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CS

x

US CS

A

Figure 1-5.修正版RWモデルによる逆行阻止(左側)と隠蔽解除(右側)の予測.左

側はフェイズ2CSA USの連合が増強すると,そこにあるはずのCSXUSの連合 が減弱していく様子を示している.また,右側はフェイズ 2 CSA US の連合が減 弱すると,そこにあるはずの CSXUSの連合が増強していく様子を示している.

また,その他の著名な連合形成モデルとして,Wagner(1981)の SOPモデル

やMiller and Matzel(1988)のコンパレータ仮説がある。これらの考えは Rescorla

and Wanger(1972)よりも複雑であるが,より広範囲の現象を説明可能であり,

その後の理論展開に大きな展開を与えた。なお,前者の修正にはDickinson and Burke(1996)が,後者の拡張としては Denniston, Savastano, and Miller(2001)

やStout and Miller(2007)があり,回顧的再評価を含む様々な現象を説明する

ために用いられている。次に修正 SOPモデルの概要について述べる。

(2)修正SOPモデル Wagner(1981)のSOP モデルでは,古典的条件づけ の諸現象について「記憶」の観点から予測を行う。このモデルでは,記憶組織 を記憶ノードによって構成されるグラフ構造と想定しており,記憶ノードは方 向性を持った連合リンクによって互いに結合しており,それぞれが環境事象に 対応していると考える。SOP モデルでは,記憶を 3 段階に分けて捉えている。

A1状態(第 1状態),A2状態(第 2状態),I状態(不活性状態)である(Figure 1-6左)。A1状態は活発な短期記憶,A2状態は比較的不活発な短期記憶,I状 態は長期記憶に相当し,記憶ノードの個々の要素はこのいずれかの状態にある。

記憶ノードは刺激の呈示で活性化し,時間経過により徐々に不活性化していく。

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1

A

2

I

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US CS

A

CS

x

US CS

A

Figure 1-6SOPモデルの模式図.左側はノードの活性状態の変化を,中央は興奮連合

の形成を,右側は制止連合の形成をそれぞれ示す.これらの仮定により,獲得(中央)

や消去(右側)による条件反応の変化が予測される.

たとえば,一般的な古典的条件づけの獲得の手続きに関して,このモデルで は条件刺激が呈示されたことでそれに対応するノードが I 状態から A1 状態に 活性化し,無条件刺激が呈示されたことで無条件刺激に対応するノードも A1 状態に活性化すると考える。また,このように二つのノードが A1 状態になる と,それらの間に興奮連合が形成されると考える。一度連合が形成されると,

ある刺激の呈示はもう一方の刺激のノードを A2 状態に自動的に移行させるた め,消去のように条件刺激のノードが A1 状態にあり,無条件刺激のノードが A2状態にある場合は制止連合が新たに形成されることになる(Figure 1-6右,

24頁)。その後,興奮と制止連合の総和により条件反応の多寡が決定される。

ただし,このモデルではある刺激がその他の刺激に対してもつ連合強度が変 化するのは,その要素がA1状態に活性化された場合のみであると仮定している ため,ある刺激が呈示されておらずI状態にあるか,あるいはA2状態に活性化 されている場合は,その刺激が他の刺激に持つ連合強度が変化することはない 。 このことは,SOPモデルでは回顧的再評価の諸現象を予測できないことを意味 している。これはRescorla-Wagnerモデルでも指摘されていた問題であった。

この問題を解決するために,Dickinson and Burke(1996)はSOPに一つの修正 を加えた。それはある刺激がA2状態に活性化されている場合には,その他の刺 激がその刺激に対してもっている連合強度を変化させるという仮定である。た とえば,ある刺激が呈示されておらず条件刺激のノードがA2状態にあったとし ても,無条件刺激のノードがA2状態にあれば興奮連合が,A1状態にあれば制止 連合が形成されると考える。すなわち,このモデルでは条件刺激のノードがA1 状態にあるかA2状態にあるかに関わらず(I状態は除く),無条件刺激のノー ドの状態と一致していれば興奮連合が,不一致であれば制止連合が形成される と考える。このような仮定を採用することにより,逆行阻止(Figure 1-7左,26 頁)や隠蔽解除(Figure 1-7右,26頁)の現象を説明することができる。

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US CS

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US CS

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Figure 1-7.修正版 SOP モデルによる逆行阻止(左側)と隠蔽解除(右側)の予測.

左側はフェイズ2の経験により CSAUSA1状態に移行すると,そこにあるはずの CSX A2状態に移行し,US との間に制止連合を形成することを示す.また, 右側は フェイズ 2 の経験により CSA A1状態に,US A2状態に移行すると,そこにある はずのCSXA2状態に移行し,USとの間に興奮連合を形成することを示す.

(3)コンパレータ仮説 Rescorla-Wanger モデルや SOP モデルをはじめと する多くの連合学習理論が,条件づけの獲得過程を予測するのに対し,Miller and Matzel(1988)のコンパレータ仮説は,条件づけによって獲得された知識 の遂行過程を予測する。Figure 1-8左(27 頁)はコンパレータ仮説の模式図を 示す。この仮説では条件反応を出力するためには,三つの連合リンクの強さを 考慮する必要がある。Link 1はターゲット刺激と無条件刺激の連合リンクであ る。ここでの比較刺激とはターゲット刺激(i.e., CSX)とは別に条件づけ訓練時 に存在する刺激のことでさす(i.e., CSA)。この図によると,条件反応が出力さ

れるのは Link 1が他の二つのリンクよりも相対的に強いためと考えられる。

たとえば,逆行阻止の事態では,ターゲット刺激は条件刺激 X,比較刺激は 条件刺激 Aとなる(Figure 1-9上段,27頁)。フェイズ1で複合条件づけを行 うことにより,Link 1,Link 2,Link3が形成されるものの,フェイズ2 で比較 刺激のみが無条件刺激と対呈示されることによって,Link 3の強さは Link 1に 比べると強くなることが想定される。つまり,相対的にLink 1が弱いリンクと なるため,ターゲット刺激に対するCRは出力されないことになる。

target CS

comparator

US

CR

US comparison Link 1

Link 2

Link 3

Figure 1-8.コンパレータの概念図(Miller & Matzel, 1988).四角はテスト刺激や測定 された反応を,楕円は刺激の表象を示す. テスト期で呈示されたターゲット刺激 CSX

US表象の連合(Link 1)は,要素間連合(Link 2)がある競合子CSA US表象の 連合(Link3)と比較され,それらより強ければ条件反応が出力されることになる.

CSX

CSA

US

CR

US comparison Link 1

Link 2

Link 3

CSX

CSA

US

CR

US comparison Link 1

Link 2

Link 3

Figure 1-9.コンパレータによる逆行阻止(上段)と隠蔽解除(下段)の予測.上段で CSXに条件反応が出力されず,下段では出力される過程が示されている.

また,隠蔽解除の場合はフェイズ1で複合条件づけを行うことにより,Link 1,

Link 2,Link3が形成されるが,フェイズ2で比較刺激のみが単独で呈示される

ことにより,Link 3の強さはLink 1に比べると弱くなることが想定される。その ため,相対的にLink 1が強いリンクとなるため,ターゲット刺激に対するCRが 出力されることになる(Figure 1-9下段,27頁)。逆行阻止や隠蔽解除に関して,

獲得過程を予測・説明する修正Rescorla-Wangerモデルや修正SOPモデルでは,

ターゲット刺激(i.e., CSX)はほとんどCRを喚起しない,「学習の失敗」と解 釈するのに対して,コンパレータ仮説ではターゲット刺激(i.e., CSX)において 条件反応が喚起されないのは,「学習されてはいるが,条件反応として上手く 遂行(出力)されなかった」と解釈する。つまり,コンパレータ仮説ではそれ ぞれの刺激について学習はなされていると考える点にその最大の特徴がある。

(4)連合形成モデルの特徴

上述のように,連合形成モデルには知識の入力と出力に当てたものの2種類 があり,各々がユニークな予測を行う。ただし,連合形成モデルの多くは動物 の古典的条件づけを対象としたものであり,本来はヒトの随伴性判断など高次 認知の問題を説明するための枠組みではない。しかしながら,手がかりを条件 刺激,結果を無条件刺激,評定値を条件反応の類似とみなした場合,その考え を随伴性判断に援用することができる(e.g., Van Hamme & Wasserman, 1994)。

たとえば,Dickinson and Burke(1996)は形成された連合は「AはBである」

という命題,判断と等価であることを示唆している。これらの考えはヒトと動 物の学習研究に架け橋を提供する他,一見複雑に感じられる知識獲得の過程を 節約的に説明する点で優れており,従来の学習研究に大きな発展をもたらした。

ただし,この立場では連合形成のみで連合学習の諸現象を説明するため,後述 の時間順序や因果構造(causal structure)に関する諸問題を解決できない。因果

推論など高次認知の研究で見出されてきた多くの実験事実を説明するためには,

この立場をさらに発展させていく必要がある。

第3項 因果帰納モデル

因果帰納モデルの基本発想は,ドイツの哲学者Kant(1781/1979)の因果性を めぐる省察に影響を受けている。Kantは観念連合に関して経験を超越するアプ リオリな知識を重要視し,因果性はその好例であるとした。彼によると,人間 が因果に関する信念を獲得するためには経験が重要である一方で,その対象と なる事象のどちらが原因(cause)で,どちらが結果(effect)であるかの事前 知識が必要であり,その多くは生得的なものとされる。このような考えは経験 論と生得論を統合するという意味でも重要であるが,人間の認識そのものは 人間が認識できる範囲の外にその起源があるという「コペルニクス的転回」を もたらした点でも重視される。

ただし,一般にこのようなメカニズムはヒトで特有にみられる直観的な過程 だと考えられており,因果推論の方法とも関係が深い。表象計算モデルではこ のような考えを承継し,刺激入力を計算することで反応出力を導き出すことに 重きを置く,規範的(normative)な立場をとることが多い。以下ではその好例 である因果モデル理論とPower PCモデルについて解説する。

(1)因果モデル理論 Waldmann and Holyoak(1992)は,帰納推論に関する Cheng and Novick(1990, 1992)の確率対比モデル(probabilistic contrast model:

PCM)を発展させ,因果モデル理論(causal model theory)を提唱した12。その

特徴は以下で述べる4点に集約される。

12 因 果 モ デ ル 理論 の 内容 やそ の 適 用範 囲 に つい て は,Waldmann and Holyoak(1992) 以 降,

いくつかの変遷を経ている(e.g., Waldmann, 2000, 2001; Waldmann & Holyoak, 1997; Waldmann &

Walker, 2005)。 こ こ で は 随 伴 性 判 断 の 研 究 に 変 革 を も た ら し た , オ リ ジ ナ ル の 考 え に つ い て 紹介する。

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