Graduate
Scheol
ofProfessional
Accountancy ,
AoyamaGakuin
University
37
N工 工
一
Eleotronio LibraryThe Japanese Association of Management Accounting
NII-Electronic Library Service
The Japanese Assoolatlon of Management Aooountlng
管理 会 計 学 第17 巻 第
2
号1 . は じ め に
本稿
の 目的 は次
の4
点であ る. 1
)多
様 な意 味
に 使 わ れてい る 「企 業価値
」概
念 を 整 理 する,2
)企業価
値・
株 主価 値
を測 定
し, その過 程
で直
面す
る諸 問
題を整
理す
る,3 ) 株 主価値構
成 要素
とし ての インタンジ ブル ズ( R
&D 資産
と ブ ラン ド等)
を推 定す
る,4
)株 価
と株
主価値
の関係
を検討
する.本稿
は 日本管
理 会 計学
会 統一
論 題 (
2008
年8
月 )で報 告 した 内 容に加筆修
正 した ものであ る.
2 . 多様 な 「 企 業 価値 」 概 念
「企
業価 値
」 の概
念は多義
に使 わ れて お り, 企業
の 品 格, 社 会 的 評価
, 競争 力,収益
性な
ど 非 計数 的
要素
を含
め て総合 的
に判
断す
る 立 場 と,金額
で測 定
で き る もの だ け に限 定 す る立場
と が あ る,総
合 的 に 判 断 す る 立 場 はビ ジネ ス社 会に多い が, 金額
に限 定 する立場
は学術 的 な
立場
が多
い.
n{[}1 )
企 業 価値
を 総 合 的 に 判 断 す る 立 場ステ
ー
ク ホルダ ー 全体
に とっ て の価値
を意 味す
る 場合
が多
い が,
東急
電 鉄の よ うに 倫 理,環境
保 全 まで を も 広 く捉 え る 企業
も あ る.非
計数
的 要素
を含
め る 立場
では貨幣
金額
によ る測 定
は不 可能
で ある.
トヨ タ
自動車 ( 有価
証券報告書 2008 . 3期 f
コー
ポレー
ト
・
ガバ ナ ン ス 」 の 項 )「当 社 は
,
長 期 安 定的
な 企 業 価 値の 向 上 を経
営の最 重 要 課 題 と して い る.
その 実現
のた めに は, 株
主の皆
様 や お 客 様 を は じ め, 取 引 先, 地 域 社 会,従業 員
等の 各ス テー
ク ホルダ ー
と良
好な
関係
を築 き,
お客様
に満
足 し てい た だ け る商
品 を提供す
るこ とに よ り長 期安
定 的 な 成 長 を遂
げてい くこと が 重 要 と考 えてい る 」東急電鉄 ( 事業報告 20e6.
3ue )
「企
業倫
理の遵守
,地球
環境 保 全
活動
および各社 社会
貢献
活 動な
ど を引き続
き進
め,企業価
値の最 大 化に努 めて一一一
」日
本経 済
団体連合 会 ( 報告書 .
「企業価 値最大
化に向
けた経 営戦
略」2006 .3.
22
)「ゴ
ー
イン グコ ンサー
ン と して の企 業の 価 値 は, 企 業 が 将 来 に わ た り生み
出す
こと を期
待さ
れてい る付 加価値
の合計
である.
企業価値
は,配
当 や キャ ピ タル ゲ イン と して『
株 主 に帰
属 す る 価 値』 ( 株
主 価 値)
と顧 客・
従 業 員・
地域
社 会 な ど『
株 主 以 外の ステー
ク ホル ダー
に帰
属す
る
価値 』
の源
泉 で ある.
企業価値
の最
大化
こそ経営者
の使 命
であ
るが,
近年 ,
さ まざ
ま な次
元 で, 企業価 値
の最 大 化 に 向 け た経営
戦 略の あ り方 が 議論
の焦 点 と なっ て い る。経 営者
は企業 価値
の最 大
化 を 目指
し て い るにもか かわ らず ,
企業価
値 その もの は 計 測 が 難 しい.経営者
は実
際には, 把 握 可能 な
株式時 価総額
を 参考
としつ つ , 企業
価値
の最 大
化に取
り組ん でい る」2 )
企業価値
を 金額
で測
定で き るも
のに限
定す
る立場
下 記の リコ
ー
の よう
に企 業
が企業 価値
を金 額で 測定
で き る もの に 限 定 するの は少数派
で あ る.
ま た,経済
産 業省
や概
念フ レー
ム ワー
ク で は測
定方 法
とし て キャ ッ シ ュ・
フロー za
(DCF
法 )に 特定
して いる.
企 業 価 値の測 定方
法 に は 残 余 利 益 法 (割 引 超 過 利 益 法 ), 配 当還元法
も あ るが,DCF 法
が 基本
的 な測
定 方 法である と認識
されて いる.
38
N工 工
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企 業 価 値が意 味 するもの
リコ
ー
(事 業 報 告2008.3
期 )「
創 出
した利
益 を 大 き な 成長
が期 待
され る事 業
領 域 や 技 術 力 強 化の た めの投 資
に も振
り向 け ることに よ り,業績
を伸
ば し,さ
らな る 企 業 価値
の増
大 を 図っ て まい り ます
」経 済 産 業 省 (厂企 業 価 値 研 究 会」報 告,
2008 . 6 )
「
『 指
針』
」及び本報告書
にお ける『
企業価
値』
と は, 概 念 的に は,『
キ ャ ッ シュ フ ロー
の割 引現在
価 値』
を 指 すこ と を 確 認 して おく.
こ の概 念 を恣意的
に拡 大 して,『 指針』
及び本 報告 書
を解釈
し て はな らな
い 」企 業 会
計基
準 委 員 会 討 議資
料 (「財 務 会 計の概
念 フ レー
ム ワー
ク」
2006 .12
)財務 報告
の 目的 を 「企業価 値
の評価
に役
立つ よう
な, 企業
財務 状況
の開
示にあ
る」( 序
文〉
とし,利益 情
報 は 「企業価値
評価
の 基 礎 と な る 将 来キ ャ ッ シュ フ n一
の 予 測 に 広 く 用い られ てい る 」 と してい る.
本 稿で は
2
)の 立 揚か ら,
金 額で測 定で きるも
の に限
っ て検討 す
る.
3 . 企 業 価 値
・株 主 価 値 の 測 定 と 測 定 上
の諸 問 題
企 業 価 値
・
株 主 価 値 を 過去 の財 務 デー
タで測
定 し,測
定過
程で直
面 す る 諸 問 題 を検 討
する.
企 業価 値
と株 主 価値
を 必 ず し も 明 確に区分
せず
両者
を 同 じ意 味で使 用 す る ことも多
い が,本 稿
で は, 企業価値
=負債価値
+株
主価
値,
とす る.
た だ,M
&A
に お け る評価
な ど実 務では,
キャ ッ シ ュ
・
フ ロー
(DCF
法で用い る フ リー ・
キ ャ ッ シ ュ フ ロー FCF
は金 融 損 益 加 減 前 )を創出
しな
い現預
金,有価
証券,投資
その他資産
,遊
休資
産 を非事業
用資産
としてDCF
法で求
め た 企 業 価値
に 加 え る.
こ の 場 合 に は,DCF
法で測定
し た企業価
値 を 事 業 価 値 と表現
し, 企業 価 値 =
事業価値
+非
事業価値 ,
とす
る が本稿
で も 同 様 に扱
う. FCF
が 同 じ でも非事業 価値
に大
き な差
が あ る2
つ の企 業
を 同 列 に は扱
え ない し,財 務
デー
タ で実 際
に測定
す る 場 合で も 非 事業価値
を考慮
しない と,株 価
との乖離
が大
き くな
り理 論 的 には とも
か く現 実問題
とし て, 株 価
との 関連
づ けが 困難
にな る.
米 国 企 業 に 較べ て金融
資 産 を多
く保有
す る 日本 企 業 に おいて は と くにこ の必 要 性が
強
い.非事業 価値 を
加 えた企業
価 値 か ら負債 価値
を控 除
し た株
主価
値の う ち, 株 主 資 本 と評 価・ 換 算差額
を 超 え る部 分
はインタン ジブル ズ であ
り,
イン タン ジ ブル ズ はR
&D 資産
と ブ ラン ド等 か ら構 成 され るも
の とす
る.
企
業価 値 ( 事 業価 値
+非事業価値) 一
負
債
価 値= 株 主 価
値
=株
主資本
+評 価 ・換算差額
+イン タン ジ ブル ズ( R
&D 資産
+ブ ラン ド等 )3 − 1DCF 法 に よ る 事業価 値
の測 定
使 用 財務
デー
タ・ 日
本
;日経NEEDS
企業財 務
デー
タの連
結
財務
諸 表.米 国
:Compustat .
・ 対 象 企 業 と
期
間日
本
:日経 225
の企業
のう
ち, 1998 年3
月期
か ら2007 年 3
月期
まで継 続
し てデ ー
タが とれ る
,製 造業
,決算
期変
更が ない, 上 場会社 同
士 の合 併
がな
い,親 会 社
が 上 場 してい る場
合は 子 会社
を
除
く,
とい う条件
を満
たす企業 135
社.
米
国
:S
&P500
に採
用 さ れて い る企業
のうち,1997
年 か ら2007 年
まで継続
してデー
タ が とれ
る39
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管理会 計 学 第 17 巻 第 2号
製造業 194 社
資 本コ ス ト
( WACC
)・
べ一
タ日
本
:日経 NEEDS
のTOPIX
60
ヶ月べ一
タ,
2008 年 3
月( 東京 証券取
引 所).
米 国 :
S
&P50060
ヶ月( Compustat 財務デ
「 タ)
・
リス ク・
フ リー
レー
ト日
本
:1.53
%,10年物利付 国債 (新
発債流
通利
回 り, 目本銀
行 公 表1 997 .
4〜2007 . 3
月次利
回平
均 ).
米 国 :10
年 物 財務
省 証券4.
86
%( 1998
/1−2007
/12
月 次 平 均 )・
リス クプレ ミ アム3
%FCF
予測
方 法・1998年3
月期
か ら2007 年 3
月期 ( 10年 )
の 実績 CF (
キャ ッ シュ・
フ ロー)
か ら2008
年3期
のFCF
を 予 測 し, その予 測 値 が 無 限 に 継 続 す る もの と す る.
企 業 外 部の 立場
か ら長 期
にわたるFCF
を 予測す
るの は困難
だか ら,実績 数値
から翌期
の数値 を
予測
し, そ れ を資本
還 元 し た.
・2008 年3期
のFCF
予測に はDecisioneering 社
の ソフ ト 「CB
Predict
。rVer .7.22
」 を 用い る.
非 季節
平 滑 法 を 採 用.
予 測の方
法には,
シ ング
ル 移 動 平 均 法,
ダ ブル移 動 平 均 法, シ ン グル指
数
平 滑 法,ダ
ブル指 数 法が あ る が, 各 企 業 毎 に 予 測 誤差
が最 も
小 さい方法
選択
し て予 測 す る( 各方法
の計算
式はDecisi
。neeringInc .,構 造計
画研 究
所 訳,2005 ,129− 131
頁).
ARIMA
モデ
ル は使
用 しない (サ ンプル 年 数が1Q
年 と 少 ない ので適 用で き ない).
・ FCF
:営 業
キ ャ ッシa・
フ ロ・・ 一 ( CFO ) 一 投資等
キャ ッシ ュ・
フ ロー
(CFI
)営
業 キャ ッ シ ュ・
フロー
; 営業利
益 X (1一
実効税 率 O . 4 )
+減 価償却 費 一 受
取 手 形・
売 掛金
増
+割 引
手形増
+棚卸資産増)
+支
払 手 形・
買 掛 金増
投資等
キャ ッ シュ・
フ ロー
(
CFD
= 有 形
固
定資
産 (簿価)増
+無形
固定資産 ( 簿価)増
+減
価 償却費 事業価値測
定 上の問題
点a
)FCF
予 測の 困難
性DCF
法で は 将 来のFCF
無 限 流 列 を 前 提 と するが,無限 流
列の予測
は実 際
に は 不 可 能 だ か ら,
通常
は5年
を各 年
毎に予 測(
予 測 期 間 価 値 ),
その 後 は一
定 と仮 定 (継 続 価値
)するこ と が多
い.
し か し
,割 引率5
%とす
る と事業価値
に占
め る割合
は予 測期 間価 値21 . 6
%,継
続 価 値78 .4
%であ り,
事業
価 値のかな りの部 分 は 予 測 期 間 後のFCF
、.]に
依存
するこ とにな る.
n
曝 諧
・1 ; /
.lll F
,:
,:
,; 一
’”また
, FCF 実績
値 はマ イ ナス の こ と も あ るの で (2007
年度
は 日本の上場
企業 3 , 069 社
の うち1
,1
79 社
がマ イ ナス)
, 予測 FCF
がマ イナス にな るこ とも あ る.
本稿
ではFCF
がマ イ ナス の場合
は事 業 価値
ゼ ロ として計算
した.
必ず
しも現実
的では ない が, この場合
の企業価値
は 非 事 業 価値
の み と
な
る.本稿
で は単 純
にFCF
を 予測
し たが,
A .
Damodaran
は成
長 率, 成 長期 間
な ど多 く
の考慮 す
べ き項
目 を検 討
して い る( A.Damodaran
,2006
, pp.117−
156.)
b
)CFI
予 測の 困難
性CFI
は現状
設備 能力
を 維持
す る た めの投 資で あ り, 拡 大投資
を含
まな
い とさ
れて い る.
し か し, 現 状 設 備 と 同 じ設備
を 更新す
る という
こ とは通常
は ない し, 設 備 投 資は経 済情勢
,製
品 の需給動 向な
どの影 響
で変 動
が激
しい. CFI
の 合 理 的 な 金額
を測
定す
る の は容
易でな
い.
c)資 本コ ス ト (
WACC
)本稿
でも 自
己資本
コ ス トrはCAPM
に よっ た が,
CAPM
に 対 して多 くの批判
が あるの は周 知の 通40
N工 工
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ドキュメント内
The Japanese Association of Management Accounting NII-Electronic Library Service
(ページ 38-44)