第 1 定理: 完全競争均衡はパレート効率的である
厚生経済学の第 2 定理: 適切に所得再分配すれば、任意のパレート効率的な資源配分は完全競争均 衡として達成できる
パレート効率性の特徴: 「効率的」とは言っているが、「公平性」に関しては何も言っていない
• 「一方が0、もう一方がすべてを保有」もパレート効率的
8.4 課題
1. 政府による市場への過度な介入は総余剰を減少させるため好ましくない。このような例を 1 つ示し、グラフを用いて説明せよ。
2. パレート効率的な状況下で、ある個人がさらに効用を高めた。このとき、他人の効用はどう なったか。
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