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ハプロタイプ 比較ゲノム解析

基礎基礎応用

バイオインフォマティクス

ゲノム・遺伝子解析技術 遺伝子機能解析技術

ゲノム科学(ヒトゲノム解読完了)

蛋白質工学 遺伝子工学 細胞工学 発生工学

材料工学 解析装置・ソフトウェア ナノテク

薬理ゲノミクス トキシコゲノミクス

ゲノム創薬 バイオ医薬

疾患モデル動物

疾患関連遺伝子/蛋白質/SNPs 創薬技術

蛋白質製剤、抗体医薬 サイトカイン 免疫療法剤 アンチセンス医薬

個別化医療

個人情報管理 診断

IT

創薬

蛋白質構造解析 蛋白質機能解析

SNPs

ハプロタイプ 比較ゲノム解析

基礎基礎応用

バイオインフォマティクス

  出所:平成 15 年度 特許出願技術動向調査「ポストゲノム関連技術」より改変 

図表  1-5-2  ポストゲノム関連技術(産業への応用)の論文発表状況(世界全体) 

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600

1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 発表年

論文

蛋白質構造解析 蛋白質機能解析 SNPs

ハプロタイプ 比較ゲノム解析 ドラッグデザイン

  出所:平成 15 年度 特許出願技術動向調査「ポストゲノム関連技術」 

   

これらのポストゲノム技術は医療・創薬等のライフサイエンスを支える基盤技術として 重要な位置を占めている。遺伝子治療、再生医療などの先端医療はポストゲノム技術の応 用が期待できる分野であり、創薬においてもバイオ医薬、核酸医薬、分子標的薬の開発等 への応用が期待されている。また、インシリコ薬物動態毒性予測システムによるスクリー ニングの普及など、新薬探索研究の効率化にも可能性を広げる技術である。さらにはトキ シコゲノミクス手法を用いた医薬品安全性評価予測システムの構築など、より安全な医薬 品の開発という観点からもその応用が期待されている。 

 

2.先端医療技術の動き

ゲノム技術、ポストゲノム技術を応用した先端医療の代表的なものとして遺伝子治療、

再生医療について最近の動向をみてみよう。 

遺伝子治療は遺伝子あるいは遺伝子を導入した細胞を患者の体内に導入することにより 疾患を治療する医療技術であり、1990 年に米国NIH(国立衛生研究所)で先天性代謝疾患で あるADA(アデノシンデアミナーゼ)欠損症に対して行われたものが第一号である。日本で も 1995 年に同じくADA欠損症患者にわが国初の遺伝子治療が実施されている。その後、癌、

エイズなどの後天的な致死性疾患に対しても実験的に実施されている。有効性、安全性に ついて未知の部分が多い技術分野であるが、直接治療を目的としない遺伝子マーキングを 含め、既に世界中で 1,000 以上の臨床プロトコールが承認され、5,000 人以上の患者に対し、

遺伝子が導入されている1)。遺伝子治療は基盤技術であるウイルスベクターの開発とともに

1) 島田隆  バイオテクノロジージャーナル 7(2)2007:154-157 

進展してきたが、「核酸医薬」として注目されている「アンチセンスDNA」「デコイDNA」「RNAi

(RNA干渉)」等のポストゲノム技術が実用化に至れば遺伝子治療にさらなるステップアッ プを期待することができよう。 

一方、再生医療は病気やけがなどによって機能障害や機能不全に陥った生体組織・臓器 を、人工的に培養した細胞や組織を用いて修復あるいは再生することを目的とした新たな 医療技術であり、従来からの臓器移植や薬物治療に代わるものとして期待されている。 

再生医療の基盤となる細胞は自己複製能と様々な細胞への分化能を併せ持つ幹細胞であ るが、もっぱら成人の臓器・組織に存在する体性幹細胞を用いた研究が中心である。胚性 幹細胞(ES 細胞)や胎児由来の幹細胞の応用は技術的・生命倫理的な課題が多くハードル が高い。対象疾患は幅広く、血液疾患、神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病)、

循環器疾患(心筋梗塞、拡張性心筋症)、筋ジストロフィー、劇症肝炎など様々な難治性疾 患で、体性幹細胞を利用した再生医療の研究が進められている。遺伝子治療などに比べる と注目されるようになって来たのはごく最近であり、新聞等の記事数をみても 2000 年以降 注目されるようになってきたことが分かる(図表 1-5-3)。 

 

図表  1-5-3  遺伝子治療と再生医療に関する記事数 

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 以降

記事数

遺伝子治療 再生医療

  出所:日経テレコンによりキーワード検索 

 

再生医療に関する研究は 1970 年代にハーバード大学で開発された培養皮膚、98 年に米ウ ィスコンシン大で作成されたヒトES細胞等、米国で成果が生まれたものが多く世界をリー ドしてきたが、細胞シート技術の開発(東京女子医大)等、日本が得意とする材料技術を 再生医療に結びつけることにより、技術的に日本が世界をリードするケースも出てきてい る。ただ実用化の点で米国が先行しており、25 以上の製品が上市済、90 以上の開発プロジ

ェクト(内、臨床段階のものは 30)が進行中である2)。一方、わが国において再生医療は医 師による臨床研究の位置付けで実施されていたが、2006 年 9 月 1 日に「ヒト幹細胞を用い る臨床研究に関する指針」が施行され、今後は高い品質、安全性が要求される治験として 実施されることになる。それに合わせて審査体制、審査プロセス等を含めたインフラの整 備が進むことにより今後わが国における再生医療の進展が期待される。

 

3.個別化医療(オーダーメイド医療)への動き

ゲノム、ポストゲノム研究が進展してきたことで従来経験的に認識されていた疾患の発 症、薬剤の応答性等の個人差が遺伝子レベルで説明できるようになってきた。遺伝子と疾 患、薬剤応答性との関係がさらに明らかになってくると個々の遺伝子情報に対応した医療 が可能となり、病気ごとに画一的な医療を施す従来のレディメイド医療から、個人に適し た個別化医療(オーダーメイド医療)への移行が進むものと期待されている(図表 1-5-4)。 

日本では文部科学省主導の「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」で、バイオバン クに収集された DNA サンプルを活用して、遺伝子の個人差(一塩基多型;SNPs)と疾患と の関係や薬剤の効果、副作用などとの関係を明らかにする試みが進められている。 

このような遺伝子と薬剤に関する情報の活用は、新薬開発の領域では既に利用されつつ ある。ファーマコゲノミクス(PGx)は、特定の医薬品の安全性、有効性に影響を及ぼす遺 伝的素因を特定し、医薬品の選別、投与量の調整等に活用する技術であり、既に FDA は新 薬の申請に際し、SNPs など PGx データの提出を推奨している。今後さらに研究が進展する ことにより、新薬の開発領域にとどまらず、医療現場での新薬の使用方法にも大きな変化 をもたらす可能性がある。 

 

図表  1-5-4  レディメイド医療からオーダーメイド医療へ   

                   

従来のレディメイド医療 個別化医療

患者A

患者B

患者A

患者B

医薬品が 適合した場合

医薬品が 適合できない場合 同じ医薬品を投与

有効

無効

(場合により副作用)

医薬品が 適合する

医薬品が 適合する

有効

有効

(副作用も出にくい)

遺伝子診断でa薬を投与 遺伝子診断でb薬を投与

従来のレディメイド医療 個別化医療

患者A

患者B

患者A

患者B

医薬品が 適合した場合

医薬品が 適合できない場合 同じ医薬品を投与

有効

無効

(場合により副作用)

医薬品が 適合する

医薬品が 適合する

有効

有効

(副作用も出にくい)

遺伝子診断でa薬を投与 遺伝子診断でb薬を投与

2) 川上浩司 京都大学教授講演資料「再生医療と規制の国際動向」(2007 年 2 月 7 日) 

4.新薬の多様化−抗体医薬、核酸医薬、分子標的薬の進展  

創薬技術と医薬品の進歩 

生命科学の目覚しい発展は、数々のイノベーションを通じて医薬品を大きく進化させて きた(図表 1-5-5)。とりわけ近年のバイオテクノロジーの進展は創薬のコンセプト、技術、

プロセス等に大きな影響を与えた。旧来はランダムスクリーニングを中心とした確率論的 な医薬品開発が中心であったが、近年ではバイオテクノロジー技術を駆使することにより、

より科学的かつ論理的な創薬アプローチに移行しつつある。ある特定の疾患に関連する遺 伝子あるいはタンパク質を特定し、それらをターゲットとした科学的、生物学的なアプロ ーチで開発を進めるゲノム創薬はその代表的な例である。このような創薬技術の進展に伴 い、創出される新薬の種類は多様化してきており、今までにはなかった新たなカテゴリー に属する新薬の出現をもたらしている。 

 

図表  1-5-5  医薬品の進化 

有機合成技術の進歩 によるスクリーニグ

生体内の受容体の 働きに着目

生体内の酵素の 働きに着目 ゲノム技術(遺伝子組

換え等)の応用

ポストゲノム技術 の応用 天然物由来成分

とその誘導体

偶然による発見

個別化医療 遺伝子治療 再生医療

1900 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

アスピリン ペニシリン

クロルプロマジン

(向精神薬)

非ステロイド性 消炎鎮痛剤(NSAID)

H2受容体拮抗薬 β受容体遮断薬

ヒトインスリン インターフェロン

HMG-CoA 還元酵素阻害薬

ACE阻害薬

抗体医薬 核酸医薬 分子標的薬

インドメタシン イブプロフェン

シメチジン プロプラノロール

プラバスタチン カプトプリル

トラスツズマブ ペガプタニブ

イマチニブ 有機合成技術の進歩

によるスクリーニグ

生体内の受容体の 働きに着目

生体内の酵素の 働きに着目 ゲノム技術(遺伝子組

換え等)の応用

ポストゲノム技術 の応用 天然物由来成分

とその誘導体

偶然による発見

個別化医療 遺伝子治療 再生医療

1900 1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010

アスピリン ペニシリン

クロルプロマジン

(向精神薬)

非ステロイド性 消炎鎮痛剤(NSAID)

H2受容体拮抗薬 β受容体遮断薬

ヒトインスリン インターフェロン

HMG-CoA 還元酵素阻害薬

ACE阻害薬

抗体医薬 核酸医薬 分子標的薬

インドメタシン イブプロフェン

シメチジン プロプラノロール

プラバスタチン カプトプリル

トラスツズマブ ペガプタニブ

イマチニブ

  出所:「有効で安全な医薬品を迅速に提供するための検討会」資料より改変  

  抗体医薬 

1990 年代前半までは、世界で承認された新薬の中心は天然物や低分子化合物であったが、

90 年代後半よりバイオテクノロジーを利用したバイオ医薬の割合が高まってきている(図 表 1-5-6)。初期のバイオ医薬は、遺伝子組み換え技術により作成されたインスリン、成長 ホルモン、またエリスロポエチン・G-CSF といった造血因子等であったが、近年では抗体産 生技術の革新を背景に、モノクローナル抗体を中心とした抗体医薬の開発が目覚しく進ん

ドキュメント内 第1章 製薬産業を取り巻く環境変化 (ページ 36-52)

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