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Exp. 6 (Group C, Outcome Intensity = 10/20) Exp. 7 (Group RC, Outcome Intensity = 10/20) Exp. 8 (Group C, Outcome Intensity = 20/20) Exp. 9 (Group RC, Outcome Intensity = 20/20) Exp. 10 (Group C, Outcome Intensity = non-display)

Figure 3-11. 各実験における評定試行 2と評定試行 1の差分(絶対値).1stBBC+群

T1,1stUOV C-群の T1,2ndBB C-群の T2,2ndUOV C+群の T2と対応 する.エラーバーは標準誤差を示す.

p < .05),実験と手がかりの交互作用(F = 3.33, df = 4/70, p < .05),群と手がかり

の交互作用がみられた(F =4.38, df = 4/70, p < .05)。手がかりの主効果(F ≤ 2.78, df = 1/70,),実験と群の交互作用(F = 1.15, df = 4/70),実験と群と手がかりの 2 次の交互作用(F = 1.89, df = 4/70)はみられなかった。実験の主効果についてRyan 法を用いた多重比較を行ったところ,実験10とそれ以外の全ての組み合わせで 有意な差がみられた。これらの事実は,結果の強度を明示しなければ 1 次と 2 次の回顧的再評価は生じないこと,および結果の強度や試行の呈示順序の操作 が2次の回顧的再評価に影響しなかったことを示唆している。

第4 項 考察

実験10では実験6のデザインを変更し,2次の回顧的再評価の検討を行った。

具体的には,結果の強度を明示せずに実験を行った。その結果,2 次隠蔽解除 と2次逆行阻止はともに観察されなかった。また,実験10とその他の実験結果 を比較したところ,結果の強度を明示しなければ2次の回顧的再評価は生じな いことが確認された。ただし,この比較では結果の強度を操作したことと試行 の呈示順序を操作したことの影響はみられなかった。総合論議では,これらの 実験結果を要約し,仮説の是非と今後の展望について述べる22

第7節 総合論議

第1 項 結果の要約

研究Ⅱでは随伴性判断の事態を用いて,結果の強度を操作することが2次の 回顧的再評価に影響を与えるか否かを検討した。実験6と実験 7では先行研究 と同様の刺激パラメーターを用いて,2 次の回顧的再評価がみられるか否かを

22 本研究の実験67を除く三つの実験は,それぞれ異なる時期に行われていたため,実験間 で比較を行うことは望ましいことではない。試行の呈示順序や結果の強度の効果を比較するた めにはこれらを群間で操作する必要がある。本研究ではこれらの要因の影響を探るため,探索 的に実験間比較を行った。

検証した。実験8と実験9 では結果の強度を大きくすることで,また,実験10 では結果の強度を明示しないことで,2 次の回顧的再評価が減弱するか否かを 検証した。その結果,実験 6 と実験 8 では,CT1+試行と T1T2+試行を含む二 つのフェイズの後に,T2と結果の随伴性の評定がC+試行を含む第 3フェイズ が伴うことで高くなること(2次隠蔽解除),およびC-試行を含む第3 フェイ ズが伴うことで低くなること(2 次逆行阻止)が示された。これらの知見は回 顧的再評価が連鎖的に生じたことを示しており,結果の強度を高めたことが 2 次の回顧的再評価に影響しなかったことを示唆していた。また,実験 7と実験 9では,実験 6の最初の二つのフェイズ(CT1+試行と T1T2+試行)の順序を入 れ替えると2次逆行阻止は生じず,2次隠蔽解除のみが生じることが示された。

これらの知見は,結果の強度を高めたことが RC-群でのみ 2 次の回顧的再評 価に影響したことを示唆していた。そして実験 10では,実験6から 9までで明 示してきた結果の強度を示すメッセージを除去して,実験 6と同様の実験を行 った。その結果,実験10では2次逆行阻止と2次隠蔽解除は再現されなかった。

この事実は研究Ⅱで用いた実験課題では,結果の強度を明示しなければ 2次の 回顧的再評価は生じないことを示していた。これらの事実は先行研究であるDe Houwer and Beckers(2002c)にない新しい知見であった。

また,実験間比較において実験 10 と全ての実験の間に回顧的再評価の効果 に差がみられたこと。このことは結果の強度を明示しなければ 2次の回顧的再 評価は生じないとことを支持しており,PowerPCモデル(Cheng, 1997)や命題 推論モデル(De Houwer, 2009a)の考えと一致していた。ただし,実験8や実

験 9 では RC-群を除く全ての群で 2 次の回顧的再評価がみられ,それらの効

果に差はみられなかった。このことから,これらのモデルでは研究Ⅱの実験6,

実験7 と実験10の結果を説明できるが,実験 8と実験9の結果を説明できない ことが示された。

第2 項 仮説の是非

研究Ⅱの実験10より,結果の強度を明示しなければ,2次の回顧的再評価は 減弱することが明らかとなった。この事実は拡張コンパレータ仮説というより は,むしろ確率対比モデルや Power PC モデルをはじめとする推論モデルを支 持していると考えられる。ただし,実験 8と実験9で結果の強度の操作が 2次 の回顧的再評価に部分的にしか作用しなかったという事実は,これらの考えで は説明することができなかった。なぜなら,実験8や実験9 で行った結果の最 大 性 の 操 作 (i.e., 20/20) は 結 果 の 強 度 を 最 大 ま で 高 め て い る と い う 点 で , Vandorpe et al.(2007)が行った最大性の操作(i.e., 10/10)と同等とみなせるた め,これらの実験で2次の回顧的再評価がみられたという事実はこれらの推論 モデルの予測とは一致しないからである。

しかしながら,実験8や実験9での報告は,結果の強度の操作が2次の回顧 的再評価に影響を与えないということをただちに結論づける訳ではない。なぜ なら,De Houwer and Beckers(2002b, 2002c)および研究Ⅱで用いた結果の強度 は,最大下の場合で“10/20”,最大の場合では“20/20”と明示されたのに対し,

Vandorpe et al.(2007)などの過去研究では最大下の場合では“10/20”,最大の

場合では“10/10”という異なるメッセージが明示されていたためである。すな わち,Vandorpe et al.(2007)などの過去研究では,結果の規模を示すメッセー ジの分母を小さくすることで結果の最大性を操作していたのに対し,本研究で は分子を大きくすることで結果の強度を大きくしていた。このような結果の強 度の操作方法の違いが,実験8 や実験9に影響を与えていた可能性も否定でき ず,研究Ⅱで行った結果の強度の操作が妥当であったか否かについては,検討 の余地があると考えられる。

もしも,実験8や実験9の操作が妥当でなかったと仮定すれば,研究Ⅱで得 られた知見は確率対比モデルや Power PC モデルなどの認知的な立場を支持す

ることになり,単一理論による包括的な理論を行うことが可能になる。結果の 強度の問題についてはさらなる検証が必要である。研究Ⅱで得た知見の全てを 包括的に説明することは現時点では困難であるが,さらなる実験事実の収集が その作業を可能にすることは間違いない。本研究の対象となった 2次の回顧的 再評価は学習理論を査定するツールとして,有用な現象であると考えられる。

第3 項 今後の展望

ところで,フェイズ1が終了した評定試行1の段階では研究Ⅱの全ての実験 で T1+の評定値が C と T2よりも高くなっている。この傾向は先行研究である De Houwer and Beckers(2002c)でもみられている。このような現象は確率対比

モデルや Power PC モデルというよりは,むしろ拡張コンパレータ仮説など連

合形成の考えとよく適合しているようにみえる。なぜなら,確率対比モデルや

Power PCモデルでは,確率の対比にもとづいて推論が行われることが仮定され

ているため(Figure 3-4, 121頁),確率の計算に用いる頻度の情報が大きいか否 か と い う サ ン プ ル サ イ ズ の 問 題 は 考 慮 さ れ な い た め で あ る ( 反 論 と し て Liljeholm & Cheng, 2009)。一方,拡張コンパレータ仮説では頻度の法則にした がって,それぞれの手がかりと結果が連合すると考えるため,フェイズ1の時 点で最も多く結果と対呈示された T1の評価が,C や T2よりも高くなることを 容易に説明する(Figure 3-2,115頁)。このように,本研究の結果については巨 視的には確率対比モデルや PowerPC モデルによる解釈が妥当だと思われるが,

微視的には拡張コンパレータ仮説の考えでよりよく説明できる部分もあること になる。研究Ⅱの実験 6 と実験 7,実験 8 と実験9 でほぼ同様の結果が得られ たという事実は,試行の呈示順序が2次の回顧的再評価に影響しないという点 で,推論モデルだけでなく拡張コンパレータ仮説の予測をも支持している。拡 張コンパレータ仮説によるシミュレーションの実施は今後の課題である。

動物の古典的条件づけ研究(e.g., Miller & Matute, 1996; Urushihara & Miller, 2010)では,感性予備条件づけなどの手続きを用いて,結果の生物学的重要性 を小さくしなければ逆行阻止の現象は生じないことが指摘されている。本研究 で行った結果の強度の操作,あるいはVandorpe et al.(2007)で行った結果の最 大性の操作は,動物の条件づけ事態でなされてきた手続きの類似としてみなす ことができるかもしれない。ただし,研究Ⅱにおいては結果の強度を明示する ことが2次の回顧的再評価に影響を与えることが示された一方,強度の変化に よる影響はみられなかった。今後の展望として,結果の強度や最大性の効果を 再検討し,その一般性について検証する必要がある。また,我々の日常生活で は“10/20”のように最大値が示されることは少なく,むしろ結果の強度のみが 示されることが多いようにも思われる。こうした日常場面の認知や外的妥当性 の問題についても,今後は検討していく必要がある。

かつてイギリス経験主義の祖であるLocke(1690/1968)は,著書『人間悟性 論』の中で,「いかなる人の知識も,その人の経験を超えるものではない」と述 べた。研究Ⅱで示してきたように,ターゲットとなる手がかりの評価は(i.e., T1 とT2),その他の手がかりの評価を獲得したことによっても変化する。しかし,

その変化は手がかりを直接に経験して得た評価(i.e., C+やC-)よりも,曖昧 で柔軟なものである。2 次の回顧的再評価の例が示すように,我々ヒトの思考 の在り方は時間の経過によって変化する。しかしながら,その在り方は全て,

過去と現在の経験内容によって決定づけられるのである。

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