蟹江 広範囲なテーマに対して、初めからすべて解決 しようとするとパンクしてしまいますから、できるところ から少しずつ取り組み、少しずつ視野を広げていくこと でアイデアが生まれてくると思うんです。学生にもよく いうのは、
169
のターゲットを2
つ組み合わせるだけ でも、約2
万8
千通り以上の発想が掻き立てられます。優先課題は一人ひとり違うものであり、だからこそ社会 が多様で面白いのですが、それぞれが違った発想を 持って、ひとつずつ取り組みながら、できるところは 一緒に取り組んでいくことで、大きな価値を生み出す ことが可能になります。
中田 最初に
SDGs
という枠組みを見たとき、金融業や、我々のような証券会社に向いているという印象を持ち ました。技術力のあるメーカーであれば、ひとつの 目標に深く大きく貢献できると思いますが 、金融は、
国や自治体をはじめ、さまざまな企業から一個人に 至るまで、広範に世の中に関わることができます。
たとえば当社グループでは、アグリ・フードビジネス に金融として力になれないか、現在検討しているので すが 、もしこれがひとつのビジネスモデルとして確立 できれば、食糧問題解決の一助になります。また金融業 界では、
FinTech
やAI
を活用して新しいイノベーションを 起こすという波が来ていて、実際にそのイノベーショ ンによる成果物で世の中の仕組みを良くしていくこと を目指しています。このように現在の取組みをSDGs
に アジャストして、分解してあげること、それから、新 しいビジネスにおいて、SDGs
のどこに取り組んでいく のか、クライテリアを付けて整理していくことで、落 とし込んでいけるのではないかと思います。広範囲なテーマに対して、初めからすべて解決しようとするとパンク してしまいますから、できるところから少しずつ取り組み、少しずつ
視野を広げていくことでアイデアが生まれてくると思うんです。
蟹江 憲史
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研 究科 教授。国連大学サステイナビリティ 高等研究所 シニアリサーチフェロー。東 京工業大学大学院社会理工学研究科 准教授を経て現職。欧州委員会Marie Curie Incoming International Fellow 及びパリ政治学院客員教授などを歴任。
蟹江 今、
FinTechやAIのお話がありましたが、大学
内でも、SDGs
に強い関心を示す一群は、テクノロジー 分野の学生や研究者です。インターネットの技術基盤 開発で有名な村井純教授は 、テクノロジ ー をSDGs
でくくり直すというような構想を掲げています。たと えば、電子マネーですべての取引をするようになれば、取引のスピードは速くなりますし、現金を印刷する必要 もなくなり、その分の資源消費を抑えることができ 、 環境や格差問題などへ副次的効果が次々と派生する ことが予想できます。テクノロジーとの結びつきは当 初意外でしたが、こういう話が色々なところから出て いて、面白いフェーズに入ってきていると思います。
地方も、テクノロジーと結びつく部分が数多くあり ます。
2018
年6
月には、内閣府が29
都市を、「SDGs
未来都市」として選定しました。選ばれた都市のプロ ポーザルを見ても、テクノロジーを活用して、テレワーク の推進をするというものもありました。農業をテクノ ロジー によって改善すれば 、気候変動が激しいなか でも良い作物を効率的につくることで、農業人口が 減っているなかでも収益をあげることもできます。あるいは3Dプリンターの活用により、輸送コストや消費 エネルギーを削減していくことも可能になるでしょう。
人口の少ない地方都市は、むしろSDGsの実験的な 取組みをしやすい環境にあると考えます。地域金融 機関などを巻き込んで、
SDGsに取り組んでいる企業が
メリットを得られるような仕組みをつくろうとしている 自治体もあります。地方でも金融機関が鍵を握り、多様な手法で新たなイノベーションを起こしていくこと ができ得るのではないかと思います。
中田 地方はやはり、そこを良く知る自治体、地元 有力企業、地方銀行などが主体的に取り組まないと 難しい面があると思います。我々は全国の拠点を 通じて、地方自治体、企業などに働きかけ、支援して いくことが役割だと思っています。
また今後、公募やワークショップなどを通じて社員 の自発的な取組みを進めていこうと検討しています。
会社に関わっている間だけでなく、地域社会での生活 を通じて意識していくことでカルチャーが醸成されて くると思います。それが、会社全体として新しい良いア イデアの創出につながるよう、個人と組織のチェーンを うまく回していける仕組みをつくっていきたいと考 えています。
蟹江 いろんな人がいろんな発想をして、それが連携 して新たなことを生みだす仕組みができるという考え が
SDGs
にはありますが、そういう連携のひとつの可能 性がアカデミアにも求められているのではないかと思 います。研究者も象牙の塔にこもり論文を書いている だけではなく、社会との関わりが重視されてきていま す。SDGs
は、企業と同じ言葉で話をできる良い機会 を提供してくれており、それをぜひ活かしていきたい と思っています。論理的・客観的データを活用して、これまでの体系を応用して分析し、新しいアクションをつ くっていくようなことは、アカデミアの得意分野とし て貢献していけるところがあると思います。
中田 今夏からは 、蟹江先生が代表をされている
「慶應義塾大学SFC研究所 xSDG・ラボ」と協働させて いただきます。今後も当社グループの
SDGs
活動にさ まざまな助言をいただきたく思いますので、よろしくお 願いします。金融業界では、FinTechやAIを活用して新しいイノベーションを 起こすという波が来ていて、実際にそのイノベー ションによる 成果物で世の中の仕組みを良くしていくことを目指しています。
SDGs特集
部門戦略
47
大和証券グループの事業部門48
リテール部門53
ホールセール部門57
アセット・マネジメント部門61
投資部門62
その他63
特別対談:未来の証券ビジネスとイノベーション68
戦略的なIT
活用とサイバーセキュリティへの取組み2,000
1,000
0
–1,000 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 (年度)
–326
–122
951
1,970
1,845
1,651
1,356 1,556
事業部門別経常利益推移
海外部門経常収支推移
リテール部門 ホールセール部門 アセット・マネジメント部門 投資部門 その他・調整額 経常利益合計
欧州 アジア・オセアニア 米州 海外部門合計
リテール部門
ホールセール部門
アセット・マネジメント部門
投資部門
その他