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M 系列回路を用いた擬似アナログ信号による方式

第 3 章 EMI ノイズ及び低減手法

3.3 EMI ノイズ低減手法

3.3.1 M 系列回路を用いた擬似アナログ信号による方式

本項では M 系列回路を用いた擬似アナログ信号によって EMIノイズを低減させる方 式を説明する。まず、M 系列回路の概略図を 3 ビットの場合を例として図 3.3 に示す。

M 系列(M-sequence) とはスペクトル拡散に用いられる拡散符号係数である PN 符号を 代表する擬似乱数系列である。n ビットのシフトレジスタと Ex-NOR 回路により構成さ れ、1 周期に𝑇 = (2𝑛− 1)個の擬似的な乱数信号を生成できる。これより、例として 3bit の 場合であれば 1 周期に 7 つのディジタル信号が出力され、その様子を図 3.4 に青線で示 す。赤線は M 系列回路の出力信号である 𝑉𝐷の先にローパスフィルタを追加するとこで、

ディジタル信号(青線)の波形を鈍らせることができ、擬似的にアナログな信号が得られる。

これを擬似アナログ信号と定義して取り扱う。

図 3.3 M系列回路概略図(3bit)

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図 3.4 青線:ディジタル信号と赤線:擬似アナログ信号

続いて、図3.3のM系列回路が3bitの場合を例にとり、動作原理を説明する。まず、

初期状態では𝑄1, 𝑄2, 𝑄3のすべてがLowなので、Ex-NORの出力部分である𝐷1がHighにな る。、𝐹𝑐𝑙𝑘より最初にクロックclkが入力されると、𝑄1がHighとなる。続いてクロックが 入力されると、𝑄1はHighのままで𝑄2がHighとなる。すると、Ex-NORの2つの入力が 異なるのでEx-NORの出力はLowとなる。さらに次のクロックで𝐷1はLowのため、𝑄1は Lowになり、𝑄2と𝑄3がHighとなる。これより、Ex-NORの2つの入力が同じなので𝐷1は Highになる。以上の動作を7回繰り返すことによって図3.5に示すようなタイムチャート が形成される。これらの信号を抵抗𝑅1~𝑅3に通し、オペアンプによって加算増幅すること で7つの電圧レベルを持つディジタル信号が得られる。ディジタル信号Digitalの求め方 は抵抗𝑅1~𝑅3に流れる電流と𝑅0に流れる電流は同一なので、(3.1)式の様に示される。

𝐷𝑖𝑔𝑖𝑡𝑎𝑙 = (1 𝑅0

+ 1 𝑅1

+ 1 𝑅2

+ 1 𝑅3

) 𝑅0𝑉𝑜𝑓𝑓− (𝑄1 𝑅1

+𝑄2 𝑅2

+𝑄3 𝑅3

) 𝑅0 (3.1)

ここで、𝑅1: 𝑅2: 𝑅3= 1: 2: 4とすることで、1レベルあたりの電圧の幅を揃えることがで き、𝑉𝑜𝑓𝑓を変えることでディジタル信号のDC成分を、𝑅0変えることで電圧の最大値と最 小値の差を決めることが出来る。

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図3.5 シフトレジスタのタイムチャート

M 系列回路によってディジタル信号を生成することが出来たが、3bit のディジタル信 号が持つ電圧レベルは 7 通りであるため、PWM に適用しFFT にかけてもスペクトルは 7 本にしか拡散されない。シフトレジスタの bit 数を増やせば、さらなるスペクトル拡散 が見込まれるが、回路規模が大きくなってしまうという問題がある。これより、少ない bit 数のシフトレジスタであっても、アナログ信号であれば無限の電圧レベルを持ってい るため、PWM に適用し FFT をするとスペクトルがディジタル信号に比べて大幅に低減 させることが出来ると考えられる。ディジタル信号とアナログ信号の違いのイメージ図を 図 3.6 に示す。

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図3.6 ディジタル信号とアナログ信号の違い

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