第 3 章 スピンホール効果トンネル分光法による Pt のスピンホール角評価
3.5. SHT で求めたスピンホール角の検証
本項では前項で評価したスピンホール角とその温度以前性に関して他の手法と合わせて検 討しスピンホール効果のメカニズムについて解析を行う。
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3.5.1. Pt におけるスピンホール効果のメカニズムの概略
図3.20. 非局所スピンバルブを用いたスピンホール角の伝導率依存性[10]
先行研究としてスピンバルブデバイスを用いて白金のスピンホール効果のメカニズムを 検証した実験によると抵抗率に対して依存性を示す領域においては内因性の寄与が大きく 一方で一定値を示す様になると外因性の寄与が支配的になるということが分かっている。
これは内因性のスピンホール効果については抵抗率依存性を示す一方外因性のスキュー散 乱については抵抗率に対して一定値を示すためである。
また、外因性のサイドジャンプについても内因性同様抵抗率依存性を示すことが知られて いるが白金においては無視できることが分かっている。
3.3.2 スピンホール角の温度依存性の比較
Ptのスピンホール角温度依存性については広く研究が行われており、いくつかの先行研究 を取り上げ比較する。重要な点として抵抗率領域においてスピンホール角の値が異なるた め SHT デバイスで用いた白金と同領域で行われている実験をピックアップする必要があ
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る。そこで条件に当てはまる先行研究2つを以下に示す。
図3.21. ST-FMRとスピンバルブのスピンホール角温度依存性
そこで本SHTで求めた結果と比較すると、いずれも温度依存性を示しておらず一定値を 示した点で比較した先行研究に一致する。一方でスピンホール角の値については若干の違 いがみられる。この違いは測定手法の違いだけが原因かどうかを検証する必要がある。
3.5.2. スピンホール効果のメカニズムの解析
スピンホール効果のメカニズムに関しては、一般に抵抗率の自乗でスピンホール抵抗率 をプロットし、次式を用いた解析が行われている。
int 2
SH SH imp
(3.7)56
ここでρSH、
SHint、ρ、ρimp、はそれぞれ、スピンホール抵抗率、内因性スピンホール伝導 率、金属の抵抗率、不純物由来の抵抗率である。また、不純物伝導率はスキュー散乱寄与と サイドジャンプによる寄与に分解できる。すると以下の式になる。int 2 sj 2
SH SH SH 0 ss 0
(3.8)ここで
SHsj 、ρ0、αss、はサイドジャンプ伝導率、残留抵抗率、スキュー散乱角である。一 般にPtにおいてはサイドジャンプの寄与が無視できるとしてメカニズムの解析が行われて いるので本議論においても同様に取り扱い以下の式を用いて解析を行った。(3.9)
図3.22. スピンホール抵抗率とPtの抵抗率自乗の関係
その結果は図に示すとおりであり、いずれの線形に変化していることが確認され解析式 の適用が可能となる。
int 2
SH SH Pt ss 0,Pt
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表3.1. フィッティングパラメータのまとめ
3.6. 3 章の結論
本研究では広くスピンホール角とその温度依存性が評価されている白金を対象として研 究を行った。スピンホール効果トンネル分光法を用いる事によって金属/強磁性体界面で生 得る付随的な効果を排除した系で評価することにより従来の手法によるスピンホール角評 価における潜在的な問題に関して検証した。
その結果として、概ね先行研究と同一範囲内のスピンホール角が得られた。よって SHT だけでなる従来行われているその他の手法も含めて信頼性が確認され既に示した潜在的な 問題点に対して排除されたことが本手法を用いて検証を行った意義であると考える。また、
メカニズムに関して従来の手法と比較すると、各手法の違いを除いて考慮すると内因性の メカニズムの寄与は比較的再現性がある一方で外因性の寄与、Pt の場合はスキュー散乱が 大きく異なっていることが判明した。これは、Pt という同一材料に対して抵抗率が同領域 であるということだけでスピンホール角が一義に定まらない可能性を示唆している。現に3 つの手法で比較した場合で抵抗率が同様域であってもスピンホール角の絶対値がそれぞれ 6%、4%、1.5%程度とそれぞれ異なっている。その原因として外因性のスキュー散乱の 寄与が大きいと考えられるわけであるが、この違いは膜質、例えば結晶粒径や膜密度等より 細かい部分も考慮する必要があることを示している。また金属/強磁性体・金属/金属界面等 に由来する効果が影響している可能性もある。