第二章 好酸球と肥満細胞との相互作用における MRGPRX2 の関与
第二節 MBP および ECP ペプチドによるヒト結合組織型肥満細胞の活性化
MBPとECP のtryptase切断サイトを検索し,ほぼ全配列をカバーする理論的なtryptase切断合 成ペプチドを調製した(Table 3)。各MBPおよびECPペプチドの10 μM溶液をヒト結合組織型肥 満細胞に添加し,脱顆粒を指標に各ペプチドの肥満細胞活性化能を検討した。その結果,複数の MBPおよびECPペプチドがヒト結合組織型肥満細胞の脱顆粒を誘導した(Figure 18A,18B)。脱 顆粒誘導活性を示したMBPおよびECPペプチドは,それぞれC末端領域およびN末端領域に 位置しており,各ヒト結合組織型肥満細胞活性化ペプチドのアミノ酸配列には重複した配列が存 在した。ヒト結合組織型肥満細胞を活性化するMBPおよびECPペプチドのうち,MBPのフラグメ ント18(99〜110ペプチド:以後MBP(99-110)),およびECPのフラグメント7(29〜45ペプチド:
以 後 ECP(29-45) ) が そ れ ぞ れ 最 も 活 性 が 高 か っ た (Figure 18A,B) 。 さ ら に ,
MRGPRX2/HEK293細胞における細胞内 Ca2+濃度上昇活性を指標にMBP およびECPペプチ
ドの MRGPRX2 活性化能を検討したところ,各ペプチドのヒト結合組織型肥満細胞の活性化と相
関した(Figure 19A,19B)。 以後,ヒト結合組織型肥満細胞の活性能が最も高かった MBP(99-
110)およびECP(29-45)を用いて解析を進めることにした。
MBP(99-110)および ECP(29-45)は用量依存的にヒト結合組織型肥満細胞の脱顆粒を誘導 した(Figure 20A)。MBP(99-110)および ECP(29-45)によるMRGPRX2 活性化を確認するため,
MRGPRX2/HEK293細胞と親株HEK293細胞にける細胞内Ca2+濃度上昇活性を比較した。その
結果,MBP(99-110)および ECP(29-45)はMRGPRX2/HEK293 細胞の細胞内 Ca2+濃度を用 量依存的に上昇したが,親株HEK293細胞には作用しなかった(Figure 20B)。なお,100 μMまで MBP および ECP ペプチドによる活性を検討したが,上限値との判断が出来なかったため,EC50 値の算出はしなかった。
以上の結果より, MBPおよびECPの推定tryptase分解産物MBP(99-110)およびECP(29-
45)がMRGPRX2の活性化および結合組織型肥満細胞の脱顆粒誘導を誘導することを見出した。
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Table 3 Tryptase切断サイトで切断される理論上のMBPおよびECP断片ペプチド
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Table 3の続き
Theoretical isoelectric points(pI) は ExPASy Compute pI/Mw プ ロ グ ラ ム に て 計 算 し た
(Bjellqvistetal., 1993)。
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Figure 18 MBPペプチド(A)またはECPペプチド(B)によるヒト結合組織型肥満細胞の脱顆粒 誘導活性
ヒト結合組織型肥満細胞に10 μM各MBPペプチド(A)またはECPペプチド(B)を添加し,30分 後の培養上清を回収して培養上清中に遊離した顆粒中に含まれるβ-hexosaminidase 活性を指 標にして脱顆粒誘導を測定した。肥満細胞内の全β-hexosaminidase活性を100%とし,培養液中 に放出されたβ-hexosaminidase活性の比率を算出した。図中の各フラグメント番号はTable 3と対 応する。データは3回測定して平均値とSDを算出した(基となるデータはページ122に記載)。
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Figure 19 MBPペプチド(A)またはECPペプチド(B)によるMRGPRX2/HEK293細胞内Ca2+
濃度上昇活性
Fura-2/AMを取り込ませたMRGPRX2/HEK293細胞に10 μM各MBPペプチド(A)またはECP ペプチド(B)を添加後,340 nmの励起光で励起した際の510 nmの蛍光強度と,380 nmの励起 光により励起した際の510 nmの蛍光強度の比を指標に細胞内Ca2+濃度を測定した。図中の各フ ラグメント番号はTable 3と対応する。データは3回測定して平均値とSDを算出した(基となるデ ータはページ123-124に記載)。
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Figure 20 MBPまたはECPペプチドによるヒト結合組織型肥満細胞の脱顆粒誘導活性(A)と MRGPRX2活性化誘導(B)
(A)各濃度のMBPペプチド(MBP(99-110),Figure 18A,19Aのフラグメント番号18)またはECP ペプチド(ECP(29-45),Figure 18B,19Bのフラグメント番号7)をヒト結合組織型肥満細胞に添加 し,30分後の培養上清を回収して培養上清中に遊離した顆粒中に含まれるβ-hexosaminidase 活 性を指標にして脱顆粒誘導を測定した。肥満細胞内の全 β-hexosaminidase 活性を 100%とし,培 養液中に放出された β-hexosaminidase 活性の比率を算出した。(B)Fura-2/AM を取り込ませた MRGPRX2/HEK293細胞または親株HEK293細胞を各濃度のMBP(99-110)またはECP(29-
45)にて刺激後の波長340 nmの励起光で励起した際の510 nmの蛍光強度と波長380 nmの励 起光で励起した際の510 nmの蛍光強度の比を指標に細胞内Ca2+濃度を測定した。データは3回 測定して平均値とSDを算出した(基となるデータはページ125-126に記載)。