Fig. 53. Changes in Content of CPM Polymorphs due to Repeated Compressions (upper) and Compressing Times (lower) at 2000 kg/cm2.
●: Form A, ▲: Form C, ■: Amorphous.
Scheme 8. Proposed Scheme for Crystallization and Polymorphic Transition of
第5節 CPM の溶出及び in vivo 吸収に及ぼす HP-β-CyD の影響
CPM は消化管液に対する溶解性が低く,JP XIV 第一液中において結晶多形間 で溶解性が変化することから,その錠剤は溶出試験の適用対象となっている.
第 3 節で述べたように,CPM は HP-β-CyD と水溶性複合体を形成することか ら CPM の溶解速度の増大が予想された. そこで本節では,CPM 結晶多形 Form A,Form C および HP-β-CyD 複合体の溶解性を JP XIV 崩壊試験用第一 液および第二液を用いて検討した. また,前節で述べたように,CPM 多形を 打 錠 す る と 非 晶 質 化 す る こ と か ら , 打 錠 に よ る CPM 結 晶 多 形 お よ び
HP-β-CyD 複合体の溶解性変化について検討した. さらに, CPM 結晶多形
Form A,Form C および HP-β-CyD 複合体をビーグル犬に経口投与後の in vivo 吸収挙動を比較し,難水溶性薬物 CPM の製剤特性の改善における HP-β-CyD の有用性について考察した.
第 1 項 CPM 多形の溶出ならびに HP-β-CyD 複合体からの CPM の溶出挙動
Fig. 54 は,JPXIV 崩壊試験用第一液および第二液を用いて CPM の溶解性を
粉末法 59) により検討した結果を示す. 第一液における CPM の溶解速度は結 晶多形 Form A < Form C < HP-β-CyD 複合体の順に増大した. また,本測 定時間内(3時間)において準安定形から安定形への転移による過飽和濃度の減 少は観測されなかった. 一方,第二液へのCPMの溶解速度は Form A ≈ Form C
< HP-β-CyD 複合体の順に増大し,Form A および Form C 間に溶解速度の差
は見られなかった. これは,CPM の pKaが 4.3 であり,第二液(pH 6.8)へ の溶解性が増大し,結晶多形間の溶解性の差が検出できなかったためと考えら れる.
(A) (B)
Fig. 54. Dissolution Profiles of CPM in JP XIV First(A)and Second(B) Fluids at 37°C, Measured by Dispersed Amount Method (100 rpm).
○: Form A, △: Form C, □: HP-β-CyD complex (equivalent to 300 mg CPM).
Each point represents the mean ± S.E. of 3 experiments.
そこで,次に第一液を用いて打錠後の溶解性変化について検討した. Fig. 55 は,CPM 結晶多形 Form A,Form C および HP-β-CyD 複合体の打錠前と打錠 後の溶解性を比較した結果を示す. 図から明らかなように,Form A および
Form C の溶解速度は打錠により増大した. これは,CPM 結晶多形は打錠によ
り非晶質化し,一部が多形転移するという前章の結果を反映したものと考えら れる. 一方,HP-β-CyD 複合体の溶解性は打錠の影響をほとんど受けず,優れ た溶解性を示した.
Time (h)
Concn. of CPM (mM)
0 1 2 3
0.4 0.8 1.2
0
0 1 2 3
0 10 20
Time (h)
Concn. of CPM (mM)
Time (h)
Concn. of CPM (mM)
0 1 2 3
0.4 0.8 1.2
0
0 1 2 3
0 10 20
Time (h)
Concn. of CPM (mM)
(A) (B)
(C)
Fig. 55. Dissolution Profiles of CPM Powders before (open symbols) and after (closed symbols) Compression in JP XIV First Fluids at 37°C, Measured by Dispersed Amount Method (100 rpm).
(A): Form A,(B): Form C,(C): HP-β-CyD complex (equivalent to 300 mg CPM).
Each point represents the mean ± S.E. of 3 experiments.
第2 項 CPM多形ならびに HP-β-CyD複合体のin vivo吸収挙動
Fig. 56 (A) は,CPM 結晶多形 Form A,Form C および HP-β-CyD 複合体を ビーグル犬に経口投与後の血漿中CPM濃度の時間推移を示す.また,Table 5 は それらの薬物速度論的パラメータを示す.血漿中 CPM 濃度は,Form A ≈ Form
C< HP-β-CyD 複合体の順に増大し,HP-β-CyD 複合体投与後の血漿中濃度‐
時間曲線下面積(AUC)は Form A,Form C に比べて約 1.5 倍増大した. Fig.
Time (h) Time (h)
Time (h)
Concn. of CPM (mM) Concn. of CPM (mM)
Concn. of CPM (mM)
0.4
1 2 3
0.8 1.2
0 0 0.4
1 2 3
0.8 1.2
0 0
1 2 3
0.8 1.2
0 0
1 2 3
0 0.4 0.8 1.2
0
1 2 3
0 0.4 0.8 1.2
0
1 2 3
0 0.4 0.8 1.2
0
56 (B)は,CPM 結晶多形 Form A,Form C および HP-β-CyD 複合体をビーグル 犬に経口投与後の血漿中グルコース濃度の時間推移を示す. 初期の血漿中グル コース濃度は,血漿中 CPM の濃度変化を反映して,Form A ≈ Form C >
HP-β-CyD 複合体の順に減少した.
(A) (B)
Fig. 56. Plasma Levels of CPM (A) and Glucose (B) after Oral Administration of CPM Polymorphs (Form A, Form C) and CPM/HP-β-CyD Complex (equivalent to 50 mg/body CPM) in Dogs.
○: Form A, △: Form C, □: HP-β-CyD complex.
Each point represents the mean ±S.E. of 3-4 experiments.
Significant difference from Form A and Form C is noted as follows:(*)p<0.05.
Plasma CPM level (µg/ml)
0 8 16 24
Time (h) 0
20
10
*
*
0 8 16 24
60 80 100
Time (h)
Plasma glucose level (%)
*
Table 5. Bioavailability Parameters a) of CPM after Oral Administration of CPM Polymorphs (Form A, Form C) and CPM/HP-β-CyD Complex (equivalent to 50 mg/body CPM) in Dogs.
a)Each value represents the mean ± S.E. of 3-4 experiments. b)The time required to reach the maximum plasma level. c)The maximum plasma level. d)The area under the plasma level versus time curve up to 24 h post-administration. e)The mean residence time in plasma. Significant difference from Form A and Form C is noted as follows:(*)p<0.05.
第6節 小括
本章では,非晶質性 HP-β-CyD 複合体からの CPM の結晶化と多形転移挙動 を検討するとともに,複合体化による CPM の溶解性やバイオアベイラビリテ ィ改善などの製剤特性の向上を企図した. まず,CPM と CyD の水溶液中に おける相互作用を溶解度法および各種スペクトル法を用いて検討し,固体状態 における相互作用を粉末 X 線回折法を用いて検討した.次に,CPM 多形の保 存および打錠時における多形転移挙動を速度論的に追跡し,さらに CPM の結 晶化および多形転移挙動に及ぼす HP-β-CyD の影響を検討した. また,
HP-β-CyD 複合体中の CPM の溶解挙動,ビーグル犬投与後の薬物吸収挙動お
よび血糖降下作用を比較検討した. 以下に得られた知見を要約する.
Form A Form C HP-β-CyD Complex
tmax(h) Cmax(µg/mL) AUC (h・µg/mL) MRT (h) 2.12±0.2
1.85±0.7 1.83±0.2
11.0 ±1.9 11.2 ±3.2 16.8 ±3.1
159.6 ±27.7 154.5 ±34.6 224.7±25.1
10.5 ±0.4 10.8 ±0.7 11.0 ±0.6
C) d) e)
b)
* *
Compound
1) CPM の溶解度は CyDs の添加濃度の増加とともに直線的に増大する AL型 を示し,1:1 複合体を形成することが示唆された. 溶解度法から求めた複 合体の安定度定数は,γ-CyD < α-CyD < β-CyD および HP-γ-CyD < HP-α-CyD < HP-β-CyD の順に増大した. 1H-NMRスペクトル法による検 討から,水溶液において β-CyD および HP-β-CyD は CPM のフェニル基 部分を優位に包接して 1:1 複合体を形成することが示唆された.
2) 噴霧乾燥法により調製した CPM/HP-β-CyD(モル比1:1)固体複合体は,粉
末X 線回折においてハローを呈し非晶質性複合体の形成が示唆された.
3) 非晶質性 HP-β-CyD 複合体中の CPM は保存により準安定形 Form C へ
徐々に結晶化したが,Form C から Form A への転移は 60 oC の高温条件下 においてのみ観察された. 一方,CPM 単独を噴霧乾燥すると準安定形の Form C が生成し,Form C を保存すると Jander 式に従って Form A へ転移 した. 転移速度は温度及び湿度の増加に伴い上昇し,Form C から Form A への転移の活性化エネルギーは 51.1 kJ/mol であった.
4) 非晶質性 HP-β-CyD 複合体は打錠時に非晶質状態を保ち,圧力に対して安
定であった. 一方,Form A および Form C は打錠により非晶質化し,一部 はそれぞれ Form Cおよび Form A へ転移した. これらの多形転移および 非晶質化は打錠回数および打錠時間の増加に伴い増大した.
5) JP XIV 第一液中への CPM の溶解速度は CPM 結晶多形 Form A < Form C <HP-β-CyD 複合体の順に増大した. 一方,第二液中への CPM の溶解 速度は CPM 結晶多形 Form A ≈ Form C < HP-β-CyD 複合体の順であった.
6) 打錠後の CPM の溶解速度は加圧前に比べて増大した. これは加圧により 生成した非晶質部分の影響であると考えられる. 一方,HP-β-CyD 複合体 は優れた溶解性を示し,溶解速度は加圧の影響を受けなかった.
7) HP-β-CyD 複合体をビーグル犬に経口投与後の血漿中薬物濃度は,in vitro
溶出挙動を反映してCPM 結晶多形 Form A および Form C に比べて有意に 高い値を示した.また,複合体投与後の血中グルコース濃度は CPM 単独投 与に比べて低下した.
以上述べたように,HP-β-CyD は CPM と非晶質性複合体を形成して溶解性 や経口投与後のバイオアベイラビリティを改善した. さらに,HP-β-CyD は保 存時における結晶化や多形転移に影響を及ぼすことが確かめられた. HP-β-CyD は打錠時における CPM の結晶化や多形転移を抑制し,複合体は非晶質状態を 安定に保持した. HP-CyDs の包接機能を利用すると固形薬品の結晶化経路,結 晶成長や多形転移の制御が可能なことが明らかとなった.