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第六章

総括

 網膜色素変性症(RP)は罹患率および失明率の高い疾患である。日本人のRP患者では原因 となる遺伝子変異が特定されていないことが多く、未だ同定されていない原因遺伝子が多数存 在することが推察された。そのため、本研究はRPの新規原因遺伝子を探索することを目的と

して開始した。この研究を始めた頃は、ちょうどヒトゲノムの解読がほぼ終了し、ポストシー ケンスとしてトランスクリプトームやプロテオームの解析が盛んに行なわれるようになった時 期である。ゲノムやトランスクリプトーム等の遺伝子解析において、一番の目的は疾患の原因 究明および創薬といった疾患関連研究であり、遺伝性の疾患の原因となる変異を同定すること は、治療法への開発にっながることが期待される。

 ほとんどの網膜変性疾患において主に損傷を受けるのは光を認識する視細胞であることから、

これまでの研究は視細胞で発現する遺伝子を中心に行われてきた。しかし原因となるのは視細 胞に発現する遺伝子ばかりではない。網膜には多くの種類の細胞が存在し、網膜色素上皮細胞

(RPE)やグリア細胞等視細胞以外に発現する遺伝子が原因となっている場合もある。そこで本 研究では特に視細胞の機能維持に重要なRPEに着目し、新規の網膜疾患の原因遺伝子探索を行

なった。

 第一章では疾患研究におけるヒトゲノム解析およびその後のトランスクリプトーム解析の重 要性について述べた。さらに網膜におけるRPEの機能について説明し、視機能を維持するため に欠かすことのできない細胞であることを示した。よって、網膜変性疾患の原因遺伝子を探索 するためにRPEに着目し、探索法として候補遺伝子アプローチを採用した。

 第二章では網膜疾患の原因遺伝子を探索するための材料として使用したヒト網膜色素上皮細 胞株ARPE−19の完全長cDNAライブラリーの網羅的な解析について述べた。網膜変性疾患の原 因遺伝子はすでに多数取得されていることから、既知の遺伝子を調べるのではなく、新規の遺 伝子を探索することによりRPEに特異性を持っ遺伝子の取得を目指した。先述したようにトラ

ンスクリプトームの解析は盛んに行われており、その中で新規の遺伝子を取得するために使用 するライブラリーは高品質でなければならない。ベクターキャッピング法で作製したARPE−19 細胞のcDNAライブラリーは複雑度が高く、長鎖の遺伝子、希少な遺伝子でも完全長で取得す

ることを可能にし、データベースに登録されていない遺伝子を多数取得することに成功した。

 第三章では、ARPE−19細胞の発現プロフィール解析からRPEに特異的または優位に発現する 遺伝子をNCBIデータベースおよびRT−PCRによる細胞特異性解析から選抜した。 RPEに優位 に発現する遺伝子についてアミノ酸配列の解析およびGFP融合タンパク質を用いた局在解析 からarylsulfatase I(ARSI)をコードする遺伝子を取得した。この遺伝子は新規のスルファター ゼの1っで、これまでに活性の検出がされていない機能未知のタンパク質である。しかし、こ の遺伝子はarylsulfatase Bやasylfulfatase Aと高い類似性を示した。これらの既知のスルファタ ーゼはリソソーム蓄積症の原因遺伝子であり、RP様の症状を併発することがある。よって、

局在解析の結果、ARSIはリソソームタンパク質ではなく、ERに局在するタンパク質であるこ とが示された。さらにスルファターゼの活性化因子であるSUMFlとの共発現により、培養液 中に分泌されたARSIがアリルスルファターゼ活性を有することを証明した。これらの結果か

ら、ARSIは中性付近に至適pHを有する分泌型スルファターゼであることを示した。 ESTデー タベースに基づく発現プロフィール解析ではARSIは胚細胞に多く発現するため、胚発生に関 与した機能を有している可能性も示唆された。

 第五章では国立障害者リハビリテーションセンターの眼科に来院したRP患者68名のゲノム DNAを使用し、 ARSI遺伝子領域の変異探索を行なった。本研究で解析した患者の中には変異

もしくはアミノ酸の置換を招くような一塩基多型は見いだされなかった。

 本研究は完全長cDNAライブラリーを作製することにより、ARPE−19細胞に発現する全遺伝 子の取得を試みた。細胞に発現する全ての遺伝子を収集することは、その細胞における遺伝子 発現の制御機構を解明するために重要なことであり、本研究で示したARPE−19細胞の発現プロ フィールやcDNAは様々な解析に使用できると考えられる。まず、ポジショナルキャンディデ ート法による遺伝子探索に利用できる。これは本研究のように疾患遺伝子の探索に用いるだけ でなく、RPEが持っている機能を調節している遺伝子を新たに探索するのにも適用できる。ま た、これらの遺伝子の情報を元にDNAチップ等を作製し、 RPEの発現遺伝子の大規模な発現 解析に使用したり、cDNAを遺伝子およびタンパク質の相互作用解析や機能解析に用いること もできる。さらにゲノム情報と組み合わせれば、精密なプロモーター解析が可能となる。つま り、これらのARPE−19細胞から得られたcDNAの情報を利用すれば、 RPEにおける遺伝子発 現の制御機構やネットワーク解析が可能となることが期待できる。

 当研究室では日本人RP患者68名を対象に様々な既知RP原因遺伝子の変異探索を行ってき た。しかしRPの原因遺伝子はすでに45種以上報告されているにも関わらず、それら既知原因 遺伝子に変異が見つかったのはほんの数名だけである。それを考慮すると、今回ARSIの変異 探索を行うにあたり68名では解析数として不十分であったと言える。ARSIはスルファターゼ 活性を有し、かつRPEに優位に発現する遺伝子であることから、疾患の原因となる可能性は高 い。そのため、今後も変異探索の継続が望まれる。また本研究は人工の基質を用いたARSIの 酵素活性の検出に成功したが、まだ実際の基質を特定するという課題が残っている。ARSIが 細胞内でどのような役割を担っているのかを解明し、また疾患との関連性を明らかにするため

にも、ARSIが生体内で実際に分解する基質を明らかにしなければならない。

 本研究はRPEに発現する遺伝子の中から、RPEに優位に発現する新規の遺伝子のARSIを取 得し、代表的な網膜変性疾患であるRPの患者の変異探索を行った。この研究において、 ARSI

とmpの関連性は見いだせなかったが、 ARSIが中性付近に至適pHを有するアリルスルファタ ーゼであることを証明した。本研究ではベクターキャッピング法を用いて、ARPE−19細胞に発 現する遺伝子約4,500種類を完全長cDNAとして収集することに成功し、これらの中にデータ ベースに登録されていない遺伝子が多数含まれていることを示した。従って、ARSIのような

機能を持った遺伝子がまだ解析されずに残存していると考えられ、本方法による新規遺伝子の 取得および疾患関連遺伝子の探索は、疾患研究や基礎分子生物学にとって有効な方法であると 考えられる。

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