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VGLUT2 の質量分析

ドキュメント内 博士論文 (ページ 32-44)

第 3 章 結果

2. VGLUT2 の質量分析

VGLUT2 タンパク質を検出するために、マトリックスのシナピン酸を用いて

MALDI-TOF/MSにより解析した。精製したVGLUT2をトリクロロ酢酸沈殿によ

り、界面活性剤を除去し、FAPH bufferにより再懸濁した。1:4の割合で飽和シ ナピン酸溶液と混合し、測定した。その結果、m/zが93541.338 ± 10.8に単一の

MALDIマススペクトルを検出した(図9A)。これはプロトン化したモノマーと

ほぼ同値であり、理論値が93501.800に対して、その誤差は-0.04%であった。

以上より、検出したピークはプロトン化したVGLUT2のモノマーであることが 示唆された。これはVGLUT2を単一で検出したウエスタンブロット解析の結果 と同様である。

次に、精製した VGLUT2 を還元アルキル化後、溶液内トリプシン消化し、

MALDI-TOF/MSにより解析した。コントロールとして可溶性タンパク質である

BSAのトリプシン消化物を用いた。トリプシンは、Arg残基と Lys 残基のC 末 端側のペプチド結合を特異的に切断する消化酵素である。測定したマススペク トルをもとに、MASCOTエンジンを用いてデータベース検索し、タンパク質を 特定した(PMF 解析)。タンパク質同定の有意性は以下の計算に基づいている

(Mascot Serverチュートリアル2.5)。

マススペクトルの質量データのペプチドに対する一致は確率事象として取り 扱われ、質量データがペプチドにマッチしたときの確率 P 値は先験的に決定さ れる。確率P値は小さいため、式(1)によりスコアに変換される。検索に使用 するデータベースのタンパク質の総エントリー数Nを用いて式(2)により閾値 スコアを算出する。スコアが算出された閾値スコアよりも大きい場合、検索によ りヒットしたタンパク質は有意(P < 0.05)であると判定される。

スコア = -10×log(P) ・・・(1)

閾値スコア = -10×log(1/N×0.05) ・・・(2)

まず、ペプチド断片を調製する段階において、トリプシン消化前にのみ TCA 沈殿およびその後の有機溶媒による洗浄作業をした。PMF 解析の結果、マスス ペクトルから 21 個の VGLUT2 由来のペプチド断片を検出し(表 1)、55%のア ミノ酸残基をカバーしていた(図 10、青字表記)。MASCOT スコアは閾値スコ

アよりも大きく135であり、測定したタンパク質は、有意にRattus novegicus(ラ ット)VGLUT2(gi|16758166)であると示していた(P < 0.05)。PMF解析により ヒットしたタンパク質のうち、生物種をRattus novegicusに設定した場合、Rattus novegicus(ラット)krueppel-like factor 9(gi|17105368)を含め、複数のタンパク 質を検出したが、いずれも閾値スコア未満であった。生物種をAll entries(全て の生物種)に設定した場合、生物種が異なるVGLUT2のみ有意に検出された。

一方で、cDNA の N 末端と C 末端に付加した大腸菌由来のヘリックスタンパ ク質であるYbeLとYaiNは検出されなかった。

次に、還元アルキル化前にTCA沈殿とその後の洗浄作業を追加し、洗浄作業 を合計5回に変更した。PMF解析の結果、マススペクトルから33個のVGLUT2 由来のペプチド断片を検出し(図9B、矢印)、70%のアミノ酸残基をカバーした

(表2)。検出したペプチド断片のうち、10 個のペプチド断片は、1か所の未切 断部位を含んでいた。同様に、MASCOT スコアは閾値スコアよりも大きく 237 であり、測定したタンパク質は、有意に Rattus novegicus(ラット)VGLUT2

(gi|16758166)であると示していた(P < 0.05)。PMF解析によりヒットしたタン パク質のうち、生物種をRattus novegicusに設定した場合、Rattus novegicus(ラ ット)centaurin alpha(gi|1435195)をはじめ、複数のタンパク質を検出したが、

いずれも閾値スコア未満であった。生物種をAll entriesに設定した場合、生物種

が異なる VGLUT2 のみ有意に検出された。一方で、大腸菌由来のヘリックス

タンパク質であるYbeLとYaiNは検出されなかった。

また、MS/MSスペクトルからアミノ酸配列を同定するMIS解析により、5個 のペプチド断片の全配列を同定し、4個のペプチド断片の配列を部分的に同定し た(表3)。したがって、PMF解析により検出したタンパク質はRattus novegicus

(ラット)VGLUT2(gi|16758166)であることが示された。これらのことから、

TCA 沈殿及び、洗浄作業を増やすことによりペプチド断片の検出率が向上する ことが示唆された。この結果から、ペプチド断片の調製段階において、洗浄作業 を合計5回実施することを標準方法とした。

さらに、ペプチドの検出率の向上を目指して、液体クロマトグラフィーを用い て、ペプチド断片をLC分画し、MSとMS/MSにより解析した。その結果、LC/MS により87%のアミノ酸残基を検出し(表4)、LC/MS/MSにより、21個のVGLUT2 由来のペプチド断片の配列を同定した(表 3)。以上の結果から、MS と LC/MS

を組み合わせることにより、VGLUT2の 582アミノ酸残基中 510 のアミノ酸残 基、すなわち、88%のアミノ酸残基をカバーすることができた(図10、+および

-表記)。

コントロールの BSA を MS および LC/MS により検出した結果、測定したタ ンパク質は、有意にBos taurus(ウシ)serum albumin precursor(gi|30794280)で あると示していた(P < 0.05)。得られたカバー率は、それぞれ MS は 76%(表 5)、LC/MSは87%(表6)であり、MSとLC/MSを組み合わせることにより93%

のアミノ酸残基をカバーしていることを確認した(図11、+および-表記)。 以上のことから、VGLUT2はイオン化が容易と言われている可溶性タンパク 質と同程度のカバー率で検出することが可能であることが示唆された。

ドキュメント内 博士論文 (ページ 32-44)

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