示唆された.
2) TB と CyDs との相互作用を溶解度法により検討した結果,TB/DM-β-CyD 複
合体の安定度定数(1920 M-1)は他の CyDs 複合体の安定度定数(< 344 M-1) に比べて大きな値を示し,TB は DM-β-CyD と強く相互作用することが示唆 された. 各種 NMR スペクトル測定ならびに分子力場計算により,TB は DM-α-CyD や DM-β-CyD とモル比 1:1 複合体を形成し,DM-α-CyD は TB のブチルエステル部分を包接し,一方,DM-β-CyD はトルエン部分を優位に 包接するものと推定された.
3) CPM は水溶液において結晶化初期から Form A へ結晶化した. また,
HP-β-CyD 添加系の場合,結晶化初期に Form II へ結晶化するが,Form II は 速やかに Form A へ転移した.一方,DM-β-CyD を添加すると結晶化初期に 出現する Form II から Form A への溶液媒介性転移が抑制され,Form II が安 定に存在した.
4) CPM/DM-β-CyD 系に競合包接剤を添加すると Form II への結晶化は抑制さ
れて新たな結晶が析出し,この多形を Form D と命名した. その際,競合包 接剤/DM-β-CyD 複合体の安定度定数が大きいほど, Form D の生成率が増加 した.
5) CPM と β-CyDs と の 相 互 作 用 を 溶 解 度 法 に よ り 検 討 し た 結 果 , CPM/DM-β-CyD 複合体の安定度定数(380 M-1)は他の β-CyDs 複合体の安 定度定数(< 160 M-1)に比べて大きな値を示した. NMR スペクトル測定に より,DM-β-CyD は CPM とモル比 1:1 複合体を形成し, CPM のクロル
ベンゼン環部分を優位に包接するものと推定した.
6) CPM のForm II は水溶液中において,DM-β-CyD/競合包接剤の存在下 Form D へ転移した.また,Form D は20°C ~ 60°CでForm A へ転移し,DM-β-CyD はこの転移を抑制した. 本検討中における CPM 多形のみかけの溶解度は,
Form A < Form D < Form II の順に増大した
7) CPMと天然CyDs および HP-CyDs との相互作用を溶解度法により検討した
結果,CPM の溶解度は CyDs の添加濃度の増加とともに直線的に増大する AL 型を示し,1:1 包接複合体形成が示唆された. また,複合体の安定度定 数 は ,γ-CyD < α-CyD < β-CyD お よ び HP-γ-CyD < HP-α-CyD <
HP-β-CyD の順に増大した. 1H-NMR スペクトル法による検討から,水溶液
において β-CyD および HP-β-CyD は CPM のクロルベンゼン環部分を優位 に包接して 1:1 複合体を形成することが示唆された.
8) 噴霧乾燥法により調製した CPM/HP-β-CyD(モル比1:1)固体複合体は粉末 X 線回折においてハローを呈し,非晶質性複合体の形成が示唆された.非晶 質性 HP-β-CyD 複合体中の CPM は保存により準安定形 Form C へ徐々に結 晶化したが,Form C から Form A への転移は25 oC,40 oCで抑制され,60 oC の高温条件下においてのみ転移が観察された.一方,CPM 単独を噴霧乾燥す ると準安定形の Form C が生成し,Form C を保存すると Jander 式に従って
Form A へ転移した. 非晶質性 HP-β-CyD 複合体は打錠過程において非晶質
状態を保ち,圧力に対して安定であった. 一方,Form A および Form C は打 錠により非晶質化し,一部はそれぞれ Form Cおよび Form A へ転移した.こ れらの多形転移および非晶質化は打錠回数および打錠時間の増加に伴い増大
した.
9) JP XIV 第一液中への CPM の溶解速度は CPM 結晶多形 Form A < Form C
<HP-β-CyD 複合体の順に増大した. 一方,第二液中への CPM の溶解速度 は CPM 結晶多形 Form A ≈ Form C < HP-β-CyD 複合体の順であった.また,
打錠後の CPM の溶解速度は加圧前に比べて増大した. これは加圧により生 成した非晶質部分の影響であると考えられる. 一方,HP-β-CyD 複合体は優 れた溶解性を示し,溶解速度は加圧の影響を受けなかった.
10) HP-β-CyD 複合体をビーグル犬に経口投与後の血漿中薬物濃度は,in vitro溶
出挙動を反映し,CPM 結晶多形 Form A および Form C に比べて有意に増 大した.また,複合体投与後の血中グルコース濃度は CPM 単独投与に比べ て低下した.
以上述べたように,DM-β-CyD は水溶液からのTB および CPM の結晶化を 制御し,準安定形を選択的に結晶化させた.さらに,CPM 系では DM-β-CyD の 包接機能を調節することにより,新規多形 Form D を創出できた. また,
HP-β-CyDは CPM と非晶質性複合体を形成し,溶解性や経口投与後のバイオア
ベイラビリティを改善した. さらに,HP-β-CyDは打錠時におけるCPMの結晶 化や多形転移を抑制し、複合体は非晶質状態を安定に保持した. 本研究で得ら れた知見は,TB や CPM のような結晶多形を有する難水溶性薬物の製剤設計や 保存条件の設定を行う上で重要な基礎資料になるものと考えられる. また,
CyDsの包接機能を利用して固形薬品の結晶化経路,結晶成長や多形転移の制御 が可能なことから,結晶工学領域への CyDs の応用など新たな展開が期待され る.