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ROP IIP

ドキュメント内 エネルギー資源 と 経済 (ページ 193-200)

OPD X

log log log

  

 

30 20 10 0

a a a

A

 

 

i i i

i i i

i i i i

a a a

a a a

a a a A

33 32 31

23 22 21

13 12 11

  

 

3 2 1

b b b B





















O t

D t

S t

ROP t

IIP t OPD t t

e e e e

33 32 31

22 21 11

0 0 0

ただし,ΔlogOPDt:t期の世界の石油生産量(百万バレル/日)の対数一階階差,

ΔlogIIPt:t期のOECD鉱工業生産(2005年を基準)の対数一階階差,logROPt:t期の 実質原油価格($2010/バレル)の対数値,logOPCt:t期の最大生産能力(百万バレル/

日)の対数値(外生変数),et:誘導形VARの誤差項(etOPD:石油生産量の対数階差の誤

差項,et IIP:鉱工業生産の対数階差の誤差項,et ROP:原油価格の対数値の誤差項),εt:構

造ショック(εt S:供給ショック,εt D :需要ショック,εt O:その他ショック)。すなわち,

当該期においては,供給ショックは3内生変数のすべてに影響し,需要ショックは鉱工業 生産と原油価格に影響し,その他ショックは原油価格だけに影響すると仮定している

(Kilian(2009) および笛木ほか(2009) と同じ設定)。

このモデルによる推計結果を表 4-2 に示す。ラグ長は,上記したように情報量基準を用い て検討した結果,2期まで考慮している。

194

表 4-2 VAR モデルによる推計結果(左:生産制約あり、右:生産制約なし)

DLOPD:石油生産量対数一階階差,DLIIP:OECD鉱工業生産対数一階階差,

LROP:実質原油価格対数値,LOPC:最大石油生産能力対数値,C:定数項

…(-1):1期前、…(-2):2期前

195

このモデルの特徴の一つは外生変数として最大生産能力(右辺第3項)を入れたことで ある。これは,前節までの検討で埋蔵量に起因する余剰生産能力が大きな規定要因となっ ていることが判明したからである。しかし,余剰生産能力の算出には内生変数である石油 生産量が用いられており,多重共線性や系列相関などの問題を避けるため,ここでは「最 大生産能力」(前節参照)を用いた。生産能力は既発見埋蔵量に依存するので,ここでの 対象期間であれば既知であり,外生変数として扱える。また,生産能力は,発見埋蔵量が 長い年月をかけて生産プロファイルに変換されるので,発見から生産開始までの評価・開 発期間に3~9年,生産開始からピーク生産までのビルドアップ期間に4~14年を要し,

生産期間は26~114年にわたる。したがって,10年程度の将来予測を行うのであれば,

既に確定している既発見油田の埋蔵量だけを用いても生産能力の推定誤差は小さい。

これより遠い将来を予測する際には今後の埋蔵量追加を含めて評価する必要があるが,

第3章第3節で検討したように,将来の油田発見数さえ推定できれば個々の油田の規模,

ひいては追加埋蔵量は推定できる。さらに,この後議論するように,将来の油田発見数は 石油生産量と原油価格からある程度推計できるので,この意味では生産能力も外生変数で はなく,むしろシステム内で決定される内生変数といえる。第5章では,この因果関係を 含めて内生化し,すべての相互作用のフィードバック・ループの解明を試みる。

このモデルにより,原油価格上昇前の2003年末までのデータに基づき推計を行い,

2004年以降について原油価格(対数)の条件付き予測値(ベースライン:ショックのない 場合,青曲線)を求め,実績(赤線)と比較したものが図 4-14 である。2008年半ばの価 格急騰とその後の急落などの短周期変動は正確には反映されていないが,2004年以降の価 格上昇の長周期トレンドがかなり正確に再現されている。図 4-15 は生産能力による制約

(式(4-3)の右辺第3項)を入れない場合で,こちらでは2003年以前の緩やかに上昇する トレンドが単に延長されるだけで,2004年以降の価格上昇が再現されていない。すなわ ち,図 4-14 の推計では外生変数(生産能力による制約)の導入が効果的であったことを 示している。栁澤(2008)のVAR解析では,供給および需要ショックを加えても図 4-15 のベースラインに近い推計しか得られておらず(これを「ファンダメンタル」と称してい る),価格変動(上昇)の大半はその他(価格)ショック(主として投機を想定)に起因 する「プレミアム」であると解釈している。しかし,この解析では需要と供給に同一現象 の表裏ともいうべき石油生産量と消費量(この差は在庫増減)を使用していて,真の需給 の均衡を検討していないこと(前節参照)がその原因であると考える。

196

図 4-14 原油価格(対数)の条件付き予測値(ベースライン)と実績の比較(生産制約あり) LROP(Baseline):条件付き予測値(生産制約あり),LROP:実績

図 4-15 原油価格(対数)の条件付き予測値(ベースライン)と実績の比較(生産制約なし) LROP(Baseline):条件付き予測値(生産制約なし),LROP:実績

2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

LROP (Baseline) LROP

2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0

1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010

LROP (Baseline) LROP

197

2004年以降について,図 4-14 のベースラインと実績に前節同様の余剰生産能力の回帰 結果による予測も加えて比較したのが図 4-16 である。生産制約を加えたVARと比較して も,余剰生産能力による回帰のほうが,2008年半ばの価格急騰とその後の急落など現実を

(振幅は小さいものの)よく再現している。これは,前節の回帰では現実の生産量を外生 的に使用しているのに対し,本節のVARでは生産量も推計の対象としているためであ る。しかし,両者の全体傾向は一致していて,この生産能力を外生変数として加えたVAR によっても前節の回帰が追認されている。

図 4-16 原油価格(対数)の実績・余剰生産能力による回帰・VAR 予測値(ベースライン)

LROP:実績値,LROP(Baseline):VAR推計値,LROF:余剰生産能力による回帰

このように,過去の原油価格の長周期変動はかなりの部分が供給制約を入れた推計によ って説明できるが,誤差項(各種ショック)が確率的に表現されるため,期待値(ベース ライン)では,現実の価格変動より振幅が小さく,また短周期の価格変動は説明できな い。このVARモデルではベースラインとの乖離を3種類の構造ショックにより説明して いる。図 4-17 は,生産制約ある場合の,これら3種類にそれぞれ1標準偏差のショック

(イノベーション)が与えられた時の,それに対する各内生変数の応答を示している。先 行研究に比べると一般に応答期間が短いが,長周期の変動は外生変数による供給制約によ り既に説明されているためと解釈される。

3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0

2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011

LROP LROP (Baseline) LROPF

198

図 4-17 VAR モデルで推定した各変数の各構造ショック(1標準偏差)に対する応答

石油生産の各ショックに対する応答は,予期せぬ石油生産(供給)ショックに対しては 同時点には当然ながら同方向の応答を示すが,翌期および翌々期にはむしろ逆方向の応答 を示していて,予期せぬ生産障害(または急増)に対して他地域などからの増産(または 減産)で補填していると解釈される。需要ショックに対しては,2~4期後に同方向の応答 を示していて,需要の増減に対して生産が調整されている。その他(価格)ショックの影 響は小さく,次節で検討するように,原油価格の石油生産への影響は極めて長期のタイム ラグを伴うため,このスパンでは表現されないものと解釈される。

鉱工業生産は,供給(石油生産)ショックに対し,有意ではないものの,当初2期は同 方向(正)の,その後1~2期は逆方向(負)の応答を示していて,供給増による経済加速 とその後の調整を表わしている可能性がある。需要(鉱工業生産)ショックへの応答は大 きく,数期にわたって正の影響がある。その他(価格)ショックへの応答は2期目には正

-.004 .000 .004 .008 .012

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLOPD to DLOPD

-.004 .000 .004 .008 .012

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLOPD to DLIIP

-.004 .000 .004 .008 .012

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLOPD to LROP

-.002 .000 .002 .004 .006 .008

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLIIP to DLOPD

-.002 .000 .002 .004 .006 .008

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLIIP to DLIIP

-.002 .000 .002 .004 .006 .008

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of DLIIP to LROP

-.04 .00 .04 .08 .12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of LROP to DLOPD

-.04 .00 .04 .08 .12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of LROP to DLIIP

-.04 .00 .04 .08 .12

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

Response of LROP to LROP Response to Cholesky One S.D. Innovations±2 S.E.

199

であるが,その後は長期にわたって負の影響が継続・増大している。

原油価格は、供給ショックに長期にわたって負の応答を示している可能性があるが有意 ではなく,供給制約は既に外生変数により説明済みのためだと思われる。需要(鉱工業生 産)ショックに対しては長期かつ大きな正の応答を示している。その他(価格)ショック に対する原油価格の応答は正で極めて大きく,逓減しつつも長期に及んでいる。価格の変 動が自らにより増幅されているわけで,市場の思惑や心理などにより価格がオーバーシュ ートしている可能性がある。

これらの結果はBarsky and Kilian(2004)の結果と調和的である。彼らは中でも原油価 格の供給(石油生産)ショックに対する応答の小ささに注目し,原油価格が供給に支配さ れるという伝統的な見解は誤りであると論じている。しかし,前章でも検討したように石 油生産量は,余剰生産能力を左右反転した供給曲線と需要曲線との交点に価格とともに決 定される「結果」と考えるべきで,石油生産量で供給サイドを代表させることはできず,

生産能力でないと供給は正当に評価できないと筆者は考える。ただし,供給サイドの短周 期のショックは原油価格にほとんど影響を与えないことは筆者の結果でも確認された。

上記のVARモデル(供給制約付き)では,2004年以降のショックのない場合の原油価 格(対数)の条件付き予測値(ベースライン)(図 4-14)と実績値との差は3種類の構造 ショックに起因すると解釈される。この残差を1期ごとに下三角行列(φnm)と各ショッ クの積にコレスキー分解して,どのショックに起因するかを示した歴史的要因分解が図 4-18 である。このグラフは,ショックなしのベースライン(図 4-16 の赤曲線)を水準0の 水平線としたときの各時点の実績値との差と,それが3種類のうちどのショックにより説 明されるかの内訳を示している。

供給(石油生産)ショックの影響は,全期間を通して極めて小さく,外生的に与えた生 産能力の制約によりほぼ説明し尽くされているという,図 4-17 および上記の議論が裏付 けされた。このモデルによれば,2008年後半から2009年にかけてのベースラインの変動 を超えた大きな原油価格の下落はその大半が需要ショックに起因している。この時期は

「リーマンショック」など金融に起因するとされる不況に相当している。需要ショックは 価格変動に先行する傾向が認められる。一方,2008年前半の原油価格高騰を含む,そのほ かのベースラインからの乖離の多くは,主としてその他(価格)ショックに起因してい て,価格変動に同期またはやや遅行している。原油価格はおもに思惑や心理的な自励起反 応により価格上昇が増幅され,需要の減退ショックにより下降すると解釈できる。

ドキュメント内 エネルギー資源 と 経済 (ページ 193-200)