Micro syringeTeflon tape
CH 2 ―O C=OO
CH2 CH2 O
108
DMCの場合:
+ 2e- + 2H+
→ CH3OH + CH4 + CO2 (4)
また、電気二重層キャパシタの充電において、正極上でCOやCO2が生成する[第1
章29]ことが報告されており、デュアルイオン電池の充放電サイクルにおいてH2、CO、
CH4、CO2、C2H4、およびC2H6が検出されることを想定して、予めこれらの標準ガスを分 析し、検量線を作成した。デュアルイオン電池の充放電サイクル後に採取したガス成 分の体積は、測定されたガス全体の体積の成分比として見積もった。
さらに、デュアルイオン電池の充放電サイクル後の電解液中に存在するイオン量 を分析するために、イオンクロマトグラフィーを行った。第2章および第3章で議論 したように、デュアルイオン電池の充放電サイクルによって、電解液中のイオンが減 少し、グラファイト正極およびLTO負極へインターカレーションすべき充電容量が減 少することを推測した。この現象を確認し、デュアルイオン電池の充放電サイクルに おける劣化メカニズムを理解することに役立て、また、TEABF4塩を用いることによっ て充放電サイクル後のイオンの減少が抑制されることを確認するために、1000 サイ クルの充放電後にデュアルイオン電池から採取した電解液を分析した。
充放電サイクル前後のデュアルイオン電池をArグローブボックスに移動し、正極 と負極が短絡しないように注意深く正極、負極、および電解液を含んだセパレータを 分離し採取した。陽イオンおよび陰イオンを分析するための電解液試料を採取したセ パレータから搾り取り、それぞれをイオン交換水で1000倍に希釈した。資料をThermo Fisher Scientific社製イオン分析システム Dionex ICS-1500により分析した。陽イ オンの分析[8,9]には、同社製カラムDionex IonPac CS17および移動相として予め調 整した30 mmol/L のメタンスルホン酸(CH3SO3H)水溶液を用いた。移動相の流量を1.0
O―CH3 CH3―O
=C
O
109
mL/min とした条件で採取した電解液中に含まれる陽イオンの同定を行った。陰イオ
ンの分析[10-12]には、同社製カラムDionex IonPac AS20および移動相として予め調 整した4.5 mmol/L の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)および0.8 mmol/L の炭酸ナトリ ウム(Na2CO3)混合水溶液を用いた。移動相の流量を1.0 mL/minとした条件で採取した 電解液中に含まれる陽イオンの同定を行った(表4-7)。
表4-7 充放電サイクル後に採取した電解液のイオンクロマトグラフィー条件
4.3 結果および考察
4.3.1 評価したデュアルイオン電池の電極容量、電解液容量、およびのル イス酸の強さ
評価したデュアルイオン電池の正極、負極、および電解液の蓄電可能な容量を確認 するために、それぞれの活物質質量から理論容量を求めた。その結果、表4-8に示 すように、“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いたデュア ルイオン電池の理論容量は、正極が支配する4.2 mAh(“LiPF6 電解液”は2.4 mAh)
と見積もられた。負極の理論容量は 5.1 mAh となり正極に対して 1.2 倍過剰であっ た。電解液の理論容量は、陽イオンの場合にはLi+だけがLTO負極にインターカレー ションするものとし、陰イオンは、PF6-およびBF4-がグラファイト正極にインターカ レーションするものとしてモル数から見積もった。“LiPF6 + LiBF4 電解液”の理論容
Ion chromatograph Dionex ICS-1500, Thermo Fisher Scientific Inc.
Cation analysis
Column Dionex IonPac CS17
Mobile phase 30 mmol/L CH3SO3H H2O
Flow rate 1.0 mL/min
Anion analysis
Column Dionex IonPac AS20
Mobile phase 4.5 mmol/L NaHCO3 + 0.8 mmol/L Na2CO3 H2O
Flow rate 1.0 mL/min
Sample Obtained electrolyte : H2O = 1:1 (v/v)
110
量は両イオン共に7.4 mAhで正極の1.8倍あった。“LiPF6 + TEABF4 電解液”の場合、
陽イオンはで7.3 mAh (正極の1.8倍)、陰イオンは6.1 mAh (正極の1.4倍)であっ た。比較としての“LiPF6 電解液”では 6.6 mAh (正極の2.8倍)であった。これらの 結果を表4-8にまとめた。
表4-8 評価セルにおける正極活物質、負極活物質、電解液の質量、および 質量から見積もられたそれぞれの理論容量
また、デュアルイオン電池の評価に用いた電解液のルイス酸の強さを比較するた めに、電解液質量からそれぞれのイオンのモル数およびルイス酸の強さを見積もった。
有機溶媒を用いた電解液におけるイオンのルイス酸の酸性あるいは塩基性の強さ η は、F. Scholz によって、Hard and Soft Acids and Bases (HSAB)則として(5)式 で定義されている[13]。
η = (I - A)/2 (5)
I:イオン化ポテンシャル A: 相互作用種間の電子親和力
齋藤らは、電気二重層キャパシタに適用し得る電解液に含まれる陽イオンおよび 陰イオンのプロピレンカーボネート(PC)溶液におけるルイス酸の強さを調べた[第 3
章20]。主なイオンのルイス酸の強さηを表4-9に示した。陽イオンではテロラエ
チルアンモニウム(TEA+)やトリエチルメチルアンモニウム(TEMA+)などのアンモニウ
Element "LiPF6 electrolyte" "LiPF6 + LiBF4 electrolyte" "LiPF6 + TEABF4 electrolyte"
Positive active material
Weight / g 0.033 0.058 0.058
Theoretical capacity / mAh 2.3 4.2 4.2
Negative active material
Weight / g 0.029 0.029 0.029
Theoretical capacity / mAh 5.0 5.1 5.1
Electrolyte
G / g/cc 1.25 1.25 1.25
Weight / g 0.17 0.14 0.16
Theoretical capacity
Anion (PF6¯, BF4¯) / mAh 6.6 7.4 7.3
Cation (Li+) / mAh 6.6 7.4 6.1
111
ムイオンよりもアルカリ金属イオン(Li+)のルイス酸の強さが強く、陰イオンでは BF4-よりもPF6-のルイス酸の強さが強いことが分かる。
表4-9 PC溶液における主なイオンのルイス酸の強さ
Species η
/ eV
Cation Li+ 35.2
TEA+ 6.42
TEMA+ 6.46
Anion PF6- 6.65
BF4- 6.38
評価セルに用いたLiPF6 電解液”、“LiPF6 + LiBF4 電解液”、および “LiPF6 +
TEABF4 電解液”について、電解液に含まれる陽イオンおよび陰イオンのルイス酸の強
さηとモル数との積をとり、陰イオンの総和に対する陽イオンの総和を見積もった。
その結果、表4-10に示すように、“LiPF6 + TEABF4 電解液”は4.6と見積もられ、
“LiPF6 電解液”および“LiPF6 + LiBF4 電解液”の5.3より小さく、ルイス酸の強 さが緩和されると思われる。
表4-10 デュアルイオン電池の注液後における電解液中に存在する PF6-
およびLi+ の濃度、およびルイス酸の強さηの比
Electrolyte "LiPF6 "LiPF6 + LiBF4 "LiPF6 + TEABF4 electrolyte" electrolyte" electrolyte"
Weight of electrolyte
in DIB / g 0.16 0.17 0.17
Amout of Li+ / mmol 0.25 0.27 0.22
Amout of TEA+ / mmol 0.00 0.00 0.04
Amout of PF6- / mmol 0.25 0.24 0.22
Amout of BF4
- / mmol 0.00 0.03 0.04
Ratio of η of cations
to anions / - 5.3 5.3 4.6
112
さらに、デュアルイオン電池の充放電において、グラファイト正極およびLTO負極 が放電され PF6-および BF4-の陰イオンと Li+の陽イオンがすべて電解液中に放出さ れた状態から充電によって正極にPF6-(一部はBF4-と思われる)、負極にLi+がインタ ーカレーションされた時までの電解液中のイオンの濃度を見積もった。“LiPF6 電解 液”、“LiPF6 + LiBF4 電解液”、および“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いたデュアル イオン電池の満充電を4.3.2項で示す初期の容量(正極活物質質量に対して、それ ぞれ、69.0 mAh/g、56.8 mAh/g、および46.8 mAh/g)であると仮定し、この容量に相 当するイオンが電極へインターカレーションされたものとした。その結果、表4-1 1に示すように、“LiPF6 電解液”、“LiPF6 + LiBF4 電解液”、および“LiPF6 + TEABF4
電解液”は、充電後のPF6-濃度がそれぞれ34%、51%、および46%だけ減少すると想定 される。充電後の電解液のルイス酸の強さは、それぞれ8.0、9.9、および7.5と見積 もられ、充電後の“LiPF6 + TEABF4 電解液”のルイス酸の強さが想定的に緩和される ものと思われる。
表4-11 デュアルイオン電池の充放電において電解液中に存在する PF6-
およびLi+の濃度、およびルイス酸の強さηの比
4.3.2 アンモニウム塩を用いた電解液における LTO 負極のサイクリック ボルタンメトリー
第2章2.3.2において議論したように、デュアルイオン電池の充放電において
Electrolyte "LiPF6 "LiPF6 + LiBF4 "LiPF6 + TEABF4
electrolyte" electrolyte" electrolyte"
Concentration
before charge Li+ / mol/L 1.84 2.07 1.65
PF6
- / mol/L 1.84 1.87 1.65
Concentration
after charge Li+ / mol/L 1.84 2.07 1.65
PF6- (max) / mol/L 1.84 1.87 1.65
(min) / mol/L 1.22 0.91 0.89
Maximum of decrease in concentration of PF6
- / % 34 51 46
Maximum of ratio of η of
cations to anions / - 8.0 9.9 7.5
113
負極近傍での陽イオンおよび陰イオンの移動方向を再現させるためにグラファイト 正極を対極に用いたLTO負極のサイクリックボルタンメトリーでは、Li+がLTO 作用 極にインターカレーションする電位が安定せず、酸化還元の走査を繰り返すことによ って還元波および酸化波のピーク電位が変化することを示した。LTO作用極近傍にお ける電解液のルイス酸の強さを緩和することによって LTO 作用極の酸化還元に対す る可逆性が向上することを期待し、アンモニウム塩TEABF4をLiPF6と混合した電解液 におけるLTO作用極のサイクリックボルタンメトリーを行った。
“LiPF6 + LiBF4 電解液”および“LiPF6 + TEABF4 電解液”におけるLTO作用極の ボルタモグラムをそれぞれ図4-6に示した。“LiPF6 + LiBF4 電解液”におけるLTO 負極のLi+のインターカレーションによる還元波は、3回の電位掃引の繰り返しの間、
1.50 V vs. Li/Li+から1.35 V vs. Li/Li+にシフトした。還元後に確認された2つ のLTOにインターカレーションされたLi+が電解液中に放出される過程の存在を示す 酸化波のうち低電位側は、1.78 V vs. Li/Li+から1.81 V vs. Li/Li+にシフトした (図4-6a)。“LiPF6 + TEABF4 電解液”では、3回の電位掃引の繰り返しにおける 還元波のピーク電位のシフトが1.51 V vs. Li/Li+から1.46 V vs. Li/Li+までの 0.05 Vとなり、“LiPF6 + LiBF4 電解液”よりも明らかに低電位にシフトしたことが 確認された。還元後の酸化波では、1回と2回目以降の電位掃引で2つの酸化波の面 積の割合が変化したが、2回目と3回目の酸化波はほとんど一致した。この結果から、
“LiPF6 + TEABF4 電解液”を用いることにより、デュアルイオン電池におけるLTO負 極の充放電に対する可逆性を向上させることが期待される。
114
(a)
(b)
図4-6 (a)“LiPF6 + LiBF4 電解液”および (b)“LiPF6 + TEABF4 電解液”
におけるLTO作用極のボルタモグラム -800
-600 -400 -200 0 200
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
Current / mA/g_neg.
Potential / V vs. Li/Li+ 1st scan
3rd scan 2nd scan
In "LiPF6+ LiBF4electrolyte"
-800 -600 -400 -200 0 200
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
Current / mA/g_neg.
Potential / V vs. Li/Li+ 1st scan
In "LiPF6+ TEABF4electrolyte"
2nd, 3rd scan
115
4.3.3 アンモニウム塩を用いたデュアルイオン電池の自己放電試験
“LiPF6 電解液”、“LiPF6 + LiBF4 電解液”、および“LiPF6 + TEABF4 電解液”
を用いたデュアルイオン電池の自己放電性能を評価した。充電後の放置時間を 10 分 としたときの放電に対する6 時間および 24 時間放置後の放電電気量の割合を図4-
7に示した。“LiPF6 電解液”を用いたデュアルイオン電池の24時間放置後は、63%
まで低下した。“LiPF6 + LiBF4 電解液”を用いた場合、24時間放置後の放電電気量
は81%であった。第3章3.3.2で示した同電解液(47%)に対して自己放電性能が向
上したが、作製したセルの設計パラメータとしてグラファイトの正極活物質に対する LTOの負極活物質の質量比を低減したことが関与したと思われる。“LiPF6 + LiBF4 電 解液”は、“LiPF6 電解液”と比較して、熱安定性および充放電サイクルにおける容 量低下を抑制すると報告されたLiBF4塩、MEC溶媒[14,15]、およびPC溶媒[16-18]を 用いることによって、自己放電性能が向上したと考えられる。“LiPF6 + TEABF4 電解 液”を用いた場合、24時間放置後の放電電気量が91%へ増加し、“LiPF6 + TEABF4 電 解液”に比べて飛躍的に向上することを確認した。
図4-7 アンモニウム塩を用いたデュアルイオン電池の自己放電試験における 充電後の放置時間と放電電気量の関係
0 20 40 60 80 100 120
0 10 20 30
Discharge capacity / %
Rest time before discharge / h
□ With LiPF6 electrolyte
○ With LiPF6+ LiBF4electrolyte
△ With LiPF6+ TEABF4electrolyte 100% of the discharge capacity is the capacity after rested for 10 min.