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クロック周波数スイープ方式(従来手法)

第 3 章 EMI ノイズ及び低減手法

3.3 EMI ノイズ低減手法

3.3.2 クロック周波数スイープ方式(従来手法)

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図3.6 ディジタル信号とアナログ信号の違い

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K=100kHz/1Vととした場合に、𝑉𝑏= 2[V],𝑉𝑚 = 100[mV]の三角波をVCOに入力すると出 力される矩形波は 200±10[kHz]となる。つまり、三角波の𝑉𝑏及び𝑉𝑚を設定することで、

PWM信号の基本周波数F1を中心として±F[Hz]の間を周波数変調できることになる。

この方式を適用した場合の PWM スペクトラム変化の様子として、図 3.9にクロック周波 数スイープ方式を用いた場合のPWMスペクトラムを示し、比較特性として図3.7にEMI 拡散前のスペクトラム、図3.8に前項で述べたM系列回路方式を用いた場合のPWMスペ クトラムを示す。図3.8及び図3.9より、各方式を適用することで図3.7と比較して基本周 波数のスペクトルのピーク値が1.5V低減しており、ノイズ成分が周辺周波数へと拡散され ているのがわかる。さらに、図3.8がM系列回路を用いたランダム変調なのに対してクロ ック周波数スイープ方式はスペクトラムが一様に所定周波数幅で拡散されるため、図3.9の ように頂上部がフラットな波形が得られる。これより、この方式ではスペクトラムが一様な 周波数幅で拡散されるため、頂上部がフラットな特性が得られ、低減量が定量的に分かり易 いことが利点であると言える。

図3.6 VCOの動作原理図

図3.7 EMIノイズ拡散前のPWMスペクトラム

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図3.8 M系列回路方式を用いた場合のPWMスペクトラム

図3.9 クロック周波数スイープ方式を用いた場合のPWMスペクトラム

続いて、クロック周波数スイープ方式の動作原理を説明するため、図3.10に従来方式概 略回路図を示し、図3.11に変調部の動作波形を示す。まず、変調信号である三角波がVCO に入力されると、VCOの出力波形𝑉𝐶𝑂𝑜𝑢𝑡は入力された変調信号に応じて周波数変調された 矩形波となる。この信号を内部の微分回路に通し、トリガとしてSW2 をON/OFF するこ とで、鋸歯状波𝑆𝐴𝑊が生成される。この鋸歯状波𝑆𝐴𝑊と誤差電圧∆𝑉𝑜がコンパレータによっ て比較され、結果的に周波数変調されたPWM 信号が生成される。しかし、鋸歯状波𝑆𝐴𝑊 が生成されるにあたって、コンデンサ𝐶𝑆𝐴𝑊及び電流源𝐼𝑆𝐴𝑊の値は常に一定のため、周波数変 調ごとに振幅が異なる鋸歯状波𝑆𝐴𝑊が生成されることになり、この鋸歯状波𝑆𝐴𝑊と誤差電 圧∆𝑉𝑜が比較されて生成された PWM 信号は、周波数変調はされているものの、鋸歯状波

𝑆𝐴𝑊の影響で1周期ごとの ON 時間が一定の信号となってしまう。これより、周波数変調

ごとに差分のOFF時間が変化することになり、この時比率𝐷変動によって出力電圧リプル が増大することが考えられる。以上より、クロック周波数スイープ方式ではVCOを用いた 周波数変調により、EMI ノイズの低減は見込める一方で出力電圧リプルが増大してしまう 欠点をもつ。次項ではこの問題を改善した提案手法である補正電流による出力リプル低減 方式について述べる。

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図3.10 従来方式概略回路図

図3.11 変調部動作波形

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