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ドキュメント内 第1章 製薬産業を取り巻く環境変化 (ページ 197-200)

支援

6〜7年 3〜4年 3〜4年 1〜2年

2) TheDeal.comの報告によると、2000 年のベンチャーキャピタルによるシードステージへの投資はバイオ 企業への投資全体の 5.6%に過ぎない。 

この問題を解決するための有効な手段として、米国で導入されている SBIR(Small  Business Innovation Research)や STTR(Small Business Technology Transfer)などの 公的資金による支援がある。SBIR は、従業員 500 人以下の中小企業に対して各省庁が統一 の運用基準に基づいて研究開発資金を援助するもので、1982 年に制定された。また、STTR は、技術移転を主たる目的に 1994 年から導入されたもので、中小企業と大学または非営利 研究機関との共同研究に対して資金提供が行われる。これらの公的資金は、投資リスクを 政府が請け負うことで研究初期ステージにあるバイオベンチャーの資金不足を解消し、事 業成長に必要な資金の流れを滞らせない重要な役割を果たしている。 

日本でも 1998 年から日本版 SBIR(中小企業技術革新制度)が開始され、各省庁(2006 年度 7 省庁参加)は毎年特定補助金等の支出目標額を設定し、中小企業の研究開発に対す る資金援助を行っているものの、その運営は米国の SBIR と異なっている。ここでは、医療 関連分野を中心に米国の SBIR/STTR と日本版 SBIR それぞれの支出規模や件数、その運用方 法について比較してみよう(図表 4-1-7)。 

 

図表 4-1-7  米国 SBIR/STTR と日本版 SBIR の比較(2004 年度) 

  米国 SBIR/STTR  日本版 SBIR 

参加省庁数  10 省庁  6 省庁 

全体  22.2 億ドル  298 億円 

医療関連  6.3 億ドル(NIH)  非公表 

支出額 

比率  28.4% 

全体  7,190 件  1,242 件 

医療関連  2,274 件(NIH)  約 200 件  件数 

比率  31.6%  約 16% 

予算設定方法 

SBIR:外部研究費の 2.5% 

STTR:外部研究費の 0.3%  各省庁が支出目標額を設定  採択方式  2 段階競争選抜方式で統一 

1 件あたり支出額  第 1 段階:最高 10 万ドル  第 2 段階:最高 75 万ドル 

公募案件ごとに異なる  スキーム 

外部評価  外部評価パネルを活用  外部評価の積極的活用を推奨  注:米国の 2006 年参加省庁数は 11、支出額全体は 22.0 億ドル、医療関連支出額は 6.4 億ドル 

日本の 2006 年参加省庁数は 7、支出目標額全体は 370 億円、2005 年件数全体は 1,779 件  出所:中小企業庁、NIH ホームページをもとに作成 

 

2004 年度の実績によると、米国全体では SBIR/STTR 合計で 7,190 件、22.2 億ドルが支出 され、うち NIH 分は 2,274 件、6.3 億ドルと全件数の 31.6%、支出全体の 28.4%を占めてい る。これに対し、日本版 SBIR の医療関連支出額は公表されていないものの、支出総額は 298

億円と米国の 15%以下にとどまっている。また、日本版 SBIR における医療関連の件数は約 200 件と全 1,242 件の約 16%に過ぎず、医療関連分野についても NIH の支出額との開きは大 きいと推測される。日本版 SBIR の場合、予算設定にあたっては各省庁が目標支出額を設定 するにとどまっており、外部研究開発予算が 1 億ドル以上の予算を持つ省庁はその一定比 率(SBIR2.5%、STTR0.3%)を中小企業向けとすることが義務付けられている米国の SBIR/STTR とは大きく異なる。バイオベンチャーの育成を強化するためには、医療関連分野の SBIR 予 算を重点化することが必要となろう。 

一方、米国SBIRの 1 件あたりの資金供給額は比較的小さく、第 1 段階として開始プロジ ェクトに最高 10 万ドル、第 2 段階として継続プロジェクトに最高 75 万ドルが支払われる3)。 つまり、米国のSBIRは多額の資金を必要としないもののリスクが高いシードステージのプ ロジェクトに広く資金援助を行うプログラムとなっている。これに対し、日本版SBIRの 1 件あたりの支出額は明らかにされていないが、創薬系の公募案件の中には前臨床試験段階 のシーズを有していることを採択の条件にするなど、必ずしもシードステージでないプロ ジェクトも見受けられる。日本版SBIRには、確実性がより高いと見なされる少数のプロジ ェクトに手厚い資金援助を行うのではなく、バイオベンチャーの裾野拡大という一貫した 目的のもと、研究開発初期に必要なリスクマネーを公的資金が広範に請け負うというコン セプトの統一化が求められる。 

さらに、現段階では応募案件の採択方式や外部評価の活用といった運用基準は、各省庁 によって独自に定められている。SBIR の認知度が必ずしも高くない理由となっており、利 用しやすさの面からも見直しが必要である。 

このように、日本版 SBIR は省庁ごとに定めた様々なプログラムの集合体となっているの が現状である。シードステージの有望なプロジェクトを競争的に採択し、創薬系バイオベ ンチャーの成功モデルを数多く創り出すためには、コンセプト、予算設定方法、採択方式、

外部評価などに関する省庁横断的な統一プログラムを早急に確立すべきであろう。 

 

製薬企業とバイオベンチャーの連携促進 

日本でバイオベンチャーを活性化していくためには、その主たる連携相手である製薬企 業が積極的にベンチャーとの関わりを持つことが必要である。 

企業とベンチャーとの関係は、一般に社外資源の活用と社内資源の活用に大別できる。

社外資源を活用するものとしては、1)ベンチャー企業との連携、共同開発、2)事業会社ベ ンチャーキャピタルによるベンチャーへの投資、3)ベンチャー企業の買収、M&A などがある。

また、社内資源を活用するものとしては、1)社内ベンチャー育成、2)スピンオフ(スピン アウト)ベンチャー育成、3)カーブアウト推進などがある。 

前者の社外資源を活用したベンチャーとの関わりについては、日本の製薬産業において

3) 米国SBIRでは、スタートアップ時の第 1 段階(フェーズ 1 という)に 1 件あたり最高 10 万ドルが 6 ヶ月 間給付されたあと再度審査が行われ、これを通過した継続プロジェクトに対して第 2 段階として(フェー ズ 2 という)最高 75 万ドルが 2 年間に渡り給付される 2 段階方式が採られている。 

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