第 4 章 Riemann 部分多様体 79
4.3 高橋の定理
定理 4.2.9 M をRn+r内のコンパクトn次元Riemann部分多様体とする。Mの 各点pの接ベクトル空間TpM のk次元部分ベクトル空間Tp0が存在し、Tp0 内の任 意の2次元部分空間σの断面曲率Kσが、Kσ ≤0を満たすと仮定する。このとき、
r≥kが成り立つ。
証明 M のRn+rへの挿入をx:M →Rn+rで表す。M 上のC∞級関数fを f(p) =hx(p), x(p)i (p∈M)
で定める。M はコンパクトだから、fはMのある点p0で最大値をとる。Rn+rの Levi-Civita接続を∇˜で表すことにすると、任意の接ベクトルX ∈Tp0Mに対して、
0 =Xf = 2h∇˜Xx, x(p0)i= 2hX, x(p0)i
が成り立つ。これより、x(p0)はMの法ベクトルになる。Mの第二基本形式をh で表すことにすると、
X2f = 2h∇˜XX, x(p0)i+ 2hX, Xi=hh(X, X), x(p0)i+ 2hX, Xi. fはp0で最大値をとるので、X2f ≤0が成り立つ。よって、X 6= 0に対して
0≥ −hX, Xi ≥ hh(X, X), x(p0)i となり、特に、h(X, X)6= 0となる。
M の断面曲率に関する仮定とGaussの方程式を使うと、X, Y ∈Tp00に対して、
0≤ −hR(X, Y)Y, Xi=hh(X, Y), h(Y, X)i − hh(X, X), h(Y, Y)i となり、
hh(X, X), h(Y, Y)i ≤ hh(X, Y), h(Y, X)i
を得る。以上より、h:Tp00 ×Tp00 →Tp⊥0Mは補題4.2.8の仮定を満たすので、r≥k が成り立つ。
系 4.2.10 非正断面曲率を持つコンパクトn 次元Riemann多様体は、R2n−1 の
Riemann部分多様体にはなり得ない。
4.3. 高橋の定理 91 補題 4.3.2 MをRN 内のRiemann部分多様体とし、その挿入をx:M →RN で 表わす。Mの第二基本形式と平均曲率ベクトルをそれぞれhとHで表わす。Mの Levi-Civita接続とLaplacianをそれぞれ∇と∆とすると、
h=∇2x, ∆x=−H
が成り立つ。特に、M が極小部分多様体になるための必要十分条件は、xが調和 関数になることである。
証明 RNのLevi-Civita接続を∇˜ で表す。例3.5.7より、M上のベクトル場X, Y に対して
(∇2x)(Y, X) =Y Xx−(∇YX)x=Y X − ∇YX = ˜∇YX− ∇YX =h(Y, X) となるので、xのHessian ∇2xはMの第二基本形式に一致する。
∆x=−tr(∇2x) = −tr(h) = −H
となるので、xのLaplacian ∆xは−Hに一致する。Mが極小部分多様体になると いうことはH = 0ということであり、xが調和関数になるということは∆x= 0と いうことだから、Mが極小部分多様体になることとxが調和関数になることは同 値になる。
定理 4.3.3 (高橋) M をRN 内のn次元Riemann部分多様体とし、その挿入を x : M → RN で表わす。ある0でない定数λが存在し、xが∆x = λxを満たす と仮定すると、λは正の定数になり、M はRN内の原点中心で半径p
n/λの球面 SN−1(p
n/λ)の極小部分多様体になる。逆に、MがRN 内の原点中心で半径aの 球面SN−1(a)の極小部分多様体ならば、λ = n/a2とおくと、xは∆x = λxを満 たす。
証明 まず、ある0でない定数λが存在し、xが∆x=λxを満たすと仮定する。
補題4.3.2より、
−H = ∆x=λx
となる。λ 6= 0だから、Mの各点でベクトルxはMの法ベクトルになる。よって、
M の任意のベクトル場Xに対して、hX, xi= 0となり、
Xhx, xi= 2h∇˜Xx, xi= 2hX, xi= 0.
よって、関数hx, xiは局所的に定数になる。そこで、局所的にhx, xi=r2とする。
−λx = H =D H,x
r Ex
r = 1 r2
X
i
hh(ei, ei), xix= 1 r2
X
i
h∇˜eiei, xix
= −1 r2
X
i
hei,∇˜eixix=−1 r2
X
i
hei, eiix=−n r2x.
これより、λ =n/r2となり、λは正の定数であって、r =p
n/λが成り立つ。特に、
hx, xiはM全体で一定値n/λをとる。したがって、挿入xの像は球面SN−1(p n/λ) に含まれる。
Mの球面SN−1(p
n/λ)内の第二基本形式をh0とし、平均曲率ベクトルをH0で 表わす。さらに、球面SN−1(p
n/λ)のRN内の第二基本形式を˜hで表わすことに すると、Mの接ベクトル空間上でh=h0 + ˜hが成り立つ。よって、
H =X
i
h(ei, ei) = X
i
h0(ei, ei) +X
i
h(e˜ i, ei) =H0+X
i
˜h(ei, ei).
Hはxに比例しているので、特にSN−1(p
n/λ)に接する成分は0になる。よって H0 = 0が成り立つ。つまり、Mは球面SN−1(p
n/λ)内の極小部分多様体になる。
逆に、MはRN内の原点中心で半径aの球面SN−1(a)の極小部分多様体である と仮定する。
H =X
i
h(ei, ei) =X
i
h0(ei, ei) +X
i
˜h(ei, ei) =X
i
h(e˜ i, ei)
より、Hはxに比例する。よって、
−∆x = H =D H,x
a Ex
a = 1 a2
X
i
hh(ei, ei), xix= 1 a2
X
i
h∇˜eiei, xix
= − 1 a2
X
i
hei,∇˜eixix=−1 a2
X
i
hei, eiix=−n a2x.
そこで、λ=n/a2とおくと、∆x=λxが成り立つ。
定理 4.3.4 (高橋) コンパクト等質Riemann多様体Mの線形イソトロピー表現が 既約のとき、M は球面の極小部分多様体になり得る。
証明 MはコンパクトRiemann多様体なので、∆の0でない固有値はすべて正 で可算個存在し、各固有値の固有空間は有限次元になることが、楕円型偏微分作 用素の理論から知られている。そこで、∆の0でない固有値λを一つとり、Vλを その固有空間とする。すなわち、
Vλ ={f ∈C∞(M)|∆f =λf}.
Mの等長変換群の単位連結成分をGで表すと、Gはコンパクト連結Lie群になり、
Mに等長推移的に作用する。さらに、GはC∞(M)にL2内積に関して等長的に作 用し、Gの作用は∆の作用と可換になるので、固有空間Vλを不変にする。Vλの 正規直交基底f1, . . . , fNをとり、
˜
x(p) = (f1(p), . . . , fN(p)) (p∈M)
4.4. Simonsの不等式 93