第 4 章 Riemann 部分多様体 79
4.4 Simons の不等式
4.4. Simonsの不等式 93
によって双線形写像
B(A) :T⊥M ×T⊥M →End(Sym(T M)) が定まる。T⊥Mの正規直交基底ξ1, . . . , ξrをとり、
tr(B(A)) =X
a
B(A)(ξa, ξa) = X
a
ad(Aξa)◦ad(Aξa)
によってtr(B(A))を定めると、tr(B(A))はSym(Sym(T M))のC∞級断面になり、
半正定値になる。
証明 adの定め方より、x, y ∈T Mに対して
h[s1,[s2, s3]]x, yi = h(s1(s2s3−s3s2)−(s2s3−s3s2)s1)x, yi
= hx,(s3s2s1−s2s3s1−s1s3s2+s1s2s3)yi
= hx,(−(s2s3−s3s2)s1+s1(s2s3−s3s2))yi
= hx,[s1,[s2, s3]]yi.
したがって、ad(s1)◦ad(s2)(s3) = [s1,[s2, s3]]∈Sym(T M)が成り立つ。
B(A)の定義式
B(A)(ξ, η) = ad(Aξ)◦ad(Aη)∈End(Sym(T M)) (ξ, η ∈T⊥M) より、写像
B(A) :T⊥M ×T⊥M →End(Sym(T M))
は双線形写像になる。tr(B(A))∈Sym(Sym(T M))を示すために、まず、s ∈Sym(T M) とt1, t2 ∈End(T M)に対して
h[s, t1], t2i=ht1,[s, t2]i が成り立つことを示す。
h[s, t1], t2i = hst1−t1s, t2i= tr((st1−t1s)∗t2) = tr((t∗1s−st∗1)t2)
= tr(t∗1st2−st∗1t2) = tr(t∗1st2−t∗1t2s) = tr(t∗1[s, t2])
= ht1,[s, t2]i
以上より、s ∈Sym(T M)に対してad(s)はEnd(T M)の対称線形変換になる。こ れより、s, t ∈Sym(T M)に対して
htr(B(A))s, ti=X
a
had(Aξa)ad(Aξa)s, ti=X
a
had(Aξa)s,ad(Aξa)ti.
したがって、tr(B(A))はSym(Sym(T M))のC∞級断面になり、半正定値になる。
4.4. Simonsの不等式 95 補題 4.4.3 T M の正規直交基底e1, . . . , enをとり、x, y ∈ T M とξ ∈ T⊥M に対 して、
hR˜0ξ(x), yi=X
i
(h( ˜∇xR)(e˜ i, y)ei, ξi+h( ˜∇eiR)(e˜ i, x)y, ξi) によってR˜0を定めると、R˜0はL(T⊥M,Sym(T M))のC∞級断面になる。
証明 R˜0の定め方は正規直交基底e1, . . . , enのとり方によらず、L(T⊥M,End(T M)) のC∞級断面になることはすぐにわかる。
R˜0の定義式の第一項に第2 Bianchiの恒等式(定理3.5.3(5))を使い、第二項に第 1 Bianchiの恒等式(定理3.5.3(2))を使うと、
hR˜0ξ(x), yi = X
i
(h( ˜∇xR)(e˜ i, y)ei, ξi+h( ˜∇eiR)(e˜ i, x)y, ξi)
= −X
i
(h( ˜∇eiR)(y, x)e˜ i, ξi+h( ˜∇yR)(x, e˜ i)ei, ξi)
−X
i
(h( ˜∇eiR)(x, y)e˜ i, ξi+h( ˜∇eiR)(y, e˜ i)x, ξi)
= X
i
(h( ˜∇yR)(e˜ i, x)ei, ξi+h( ˜∇eiR)(e˜ i, y)x, ξi)
= hR˜ξ0(y), xi
を得る。したがって、R˜ξ0 はT Mの対称線形変換になり、R˜0はL(T⊥M,Sym(T M)) のC∞級断面になる。
補題 4.4.4 T M の正規直交基底e1, . . . , enをとり、x, y ∈ T M とξ ∈ T⊥M に対 して、
hR(A)˜ ξ(x), yi = X
i
(2hR(e˜ i, y)h(x, ei), ξi+ 2hR(e˜ i, x)h(y, ei), ξi
−hAξ(x),R(e˜ i, y)eii − hAξ(y),R(e˜ i, x)eii +hR(e˜ i, h(x, y))ei, ξi −2hAξ(ei),R(e˜ i, x)yi)
によってR(A)˜ を定めると、R(A)˜ はL(T⊥M,Sym(T M))のC∞級断面になる。
証明 R(A)˜ の定め方は正規直交基底e1, . . . , enのとり方によらず、L(T⊥M,End(T M)) のC∞級断面になることはすぐにわかる。
以下で、R(A)˜ の定義式におけるxとyに関する対称性を示す。定義式の第一項 と第二項は、xとyをとりかえると入れ代わる。定義式の第三項と第四項も、xと yをとりかえると入れ代わる。第五項は第二基本形式の対称性から、xとyに関し て対称になっている。第六項もxとyに関して対称になっていることを示す。第1 Bianchiの恒等式(定理3.5.3(2))より、
hAξ(ei),R(e˜ i, x)yi = −hAξ(ei),R(x, y)e˜ ii − hAξ(ei),R(y, e˜ i)xi
= −hAξ(ei),R(x, y)e˜ ii+hAξ(ei),R(e˜ i, y)xi.
ここで、Aξは対称線形変換であり、R(x, y)˜ は交代線形変換だから、
hAξ(ei),R(x, y)e˜ ii = 1
2(hei, AξR(x, y)e˜ ii − hR(x, y)A˜ ξ(ei), eii)
= 1
2hei,[Aξ,R(x, y)]e˜ ii. さらに、 X
i
hei,[Aξ,R(x, y)]e˜ ii= tr([Aξ,R(x, y)]) = 0˜ となり、
X
i
hAξ(ei),R(e˜ i, x)yi = X
i
(−hAξ(ei),R(x, y)e˜ ii+hAξ(ei),R(e˜ i, y)xi)
= X
i
hAξ(ei),R(e˜ i, y)xi.
よって、第六項もxとyに関して対称になっている。したがって、R(A)˜ ξはT M の対称線形変換になり、R(A)˜ はL(T⊥M,Sym(T M))のC∞級断面になる。
定理 4.4.5 (Simons) MをM˜ の極小部分多様体と仮定する。今までと同様にし て∇¯A,∇¯2Aを定め、T Mの正規直交基底e1, . . . , enをとり、
tr( ¯∇2A) = X
i
∇¯ei∇¯eiA
とおくと、
tr( ¯∇2A) =−A◦A∗ ◦A−tr(B(A))◦A+ ˜R(A) + ˜R0 が成り立つ。
定理の証明をする前にいくつかの準備をしておく。
補題 4.4.6 M の点pとTp⊥M の正規直交基底ξ1, . . . , ξrをとると、u, v, z ∈ TpM に対して
QT(u, v)z =X
a
(hAξa(v), ziAξa(u)− hAξa(u), ziAξa(v)) が成り立つ。
4.4. Simonsの不等式 97 証明 QT の定義(補題4.2.6)と補題4.1.4より、任意のw∈TpMに対して、
hQT(u, v)z, wi
= hh(u, w), h(v, z)i − hh(u, z), h(v, w)i
= X
a
(hh(u, w), ξaihh(v, z), ξai − hh(u, z), ξaihh(v, w), ξai)
= X
a
(hAξa(u), wihAξa(v), zi − hAξa(u), zihAξa(v), wi)
=
*X
a
(hAξa(v), ziAξa(u)− hAξa(u), ziAξa(v)), w +
. これが任意のwについて成り立つので、
QT(u, v)z =X
a
(hAξa(v), ziAξa(u)− hAξa(u), ziAξa(v)) を得る。
補題 4.4.7 Mのベクトル場S, T, U, V に対して
( ¯R(U, V)h)(S, T) =R⊥(U, V)(h(S, T))−h(R(U, V)S, T)−h(S, R(U, V)T) とおくと、
( ¯∇U∇¯Vh)(S, T)−( ¯∇V∇¯Uh)(S, T) = ( ¯R(U, V)h)(S, T) が成り立つ。
証明 左辺の第一項は、
( ¯∇U∇¯Vh)(S, T)
= ∇⊥U(( ¯∇Vh)(S, T))−( ¯∇∇UV)(S, T)−( ¯∇V)(∇US, T)−( ¯∇V)(S,∇UT)
= ∇⊥U(∇⊥V(h(S, T))−h(∇VS, T)−h(S,∇VT))
−∇⊥∇UV(h(S, T)) +h(∇∇UVS, T) +h(S,∇∇UVT)
−∇⊥V(h(∇US, T)) +h(∇V∇US, T) +h(∇US,∇VT)
−∇⊥V(h(S,∇UT)) +h(∇VS,∇UT) +h(S,∇V∇UT).
これのU とV を入れ変えた項を引き、∇UV − ∇VU = [U, V]を使うと、Ricciの
公式(定理3.5.6)の証明と同様にして、
( ¯∇U∇¯Vh)(S, T)−( ¯∇V∇¯Uh)(S, T) = ( ¯R(U, V)h)(S, T) を得る。
補題 4.4.8 M をM˜ の極小部分多様体と仮定する。T Mの正規直交基底e1, . . . , en をとると、M の接ベクトルzに対して
X
i
( ¯∇eih)(ei, z) = X
i
( ˜R(ei, z)ei)⊥ が成り立つ。
証明 Codazziの方程式(命題4.2.3)より、
X
i
( ¯∇eih)(ei, z) = X
i
( ¯∇eih)(z, ei) =X
i
(( ¯∇zh)(ei, ei) + ( ˜R(ei, z)ei)⊥).
ここで、Mが極小部分多様体であるという仮定より、
X
i
( ¯∇zh)(ei, ei) = ¯∇z ÃX
i
h(ei, ei)
!
= 0
となるので補題を得る。
定理4.4.5の証明 M の任意の点pをとり、pで等式の成り立つことを示す。
TpM の正規直交基底e1, . . . , enと任意の元x, y ∈ TpM をとり、pの近傍上のベク トル場E1, . . . , En, X, Y に拡張する。その際、任意のz ∈TpMに対して、
∇zE1 =· · ·=∇zEn=∇zX =∇zY = 0 となるように拡張することができる。
補題 4.4.9
tr( ¯∇2h)(x, y)
= X
i
(( ¯R(ei, x)h)(ei, y) + ( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥+ ( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥).
証明 以下の計算はすべて点pで値をとる。
tr( ¯∇2h)(x, y)
= X
i
( ¯∇ei∇¯eih)(x, y) =X
i
∇⊥ei(( ¯∇Eih)(X, Y))
= X
i
∇⊥ei(( ¯∇Xh)(Ei, Y) + ( ˜R(Ei, X)Y)⊥) (Codazziの方程式)
= X
i
(( ¯∇Ei∇¯Xh)(Ei, Y) +∇⊥ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)
= X
i
(( ¯R(ei, x)h)(ei, y) + ( ¯∇X∇¯Eih)(Ei, Y) +∇⊥ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥) (補題4.4.7)
4.4. Simonsの不等式 99
= X
i
(( ¯R(ei, x)h)(ei, y) +∇⊥X(( ¯∇Eih)(Ei, Y)) +∇⊥ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)
= X
i
(( ¯R(ei, x)h)(ei, y) +∇⊥X( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥+∇⊥ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥) (補題4.4.8)
= X
i
(( ¯R(ei, x)h)(ei, y) + ( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥+ ( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥).
補題4.4.9の右辺の各項を調べる。
補題 4.4.10 X
i
( ¯R(ei, x)h)(ei, y) = X
i
n
( ˜R(ei, x)(h(ei, y)))⊥+Q⊥(ei, x)(h(ei, y))
−h(( ˜R(ei, x)ei)T, y)−h(QT(ei, x)ei, y)
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T)−h(ei, QT(ei, x)y) o
.
証明 補題4.4.7で定めたR¯の第二基本形式への作用の定義と、Gaussの方程式
の言い換え(補題4.2.6)、Ricciの方程式の言い換え(補題4.2.7)より、
X
i
( ¯R(ei, x)h)(ei, y)
= X
i
©R⊥(ei, x)(h(ei, y))−h(R(ei, x)ei, y)−h(ei, R(ei, x)y)ª
= X
i
n
( ˜R(ei, x)(h(ei, y)))⊥+Q⊥(ei, x)(h(ei, y))
−h(( ˜R(ei, x)ei)T, y)−h(QT(ei, x)ei, y)
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T)−h(ei, QT(ei, x)y)o . 補題 4.4.11
X
i
( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥
= X
i
n
(( ˜∇xR)(e˜ i, y)ei)⊥+ ( ˜R(h(x, ei), y)ei)⊥+ ( ˜R(ei, h(x, y))ei)⊥ +( ˜R(ei, y)(h(x, ei)))⊥−h(x,( ˜R(ei, y)ei)T)o
. 証明
X
i
( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥
= X
i
n
( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei))⊥−( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)T)⊥o
= X
i
n
(( ˜∇xR)(E˜ i, Y)Ei))⊥+ ( ˜R( ˜∇xEi, Y)Ei)⊥+ ( ˜R(Ei,∇˜xY)Ei)⊥ +( ˜R(Ei, Y) ˜∇xEi)⊥−h(x,( ˜R(ei, y)ei)T)
o
. (Gaussの公式) ここで、Gaussの公式より、
∇˜xEi = ∇xEi+h(x, Ei) =h(x, ei)
∇˜xY = ∇xY +h(x, Y) =h(x, y) となるので
X
i
( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥
= X
i
n
(( ˜∇xR)(e˜ i, y)ei)⊥+ ( ˜R(h(x, ei), y)ei)⊥+ ( ˜R(ei, h(x, y))ei)⊥ +( ˜R(ei, y)(h(x, ei)))⊥−h(x,( ˜R(ei, y)ei)T)
o . を得る。
補題 4.4.12 X
i
( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥
= X
i
n
(( ˜∇eiR)(e˜ i, x)y)⊥+ ( ˜R(ei, h(ei, x))y)⊥+ ( ˜R(ei, x)(h(ei, y)))⊥
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T)o . 証明
X
i
( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥
= X
i
n
( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y))⊥−( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)T)⊥o
= X
i
n
(( ˜∇eiR)(E˜ i, X)Y))⊥+ ( ˜R( ˜∇eiEi, X)Y)⊥+ ( ˜R(Ei,∇˜eiX)Y)⊥ +( ˜R(Ei, X) ˜∇eiY)⊥−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T)
o
. (Gaussの公式) ここで、Gaussの公式とM が極小部分多様体であるという仮定より、
X
i
∇˜eiEi = X
i
(∇eiEi+h(ei, Ei)) =X
i
h(ei, ei) = 0
∇˜eiX = ∇eiX+h(ei, X) =h(ei, x)
∇˜eiY = ∇eiY +h(ei, Y) = h(ei, y)
4.4. Simonsの不等式 101 となるので
X
i
( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥
= X
i
n
(( ˜∇eiR)(e˜ i, x)y)⊥+ ( ˜R(ei, h(ei, x))y)⊥+ ( ˜R(ei, x)(h(ei, y)))⊥
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T) o
. を得る。
補題 4.4.13 ξ∈Tp⊥Mに対して、次の等式が成り立つ。
htr( ¯∇2h)(x, y), ξi
= hR(A)˜ ξ(x), yi+hR˜0ξ(x), yi
+X
i
(hQ⊥(ei, x)(h(ei, y)), ξi − hh(QT(ei, x)ei, y), ξi − hh(ei, QT(ei, x)y), ξi).
証明 補題4.4.9に補題4.4.11、補題4.4.12、補題4.4.10の結果を代入し、補題 4.1.4、第1 Bianchiの恒等式(定理3.5.3(2))、R˜0の定義(補題4.4.3)とR(A)˜ の定義 (補題4.4.4)を使うと、
htr( ¯∇2h)(x, y), ξi
= X
i
h( ¯R(ei, x)h)(ei, y), ξi+X
i
h( ˜∇x( ˜R(Ei, Y)Ei)⊥)⊥, ξi
+X
i
h( ˜∇ei( ˜R(Ei, X)Y)⊥)⊥, ξi
= X
i
DR(e˜ i, x)(h(ei, y)) +Q⊥(ei, x)(h(ei, y))
−h(( ˜R(ei, x)ei)T, y)−h(QT(ei, x)ei, y)
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T)−h(ei, QT(ei, x)y), ξE
+X
i
D
( ˜∇xR)(e˜ i, y)ei+ ˜R(h(x, ei), y)ei+ ˜R(ei, h(x, y))ei + ˜R(ei, y)(h(x, ei))−h(x,( ˜R(ei, y)ei)T), ξ
E
+X
i
D
( ˜∇eiR)(e˜ i, x)y+ ˜R(ei, h(ei, x))y+ ˜R(ei, x)(h(ei, y))
−h(ei,( ˜R(ei, x)y)T), ξE
= hR˜0ξ(x), yi
+X
i
nhR(e˜ i, x)(h(ei, y)), ξi − hAξ(y),R(e˜ i, x)eii − hAξ(ei),R(e˜ i, x)yi
+hR(h(x, e˜ i), y)ei, ξi+hR(e˜ i, h(x, y))ei, ξi+hR(e˜ i, y)(h(x, ei)), ξi
−hAξ(x),R(e˜ i, y)eii+hR(e˜ i, h(ei, x))y, ξi+hR(e˜ i, x)(h(ei, y)), ξi
−hAξ(ei),R(e˜ i, x)yio
+X
i
©hQ⊥(ei, x)(h(ei, y)), ξi − hh(QT(ei, x)ei, y), ξi − hh(ei, QT(ei, x)y), ξiª
= hR˜0ξ(x), yi+hR(A)˜ ξ(x), yi
+X
i
©hQ⊥(ei, x)(h(ei, y)), ξi − hh(QT(ei, x)ei, y), ξi − hh(ei, QT(ei, x)y), ξiª .
QT またはQ⊥を含む項を以下で調べる。
補題 4.4.14 ξ1, . . . , ξrをTp⊥Mの正規直交基底とすると、次の等式が成り立つ。
X
i
hQ⊥(ei, x)(h(ei, y)), ξi=X
a
hAξa ◦[Aξ, Aξa](x), yi.
証明 Q⊥の定義(補題4.2.7)、Q⊥(ei, x)∈Alt(T⊥M)と補題4.1.4より、
X
i
hQ⊥(ei, x)(h(ei, y)), ξi=−X
i
hQ⊥(ei, x)ξ, h(ei, y)i
= −X
i
X
a
hQ⊥(ei, x)ξ, ξaihh(ei, y), ξai
= −X
i
X
a
h[Aξ, Aξa](ei), xihAξa(y), eii
= X
i
X
a
h[Aξ, Aξa](x), eiihAξa(y), eii
= X
a
h[Aξ, Aξa](x), Aξa(y)i=X
a
hAξa ◦[Aξ, Aξa](x), yi. 補題 4.4.15
−X
i
hh(QT(ei, x)ei, y), ξi=−X
a
hAξAξaAξa(x), yi 証明 補題4.1.4と補題4.4.6より、
−X
i
hh(QT(ei, x)ei, y), ξi=−X
i
hAξ(y), QT(ei, x)eii
= X
i
X
a
hAξ(y),hAξa(ei), eiiAξa(x)− hAξa(x), eiiAξa(ei)i. ここで、Mは極小部分多様体だから、
X
i
hAξa(ei), eii=X
i
hh(ei, ei), ξai= 0
4.4. Simonsの不等式 103 となり、
−X
i
hh(QT(ei, x)ei, y), ξi=−X
i
X
a
hAξ(y), Aξa(ei)ihAξa(x), eii
= −X
i
X
a
hAξaAξ(y), eiihAξa(x), eii=−X
a
hAξaAξ(y), Aξa(x)i
= −X
a
hy, AξAξaAξa(x)i. 補題 4.4.16
−hh(ei, QT(ei, x)y), ξi=X
a
hAξaAξAξa(x), yi − hAA∗◦A(ξ)(x), yi. 証明 補題4.1.4と補題4.4.6より、
−hh(ei, QT(ei, x)y), ξi
= −X
i
hAξ(ei), QT(ei, x)yi
= X
i
X
a
hAξ(ei),hAξa(ei), yiAξa(x)− hAξa(x), yiAξa(ei)i
= X
i
X
a
(hAξ(ei), Aξa(x)ihAξa(ei), yi − hAξ(ei), Aξa(ei)ihAξa(x), yi).
ここで、
X
i
hAξ(ei), Aξa(x)ihAξa(ei), yi=X
i
hei, AξAξa(x)ihei, Aξa(y)i
= hAξAξa(x), Aξa(y)i=hAξaAξAξa(x), yi. また、
X
i
hAξ(ei), Aξa(ei)i=hAξ, Aξai=hA(ξ), A(ξa)i=hA∗◦A(ξ), ξai となるので、
−X
i
X
a
hAξ(ei), Aξa(ei)ihAξa(x), yi = −X
a
hA∗◦A(ξ), ξaihAξa(x), yi
= −
AA∗◦A(ξ)(x), y® . したがって、
−hh(ei, QT(ei, x)y), ξi=X
a
hAξaAξAξa(x), yi − hAA∗◦A(ξ)(x), yi. を得る。
定理4.4.5の証明の続き 補題4.4.14、補題4.4.15、補題4.4.16で得た結果を補 題4.4.13の結果に代入すると、
htr( ¯∇2h)(x, y), ξi = hR(A)˜ ξ(x), yi+hR˜0ξ(x), yi
+X
a
hAξa◦[Aξ, Aξa](x), yi −X
a
hAξAξaAξa(x), yi
+X
a
hAξaAξAξa(x), yi − hAA∗◦A(ξ)(x), yi
= hR(A)˜ ξ(x), yi+hR˜0ξ(x), yi
+X
a
(hAξa◦[Aξ, Aξa](x), yi − h[Aξ, Aξa]◦Aξa(x), yi)
−hAA∗◦A(ξ)(x), yi
= hR(A)˜ ξ(x), yi+hR˜0ξ(x), yi
+X
a
h[Aξa,[Aξ, Aξa]](x), yi − hAA∗◦A(ξ)(x), yi. ここで、
X
a
[Aξa,[Aξ, Aξa]] = −X
a
ad(Aξa)ad(Aξa)(Aξ)
= −tr(B(A))(Aξ) となるので、
htr( ¯∇2h)(x, y), ξi
= hR(A)˜ ξ(x), yi+hR˜0ξ(x), yi −tr(B(A))(Aξ)(x), yi − hAA∗◦A(ξ)(x), yi. 補題4.1.4より、
hh(x, y), ξi=hAξ(x), yi だから、
h( ¯∇2h)(x, y), ξi=h( ¯∇2A)ξ(x), yi となり、
htr( ¯∇2h)(x, y), ξi=htr( ¯∇2A)ξ(x), yi. したがって、
tr( ¯∇2A) =−A◦A∗ ◦A−tr(B(A))◦A+ ˜R(A) + ˜R0 を得る。
系 4.4.17 M を曲率Kの定曲率空間M˜ のn次元極小部分多様体と仮定する。こ のとき、
tr( ¯∇2A) =nKA−A◦A∗◦A−tr(B(A))◦A
4.4. Simonsの不等式 105 が成り立つ。さらに、Mの余次元が1のときは、
tr( ¯∇2A) =nKA− |A|2A が成り立つ。
証明 M˜ は曲率Kの定曲率空間だから、補題3.6.4より、
R(X, Y˜ )Z =K(hY, ZiX− hX, ZiY)
が成り立つ。よって、∇˜R˜ = 0となる。これより、定理4.4.5のtr( ¯∇2A)の表示の 中で、R˜0 = 0となる。次に、R(A)˜ を計算する。補題4.4.4とR˜の表示より、
hR(A)˜ ξ(x), yi
= X
i
(2hR(e˜ i, y)h(x, ei), ξi+ 2hR(e˜ i, x)h(y, ei), ξi
−hAξ(x),R(e˜ i, y)eii − hAξ(y),R(e˜ i, x)eii +hR(e˜ i, h(x, y))ei, ξi −2hAξ(ei),R(e˜ i, x)yi)
= KX
i
(2hhy, h(x, ei)iei− hei, h(x, ei)iy, ξi +2hhx, h(y, ei)iei− hei, h(y, ei)ix, ξi
−hAξ(x),hy, eiiei− hei, eiiyi − hAξ(y),hx, eiiei− hei, eiixi
+hhh(x, y), eiiei− hei, eiih(x, y), ξi −2hAξ(ei),hx, yiei− hei, yixi)
= K(−hAξ(x), yi+nhAξ(x), yi − hAξ(y), xi+nhAξ(y), xi
−nhh(x, y), ξi −X
i
hAξ(ei), eiihx, yi+ 2X
i
hAξ(ei), xihei, yi)
= KnhAξ(x), yi. (M は極小部分多様体だから X
i
hAξ(ei), eii= 0) したがって、
tr( ¯∇2A) =nKA−A◦A∗ ◦A−tr(B(A))◦A が成り立つ。
次に、Mの余次元が1の場合を考える。Mの各点で任意のξ∈T⊥M はξ1と線 形従属になるので、AξはAξ1と線形従属になり、
tr(B(A))◦A(ξ) = [Aξ1,[Aξ1, Aξ]] = 0.
したがって、tr(B(A))◦A= 0となる。次に
hA∗◦A(ξ1), ξ1i=hA(ξ1), A(ξ1)i=|A|2 となるので、A∗◦A(ξ1) =|A|2ξ1。よって、
A◦A∗◦A(ξ1) = |A|2A(ξ1).
すなわち、A◦A∗ ◦A =|A|2Aが成り立つ。以上より、
tr( ¯∇2A) = nKA− |A|2A が成り立つ。
補題 4.4.18 Mをn+r次元Riemann多様体内のn次元Rieamnn部分多様体とす ると、Mのシェイプ作用素Aは、
hA◦A∗◦A+ tr(B(A))◦A, Ai ≤ µ
2−1 r
¶
|A|4 を満たす。
証明 補題4.4.1より、
A∗◦A:T⊥M →T⊥M
は半正定値対称線形変換だから、非負固有値を持ち、対角化可能である。よって、
Tp⊥M の正規直交基底ξ1. . . , ξrが存在し、
A∗◦A(ξa) = λ2aξa (1≤a≤r) となる。
hA◦A∗ ◦A, Ai = X
a
hA◦A∗◦A(ξa), A(ξa)i=X
a
λ2ahA(ξa), A(ξa)i
= X
a
λ2ahA∗◦A(ξa), ξai=X
a
λ4a.
命題4.4.2の証明中示したように、s∈Sym(T M)に対してad(s)はEnd(T M)の 対称線形変換になることに注意して、B(A)の定義(命題4.4.2)を使うと、
htr(B(A))◦A, Ai=X
b
htr(B(A))◦A(ξb), A(ξb)i
= X
a,b
had(Aξa)ad(Aξa)Aξb, Aξbi=X
a,b
had(Aξa)Aξb,ad(Aξa)Aξbi
= X
a,b
|[Aξa, Aξb]|2 =X
a6=b
|[Aξa, Aξb]|2.
最後の|[Aξa, Aξb]|2を評価するために、次の補題を準備する。
補題 4.4.19 S ∈Sym(Rn)とT ∈End(Rn)に対して、
|[S, T]|2 ≤2|S|2|T|2 が成り立つ。
4.4. Simonsの不等式 107 証明 Sは対称だから、Sを対角化する正規直交基底をとることにより、Sは対 角行列であると仮定してよい。そこで、Sの対角成分をsiとし、T = [tij]として おく。このとき、[S, T]の(i, j)成分は(si−sj)tij になるので、
|[S, T]|2 =X
i,j
(si −sj)2t2ij ≤max(si−sj)2X
i,j
t2ij = max(si−sj)2|T|2. ここで、(i, i)成分のみ1で他の成分は0になる行列をEi で表し、(si0 −sj0)2 = max(si−sj)2とすると、
max(si−sj)2 = (si0 −sj0)2 =hEi0 −Ej0, Si2 ≤2|S|2. したがって、
|[S, T]|2 ≤2|S|2|T|2 が成り立つ。
補題4.4.18の証明の続き 補題4.4.19より、
htr(B(A))◦A, Ai=X
a6=b
|[Aξa, Aξb]|2 ≤2X
a6=b
|Aξa|2|Aξb|2 = 2X
a6=b
λ2aλ2b.
すでに得ている結果と合わせると、
hA◦A∗◦A+ tr(B(A))◦A, Ai ≤ X
a
λ4a+ 2X
a6=b
λ2aλ2b
= 2 ÃX
a
λ2a
!2
−X
a
λ4a. ここで、Cauchy-Schwarzの不等式より、
ÃX
a
λ2a
!2
= ÃX
a
1·λ2a
!2
≤X
b
1X
a
λ4a=rX
a
λ4a となるので、
1 r
ÃX
a
λ2a
!2
≤X
a
λ4a. 以上より、
hA◦A∗◦A+ tr(B(A))◦A, Ai ≤ µ
2− 1 r
¶
|A|4 が成り立つ。
定義 4.4.20 θをn次元Riemann多様体M上の1次微分形式とする。∇θはM上 の(0,2)型テンソル場になり、
divθ = tr(∇θ) = Xn
i=1
(∇eiθ)(ei)
によってM上のC∞級関数divθを定める。ただし、e1, . . . , enはMの局所的な正 規直交ベクトル場である。divθをθの発散と呼ぶ。
補題 4.4.21 θをコンパクトRiemann多様体M 上の1次微分形式とすると、
Z
M
divθ = 0 が成り立つ。
証明 M が向き付け可能の場合は、M に向きを定め体積要素をvolとすると、
M上の関数fに対して Z
M
f = Z
M
fvol.
特に、 Z
M
divθ = Z
M
divθvol.
M が向き付け可能でない場合は、二重被覆写像π : ˜M → M で、M˜ が向き付け 可能なものが存在する。πによるM のRiemann計量のM への引き戻しはM˜ の
Riemann計量になり、πは局所的等長写像になる。M˜ の体積要素をvolで表すと、
M上の関数fに対して Z
M
f = 1 2
Z
M˜
f ◦πvol.
πは局所的等長写像になっているので、(divθ)◦π= div(π∗θ)が成り立つので、
Z
M
divθ = 1 2
Z
M˜
divθ◦πvol = 1 2
Z
M˜
div(π∗θ)vol.
が成り立つ。よって、補題を示すためには、Mが向きの付いたコンパクトRiemann 多様体の場合に示せば十分である。
M の任意の点xをとり、その近傍で定義された正の向きの正規直交ベクトル場 e1, . . . , enを∇(ei)xej = 0を満たすようにとる。このとき、
[ei, ej]x =∇(ei)xej − ∇(ej)xei = 0
となることに注意しておく。θi =θ(ei)とおくと、点xにおいて divθ=X
i
(∇eiθ)(ei) =X
i
(∇ei(θ(ei))−θ(∇eiei)) = X
i
eiθi
4.4. Simonsの不等式 109 となる。e1, . . . , enをe1, . . . , enの双対基底とし、
∗θ = Xn
i=1
(−1)i+1θie1∧ · · · ∧eˆi∧ · · · ∧en
によって(n−1)次微分形式∗θを定める。∗θは正の向きの正規直交ベクトル場の とり方によらず、M 上の(n−1)次微分形式を定めることがわかる。(Mに向きが ないと∗θは定まらない。)さらに、点xでは
d(∗θ)(e1, . . . , en) = Xn
i=1
(−1)i+1ei((∗θ)(e1, . . . ,ˆei, . . . , en))
+X
j<k
(−1)j+k(∗θ)([ej, ek], e1, . . . ,eˆj, . . . ,eˆk, . . . , en)
= Xn
i=1
(−1)i+1ei(−1)i+1θi = divθ.
よって
d(∗θ) = divθvol となり、Stokesの定理より
Z
M
divθvol = Z
M
d(∗θ) = 0.
定理 4.4.22 (Simonsの不等式) Mを定曲率1の(n+r)次元球面Sn+r(1)内のコ ンパクト極小部分多様体とする。このとき、M のシェイプ作用素Aは
Z
M
µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2 ≥0 を満たす。
証明
θ(X) = h∇¯XA, Ai (X ∈T M) によってM上の1次微分形式θを定める。定義より、
−htr( ¯∇2A), Ai=−X
i
h∇¯ei∇¯eiA, Ai
= −X
i
eih∇¯eiA, Ai+X
i
h∇¯∇eieiA, Ai+X
i
h∇¯eiA,∇¯eiAi
= −divθ+ trh∇¯A,∇¯Ai.
よって、補題4.4.21と補題4.4.18より、
0 ≤ Z
M
trh∇¯A,∇¯Ai= Z
M
divθ− Z
Mhtr( ¯∇2A), Ai
= −
Z
M
htr( ¯∇2A), Ai
= Z
M
(−n|A|2+hA◦A∗◦A, Ai+htr(B(A))◦A, Ai)
≤
Z
M
½
−n|A|2+ µ
2−1 r
¶
|A|4
¾
= µ
2− 1 r
¶
Z
M
µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2. したがって、不等式
Z
M
µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2 ≥0 を得る。
系 4.4.23 定理4.4.22と同じ仮定のもとで、さらにM は連結であると仮定する。
このとき、|A|2の値に関して次のいずれか一つが成り立つ。
(1) ある点p∈Mが存在し、|A|2p > n 2−1/r。
(2) 恒等的に|A|2 = 0が成り立つ、すなわち、M は全測地的球面Sn(1)になる。
(3) 恒等的に|A|2 = n
2−1/rが成り立つ。
証明 (1)を否定する。すなわち、すべての点で
|A|2 ≤ n 2−1/r が成り立つと仮定する。
|A|2− n
2−1/r ≤0 となり、定理4.4.22より
0≥ Z
M
µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2 ≥0,
すなわち、 Z
M
µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2 = 0.
4.4. Simonsの不等式 111
定理4.4.22の証明中に示したことより、
Z
M
trh∇¯A,∇¯Ai= 0
となり、∇¯A = 0が成り立つ。よって、M 上の任意のベクトル場Xに対して X|A|2 =XhA, Ai= 2h∇¯XA, Ai= 0
となり、Mの連結性より、|A|2はM上定数になる。積分が0になることから µ
|A|2− n 2−1/r
¶
|A|2 = 0 となり、恒等的に
|A|2 = 0 または |A|2 = n 2−1/r.
|A|2 = 0のときは、Mは全測地的になり、M =Snとなる。
命題 4.4.24 Mを曲率Kの定曲率空間内のn次元極小部分多様体とし、Mのシェ イプ作用素をAで表し、スカラー曲率をτで表すと、
τ =Kn(n−1)− |A|2 が成り立つ。
証明 命題4.2.5より、
K(hY, ZihX, Wi − hX, ZihY, Wi)
=hR(X, Y)Z, Wi+hh(X, Z), h(Y, W)i − hh(X, W), h(Y, Z)i となるので、Mが極小部分多様体であることから、
τ = X
i,j
hR(ei, ej)ej, eii
= X
i,j
(K(hej, ejihei, eii − hei, ejihei, eji)
−hh(ei, ej), h(ej, ei)i+hh(ei, ei), h(ej, ej)i)
= Kn(n−1)−X
i,j
hh(ei, ej), h(ei, ej)i. ここで、補題4.1.4より、
hAξa(ei), eji=hh(ei, ej), ξai=haij