2) における 0 でない整数の平方数の和で表される整数
このセクションではεをQ(√
2)の基本単数である1+√
2とする.Q(√
2)の平方数は(a+b√ 2)2= (a2+ 2b2) + 2ab√
2だから,平方数の和で表される整数は√
2の係数が偶数である.
補助定理 3.2.1. p+ 2q√
2の形の全ての総正な整数はa+bε2 (a, b∈Z≧0)と同値である.ただし (a, b) = (0,0)は除く.
証明.
Sを
alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k (l, k∈Z, l≦k, al, al+1, . . . , ak∈Z≧0) (3.1) の形の整数の集合とする.このとき,0以上の有理整数は全てSに含まれる.
Sに属さない総正な整数でp+ 2q√
2の形のものが存在すると仮定する.するとその中で最小のト レースをもつものが存在し,それをα=a+ 2b√
2とする.ただしαは総正な整数だからa∈Z>0
であり,有理整数は全てSに属するからb̸= 0である.さらにαに共役な整数α=a−2b√ 2も同 様に最小のトレースをもつからb >0とでき,b∈Z>0である.
まずα−1が総正な整数であるとする. α−1 = (a−1)+2b√
2だからtr(α−1) = 2a−2<2a= tr(α) である.よってα−1∈Sだから
α−1 =alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k, α= 1 +alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k
=
1·ε0+ 0·ε2+· · ·+alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k (0< l) alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+ (1 +a0)ε0+· · ·+akε2k (l≦0≦k) alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k+· · ·+ 0·ε−2+ 1·ε0 (k <0)
とαを(3.1)の形で表せるからα∈Sとなり仮定に矛盾する.次にα−1が総正な整数でないとき,
α−1 = (a−1) + 2b√
2またはα−1 = (a−1)−2b√
2 のどちらか一方は負である.b≧1である から明らかにα−1が負である.(a−1)−2b√
2<0だから,a <1 + 2b√
2<1 + 3b≦b+ 3b= 4b である.αε−2= (a+ 2b√
2)(3−2√
2) = (3a−8b) + (6b−2a)√
2 だからtr(αε−2) = 2(3a−8b)<
2(3a−2a) = 2a= tr(α)である.よってαε−2 ∈ Sより,α∈ Sとなり仮定に矛盾する.よって p+ 2q√
2の形の総正な整数は全てSに属する.
次にα∈Sに対してk−lが最小になるようにα=alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+akε2k を決める.
ここで
ε2k−2+ε2l+2−ε2l+ 4(ε2k−2+ε2k−4+· · ·+ε2l+4+ε2l+2)
=ε2k−2+ε2l+2−ε2l+ 4·ε2l+2(1−ε2(k−l−1)) 1−ε2
=ε2k−2+ε2l+2−ε2l+ 4·ε2l+2(1−ε2(k−l−1))(1−ε−2) (1−ε2)(1−ε−2)
=ε2k−2+ε2l+2−ε2l+ 4·(ε2l+2−ε2k)(1−ε−2)
−4
=ε2k−2+ε2l+2−ε2l−ε2l+2+ε2l+ε2k−ε2k−2
=ε2k
より,ε2k= 5ε2k−2+ 4ε2k−4+· · ·+ 4ε2l+4+ 5ε2l+2−ε2lであることを用いる.k−l≧2と仮定 する.まずal≧akのとき,
α=alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+ak−1ε2(k−1)+akε2k
=alε2l+al+1ε2(l+1)+· · ·+ak(5ε2k−2+ 4ε2k−4+· · ·+ 4ε2l+4+ 5ε2l+2−ε2l)
=(al−ak)ε2l+ (al+1+ 5ak)ε2l+2
+ (al+2+ 4ak)ε2l+4+· · ·+ (ak−2+ 4ak)ε2k−4+ (ak−1+ 5ak)ε2k−2.
al−ak, al+1+ 5ak, al+2+ 4ak ak−2+ 4ak, ak−1+ 5ak ∈Z≧0だから,この変形も(3.1)で定め た形である.これはk−lが最小となるようにαを決めたことに矛盾する.次にal ≦akのとき,
ε2lをε2kと同様に変形したときにαも同様に変形できるので,先と同様に矛盾が生じる.よって k−l≦1 (l≦k)であるから
(i)k−l= 1のとき,α=aε2l+bε2(l+1)= (a+bε2)ε2l. (ii)k−l= 0のとき,α=aε2l= (a+ 0·ε2)ε2l.
よってp+ 2q√
2の形の全ての総正な整数は(i), (ii)をまとめてα= (a+bε2)ε2lとかける.よっ てそれはa+bε2と同値である.
補助定理 3.2.2. k≧1とし,Skをk個のnv. sq.の和で表せる数の集合とする.
α=p+q√
2 (p, q∈Z)を総正な整数としたとき,全てのk≧p−q+ 1に対してα /∈Skである.
証明.
(i)k= 1のとき.
k= 1≧p−q+ 1だからq≧pである.さらにαは総正な整数だから0< α=p−q√
2 < p−q である.よって1≦p−qよりq+ 1≦pとなる.q+ 1≦p≦qをみたすp, qは存在しないから α /∈S1である.
(ii)k≧2のとき.
k−1まではこの補助定理が成り立つと仮定する.このとき背理法を用いてkに対してもこれが成り 立つことを示す.あるk≧p−q+ 1に対して総正な整数α=p+q√
2をα∈Skと仮定する.このと きα1α2· · ·αk̸= 0で,α=α12+α22+· · ·+αk2を考える.するとα−α12=α22+· · ·+αk2だから α−α12∈Sk−1である.ここでα12=t+u√
2とおくとα12=t−u√
2である.α12=t−u√ 2>0 より,0< t−u√
2< t−uだから1≦t−uである.よって Sk−1∋α−α12= (p+q√
2)−(t+u√ 2)
= (p−t) + (q−u)√ 2
より(p−t)−(q−u) = (p−q)−(t−u)≦(p−q)−1である.k≧p−q+ 1より k−1≧p−q≧(p−t)−(q−u) + 1
だからα−α12∈/Sk−1となり矛盾が生じるからk≧p−q+ 1に対してもα /∈Skである.
定理 3.2.3. k≧4とし,αはQ(√
2)のp+ 2q√
2の形の総正な整数とする.
αがa+bε2 (a, b∈Z≧0, a+b≧k)と同値である場合,すなわちα/(a+bε2)がある単数の二乗 と等しい場合,またその場合に限り,αはk個の0でない平方数の和で表せる.
証明.
α=a+bε2=a+b(3 + 2√
2) = (a+ 3b) + 2b√
2である.a+b < kのとき,(a+ 3b)−2b=a+b < k より(a+ 3b)−2b+ 1 ≦kである.よって補助定理3.2.2よりα /∈Sk だからαε2 ∈/ Skである.
よってα=a+bε2 (a+b < k)と同値なものはk個のnv. sq.の和で表せない.
次にαをp+ 2q√
2の形の総正な整数としたときにα=a+bε2(a, b∈Z≧0, a+b≧k)と同値 なものはk個のnv. sq.の和で表せることを示す.
(i)k= 4のとき.
α=a+bε2でa≧4のとき,α−4 = (a−4)+b(3+2√
2) = (a−4+3b)+2b√
2≧b(3+2√
2)であり,
α−4 = (a−4+3b)−2b√
2≧b(3−2√
2)≧0である.よってα−4は総正な整数または0である.さ らにα−4の√
2の係数が偶数だからα−4は3個の平方数の和で表せる(露峰[4]).α−4 = 0のとき,
α= 4 = 12+12+12+12である.α−4 =α12(α1̸= 0)のとき,α= 4+α12= (√
2)2+12+12+α12
であり,α−4 =α12+α22 (α1α2̸= 0)のとき,α= 4 +α12+α22= (√
2)2+ (√
2)2+α12+α22 である.さらに,α−4 = α12+α22+α32 (α1α2α3 ̸= 0)のとき,α = 22+α12+α22+α32
である.以上よりa ≧ 4のときα = a+bε2 ∈ S4である.b ≧ 4のときb+aε2 ∈ S4だから b+aε2=β12+β22+β32+β42 (β12β22β32β42̸= 0)とかける.
(b+aε2)ε2= (β12+β22+β32+β42)ε2, bε2+a(εε)2= (εβ1)2+ (εβ2)2+ (εβ3)2+ (εβ4)2,
(a+bε2) = (εβ1)2+ (εβ2)2+ (εβ3)2+ (εβ4)2, α= (εβ1)2+ (εβ2)2+ (εβ3)2+ (εβ4)2, α= (εβ1)2+ (εβ2)2+ (εβ3)2+ (εβ4)2.
よってb≧4のときもα=a+bε2∈S4である.残りのa <4かつb <4でありa+b≧4の場合 を考える.aとbを交換したものは元のものと同様の結果がわかるので
(a, b) = (1,3), (2,2), (2,3), (3,3)
のみを個別に考える.すると,1 + 3ε2 = 12+ε2+ε2 +ε2,2 + 2ε2 = 12 + 12+ε2 +ε2, 2 + 3ε2= (√
2)2+ε2+ε2+ε2,3 + 3ε2= 12+ (√
2)2+ε2+ (√
2ε)2 となる.
(ii)k≧5のとき.
αをp+ 2q√
2の形の総正な整数としたときに,α=a+bε2(a, b∈Z≧0, a+b≧(k−1))と同値な ものは(k−1)個のnv. sq.の和で表せると仮定する.γ=p+qε2としたときγ=p+qε2(ε2>0) だから p ≧ 0, q ≧ 0 ((p, q) ̸= (0,0))を示せばγ が総正な整数であることがわかる.ここで α−1 = (a−1) +bε2, α−ε2=a+ (b−1)ε2だからa+b≧kとしたときに以下が成り立つ.
· a >1のとき,a−1>0, b≧0だからα−1は総正な整数である.
· a= 1のとき,a−1 = 0, b≧k−1>0だからα−1は総正な整数である.
· a= 0のとき,b≧kよりb−1≧k−1>0だからα−ε2は総正な整数である.
· b >1のとき,b−1>0, a≧0だからα−ε2は総正な整数である.
· b= 1のとき,b−1 = 0, a≧k−1>0だからα−ε2は総正な整数である.
· b= 0のとき,a≧kよりα−1 =a−1≧k−1>0だからα−1は総正な整数である.
よってa+b≧kのとき,α−1またはα−ε2の少なくともどちらか一方は総正な整数である.
·k−1≦a+b−1 = (a−1) +b
·α−1 = (a−1) +bε2
または
· k−1≦a+b−1 =a+ (b−1),
· α−ε2=a+ (b−1)ε2.
よって仮定よりα−1∈Sk−1またはα−ε2∈Sk−1である.よってα∈Skとなるから全てのk≧5 に対して,αと同値なものはk個のnv. sq.の和で表せる.
k(≧ 4)個のnv. sq.の有理整数の和で表されなかった有理整数はkより小さいものを除いて,
k個の0でない二次体Q(√
2)の整数の平方数の和では表せる.まずk = 4のとき,その有理整 数は5,6,8,9,11,14,17,29,41,4a·2,4a·6,4a·14 (a ∈ Z≧0)である.一つずつ確かめていくと,
5 = 12+ 12+ 12+ (√
2)2, 6 = 12+ 12+ (√
2)2+ (√
2)2, 8 = (√
2)2+ (√
2)2+ (√
2)2+ (√ 2)2,