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Figure 1-13.焦点セットを援用した因果モデル理論の説明 .上段左は手がかり競合や回 顧的再評価の事態での焦点セットを示す.上段右は隠蔽の例であり,PX2X1P~X2X1 対比できないため,ΔPX2が算出できないことを示す.下段左は順行阻止あるいは逆行 阻止の例であり,PX2X1P~X2X1の対比により ΔPX2がゼロとなることを示す.下段左 は隠蔽解除の例であり,PX2X1P~X2X1の対比により ΔPX21となることを示す.

X1X2

X1~X2

Y ~Y

X1X2

X1X2 X1X2

X1~X2 X1~X2

X1~X2

24 0

Y ~Y

Y ~Y

Y ~Y

0 0

24 0

24 0

24 0

24 0

(2)Power PCモデル Cheng(1997)は,因果モデル理論を拡張し,Power PC モデルを提唱した13。その最大の特徴は共生起情報から推定した因果関係の強 さが,ΔP ではなく power で表現される点である。この考えではΔP は power を算出するための一要素であり,power の算出は式 8と式 9 の2 式に基づくこ とになる。なお,ここでは潜在原因を事象 C,結果事象を事象 E とする。式 8 は正の随伴事態を示しており,式 9は負の随伴事態を示している。前者は発生 的 因 果 力 (generative causal power), 後 者 は 抑 制 的 因 果 力 (preventive causal

power)とも呼ばれ,それぞれΔPに異なる補整が行われているのが見てとれる。

E C

P power P

|~

1

  (式8)

E C

P power P

|~

 -

(式9)

これらの考えを採用することにより,隠蔽解除の確認が逆行阻止よりも容易で あるという事実を説明できる(Figure 1-14,35頁)。潜在原因を事象 C1とC2,

結果事象を事象 Eとすると,手がかり競合や回顧的再評価のターゲット刺激は C2に,比較刺激はC1に相当する。この場合,隠蔽解除の手続きではセルa と d の頻度が記載されるため,分母である 1P

E|~C

は必ず正の値をとるが,

逆行阻止の手続きではセル a と c しか頻度が記載されないため,分母である

E C

P |~

1 は0となり,powerが計算不可となる天井効果(ceiling effect)が

生じることになる。そのため,逆行阻止の手続きでは隠蔽と同様の判断がなさ れることになり,逆行阻止の現象は生じ難いと考える。ただし,この考えはPC2C1

P~C2C1の値が 1 である連続強化の場合に限定される。部分強化である場合は 分母である1P

E|~C

0にならないため,天井効果が生じないためである。

13 その拡張として,Novick and Cheng(2004)がある。この立場のうち 抑制的因果力の考えに

ついてはWhite (2005) がベイズ推定の観点から批判を行っており,理論の適用範囲については

Luhmann and Ahn (2005) が批判を行っている(その反論と して,Cheng and Novick, 2005)。

(3)因果帰納モデルの特徴 これまで述べてきたように,因果帰納モデル には様々なバリエーションがあり,連合形成モデルとは異なる観点から回顧的 再評価の説明を行う。ただし,これらの説明は一般に随伴性判断を対象とした ものであり,古典的条件づけにおける条件反応,あるいは非言語行動の出力に 適用されることは想定されていない。ところで,確率対比モデルとPowerPCモ デルは,観察した共生起情報から因果関係を帰納する機構を公式化した,計算 モデルの一種とみなすことができる。近年はPowerPC理論における発生的因果 力の考えが,Pearl(2000/2001)の因果ベイズネット(causal Bayes Net)の特殊 なタイプと同等であることが指摘されており(Glymour, 2001, 2003),この観点

からPowerPC理論を因果ベイズネットと関連づける試みもなされ始めている

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Figure 1-14.Power PCモデルによる手がかり競合と回顧的再評価の説明.上段左はその模式図

を示す.上段右は隠蔽の例であり,PC2C1P~C2C1が対比できないため,ΔPC2Powerも算出 できないことを示す.下段左は阻止あるいは逆行阻止の例であり,PC2C1P~C2C1の対比によ

ΔPC20となるが,分母も0となるためにPowerが算出できないことを示す.下段左は隠蔽 解除の例であり,PC2C1P~C2C1の対比によりΔPC21となり,Power1となることを示す.

C1C2

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C1C2

C1C2 C1C2

C1~C2 C1~C2

C1~C2

24 0

E ~E

E ~E

E ~E 0 0

24 0

24 0

24 0

24 0

(e.g., Griffith & Tenenbaum, 2005; Lu, Yuille, Liljeholm, Cheng, & Holyoak, 2008)。

ただし,因果ベイズネットは複数の事象の因果関係をグラフ構造と条件付き確 率で表す数学的手法,あるいは知識の表現方法に過ぎず,本来はヒトや動物の 行動を説明するための枠組みではない。興味深いことに,近年は因果ベイズネ ッ ト の 心 理 学 的 な モ デ ル と し て の 有 用 性 も 主 張 さ れ つ つ あ り (e.g., Gopnik, Glymour, Sobel, Schulz, Kushnir, & Danks, 2004),ラットなどの動物もその予測 に従うことが示唆されている(e.g., Blaisdell, Sawa, Leising, Waldmann, 2006)。

このような考えについては,Morgan(1903)の公準を援用した批判もなされて おり(e.g., Dwyer, Starns, & Honey, 2009; Dwyer & Burgess, 2011),連合形成モデ ル を 拡 張 す る こ と で 説 明 可 能 だ と い う 主 張 も あ る (e.g., Kutlu & Schmajuk, 2012)。その一方で,この考えがヒトや動物の行動を予測するための有用な枠組 みであることは事実であり,連合学習の研究動向にも多大な影響を与えたこと は間違いない。その心理学的な妥当性については,さらなる検証が必要である。

第4 項 命題推論モデル

命題推論モデルの基本発想は,イギリスの哲学者J. S. Mill(1843/ 1949)の帰 納と演繹をめぐる省察に影響を受けている。J. S. Millは社会科学の方法論に関 して論理学を重視し,帰納法によって発見された経験法則を再度現象の予測に 適用して法則の心理性を確認するという,逆演繹法を確立したことで知られて いる。彼によれば,因果性とは(1)同時に存在する複数の現象が斉一な仕方で 関係し,(2)その一方の事象がもう一方の事象に先行したときのこれらの関係 のことをいう。すなわち,彼にとって原因とはそれ自体観察可能なものであり,

ある事実に常に先行するものであった。彼は原因の概念を帰納の全理論の根本 とし,重要視した。これらの条件は共存(coexistence),継起(succession),と 呼ばれており,これまでに述べてきた接近性や時間順序の問題とも密接な関係

がある。また,このような条件で形成される 命題は意識的で操作 的な過程で あり,一般にはヒト に特有のもの考えられている 。命題推論モデルではこの ような考えを承継しており,「どのように命題推理がなされるか」という過程を 表現することに重きを置く,規範的な立場がとられることが多い。

たとえば,De Howuer(2009a, 2009b)は,いくつかの因果帰納モデル(e.g., Cheng, 1997; Cheng & Holyoak, 1995; Waldmann & Holyoak, 1992)を参考に,阻 止や逆行阻止などの競合現象を説明できる,演繹推理に基づく考えを提唱した。

もしも,逆行阻止の手続きにおけるフェイズ1の経験(i.e., AX+)を命題と して表現すると,「CSAまたは CSXは US の原因である」ということになる。

また,フェイズ 2 の経験を(i.e., A+)を命題として表現すると,「CSAは US の原因である」ということになる。そして,その後のテストの結果(i.e., A-)

を命題として表現すると,「CSX は US の原因ではない」ということになる。

これらを順に並べると,以下のような三段論法がなされたことになる。

(1)CSAまたはCSXはUSの原因である(大前提)。

(2)CSAはUSの原因である(小前提)。

(3)したがって,CSXはUSの原因ではない(結論)。

これらのうち,(3)の結論は一見論理的であるようにみえるが,その通りで はない。なぜなら,大前提となる(1)の内容のうち,「または」が英語で“and/or”

と記述される場合と等価であれば,これらは包含的論理和を示すことになり,

一方が原因であったとしても,他方が原因であることもあり得るためである。

つまり,この場合は CSAが US の原因であるといって,それ自体は CSXが US の原因ではないことを意味しないことになる。一方,「または」が英語で“xor”

と記述される場合と等価であれば,これらは排他的論理和を示すことになり,

もう一方が原因であったならば,他方が原因ではないことが証明できる。この 場合は CSAが US の原因であるならば,必然的に CSXが USの原因でないこと が導かれることになる。すなわち,大前提である(1)をどのように捉えている かよって,阻止や逆行阻止が生起するか否かが決定されることになる。

一方,隠蔽解除の手続きにおけるフェイズ 1 とフェイズ 2,テストの結果を 命題として表現すると,次のような推論がなされることになる。

(1)CSAまたはCSXはUSの原因である(大前提)。

(2)CSAはUSの原因ではない(小前提)。

(3)したがって,CSXはUSの原因である(結論)。

この場合の(3)の結論は,逆行阻止の例と異なり,論理的である 。なぜな ら,大前提である(1)の「または」がどのような意味に解されたとしても,一 方が原因でなかったならば,他方が原因であることが決定されるためである。

このような説明から示唆されるように,隠蔽解除の現象は被験者がどのような 推論の大前提をもっていたとしても生じるため,逆行阻止よりも再現が容易で あることが予測できる。この点は前節で述べた因果帰納モデルに類似している。

ただし,逆行阻止の現象を説明するために相互排他性を必要する点において,

命題推論の考えは因果帰納モデルよりも循環論的であるようにも思われる。

De Houwer(2009a, 2009b)はこの問題を回避するために,(1)の大前提その

ものは以前の経験によって獲得された推論の結果であるという仮定を付加した。

たとえば,実験を開始する前に「もしも CSAとCSXのどちらもが原因であるな らば,USの強度はそれらが単独で呈示されるよりも強くなる」,という教示あ るいは訓練を被験者に与えたとする。そして,逆行阻止の場合はフェイズ 1,

順行阻止の場合はフェイズ 2 の時点で AX+のように,「US の強度はそれらが

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