第 4 章 パラレルリンク構造システム
4.2 StewartPlatform 型パラレルリンク構造
パラレルリンク機構の代表としてStewartPlatformと呼ばれる構造がある。これは1965年 にD.Stewartがthe Institution of Mechanical Engineers (UK)で公表した構造である[15]。本研究
ではこの StewartPlatform 型パラレルリンク機構を導入しパラレルリンク構造システムにつ
いて研究を行う。
4.2.1 StewartPlatform 型パラレルリンク構造の概要
StewartPlatformとは独立に駆動する6本のリンクとリンクによって支えられた出力端であ
るエンドエフェクタ及び基準座標系に固定されたベースプラットフォームによって構成さ れるパラレルリンク構造のひとつである。図4.2にStewartPlatform型パラレルリンク構造を 示す。リンクの両端はユニバーサルジョイントで接続されており,6本のアクチュエータの 長さを独立に制御することによって,エンドエフェクタの位置・姿勢の6自由度を空間内 で制御する事ができる。
以下にStewartPlatformにおける主な記号,座標系について説明する。
・記号
𝐵𝑚 :ベースプラットフォームに接続されたリンクの中心のXYZ座標 𝐶 :エンドエフェクタの重心の位置・姿勢を表すXYZ座標系ベクトル 𝐸𝑚𝑜 :エンドエフェクタに接続されたリンクの中心のXYZ座標
𝐸𝑚𝑒 :エンドエフェクタに接続されたリンクの中心の𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標 𝑙𝑚 :アクチュエータの長さ(𝐸𝑚𝑜 − 𝐵𝑚間の距離)
𝑚 :リンク番号を示す添え字
𝑂 :𝐵𝑚を通る円の中心(XYZ座標原点)
𝑂𝑒 :𝐸𝑚eを通る円の中心
𝑅𝑜 :Oを中心とした𝐵𝑚を通る円の半径 𝑅𝑒 :𝑅𝑒を中心とした𝐸𝑚を通る円の半径 𝑥, 𝑦, 𝑧 :CのXYZ座標
γ, β, α :エンドエフェクタの姿勢を表すZ-Y-Xオイラー角 𝜃𝑚, ∅𝑚 :𝐸𝑚𝑒の極座標系パラメータ
𝜓𝑚, 𝜑𝑚 :𝐵𝑚の極座標系パラメータ
・座標系
XYZ座標系 :𝑂を中心とする基準座標系
𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系 :Cを中心とするエンドエフェクタ上の座標系
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・ベクトル
𝐵𝑚 :[𝐵𝑚𝑥 𝐵𝑚𝑦 𝐵𝑚𝑧]T
C :[𝑥 𝑦 𝑧 𝛼 𝛽 𝛾]T
𝐸𝑚𝑜 :[𝐸𝑚𝑥𝑜 𝐸𝑚𝑦𝑜 𝐸𝑚𝑧𝑜 ]T 𝐸𝑚𝑒 :[𝐸𝑚𝑥𝑒 𝐸𝑚𝑦𝑒 𝐸𝑚𝑧𝑒 ]T
図4.2 StewartPlatform型パラレルリンク構造
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4.2.2 StewartPlatform 型パラレルリンク構造の逆運動
学
シリアルリンク構造とパラレルリンク構造の双対性のひとつである,運動学の問題につ いて述べる。シリアルリンク構造では容易な順運動学の計算はパラレルリンク構造では困 難である。しかし,シリアルリンク構造では困難な逆運動学の計算は,パラレルリンク構 造では幾何学的条件から比較的容易に求めることができる。
逆運動学とは,作業空間におけるエンドエフェクタの状態からアクチュエータ空間での 状態,すなわちアクチュエータ変数の具体的数値を求める計算である。本研究で対象とな
る StewartPlatform 型パラレルリンク構造では,エンドエフェクタの位置姿勢からアクチュ
エータの変位を求める。以下にその計算を示す。図4.3にStewartPlatformの座標系を示す。
XYZ座標系は固定座標系でベースプラットフォーム上に固定する。𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系はXYZ座 標系に対して移動する座標系で,エンドエフェクタ上に固定する。図4.3に示すパラメータ 𝑅𝑜, 𝜓𝑚, 𝜑𝑚を用いて極座標で表すと,ベースのジョイント位置はXYZ座標系で以下のように 表せる。ただし𝑚 = 1~6とし,リンク番号を表す。
図4.3 StewartPlatformの極座標系
36 𝐵𝑚= (
𝐵𝑚𝑥
𝐵𝑚𝑦
𝐵𝑚𝑧
) = (
𝑅𝑜sin (𝜓𝑚)cos (𝜑𝑚) 𝑅𝑜sin (𝜓𝑚)sin (𝜑𝑚)
𝑅𝑜cos (𝜓𝑚) ) (4.1)
同様にエンドエフェクタのジョイントの位置をパラメータ𝑅𝑒, 𝜃𝑚, ∅𝑚を用いて極座標で表 すとエンドエフェクタのジョイントの位置は𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系で以下のように表せる。
𝐸𝑚𝑒 = ( 𝐸𝑚𝑥𝑒 𝐸𝑚𝑦𝑒
𝐸𝑚𝑧𝑒 ) = (
𝑅𝑒sin (𝜃𝑚)cos (∅𝑚) 𝑅𝑒sin (𝜃𝑚)sin (∅𝑚)
𝑅𝑒cos (𝜃𝑚) ) (4.2)
次にXYZ座標系から𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系の原点であり,エンドエフェクタの重心の位置を𝑥, 𝑦, 𝑧 と し, 姿勢をγ, β, αと する と, エン ドエフ ェクタ の位 置・ 姿勢を 表すベ クト ルは𝐶 = [𝑥 𝑦 𝑧 𝛼 𝛽 𝛾]𝑇となる。ここでγ, β, αはそれぞれ𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系の𝑋𝑒軸,𝑌𝑒軸,𝑍𝑒軸周 りに対する回転角を表す。ここで,ベクトル𝑋𝑐,行列Tを以下のように定義する。ただし,
𝑠𝑖𝑛(𝛼) = 𝑠𝛼, 𝑠𝑖𝑛(𝛽) = 𝑠𝛽, 𝑠𝑖𝑛(𝛾) = 𝑠𝛾, 𝑐𝑜𝑠(𝛼) = 𝑐𝛼, 𝑐𝑜𝑠(𝛽) = 𝑐𝛽, 𝑐𝑜𝑠(𝛾) = 𝑐𝛾とした。
𝑋𝑐 = (𝑥 𝑦
𝑧) (4.3)
𝑇 = (
𝑐𝛼𝑐𝛽 𝑐𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 − 𝑠𝛼𝑐𝛾 𝑐𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 + 𝑠𝛼𝑠𝛾 𝑠𝛼𝑐𝛽 𝑠𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 + 𝑐𝛼𝑐𝛾 𝑠𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 − 𝑐𝛼𝑠𝛾
−𝑠𝛽 𝑐𝛽𝑠𝛾 𝑐𝛽𝑐𝛾 ) (4.4)
ここで,行列TはZ-Y-Xオイラー角の回転行列である。このベクトル𝑋𝑐と行列T を用い ると𝑋𝑒𝑌𝑒𝑍𝑒 座標系で表されたエンドエフェクタのジョイントの位置𝐸𝑚𝑒はXYZ座標系で次式 のように表せる。
𝐸𝑚𝑜 = 𝑇𝐸𝑚𝑒 + 𝑋𝑐 (4.5)
ここで,𝐸𝑚𝑜 =[𝐸𝑚𝑥𝑜 𝐸𝑚𝑦𝑜 𝐸𝑚𝑧𝑜
]𝑇はエンドエフェクタのジョイントの位置をXYZ座標系で表 したものであり,各要素は以下のように表せる。
𝐸𝑚𝑥𝑜 = (𝑐𝛼𝑐𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑐𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 − 𝑠𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+(𝑐𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 + 𝑠𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 + x (4.6) 𝐸𝑚𝑥𝑜 = (𝑠𝛼𝑐𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑠𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 + 𝑐𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+(𝑠𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 − 𝑐𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 + 𝑦 (4.7) 𝐸𝑚𝑥𝑜 = (−𝑠𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑐𝛽𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒 + (𝑐𝛽𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 + 𝑧 (4.8) m番目のアクチュエータの長さ𝑙𝑚はそれぞれm番目のエンドエフェクタのジョイント𝐸𝑚𝑜 とベースプラットフォームのジョイント𝐵𝑚の距離であるので,
𝑙𝑚2 = 𝑙𝑚𝑥2 + 𝑙𝑚𝑦2 + 𝑙𝑚𝑧2 (4.9)
𝑙𝑚= √𝑙𝑚𝑥2 + 𝑙𝑚𝑦2 + 𝑙𝑚𝑧2 (4.10)
と表せる。ただし
𝑙𝑚𝑥= 𝐸𝑚𝑥𝑜 − 𝐵𝑚𝑥 (4.11)
𝑙𝑚𝑦= 𝐸𝑚𝑦𝑜 − 𝐵𝑚𝑦 (4.12)
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𝑙𝑚𝑧 = 𝐸𝑚𝑧𝑜 − 𝐵𝑚𝑧 (4.13)
である。
ここで,(4.10)式の右辺はエンドエフェクタの位置・姿勢を表す𝐶 = [𝑥 𝑦 𝑧 𝛼 𝛽 𝛾]𝑇 の関数であり,与えられたエンドエフェクタの位置・姿勢に対し,各アクチュエータの長 さ𝑙𝑚を求める事ができる。そこで,6本のアクチュエータの長さ𝑙1, 𝑙2, 𝑙3, 𝑙4, 𝑙5, 𝑙6をベクトル を用いて𝑙 = [𝑙1 𝑙2 𝑙3 𝑙4 𝑙5 𝑙6]Tと表し,𝑓を逆運動学計算を行う関数として定義する ことで,エンドエフェクタの位置・姿勢と各アクチュエータ長さの関係をまとめて次式で 表す。
𝑙 = 𝑓(𝐶) (4.14)
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4.2.3 StewartPlatform 型パラレルリンク構造の動力学
StewartPlatform 型パラレルリンク構造の動力学について Jacobian を用いて説明する。
Jacobian とはアクチュエータの微小運動とエンドエフェクタの微小運動との間の関係を示
す概念である。この概念によりマニピュレータの操作性の検討や外部環境とアクチュエー タとの関係を検討する事ができる。またマニピュレータの動的な特性を理解することに繋 がるので,制御系の構築に対しても重要な意味を持つ。ただし,パラレルリンク構造では シリアルリンク構造と異なり逆運動学によりエンドエフェクタの状態とアクチュエータの 状態との関係式を導いた。これにより,パラレルリンク構造の Jacobian は一般に Jacobian と呼ばれるシリアルリンク構造の Jacobian とは定義が異なり,シリアルリンク構造の
Jacobianの逆行列に相当するものとなっている。
以下にその計算を示す。(4.14)式の両辺を時間に関して全微分すると
𝑙̇ = 𝐽(𝐶)̇ (4.15)
𝐽 ≡𝜕{𝑓(𝐶)}
𝜕𝐶 (4.16)
となる。更に(4.9)式より(4.15)式を整理すると
( 𝑙1̇ 𝑙2̇ 𝑙3
𝑙4̇ 𝑙5̇ 𝑙6̇̇ )
= 𝐽 (
𝑥̇
𝑦̇
𝛼̇𝑧̇
𝛽̇
𝛾̇)
(4.17)
を得る。ここで,𝐽の要素𝐽𝑚𝑛は次式で計算できる。ただし,𝑚 = 1~6でリンク番号を表し,
𝑛 = 1~6である。𝐽𝑚𝑛は𝐽の𝑚行𝑛列の要素を表す。
𝐽𝑚1= 𝑙𝑚𝑥
1
𝑙𝑚 (4.18)
𝐽𝑚2= 𝑙𝑚𝑦
1
𝑙𝑚 (4.19)
𝐽𝑚3= 𝑙𝑚𝑧
1
𝑙𝑚 (4.20)
𝐽𝑚4= (𝑙𝑚𝑥((−𝑠𝛼𝑐𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (−𝑠𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 − 𝑐𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒 + (−𝑠𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 + 𝑐𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 )
+ 𝑙𝑚𝑦((𝑐𝛼𝑐𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑐𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 − 𝑠𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+ (𝑐𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 + 𝑠𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 )) 1 𝑙𝑚
(4.21)
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𝐽𝑚5= (𝑙𝑚𝑥((−𝑐𝛼𝑠𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑐𝛼𝑐𝛽𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒 + (𝑐𝛼𝑐𝛽𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 ) + 𝑙𝑚𝑦((−𝑠𝛼𝑠𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (𝑠𝛼𝑐𝛽𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+ (𝑠𝛼𝑐𝛽𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 )
+ 𝑙𝑚𝑧((−𝑐𝛽)𝐸𝑚𝑥𝑒 + (−𝑠𝛽𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+ (−𝑠𝛽𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 ))1 𝑙𝑚
(4.22)
𝐽𝑚6= (𝑙𝑚𝑥((𝑐𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 + 𝑠𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒 + (−𝑐𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 + 𝑠𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 ) + 𝑙𝑚𝑦((𝑠𝛼𝑠𝛽𝑐𝛾 − 𝑐𝛼𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒
+ (−𝑠𝛼𝑠𝛽𝑠𝛾 − 𝑐𝛼𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 )
+ 𝑙𝑚𝑧((𝑐𝛽𝑐𝛾)𝐸𝑚𝑦𝑒 + (−𝑐𝛽𝑠𝛾)𝐸𝑚𝑧𝑒 )) 1 𝑙𝑚
(4.23)
𝐽は6行6列の偏導関数行列であり,この行列を6自由度パラレルリンク構造のJacobian と呼ぶ。(4.16)式で定義される Jacobian は Cだけの関数であるが,(4.18)~(4.23)で表され
る Jacobian は C と𝑙の関数である。この Jacobian を用いる事によって一般的な形状の
StewartPlatform 型パラレルリンク構造における各アクチュエータの速度とエンドエフェク
タの速度を関係付ける事ができる。
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