(3-12) は負にはならないので,次のようになる(C は任意定数)。
log
(3-13)121 t t 1でt ‐ t 1 0, E 1 t E 1 t 1 E 1 なので,
(3-14) t t 2でE 1起源の石油が半分(E 1 t 2 E 1/2 )になっていたとすると,
(3-15) したがって,
δ log
(3-16) t 2-t 1 ≣ T とおくと,この期間T で資源が半分になるので,これを「半減期」と呼ぶ。≅
.(3-17) 時点t 1で既に(ほぼ)平衡に達しているとすると,その後は賦存量 E * E 1 t +E 2 t は 変化しないが,その内訳,すなわちE 1 t とE 2 t の比率は変化する。時点t 1から半減期T を経た時点t 2においてはE 1 t 2 =E 2 t 2 =E */2 となる。逆に言うと,時点t 2において,
その時の賦存量を二分する時点t 1が分かればt 2-t 1が半減期 Tとなる。石油の生成年代 は,根源岩および貯留岩の堆積年代よりは若く,熱履歴に基づく石油の生成・移動のシミュ レーションなどから推定できる。こうして推定した世界の石油の生成年代の中央値(これよ り古い石油と新しい石油が等量)が石油の半減期T に相当する。Miller(1992)はやはり BP 社の社内資料から,「石油システム」の在来型と非在来型を合せた半減期を約 1 億年
(100MMY),「貯留岩システム」の在来型の石油の半減期を2900万年(29MMY)と評価 しているので,本論文ではこの数値を採用する。これらを式(3-17)に代入すれば年あたり破 壊・散逸率(δ )が求まる。ここでは在来型と非在来型を合せたものを石油の賦存量と考えて いるので,T = 100MMY を用いて次のようになる。
δ
. .6.93 10 Y
(3-18)すなわち,在来型+非在来型の百万年あたりの破壊・散逸率は0.693%/ MMYとなる。
ここで,石油生成開始時期6億年前(t 600MMY),年あたり石油生成量 G = 1.5MMB/Y,
年あたり破壊・散逸率δ = 0.693%/ MMY と必要な数値がそろったので(図3-1),これら を式(3-7)および (3-9)に代入する。
122
. . .
.
. . .
B 2.13 10 B
(3-19) ..
2.16 10 B
(3-20)
この結果,(非在来型を含めた)石油の賦存量は式(3-19)より213兆バレルとなり,完 全には平衡(216兆バレル,式(3-20))には達していないが,ほぼこれに近い値(98.6%)
となった。もともと上記の石油生成量および半減期を求める過程で,現在の賦存量はすでに 平衡に達していると仮定して計算しており,このモデルでの推定値は 1~2%程度の誤差を 含むもので,有効数字は2桁と考えられる。
図 3-1 石油生成モデルの概要
123 -
さらに,年あたり石油生成量(破壊・散逸量から求めた)と半減期には Miller(1992)
の数値をそのまま用いたが,BP社が社内データを公表していないので,その検証は行えな い。評価の精度は高くないと推定されるが,いずれも現在観測される諸事実と矛盾しない値 であり,それらに基づく上記計算結果もオーダーとしては有効であると考える。
以下の考察では,特に断らないか限り,石油の賦存量として平衡値の 216 兆バレルを用 いる。この値は,先行研究の3~4兆バレルという資源量推定値(例えばUSGS(2000))や 前章で「修正Hubbert曲線」から求めた6兆バレルという資源量(これまでの研究では例 外的に大きな数値)よりも2桁近く大きなものである。賦存量は,その定義からも明らかな よう,細かく分散して存在するなど品位が極めて低く将来的にも回収不可能な資源も含む が,数量的にはその寄与が極めて大きいことを意味する。この問題は次節および第6章で検 討する。
3.2.1.2. 石油の生成集積シミュレーション(年あたり生成量が変化するケース)
上記のモデルでは,石油生成量 G が時代を通じて一定で,現在と同じであったと仮定し ていた。しかし,石油は生物起源なので,実際の石油生成量は生物量に依存していたはずで ある。そこで,生物の科数の変遷(Raup and Sepkoski, 1982)を参考に,石油の生成量の 変遷について3種類のケースを設定した(図 3-2A)。現時点の年当たり生成量は,上記モ デルと同じくMiller(1992)に従い毎年 150 万バレル(1.5MMB/Y)でどのケースも同じと する。ケース1は,上記モデルと同じで,この量が生成開始した6億年前(カンブリア紀)
から一定とする(式(3-19))。ケース2は,生物がカンブリア紀から徐々に繁栄してきたと 考え,6億年前には0であった生成量が,線形で現在の値に増加してきたとする。ケース3 は,より忠実にRaup and Sepkoski (1982) の生物の科数の変遷に石油生成量の変遷を設定 した。
上記のモデルを離散系に変換して,この3ケースにつき,数値シミュレーションを行った。
その結果を図 3-2Bに示したが,左側が在来型+非在来型で,本論文の賦存量に相当する。
右側には在来型(貯留岩)だけのケース(使用データは図 3-1 参照)も示している。石油は 生成時期によって,古生代(Paleozoic),中生代(Mesozoic),新生代(Cenozoic)に3分した。
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図 3-2 石油の生成量・賦存量のシミュレーション A:生成量の設定,B:結果(左:在来型+非在来型,右:在来型)
Raup & Sepkoski (1982)
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在来型+非在来型の賦存量は,ケース1では,式(3-19)で求めたのと同じ 213 兆バレル となり,グラフからもほぼ平衡に達していることがわかるが,古生代の石油もまだかなり残 されている。ケース2では,生成量が線形に増加してきたため,賦存量は 167 兆バレルだ が,現在も増加途中でまだ平衡には達していない。ケース3では,約2億5千万年前の「PT 境界」(古生代と中生代の境界)での大絶滅により生物量が急減したため,その後一時,破 壊・散逸量が生成量を上回った時期があり,現在の賦存量も 146 兆バレルと3ケースの中 では一番少ない。このケースも平衡には達しておらず賦存量は増加中である。生物は現在大 絶滅中であるが,その事実はここでの検討にはまだ反映されていない。
在来型(貯留岩)だけで見ると(右側),非在来型を加えた賦存量に比して1桁小さいが,
それでも従来の資源量評価値よりは1桁大きい数値である。また,半減期が短いため,古生 代の石油はほとんど残っておらず,大半は新生代の石油である。
以上は人類による石油採取開始前までの話で,現在の石油生産量(=消費量)の約
34,000MMB/Yは生成量(1.5MMB/Y)の2万倍以上であり,したがって,次章以降で展開す
る石油生産による残存賦存量・資源量の議論の際には,石油の追加生成による賦存量・資源 量の増加は無視してよい。
3.2.2. 枯渇性資源の生産量・埋蔵量・資源量・賦存量と持続可能性
表 3-1 に主な金属と石油の,現在の生産量(年産量)・埋蔵量・賦存量およびR/P(埋蔵 量/生産量)・R’/P(資源量/生産量)・E/P(賦存量/生産量)を示した。比較のために太陽光
(フロー/年)も示した。 石油の生産量,埋蔵量はBP統計(BP, 2017),資源量はMiller
(1992),賦存量は上記の平衡ケースの数値をそれぞれ使用した。太陽の生産量欄には2013 年の世界の 1 次エネルギー商業取引量を記入し,賦存量欄の地球全球の年間受光量は太陽 定数(地球近辺での太陽に対する垂直断面での単位面積当たりの受光エネルギー量),地球 半径,地球-太陽間距離,アルべド30% などから計算した。その他の資源の生産量・埋蔵 量 ・ 資 源 量 は 表 中 に 記 し た 出 典 か ら 引 用 し , 賦 存 量 は 地 殻 中 の 存 在 比 率(“crustal abundance”, CRC 2005 )に地殻質量を掛け合わせて求めた。
“E/P”(賦存量/生産量)は,金は4,000年,石油と太陽光は約7,000年,イットリウム
(レアアースの一種)は100億年(太陽系の残存寿命より長い)と,現在の生産量であれば 物理的には(技術や経済性を無視すれば)十分な量が存在する。
しかし注意を要するのは,ここで示している賦存量は,極めて細かく分散して存在してい
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たり,複雑な化合物を形成していたりして,その大部分は将来的にも資源として利用される ことはないということである。太陽光についても,その大半は海洋に照射されていて将来的 にも利用される可能性は低い。更に,地球の大気および水の循環や気候変動もすべて太陽エ ネルギーに駆動されており,水力や風力はその一部を利用するものである。この残りを,人 類を含めた全生物が利用していて,木材などのバイオマスもそこに含まれる。石炭・石油・
天然ガスなどの化石燃料は,こうして形成された過去のバイオマスの一部が地下に埋没し,
地球内部エネルギー(地熱)と地質学的時間により熟成して形成されたものである。
表 3-1 にR/P(埋蔵量/生産量)・R’/P(資源量/生産量)・E/P(賦存量/生産量)の数値を 示したが,これらは現在(表 3-1 では2010年または2013年)の生産量(P)を基準にした 値である。上記したように,賦存量の大半は将来的にも資源として利用されないものなので E/Pの数値はいずれも大きいが,仮にこの量がすべて利用されるとしても,生産量が経済成 長に呼応して増加すれば,「寿命」ははるかに短くなる。
表 3-1 枯渇性資源の生産量・埋蔵量・資源量・賦存量と「寿命」
出典:表中記載(①~⑨)以外は,USGS(2011a)に基づき計算
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年生産量が,現在(または基準年)の値P0から年率gで成長すると,t 年後の生産量は次 のようになる。