Chem3D では、複数の半経験的方法手法を特徴とする分子計算のアプリケーションである MOPAC 2016 がサポート されます。
注意: インストールを確実に成功させるには、MOPAC2016.exe をコマンド プロンプトから実行してくださ い。
MOPAC 2016 では、以下を実行できます。
エネルギーの最小化
"構造の最適化" ページ 116 遷移状態への最適化
次のような特性の計算
双極子モーメント ("例 1: 双極子モーメント" ページ 124) カチオン安定性 ("例 2: カチオン安定性" ページ 125) 電荷分布 ("例 3: 電荷分布" ページ 126)
m-ニトロトルエンの分極率 ("例 4: m--ニトロトルエンの分極率" ページ 127) 相の安定性 ("例 5: 相の安定性" ページ 129)
超微細カップリング定数 ("例 6: Hyperfine Coupling Constants (超微細カップリング定数)" ページ 130)
UHF スピン密度 ("例 7: UHF Spin Density" ページ 132) RHF スピン密度 ("例 8: RHF Spin Density" ページ 133) MOPAC の物性特性の使用
MOPAC ファイルの使用
ここで示す各種手順を行うには、半経験的手法の計算概念や用語の他、構造の最適化 (エネルギーの最小化) や固 定ポイント エネルギー計算などに関する概念についての基礎知識が必要となります。
エネルギーの最小化
通常、エネルギー最小化はモデルにおける分子計算の第一歩です。Calculations、MOPAC Interface、Minimize Energy の順に選択します。MOPAC Interface ダイアログ ボックスが表示され、デフォルトの Job Type として Minimize が表示されます。
Job Type.各種タイプの計算のデフォルトを設定します。
Method.手法を選択します。
Wave Function.閉殻系か開殻系かを選択します。詳細については、"電子構成の指定" ページ 282を参照してくだ さい。
Optimizer.構造最小化ルーチンを選択します。詳細については、"構造の最適化" ページ 116を参照してくださ い。
Move Which.これを選択することによって、モデルの一部に対して最小化できます。
Minimum RMS.ポテンシャル エネルギー曲面の勾配の収束基準を指定します("Gradient 標準" ページ 120も参照 してください)。
Coord.System.計算に使用する座標系を指定します。
Use keyword 1SCF.SCF を 1 回行って停止することを指定します。
Use keyword MMOK, GEO-OK.アミド結合の分子力学修正を指定し、いくつかの安全チェックを無効にします。
注釈
RMS.エネルギー最小化ルーチンでは、低いエネルギーの探索を中止して現在の値が最小値を表していることを受け 入れるタイミングを決定する条件として、直交座標に関するエネルギーの導関数の RMS (二乗平均) が使用されま す。理論上、最小のエネルギーに到達した場合の RMS 勾配は 0 ですが、事実上到達することができません。その ため、構造最適化の設定時は、RMS 勾配の既定値が設定されます。
デフォルト値 0.100 は、精度と処理速度の両方を考慮した適切な値であることがわかっています。値を小さくす ると、エネルギー最小点により近づけるために処理が継続され、計算時間が長くなります。逆にこの値を大きくす ると計算時間は短縮されますが、エネルギー最小点からは遠くなります。最小値でないことが分かっている配座構 造に対してより良い最適化を行うだけでなく、比較データを計算し特定したい時にこの値を増やします。
0.01 より小さな値を使用するには、キーワード セクションで LET を指定します (General タブ)。
Wave Function.波動関数を選択するときは、RHF と UHF のどちらの計算法を使うかを決めます。
RHF 法は、デフォルトのハートレー - フォック近似手法で、閉殻系に使われます。RHF 法を使用するには、
Close Shell (Restricted) 波動関数を選択します。
UHF 法は、ハートレー - フォック近似手法の代替手法で、開殻系に使われます。UHF 法を使用するには、Open Shell (Unrestricted) 波動関数を選択します。超微細結合定数を計算するときは、UHF 波動関数を選択しま す。
注意: 一般に UHF 計算は RHF 計算に比べてかなり時間がかかります。
構造の最適化
Chem3D は、Eigenvector Following (EF) ルーチンを最小化計算の既定の構造最適化ルーチンとして使用しま す。代替方式としては次のものがあります。
TS.TS 最適化ルーチンは、遷移状態への最適化に使用されます。これは、MOPAC Interface サブメニューの Optimize to Transition State を選択すると自動的に挿入されます。
BFGS.大きなモデル (500 ~ 1,000 個以上の原子を持つモデル) に使用する最適化ルーチンとしては、Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno (BFGS) が推奨されます。BFGS を指定すると、これが EF の代わりに使用されま す。
LBFGS.非常に大きな系では多くの場合、LBFGS が唯一の使用可能な最適化ルーチンです。これは BFGS 最適化 ルーチンに基づいていますが、格納する代わりに必要に応じて逆ヘシアンを計算します。この場合メモリがほとん ど使用されないため、非常に大きなシステムに適しています。ただし、他の最適化ルーチンと比べて効率はよくあ りません。
キーワードの追加
General タブをクリックすると、ここで追加の MOPAC キーワードを指定できます。これにより、より厳密な要件 を計算に適用できます。たとえば、キーワードを追加することで、収束基準の変更、基底状態ではなく励起状態で の最適化、その他の特性の計算などを指定できます。
注意: このダイアログ ボックスのキーワード セクションで指定する特性によって、計算結果が変わることが あります。詳細については、"キーワードの使用" ページ 279を参照してください。
Display Every Iteration
計算結果を毎回表示して最小 化を確認します。
構造の最小化にかかる時間が 増加します。
Show Output in Notepad
出力をメモ帳形式のファイル に送信します。
Send Back Output 各測定を Output ウィンドウ に表示します。
構造の最小化にかかる時間が 増加します。
遷移状態への最適化.
モデルを遷移状態に最適化するには、できるだけ遷移状態に近い立体配座から始める必要があります。
このアルゴリズムではローカル ミニマムやグローバル ミニマムの位置から構造を変化させることはできませんの で、出発点にしないようにしてください。"例" ページ 117も参照してください。
遷移状態に最適化するには、次の操作を行ってください。
1. Calculations、MOPAC Interface、Optimize to Transition State の順に選択します。MOPAC Interface ダイアログ ボックスが表示されます。
2. Job & Theory タブで Method および Wave Function を選択します。
注意: MOPAC に熟練していない場合は、Transition State のデフォルト設定を使用してください。
3. Properties タブで、最適化した最終的な立体配座から計算したい特性を選択します。
4. General タブで使用する追加のキーワードを入力します。
5. Run をクリックします。モデルに関する情報とキーワードが MOPAC プログラムに送られます。Send Back Output を選択していた場合は、Output ウィンドウが表示されます。
最小化中は、状況が Output ウィンドウに表示されます。
次の表は、MOPAC に自動的に送られるキーワードと、収束に影響を与えるために使用できるその他のキーワードで す。
キーワード 説明
EF 自動的に MOPAC に送信され、Eigenvector Following (EF) 構造最小化ルーチン の使用を指定します。
GEO-OK 自動的に MOPAC に送信され、内部座標のチェックを無効にします。
MMOK 自動的に MOPAC に送信され、アミド結合の分子力学修正を指定します。このキー ワードを無効にするには、追加キーワード「NOMM」を指定します。
RMAX=n.nn エネルギー計算値/予測値の変化の割合の最大値です。デフォルト値は 4.0です。
RMIN=n.nn エネルギー計算値/予測値の変化の割合の最小値です。デフォルト値は 0.000です。
PRECISE 計算を実行するたびに値が変動しないように、精度の高い SCF 計算を実行します。
LET ジョブの時間を短縮するために安全チェックを無効にします。
RECALC=5 最適化計算が遷移状態に収束しにくい場合は、このキーワードを使用します。
MOPAC で表示されるエラー メッセージの説明については、『MOPAC マニュアル』を参照してください。
最小化を中断するには、Stop をクリックします。
例
この例では、エタンの重なり型遷移状態を確認する方法について示します。
次の操作を行って、エタンのモデルを作成します。
1. File メニューの New をクリックします。
2. モデル ウィンドウをダブルクリックします。テキスト ボックスが表示されます。
3. 「CH3CH3」と入力し、Enter キーを押します。エタンのモデルが表示されます。
4. 回転ツールを選択します。
5. 回転ツールの横にある矢印をクリックし、回転ダイヤルを下にドラッグします。
図 6.5: 回転ダイヤル
6. S キーを押したまま、C(1) と C(2) 原子間の結合を選択します。
注意: S キーを押したままにすると、一時的に選択ツールがアクティブになります。
7. 二面角回転の 1 つを選択し、テキスト ボックスに「57」と入力して、Enter キーを押します。ほぼ完成した エタンの重なり型配座が表示されます。
ヒント: Y 軸上でモデルを回転させて炭素が並ぶようにすると、よりきれいに表示されます。
次の操作を行って、MOPAC を使った正確な重なり型配座の遷移状態を作成します。
1. S キーと Shift キーを押しながら、H(4) と H(7) のようにほぼ重なっている水素原子を 2 つ選択して、確 認する二面角を指定します。これで H(4)-C(1)-C(2)-H(7) のような、ほぼ共通平面上にある 4 つの原子鎖が 選択されました。
2. Structure、Measurements、Generate All Dihedral Angles の順に選択します。Measurement テーブルが 現れ、選択した約 3 度の二面角に対する実際の値(実験によって若干異なります)を表示します。
3. Calculations、MOPAC Interface、Optimize to Transition State の順に選択します。
4. 内部座標を選択します。
5. Run をクリックします。二面角が 0 度になるまで、エタン モデルが最小化されます。これは、エタンの重な り型配座で、ローカル ミニマムとグローバル ミニマムを表す 2 つのねじれ型配座の遷移状態として知られて います。
重なり型エタン モデルのニューマン投影図を見るには、次の操作を行ってください。