SDGsとは,2015年9月の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開 発のための2030アジェンダ」(United Nations, 2015; 外務省, 2015)(以下,「SDGs2030
表5.1 先行研究における「ワークショップ」の定義
要素 中野 広石 堀・加藤 山内他 森・北村
(2001) (2005) (2008) (2013) (2013)
体験 〇 〇 〇 -
-協働(共同) 〇 〇 〇 -
-相互作用 〇 〇 - - 〇
創造 〇 〇 〇 - 〇
主体的な参加 〇 - 〇 -
-学校の内外 - - - ノンフォーマル 学校外
先行研究を基に筆者が作成。“-”は,その要素について言及がないことを表す。
アジェンダ」という。)に記載された,2016年から2030年までの国際目標である。SDGs は,「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり,持続可能な 開発のための17の目標および169のターゲットで構成されている。
日本におけるSDGsの認知は年々高まっている(朝日新聞社, 2019)。特に中学生・高校 生・大学生といった学生における認知率が高まっているとする報告もあり,学生らはSDGs について学校を経由して認知したとみられている(株式会社電通, 2019)。改訂指導要領に おいても,「総合的な探究の時間」「地理」「公共」「家庭基礎」などの教科・科目の解説に SDGsの記載があり,学校教育では今後さらに注目が集まる概念である。
「SDGs2030アジェンダ」では,前文において「貧困を撲滅することが最大の地球規模の課
題」とされ,「誰一人取り残さないこと」がうたわれている。また,「すべての国及びすべて のステークホルダー」が「協同的なパートナーシップ」を発揮し,問題の解決や目標の達成 に向かう必要性を述べている。さらに,「各国の発展段階の違い及び能力の違い」に配慮し ながら,「すべての国や地域に進展をもたらすウィン・ウィンの協力」と「地球規模の開発の ために我々が一つとなって身を費やすこと」を定めている。これらの記述から,「SDGs2030 アジェンダ」には,貧困のない社会を作るために協力すること,ただしその協力に当たって は各国の能力等に配慮すること,また,発展途上国の支援だけを目的としたものではなく,
すべての国,地域がウィン・ウィンの形で発展することが記述されている。
SDGsは表5.2に示す17の目標で構成されている。これらの目標には三つの側面がある。
すなわち,環境的側面,社会的側面および経済的側面である。環境的な側面を表す目標とし ては,資源の保護や気候変動への取り組みに関する内容,社会的な側面としては貧困や飢餓 の解消,質の高い教育,安全な飲料水や住居の確保といった内容が掲げられている。さら に,経済的な側面として,持続的な経済成長や働きがいのある人間らしい仕事の創出といっ た目標も含まれている。「SDGs2030アジェンダ」では,SDGsとして掲げられた目標群は
表5.2 SDGsの17の目標
No. キャッチフレーズ 内容
1 貧困をなくそう あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる。
2 飢餓をゼロに 飢餓を終わらせ,食料安全保障及び栄養改善を実現 し,持続可能な農業を促進する。
3 すべての人に健康と福祉を あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保 し,福祉を促進する。
4 質の高い教育をみんなに すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保 し,生涯学習の機会を促進する。
5 ジェンダー平等を実現しよ う
ジェンダー平等を達成し,すべての女性及び女児の 能力強化を行う。
6 安全な水とトイレを世界中 に
すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な 管理を確保する。
7 エネルギーをみんなにそし てクリーンに
すべての人々の,安価かつ信頼できる持続可能な近 代的エネルギーへのアクセスを確保する。
8 働きがいも経済成長も 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の 完全かつ生産的な雇用と働きがいのある 人間らし い雇用(ディーセント・ワーク)を促進する。
9 産業と技術革新の基盤をつ くろう
強靱(レジリエント)なインフラ構築,包摂的かつ 持続可能な産業化の促進及びイノベー ションの推 進を図る。
10 人や国の不平等をなくそう 各国内及び各国間の不平等を是正する。
11 住み続けられるまちづくり を
包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能 な都市及び人間居住を実現する。
12 つくる責任つかう責任 持続可能な生産消費形態を確保する。
13 気候変動に具体的な対策を 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を 講じる。
14 海の豊かさを守ろう 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し,
持続可能な形で利用する。
15 陸の豊かさも守ろう 陸域生態系の保護,回復,持続可能な利用の推進,
持続可能な森林の経営,砂漠化への対処, ならびに 土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻 止する。
16 平和と公正をすべての人に 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進 し,すべての人々に司法へのアクセスを 提供し,あ らゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂 的な制度を構築する。
17 パートナーシップで目標を 達成しよう
持続可能な開発のための実施手段を強化し,グロー バル・パートナーシップを活性化する。
外務省(2015)を基に筆者が作成。
「統合され不可分」のものであり,「持続可能な開発の三側面,すなわち経済,社会及び環 境の三側面を調和させるもの」とされている。すなわち,SDGsに掲げられた目標や問題は 個々に存在するのではなく,互いに関係し合って存在していると捉えられている。
「SDGs2030アジェンダ」は,SDGsに関する取り組みの評価および報告についても言及
している。グローバルな指標によって各国の進捗を可視化し,各国が互いの進捗を報告し合 うことが,「効果的な国際協力を支援し,成功例の交換や相互学習を促進」し,さらに「共通 の課題や新たに対応が必要とされる課題への対処のための支援」に結びつくと述べられてい る。すなわち,進捗を可視化することによって,「成功,課題,教訓を含む経験の共有」が図 られているのである。進捗を測定するための指標として,全244(重複を除くと232)のグ ローバル指標からなる指標枠組みが策定され,2017年7月の国連総会において承認された
(United Nations Statistics Division Development Data and Outreach Branch, 2019; 総
務省, 2019)。測定した指標を共有する場としては,「ハイレベル政治フォーラム」がその役
割を担い,毎年各国によるフォローアップとレビューが行われている。
「SDGs2030アジェンダ」を受け,外務省(2019)はSDGsの特徴を表5.3 のようにまと めている。
表5.3 外務省によるSDGsの特徴のまとめ 普遍性 先進国を含め,全ての国が行動
包摂性 人間の安全保障の理念を反映し「誰一人取り残さない」
参画性 全てのステークホルダーが役割を 統合性 社会・経済・環境に統合的に取り組む 透明性 定期的にフォローアップ
外務省(2019)より抜粋。
本研究で行うワークショップでは,SDGsをテーマとして扱うにあたり,「SDGs2030ア ジェンダ」に示されている「環境・社会・経済の三側面のつながり」と「進捗の可視化」,お よび外務省(2019)のまとめた「参画性」と「統合性」に焦点を当て,2つのテーマとして 取り上げる。1つめのテーマは「つながり」である。世界で起きている問題は独立して存在 するのではなく互いに関係しあっていること,解決のためには一つの側面だけでなく複数の 側面のつながりを意識ながら問題を捉える必要があること,知識や知恵を共有するために パートナーシップが重要であること,これらをまとめて「つながり」というテーマとして扱 う。2つめのテーマは「可視化」である。進捗状況をデータとして収集し理解しやすい形で 表現すること,目標を明らかにし共有すること,これらをまとめて「可視化」というテーマ として扱う。
以上のように,本論文におけるワークショップでは,SDGsをテーマとして扱うにあたり,
SDGsの本質の一部である「つながり」と「可視化」に焦点をあてて計画を行う。