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+ LiBF 4 + TEABF 4LiPF6

ドキュメント内 野津, 龍太郎 (ページ 136-148)

Micro syringeTeflon tape

LiPF 6 + LiBF 4 + TEABF 4LiPF6

1017サイクル後の“LiPF6 + LiBF4 電解液”は175 cm3/gに減少した。“LiPF6 + TEABF4

電解液”はさらに減少し、51 cm3/gであった。“LiPF6 + TEABF4 電解液”は自己放電 が低減されたことと共に充放電サイクルにおける正極および負極の充電状態バラン スが変化しにくくなったことで、正極電位および負極電位が電解液溶媒の分解が起こ りやすくなる電位に達しにくくなったことにより、発生ガスが低減されたと考えられ る。

図4-17 各電解液を用いたデュアルイオン電池の充放電1000サイクルまでに 発生したガスによるセル体積の増加

また、“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いたデュア ルイオン電池の充放電サイクル終了後に採取した発生ガスのガスクロマトグラフィ

0 100 200 300 400 500

With LiPF6+BF4 electrolyte Volume change / cm3/g_pos.

Electrolyte

LiPF6+ LiBF4 LiPF6+ TEABF4 LiPF6

After charge & discharge cycles

After 1017 cycles

After 1017 cycles After 1026 cycles

131

ーの結果、表4-12に示されるように、“LiPF6 + LiBF4 電解液”では、相対的にH2

やC2H6が多かったことから、負極における電解液溶媒の還元が起こりやすかったと考 えられる。充放電サイクルにおける負極電位の充電曲線で充電末期に負極の満充電を 示す電位の立下りが見られたことからも、妥当であると思われる。“LiPF6 + TEABF4 電 解液”でも相対的にH2が多かったが、C2H6は検出されなかった。LTOを負極活物質に 用いたリチウムイオン電池で初期の充放電時に H2が多く発生することが知られてお り、デュアルイオン電池においても初期充放電で再現されると考えられるが、その後 の充放電サイクルで負極の可逆性が向上し、電位変化が抑制されたことによって、電 解液溶媒の還元によるガス発生が起こりにくくなったと思われる。

表4-12 “LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いた デュアルイオン電池の充放電1017 サイクルまでに発生したガス成分 (正極活物質質量に対する体積比で表現した)

“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いたデュアルイオ ン電池の充放電サイクル終了後に採取した電解液に存在する陽イオンおよび陰イオ ンを調べるために、イオンクロマトグラフィーを行った。図4-18に充放電サイク ル前後の陰イオンのイオンクロマトグラムを示した。充放電サイクル前の電解液には、

“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”のいずれにおいてもBF4

および PF6の存在を示すスペクトルがそれぞれ保持時間 17 分および 76 分付近に確 認された。保持時間 4 分付近には、わずかであるが Fに起因するスペクトルが確認

Electrolyte "LiPF6 + LiBF4 "LiPF6 + TEABF4 electrolyte" electrolyte"

Total generated gas

during 1017 cycles / cm3/g_pos 175 51

H2 / cm3/g_pos 133 39

CO / cm3/g_pos 14.1 3.4

CH4 / cm3/g_pos 7.8 3.6

CO2 / cm3/g_pos 17.0 5.4

C2H4 / cm3/g_pos 0.0 0.0

C2H6 / cm3/g_pos 2.8 0.0

132

された(図4-18a)。1017サイクル後の“LiPF6 + LiBF4 電解液”には、PF6に起因 するスペクトルが確認できず、BF4に起因するスペクトルがわずかに検出されるのみ であった(図4-18b)。反対に、Fおよび PO2F2[19]と思われるに起因するスペク トルが増大することが分かった。電解液試料が電池の充電後に採取されたことを考慮 しても、充放電サイクルによって PF6の多くが分解されて Fおよび PO2F2を生成し たと思われる。“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いた場合も、1017サイクル後のFおよ び PO2F2が増大していたが、BF4および PF6の存在が確認された。この結果および 1017サイクル目の容量から、“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解 液”を用いたデュアルイオン電池の充放電サイクル前後に残存したPF6-およびLi量 を見積もり、表4-13に示した。PF6および BF4に対するLiおよび TEAのルイ ス酸の強さの比をとったところ、“LiPF6 + LiBF4 電解液”の場合の90.3に対して、

LiPF6 + TEABF4 電解液”は10.9となり、アンモニウム塩を用いることによって、充 放電サイクル後の電解液のルイス酸の強さが緩和されたと思われる。

次に、図4-19に充放電サイクル前後の陽イオンのイオンクロマトグラムを示 した。充放電サイクル前の電解液には、“LiPF6 + LiBF4 電解液”ではLiが、“LiPF6

+ TEABF4 電解液”では Liおよび(C2H5)4Nに起因するスペクトルがそれぞれ 5 分お よび150分付近の保持時間に確認された(図4-19a)。1017サイクル後の“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”のLi+ は減少したが、満充電後にも 残存していることが分かった。また、“LiPF6 + TEABF4 電解液”のTEAのスペクトル が幅広くなっていたがその存在が確認された(図4-19b)。

133

(a)

(b)

図4-18“ LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いた デュアルイオン電池の充放電サイクル (a) 前 および (b) 後に採取 した電解液に含まれる陰イオン成分のイオンクロマトグラム

0 10 20 30 40 50 60

0 50 100 150

Inensity/ a.u.

Retention time / min

Before charge and discharge Anion

BF4

PF6

F

With "LiPF6+ LiBF4 electrolyte"

With "LiPF6+TEABF4 electrolyte"

0 10 20 30 40 50 60

0 50 100 150

Inensity/ a.u.

Retention time / min

After 1017 cycles Anion

BF4 PF6

F

PO2F2

With "LiPF6+ LiBF4 electrolyte"

With "LiPF6+TEABF4

electrolyte"

134

(a)

(b)

図4-19“ LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いた デュアルイオン電池の充放電サイクル (a) 前 および (b) 後に採取 した電解液に含まれる陽イオン成分のイオンクロマトグラム

0 10 20 30 40 50 60

0 50 100 150 200 250 300

Inensity/ a.u.

Retention time / min

0 20 40 60 80 100

100 150 200 250 300

Inensity/ a.u.

Retention time / min (C2H5)4N+

Cation

(C2H5)4N+ Li+

X 3000

Before charge and discharge

With "LiPF6+TEABF4 electrolyte"

With "LiPF6+ LiBF4

electrolyte"

0 10 20 30 40 50 60

0 50 100 150 200 250 300

Inensity/ a.u.

Retention time / min Li+

0 20 40 60 80 100

100 150 200 250 300

Inensity/ a.u.

Retention time / min (C2H5)4N+

Cation

(C2H5)4N+

X 3000

After 1017 cycles

With "LiPF6+TEABF4 electrolyte"

With "LiPF6+ LiBF4 electrolyte"

135

表4-13 “LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いたデ ュアルイオン電池の充放電1000サイクル前後におけるインターカレー ション可能なPF6

およびLi量、およびルイス酸の強さηの比

充放電サイクル後に採取した電解液の陽イオンおよび陰イオンのイオンクロマト グラフィーの結果から、デュアルイオン電池の充放電サイクルにおいて、電解液中の PF6が分解されてFおよびPO2F2を生成したことによって、グラファイト正極にイン ターカレーションすべきPF6-が不足し、充電が終了させられた結果、容量減少が起き たと考えられる。“LiPF6 + LiBF4 電解液”では、充放電前に0.24 mmol含まれていた PF6が 1000サイクル後には 0.05 mmol のPO2F2だけが検出されたので、その差とな

る0.19mmol のPF6がグラファイトにインターカレーションされたまま電解液中に放

出されなかったと推測する。“LiPF6 + TEABF4 電解液”の場合にも PF6が同じように 減少したが BF4が僅かに残ったたことで蓄電容量を維持できたと推測する。その時、

正極および負極近傍の電解液のルイス酸の強さにより正極および負極の充電状態バ ランスを変化させるような不可逆反応あるいは自己放電を起こした結果、ガス発生を 伴ったと考える。アンモニウム塩を用いたことによって、電解液のルイス酸の強さが 緩和され、これらの連鎖的な充放電サイクル性能が改善されたことが示唆された。

Electrolyte "LiPF6 + LiBF4 "LiPF6 + TEABF4

electrolyte" electrolyte"

Before charge and discharge

After 1000 cycles

Before charge and discharge

After 1000 cycles Cation

Amout of Li+ / mmol 0.27 0.07 0.23 0.08

(Available

capacity) (/ mAh/g) (123) (33.6) (104) (38.3)

Amout of TEA+ / mmol 0.00 0.00 0.05 0.01

(Available

capacity) (/ mAh/g) (20.1) (4.4)

Anion

Amout of PF6 / mmol 0.24 0.00 0.23 0.03

(Available

capacity) (/ mAh/g) (111) (0.2) (105) (12.7)

Amout of BF4 / mmol 0.03 0.00 0.05 0.01

(Available

capacity) (/ mAh/g) (14) (1.9) (25.2) (6.5)

Amout of F / mmol 0.00 0.08 0.00 0.09

Amout of PO2F2 / mmol 0.00 0.05 0.00 0.06

Ratio of η of cations to

anions (PF6 and BF4) / - 5.2 90.3 4.4 10.9

136

4.4 結論

本検討では、デュアルイオン電池の充放電における正極および負極近傍での電解 液のルイス酸の強さを緩和することによって、自己放電およびガス発生を伴う不可逆 反応を低減することで正極および負極の充電状態バランスが変化することを抑制し、

充放電サイクルにおける容量減少を低減することを目的として、アンモニウム塩を適 用することを試みた。

最初にアンモニウム塩として TEABF4電解質を用いた LiPF6との混合電解液におけ るLTO作用極のサイクリックボルタンメトリーを行ったところ、LiPF6とLiBF4の混合 電解液の場合で見られた電位掃引の繰り返しでのLiのLTOへのインターカレーショ ン電位のシフトが抑制されたことが確認され、インターカレーションの可逆性が高く なったことが示された。

また、LiPF6とTEABF4との混合電解液を用いたデュアルイオン電池を検討した結果、

PF6の使用によって一定の初期容量を得ながら、充放電効率および自己放電性能を改 善し、充放電サイクルにおけるガス発生および容量減少が抑制されることを示した。

TEABF4電解質を用いたことによって、充放電時の正極電位および負極電位の範囲

が変化しにくくなり、正極および負極の充電状態が維持されるようになったと思われ る。その結果として、充放電サイクルにおいて、正極および負極がより深い深度へ充 電されにくくなり、電解液溶媒の分解、即ちガス発生が抑制された。また、電解液中 の PF6が分解されて Fや PO2F2が生成することも抑制されたことによって、グラフ ァイト正極のインターカレーションに必要なPF6の減少が低減し、充電が終了させら れることによる容量減少が改善された。すなわち、デュアルイオン電池における電解 液のルイス酸の強さを緩和するためのアンモニウム塩の利用は、充放電サイクルにお けるガス発生および容量減少を低減する効果があることが示された。

137

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139

第5章 結論および展望

結論__

デュアルイオン電池は、グラファイト正極に陰イオンがインターカレーションす る電圧が5 V以上であり、かつ高速であることから、高エネルギー密度と高入出力を 合わせ持つ電池となることが期待されるが、実用化のためには、ガス発生を伴う不可 逆反応および充放電サイクルにおける容量減少を抑制することが必須であった。これ を解決するために、デュアルイオン電池の劣化に関わるメカニズムを把握し、性能改 善を行うことを目的として、以下の検討を行った。

第 1 章では、デュアルイオン電池の過去の研究例を紹介し、デュアルイオン電池 の特長を明確にするとともに、課題を明確にした。特に本電池の特長であるアニオン の炭素へのインターカレーションについての報告をまとめ、本研究の位置づけを明確 にするとともに、本研究の目標を示した。

第2章では、課題の単純化を行うためにデュアルイオン電池の負極に安定した可 逆性を持つと考えてLTOを用いたが、初期容量は良好であるものの、ガス発生および サイクル特性を改善するには至らなかった。繰り返し特性が劣化する機構の解析を行 った。充放電サイクルにおける正極および負極の充電状態のバランスおよび蓄電容量 の変化を評価した。その結果、正極および負極の蓄電容量がほとんど初期容量を維持 しているにもかかわらず、正極および負極の充電状態バランスが変化することによっ て、デュアルイオン電池の充電ができなくなることが分かった。また、デュアルイオ ン電池の充放電における陽イオンおよび陰イオンの移動の仕方を再現したボルタン メトリーによって、デュアルイオン電池におけるイオンの移動の仕方が負極の安定性 に影響することを示唆した。これらの結果から、デュアルイオン電池の充放電におい て、充電時の負極近傍の陰イオンに対する陽イオンの濃度が増大することが示唆され、

これが負極近傍における電解液のルイス酸の強度を増加させることによって負極の 自己放電やガス発生につながる酸化に影響していることを推測した。

ドキュメント内 野津, 龍太郎 (ページ 136-148)

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