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(2-79) 途中は単純になるが結果は式(77)と同じであり,費用が埋蔵量の減少に伴い増加する場合

ドキュメント内 エネルギー資源 と 経済 (ページ 59-66)

には,完全競争であっても資源保護的になる。

2.1.4. 最適生産経路問題(第1節)のまとめ 以上の検討結果を文章の形で以下にまとめる。

(1)埋蔵量または資源量が当初から既知であると仮定し,その通期における利益現在価値

(ここでは割引率は全期間を通して一定と仮定)を最大化するように各時点の資源の 生産量を決定すると考える。この際,所有者は資源量の範囲内で各時点の生産量を自由 に選択できると仮定する。2.1.5で議論するように,これらの仮定は現実とはそぐわず,

問題を単純化した仮想的設定である。

(2)まず,単純化のため費用を無視する(または単位生産量あたり費用が価格に比例する)

と,資源の潜在経時価格(current-value shadow price,地下に保持している埋蔵量の 単位当たり価値)は生産量当たりの限界収入(費用を無視しているので限界利益)に等 しくなり,その上昇率が割引率に等しくなるような生産経路が最適となる。

(3)さらに,需要の価格弾力性が生産量にかかわらず一定であると仮定すると,生産量は

(需要の価格弾力性)×(割引率)で減退する必要がある(需要が定率で成長するとき は、(割引率)に換えて(割引率)-(成長率)を用いる)。したがって,弾力性が 1 で あれば減退率は割引率に等しく,弾力性が 1 より大き(小さ)ければ減退率は割引率よ

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り大き(小さ)い必要がある。ただし,独占など,世界全体での利益現在価値最大化を 目指す場合は,需要の価格弾力性が1以下であると,上限価格や生産期間などの制約が ないかぎり,生産をしない(可能な限り先延ばしする)方が有利となり現実的ではない。

(4)上記(2),(3)は,完全競争と独占の双方に等しく当てはまる。均衡では潜在経時 価格(current-value shadow price)はその時点の限界収入に常に一致し,生産者は資 源の保持と生産が無差別になる。限界収入は,完全競争の時はその時点の価格に等しく,

独占の時はその時点の価格に生産量変化による限界価格変化(生産量を増やすと価格 が下がる)を加えたものになるが,価格上昇率は,完全競争でも独占でも同じで,割引 率に等しくなる。このとき,生産量は(需要の価格弾力性)×(割引率)(または,(割 引率)-(需要成長率))で減退する必要がある。これが”Hotelling rule”で,枯渇性資源 生産の基本命題である(Hotelling,1931)。

(5)上記(4)においては,常に生産と保持が無差別なため,当初生産量と当初価格は一 意には決定できない。ただし,生産期間が定められていて生産終了時に,または,無期 限生産でその極限(無限遠の将来)において資源が枯渇すると仮定すれば,生産量と価 格の経路が定まる。無期限生産の場合は,当初生産量は当初埋蔵量に価格弾力性と割引 率(または,割引率-需要成長率)を掛けたものになる。生産期間が有限の時は無限生 産に比べて,生産量は高く,価格は低くなる。

(6)上記において,太陽光発電・核融合などの「無尽蔵な」な“back-stop technology” が 存在するが,採算に必要な価格が現在の資源の価格(原油価格)を上回るため,現時点 では生産開始していない場合を考える。原油価格がその価格(「上限価格」)に達する(わ ずかに超える)と, 資源の全面転換が起こり,石油生産は完全に停止する。したがって,

完全競争においては,上限価格に達した時に資源がちょうど枯渇するのが最適経路に なる。このとき,上限価格に達するまでの期間(すなわち“back-stop technology”が利 用可能になる時期)が同じなら埋蔵量が多いほど当初価格が低くなり,当初価格が同じ なら埋蔵量が多いほど生産期間は長くなり,埋蔵量が同じなら高い当初価格は長い生 産期間を意味する。当初埋蔵量と上限価格が既知であれば,最適生産経路(生産量・価 格・期間)はこれらの相反する制約の均衡点に決定する。

(7)上記(6)の議論で,独占の場合は,価格上昇率および生産減退率は完全競争と同じ であるが,上限(より微小に低い)価格に達しても,その価格(および生産量)でしばら く生産を継続するのが最適経路になる。これは,独占の時の限界収入が価格より低いた

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め,上限価格に達した時点(この時“price taker”になる)でも限界収入(割引率で上 昇)に上昇余地があるからである。上限価格(およびそれに対応した一定の生産量)での 生産は限界収入が上限価格に達するまで続き,そこで枯渇するのが最適経路になる。し たがって,同一の埋蔵量および上限価格で,完全競争ケースと同時に生産開始するとき,

独占ケースは,当初生産量がより低く(価格はより高く),先に上限価格に達するが,

そこでの定常生産がしばらく続き,枯渇して生産停止するのは完全競争より後になる。

(8)上記(3)の需要の価格弾力性一定という仮定を緩め,価格弾力性が生産量に応じて 変化する場合を考える。完全競争においては,各企業は“price taker”であり価格弾力 性にかかわらず限界収入は価格に一致するため,上記(3)~(6)はそのまま成立す る。独占の場合,生産量低下が弾力性上昇に結びつくときは(一般にはこれを想定),

価格上昇率は割引率よりも低く,生産減退も完全競争より緩慢になる。これは,埋蔵量 が同じで同時に枯渇するのなら,独占は完全競争に比べて,当初生産量は少なく,残存 埋蔵量は常に多く,資源保護的になる。生産量低下により弾力性が下降するなら(考え にくいケースではあるが),逆に独占が資源浪費的になる。

(9)次に,費用を無視(0または価格に比例)という(2)の制約をゆるめ,費用が生産 量に比例する(すなわち,生産量あたりの費用単価が一定の)場合を考える。完全競争 のときは,最適解における収入(価格-費用)の上昇率が割引率に等しくなる。一方,

独占の場合,収入の上昇率は割引率より低くなる。すなわち生産減退も価格上昇も完全 競争より緩やかになり,したがって当初価格がより高く,当初生産量がより低くなり,

独占は完全競争に比べ資源保護的となる。

(10)資源の減少に伴ってその生産がより困難になると考え,費用が残存埋蔵量の減少関数

(累計生産の増加関数)であると考えると(単純化のため費用は生産量には依存しない と仮定),費用を無視したケースに比べ,限界収入および価格の上昇率は割引率より低 くなり,生産減退率も低くなる。したがって,同時に枯渇するなら,費用が埋蔵量の減 少に伴い増加する場合には,そうでない場合より常に生産量は低く,独占・完全競争と も資源保護的になる。

2.1.5. 最適化問題の問題点と限界

以上の如く,一般化したモデルにより先行研究の主要結論が検証された。このモデルは比 較的単純で汎用性があり,枯渇性資源の生産パターンについて考察する際に参考になる。し

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かし,世界全体の生産量が徐々に減退し,価格は徐々に上昇するという共通的結論は実績と は大きくかけ離れており,実際には生産は現在に至るまで増産傾向にあり,価格はしばしば 乱高下してきた。これは,本モデルの前提には,下記の如く幾つかの致命的欠陥があるため と考えられ,特に石油・天然ガスの場合,現実の生産実績を検討するには適していない。

(1) 個々の油田の埋蔵量は,生産開始前にある程度正確に推定できるが,全世界の総資 源量は,今後発見される未発見油田も多く未確定で,次章で検討するように過去の資源 量推定は常に上方修正されてきた。一方,既発見埋蔵量は探鉱・開発の進行に伴い増大

(「埋蔵量成長」,詳細次章)するものである。したがって,当初から資源量が既知であ る,あるいは埋蔵量が一定であるという前提は成立しない。

(2)石炭や金属鉱物(特に露天掘り)は,生産・採鉱量を埋蔵量の範囲である程度自由 に選択できるが,石油・天然ガスの場合,その生産量は地層の深度・特性および排出エ ネルギーに依存していて(ポンプ採油・水攻法などの2・3時回収法も自然エネルギー を補完するものに過ぎない),生産量(の上限)は坑井数に応じて半自動的に決定し、

自由裁量で選択できるものではない(詳細次節)。

(3)石油・天然ガスの場合,探鉱(物理探査・試掘など)および開発(生産井掘削,処 理・輸送・出荷施設の建設など)の初期投資が出費の大半を占める。瞬間生産能力(生 産量上限)を上げるには多額の初期投資が必要になり,それを初期には生産量を絞って 回収を先延ばしにすることは投資効率が悪く,現実的ではない。同様に,割引率や価格 上昇率が大きく変化しない限り,中途投資で採算性があるのなら,それを当初から行っ たほうがより採算は向上する。すなわち,ひとたび生産設備の規模(特に坑井数)が決 定すれば,それに対応して地層の排出エネルギーにより決定される生産能力の上限で 生産するのが最適経路となる。この問題は,初期投資(坑井数)の最適化を含めて次節 で検討する。

(4)Back-stop技術(核融合,太陽光発電など)による「上限価格」は,それらの技術の 本格的実用化直近にならないと正確には推定できず,過去にも常に上方修正を余儀な くされてきた。また,第3章第2節で検討するように,太陽光などの無尽蔵性にも疑問 がある。

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