3. サテライト教室の授業改善の取り組みについて
3.1. e-Learning による授業改善
3.1.1.現在のサテライト教室における授業の現状
北海道教育大学大学院修士課程には平成17度より北見サテライト,平成19年度から 帯広サテライトが設けられ,地方に在住する教員が大学院に入学している。これらの院 生は,夏休みなどの長期休暇中にサテライトを開設しているキャンパスに来て集中講義 を受けたり,サテライトを開設しているキャンパスの教員が土曜日,日曜日にサテライ トに出向いて行う1ヶ月分の授業を集中的に受けたり,夜間にテレビ電話システムを用 いた対面授業を受けて勉学している。
その際には次のような不具合が生じている。まず,サテライトを開設しているキャン パスでの集中講義を受講する際には,院生側に旅費,宿泊費などの費用の負担が強いら れる。また,サテライトでの土曜日,日曜日の授業のために,担当教員は毎月出張する ことが必要である。さらに,その教員は金曜日の午後には出発しなくてはならず,教員 の時間的な負担は大きい。また,教員によっては,定例の金曜日午後の教授会には半年 にわたって出席できない。しかも院生は,毎週の休日が授業日となってしまう。テレビ 電話システムによる対面授業も,性能的に効率の良いものとはいえない。しかもこの対 面授業はサテライト校舎に来ないと受けられないので, 1時間も離れた勤務地からサテ ライト校舎に来るために,授業開始時間をずらす必要が生じるなと,不便な状況である。
また,日常の連絡も電話や電子メール等で取ることになるので,教員と学生が常に身近 な関係にあるキャンパスの院生と較べて,関係が希薄になりがちである。従って,キャ ンパスから離れた遠隔地に居住する院生及びキャンパスの教員の金銭的,時間的な負担 を軽減し,その教育の効率を改善し,院生と教員の円滑な関係を築くことのできるシス テムの構築が求められている。そのシステムの一翼として,e-Learningシステムの導入 が検討されるべきである。
3.1.2.e-Learningの概要
1980年代にパーソナルコンピュータ(パソコン)が量産されるようになって以来,このパ ソコンを教育に利用しようという試みが始まった。その利用の方法は,コンピュータを個 別学習の道具として利用しようというもので,Computer Aided Instruction 或いは Computer Assisted Instruction (CAI)と呼ばれていた。このCAIとしてのコンピュータの 利用方法の実際は,
① ドリル学習
② チュートリアル学習
③ シミュレーション学習
④ ゲーム学習
などと,これらが組み合わさったものであり,コンピュータディスプレイに向かい,対話 的なインターフェースを用いて個別学習をするというものであった。
また,コンピュータは,
① 自動計測機器
② データ処理機器
③ 視聴覚機器
としての機能を持ち,学習以外にも教育的な用途に利用されるようになった。特に,写真,
画像などを表示するOHP,スライド映写機の機能を持ち,さらに,音声,音楽を記録し再 生することができるテープレコーダー,ラジカセなどの機能,ビデオ機器が持つ動画再生 機能を併せ持った機器であるため,その総合的な視聴覚機器としての機能がクローズアッ プされ,プレゼンテーション,アニメーションなどの表現の手段としても重要な位置を占 めるようになった。
さらに,コンピュータは膨大なデータを処理,検索でき,シミュレーションをおこなう ことが出来るため,探求的な学習への利用(CAL, Computer-Aided Learning)が模索された。
これらのコンピュータの利用の際には,教材やデータはフロッピーディスクなどの外部メ ディアによって提供された。
この時期のCAI,CALとしてのコンピュータの利用に際しては,教師自らがコンピュータ やコンピュータプログラミングの知識を持ってなくてはならず,教育におけるコンピュー タの利用がなかなか進まない状況であった。
その後,コンピュータを利用した学習の一形態として,CBT(Computer-based Training)というものも現れた。これは一般に,学習者が対話的なインターフェースを 備えた学習用ソフトウェアを操作しながら自習形式で学習を進める方式を表すことが 多く,教材の提供はCD-ROMなどの外部メディアで行われることが多い。このCBTは,
企業などでの一定業務や資格取得のための学習に利用されるようになった。
さらに,1990年代のインターネットの一般化により,CBTのインターネット版と考え ることができるWBT(Web-based Training)に変わってきた。これは,教材の提供がイン ターネットを通じて,ブラウザで行われ,その学習内容もInternet Exploreなどのブラ ウザで表示されるというものである。この利点は,インターネットが利用できる環境な らどこからでも,利用が可能であり,教材やソフトウェアの変更や改良もサーバサイド で,迅速に行うことができる点にある。現在は,この形式の学習方式がWeb上でよく見 られる。
また,コンピュータの学習への利用と同時にコンピュータによる学習情報の管理も行 われるようになり,それはCMI(Computer-Managed Instruction)と呼ばれた。CMIでは,
学習の事前と事後の指導のためのテスト成績,ユーザーの学習結果の診断,学習にたい するアドバイス,ユーザーの記録の管理等々を目的としていた。
この, CMIはさらにその機能を増やし,LMS (Learning Management System)に発展 してきている。このLMSは,
・教師などによる教材・学習材の保管・蓄積,
・学習者への教材・学習材の適切な配信,
・学習者の学習履歴,
・小テスト・ドリル・試験問題の成績など,
を 統合的に管理するシステムとなっている。
このように現在のe-Learning システムは,コンピュータによる学習を実施する情報 システムであり,WBTのような教材・学習材を配信するチュートリアルなどの学習シス テムと学習管理システム(LSM)から構成されるコンピュータオンライン学習システム ということがいえる。
3.1.3.LMSの機能
LSMの諸機能は,次のように概観される。
① 教師などによる教材・学習材の作成,保管・蓄積機能。
プログラミングの知識がなくとも,Webベースでチュートリアル,ドリルなどの教材 の作成が可能であり,その保存することができる。さらにSCORM (Shareable Content
Object Reference Model)等の再利用可能な学習オブジェクトパッケージ(共有コンテ
ンツ)のインポートおよびエクスポートをサポートし,既に公開されている再利用可 能な学習オブジェクトをインポートして利用できるようになっている。
② 学習者への教材・学習材の適切な配信。
学習者は,Webブラウザを利用して,サーバに接続し,id,パスワードを入力して,シ ステムに入る。その後,目的のクラスのリンクをたどり,その初期画面から適宜学習 単元に進む。その画面では,解説を読んだり,適切なリンクをたどって,他のWebサ イトにある資料を閲覧したり,必要なファイルを自分のコンピュータにダウンロード することができる。また,ドリルなどを行い学習の結果を確認することもできる。レ ポートなどもその画面の中に書き込むことや,マルチメディアを含んだファイルとし てアップロードできる。
③ 学習者の学習履歴や小テスト・ドリル・試験問題の成績など
学習者がいつからいつまでシステムで学習をしたか,レポートをいつ提出したがな どの時間的なデータを記録することができる。また,各小テスト・ドリルなどの成績,
正答率などを保存することができ,オンラインでの試験も可能である。その際には,
各問いの回答時間を設定することによって,手元の資料を調べる時間を与えず回答さ せることもできる。
④ 学習者への対応機能。
学習者の質問等に答える機能がある。学習者は教師に対して質問をしたいときには,
その質問内容を質問欄に書き込むことにより,教師から回答をもらうことができる。
これは,WBTの場合,電子メールによるやり取りとなっていたが,e-Learningシステ ム内でできる。また,学習者全員に関係する質問回答は,そのクラスの学習者全員が 読み書きできる掲示板に載せることができる。普通,電子掲示板システムはWebを利 用する別なシステムとして存在するが,e-Learningシステムに電子掲示板システムが 含まれている場合が多い。最近はe-Learningシステム内でブログを作成したり,SNS としての機能をもつものも現れており,ポータルサイトとしての役割も持つようにな っている。
このように現在のe-Learningシステムは多機能化していて使い勝手が良くなってい るが,今のところ,eラーニング教材・学習材の内容は,実技を必要とするような科目 に向かないと考えられている。さらにe-Learningの長所,短所について考えてみる必要 がある。
学習者側の長所としては,
・ e-Learningの性質上,一定時間に一定場所に集まる必要がなく,Web環境にあれ ば,随意に学習できる。
・ 各自のペースや達成度に応じた個別学習ができる。
学習者側の短所としては,
・コンピュータに向かっているだけなので学習意欲の持続が難しい。
・ 質疑などにその場で回答がなされず,問題解決がすぐできない。
・ 教師やほかの学習者との交流がなされにくい。
などが挙げられる。
教師側の長所としては,
・ 成績管理などの自動化,集中化が可能である。
・ 教師が付ききりにならなくても学習者の学習ができる。
教師側の短所としては,
・教師は学習者の状況を直接見聞きできず,データからしか把握できない
・教材・学習材の作成に労力が必要である。
などが挙げられる。
3.1.4.e-Learningシステムの活用によるサテライト教室の授業改善の可能性
このような機能を持つe-Learningシステムを導入し,サテライト教室の授業に利用し た場合,どのような点で授業の改善が可能なのかを具体的に検討する。改善点としては 次のようなことが挙げられる。
1. e-Learningの長所として,一定時間に一定場所に集まる必要がなく,Web環境にあ れば,随意に学習できることが挙げられ,サテライト教室ばかりではなく,勤務校