第 3 章 結果
4. その他の小胞型神経伝達物質トランスポーターの解析
アよりも大きく 108 および 138 であり、測定したタンパク質は、有意に Mus musculus(マウス)VEAT(gi|27370146)、Homo sapiens(ヒト)VAChT(gi|507744)
であると示した(P < 0.05)。PMF 解析によりヒットしたタンパク質のうち、閾 値スコア未満で示されたタンパク質は、VEATにおいては、Mus musculus(マウ ス)PREDICTED: dynein heavy chain 17, axonemal isoform X2(gi|568975683)およ びMus musculus(マウス)PREDICTED: dynein heavy chain 17, axonemal isoform X1
(gi|568975681)であり、VAChTにおいては、Homo sapiens(ヒト)immunoglobulin heavy chain variable region, partial(gi|519672022)であった。また、生物種をAll
entriesに設定した場合、生物種が異なるVEATおよびVAChTのみ有意に検出さ
れた。一方で、大腸菌由来のヘリックスタンパク質である YbeL と YaiN は検 出されなかった。
また、MIS解析により、VEATは1つのペプチド断片の全配列を同定し、5つ のペプチド断片の配列を部分的に同定した(表9)。VAChTは7つのペプチド断 片の配列を部分的に同定した(表10)。したがって、PMF解析により検出したタ ンパク質はそれぞれMus musculus(マウス)VEAT(gi|27370146)、Homo sapiens
(ヒト)VAChT(gi|507744)であることが示された。
さらに、LC/MSによりVEATは52%(表11)、VAChTは57%(表12)のアミ ノ酸残基を検出し、LC/MS/MSにより、12個のVEAT由来のペプチド断片(表
9)および8個のVAChT由来のペプチド断片を同定した(表10)。以上の結果か
ら MS と LC/MS を組み合わせることにより、VEAT および VAChTはそれぞれ
58%(図 14A、+および-表記)、64%のアミノ酸残基を検出した(図 14B、+お
よび-表記)。
VGLUT2のトリプシン消化物の質量分析は、MSとLC/MSを組み合わせるこ
とで88%のカバー率を得ることができた。これに比べると、VEATおよびVAChT
のトリプシン消化物は十分に検出できているとはいえない。VGLUT2 と同程度
までVEATとVAChTのカバー率を向上させるために、トリプシン以外の消化酵
素であるキモトリプシンと Asp-N を検討した。キモトリプシンは芳香族アミノ 酸(Tyr残基、Phe残基、Trp 残基)とLeu残基のC末端を選択的に加水分解す る酵素であり、切断箇所が多いため単独で用いた。また、Asp-N は Asp 残基と Cys 残基の N 末端側のペプチド結合を加水分解する酵素であり、切断箇所が少 ないため、トリプシン消化後に追加で酵素処理した(トリプシン+ Asp-N)。
キモトリプシン消化物のPMF解析により、VEATは40個のペプチド断片を検 出した。このうち、16個のペプチド断片は、1 か所の未切断部位を含み、16 個 のペプチド断片は、2か所の未切断部位を含んでいた(表13)。しかし、MIS解 析によるアミノ酸配列の特定には至らなかった(表 14)。一方で、VAChT のキ モトリプシン消化物は63個のペプチド断片を検出した。このうち、20個のペプ チド断片は、1か所の未切断部位を含み、23個のペプチド断片は、2か所の未切 断部位を含んでいた(表15)。MIS解析により、3つのペプチド断片の配列を部 分的に同定した(表16)。
トリプシン+ AspN消化物のPMF解析により、VEATは33個のペプチド断片 を検出した。このうち、13個のペプチド断片は、1か所の未切断部位を含んでい た(表13)。MIS解析により、3つのペプチド断片の全配列を同定し、4 つのペ プチド断片の配列を部分的に同定した(表14)。一方で、VAChTは26のペプチ ド断片を検出した。このうち、12のペプチド断片は、1か所の未切断部位を含ん でいた(表15)。MIS解析により、8つのペプチド断片の配列を部分的に同定し た(表16)。また、どちらのトランスポーターにおいても、キモトリプシン、ト リプシン+ AspN処理サンプルのPMF解析では大腸菌由来のヘリックスタンパ ク質であるYbeLとYaiNは検出されなかった。
したがって、トリプシン消化したMSとLC/MSの結果とキモトリプシン消化 とトリプシン+ AspN消化したMSの結果を組み合わせることにより、VEAT は 495アミノ酸残基中447のアミノ酸残基、すなわち、90%のアミノ酸残基をカバ ーすることができた(図14A)。VAChTは532アミノ酸残基中484のアミノ酸残 基、すなわち、91%のアミノ酸残基をカバーした(図14B)。
以上より、VGLUT2以外のトランスポーターにおいても、VGLUT2 と同様の
方法で精製し、かつ、前述した溶液内消化法により調製することにより、可溶性 タンパク質と同程度の約 90%のカバー率でトランスポーター由来のペプチド断 片を検出することが可能であることが示唆された(表17)。