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企業関与の度合い
非常に小さい (親会社から見て) 非常に大きい この分類は、ベンチャー指向活動を既存企業との関係において単純に「独立」
か「非独立」なのかという二分割法ではなく、既存企業の関与程度と関与の方 法、ないしは形態まで考慮に入れている点が重要である。
前に述べた「自己変革型の新規事業開発によるベンチャー…指向化」とは、つ まり、これらのタイプのうち、最終目的として「社内ベンチャー」を積極的に 展開することを目指す企業になろうとする変化のことである。したがって、ベ ンチャー指向型を標榜する企業にとって、「社内ベンチャー」以外の上記の様々 なタイプは、当該企業の市場環境や競争環境および内部資源の保有状況の制約 などによって、適ちに「社内ベンチャー」制度の立ち上げに本格的に取り組め ない場合の一時的段階、代替的な方法であるととらえるのである。
次に、ベンチャー指向型企業の運営にとって不可欠な「アントレプレナーシ ップ旺盛な人々」すなわちアントレプレナーと、社内ベンチャー活動について、
ここであらためてその利点、方式、目的について若干の整理をしておきたい。
3 「自己変革型」の新規事業開発(社内ベンチャー)の方式と目的 (1)独立ベンチャーに対する社内ベンチャーの優位性
ピンチョーは、読者が社内企業家を目指す立場の人々であることを想定して、
独立ベンチャーによるよりも社内ベンチャーによって新規事業に挑戦したほう が有利な場合を次のように指摘している21。
・本質的に独立起業家活動より社内起業活動に向いているような燃え盛
2l Gifford PinchQt皿夏, oP, cit,, P.87.
るビジョンを持つ場合(すなわち、そのアイデアが、自社の既存事業をよ り発展させたり改良したりする方法を提供する場合など)。
・新しいことをしたいとは思っているが、巨額の富を得る可能性より、会 社の友人関係や、安定のほうが大切だと考える場合。
・会社の外部より内部にいたほうが、アイデア実現のための資金獲得がよ り容易である場合。
・会社を出て自己資金を失う危険を冒す前に、会社の内部にいたままで新 事業を起こす経験を積みたい場合。
・その社内起業活動が、規模を大きくしたり、成功の可能性を広げたりす るためには、会社の名前やマーケティング・チャネルに依存しなければ ならない場合。
・競争力維持のために、当該企業独自のテクノロジーに継続して接触する 必要がある場合。
これらの状況にある場合、アントレプレナーシップを持つ人々であっても独立 して会社をおこすのではなく、既存企業にとどまって、社内起業家活動をした ほうが成功の確率が高いとしている。
以上のリストは、新規事業をおこそうとする人々が独立してそれに挑戦する か、社内に引き続きとどまって社内起業家活動を行っていくべきかというとき の判断基準が示されたものである。
ピンチョーは同著において引き続き、大企業が展開する新規事業について、
大規模であるが故のメリットを挙げているが、それを参考にして既存企業によ る社内ベンチャー活動の利点を検討すれば次に列挙するようなものが考えられ るであろう。
・市場影響カー大量生産による従来型のスケール・メリットではなく、大企 業が持っネーム・バリューによる信用力、知名度など市場影響力が大である
こと。
・技術基盤一より大きな基礎的研究開発力を持つ。ただし、それを商品化す るためのシステムを持たなければ、実際の利益につながらないばかりか、そ の技術を持ってスピン・アウトして行く起業家=ライバル企業を生み出すこ
ととなる。
・多くの仲間のネットワークによる情報カー将来の市場予測、新技術の流れ など、独立起業家では望めない豊富な情報を得ることが可能である。さらに、
たとえ独立起業家がどんなに多くのネットワークを作ろうとも、企業内部の、
したがって企業秘密の漏えいを気にせずに情報を効率良く利用できる環境
を持っ大組織の大きな利点には太刀打ちできない。
・試作品の作成の容易さ一新技術がもれる恐れのある外部の部品業者など に依頼することなく、自社プラントで新製品の試作品を作ることが可能な場 合が多い。さらに、試作の過程で同時に効率的な製造プロセスの検討も可能
である。
・資金調達カーベンチャー・キャピタルの資金調達力によって、大企業のも つ豊かな資金力はかつてほどのメリットではなくなった。しかし、先端的な 技術を必要とする事業でありながら、ベンチャー・キャピタリストには不人 気な事業や、大規模生産の必要から独立ベンチャーには手におえない産業分 野においては依然として大規模企業の資金調達力には魅力がある。
(2)社内ベンチャーの種々の方式
徳永豊教授は1986年の論文22において、米国のベンチャー研究者カール・ベス パーの資料をもとに、ベンチャー活動を「企業外ベンチャー」と「社内ベンチ ャー」に分類したうえで、さらに社内ベンチャーを次のごとく整理している。
①奨励型社内ベンチャー
企業内で、多くのアイデアを創意し、そのなかから新製品プロジェクトとし て制度化した小集団を編成し、新製品開発にあたるという長期的・持続的な雰囲 気を社風(corporate culture)として育てる方式である23。
②従業員リスク負担型社内ベンチャー
従業員のアイデアを積極的に開発するが、その場合、従業員にリスクの負担 と将来の利得をえられるよう投資させることによって、将来有望な製品の周辺 アイデアを奨励する社内ベンチャー方式である。この方式は一般に、従業員が個 人的に身銭を切って研究していることが多いことに着目し、それを制度化した
ものである。つまり、その研究費分を従業員の給料から差し引き、それを個人の 研究投資として企業が仮の株式を発行する。もし、その研究開発が成功し,製品
を企業化できた場合,企業側はその株式を市場価値で買い取るという方式であ
る。
③資金援助型社内ベンチャー 、
社内ベンチャーに対して資金援助するために社内基金制度を設け,将来有望 なプロジェクトが組めるよう積極的に研修会に参加するための費用ならびに有 望なアイデアに対して従業員に資金援助する方式である.成功した製品に対す る従業員への報酬として社内資本金(intra−capital)による次の研究開発のた
22徳永豊f企業成長の新しい方向(1)」『明大商学論叢』第68巻第3−7号,1986年,23L〜232頁。
23その典型的な例は3M社に見られる。3M社における薪製品の成功率は1 OP,6程度であるといわれているが、それで も5年毎の売上構成をみると、25%が社内ベンチャーから生まれたものによって占められている。
めの株式の発行、あるいは開発債(development−fund)制度を設け、支援する方 式である。
同教授がこの論文で「仮にわが国においてそれが応用される場合、その形態 はおそらく極めて多様なものとなるであろう。」と指摘しているように、社内ベ ンチャーには、上記のタイプそれぞれの利点を強調したり組み合わせたりする ことにより、その変型としてこのほかにも様々な方式が考えられるであろう。
(3)社内ベンチャー活動の目的
これらの方式は、米国企業において採用され、実用化されて一定の成果をあ げているものではあるが、これを日本企業にとりいれ根付かせて成果をあげる ためには、制度や組織作りのみに限定した努力では不可能であると思われる。
社内ベンチャーの方式に続いて、同教授は社内ベンチャーを行う企業の目的 を下記のように整理している24。
●ポートフォリオ(p・rtf・1io)一①余剰資金の活用のため、②危険分散 のため、 ③共同事業・共同投資によって大きな資金を動かすため ●イノベーション(innovati・n)一④研究開発その他の状況のなかで見 逃していたイノベーションをつかまえるため、つまり、アイデアを逃さ ないため、⑤アイデアもしくは試作品から導入までの時間の短縮のため、
⑥アイデアを生み出す能率をあげ、コストを下げるため
●人材(people)一⑦創造的な人材を社内にひきとめるため、⑧創造的な 人材を雇用するため、他の従業員に刺激を与え、社内にアントレプレナ ーシップを起こす雰囲気をつくるため、である。 1
以上、社内ベンチャーについて、その利点と一般的な方式、ならびに活動の 目的を整理した。
そこで次に具体例として、社内ベンチャーの成功例として多くの文献で採り 上げられ、既存企業が常に自己革新をしているという意味において、筆者の言 うところの「ベンチャー指向型企業」の代表格ともいうべき米国企業「3M社」
と日本企業である「船井電機」の事例を観察し、社内ベンチャー制度の有効性 と、その成功の条件を探ってみたい。
4 社内ベンチャー成功の条件一「3M社」と「船井鷺機」の組織破壊 (1) 3M社の社内ベンチャーによる発展
現在我々に身近な製品としては「落ちないしおり」として馴染み深いポスト
24徳永豊,前掲論文,233頁。