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補正電流による出力リプル低減方式(提案手法)

第 3 章 EMI ノイズ及び低減手法

3.3 EMI ノイズ低減手法

3.3.3 補正電流による出力リプル低減方式(提案手法)

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図3.10 従来方式概略回路図

図3.11 変調部動作波形

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方で出力電圧リプルが増大してしまう問題を、提案方式では変調部の鋸歯状波生成部分に 補正電流を追加することで時比率𝐷変化を補正し、出力電圧リプル抑制を試みる。

図3.12に提案方式概略回路図を示し、図3.13に変調部の動作波形を示す。図3.10と図 3.12 を比較すると、基本構造は従来方式と同じだが、提案方式では変調部の鋸歯状波生成 部分に補正回路が追加されていることが分かる。この補正回路により適切な補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊 を生成し𝐼𝑆𝐴𝑊に加減することで鋸歯状波𝑆𝐴𝑊の傾きを変化させ、時比率𝐷を補正する。補正 電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊の生成には電圧制御電流源を使用する。電圧制御電流源は入力された電圧値𝑉𝑖に 応じて出力電流𝐼𝑜が決まり、この関係性は(3.2)式のように相互コンダクタンス𝑔𝑚で表され る。

𝑔𝑚 =∆𝐼𝑜

∆𝑉𝑖 (3.2)

相互コンダクタンス𝑔𝑚の単位は S(ジーメンス)である。この式の入力電圧を周波数変調 分である三角波の振幅𝑉𝑚、出力電流を補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊とすると(3.3)式のように変換できる。

𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊= 𝑔𝑚 ∗ 𝑉𝑚 (3.3)

(3.3)式より、適切な補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊を得るには適切な𝑔𝑚を設定する必要があると言える。

この適切な𝑔𝑚を最適電流補正量𝐺𝑚と定義して理論解析により𝐺𝑚を算出する。まず、クロッ ク周波数の変調部分から考える。クロック周波数を𝐹𝑐𝑙𝑘、VCOの変換率をK(kHz/V)、変調 信号ベース電圧を𝑉𝑏、変調信号振幅を𝑉𝑚(𝑉𝑚⁄𝑉𝑏 ) = 𝛼とすると、変調後のクロック周波数 𝐹𝑐𝑙𝑘′は(3.4)式で表される。

𝐹𝑐𝑙𝑘 = 𝐾(𝑉𝑏± 𝑉𝑚) = 𝐾𝑉𝑏(1 ±𝑉𝑚

𝑉𝑏)

= 𝐾𝑉𝑏(1 ± 𝛼) (3.4)

𝛼は変調度と考え、仮に𝛼 = 0.1とすると、クロック周波数𝐹𝑐𝑙𝑘は10%変調していることにな

る。変調信号によって𝛼分変調されるので、鋸歯状波を生成する電流源𝐼𝑆𝐴𝑊も同様に𝛼分補 正すればよいと考える。補正された電流源𝐼𝑆𝐴𝑊を𝐼𝑆𝐴𝑊′とすると、(3.5)式のようになる。

𝐼𝑆𝐴𝑊 = 𝐼𝑆𝐴𝑊(1 ± 𝛼) = 𝐼𝑆𝐴𝑊+ 𝛼𝐼𝑆𝐴𝑊 (3.5)

このとき𝛼𝐼𝑆𝐴𝑊は補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊と考えられるので、最適電流補正量𝐺𝑚と共に(3.3)式に代入

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𝛼𝐼𝑆𝐴𝑊= 𝐺𝑚∗ 𝑉𝑚 (3.6)

さらに、(3.6)式の𝛼を元に戻すと(3.7)式のように最適電流補正量𝐺𝑚の理論式が導出できる。

𝑉𝑚 𝑉𝑏

𝐼𝑆𝐴𝑊= 𝐺𝑚∗ 𝑉𝑚

𝐺𝑚=𝐼𝑆𝐴𝑊

𝑉𝑏 (3.7)

この理論式より求められる𝐺𝑚値により、適切な補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊を生成することが可能とな る。図3.13に示す変調部の動作波形より、従来方式と動作の流れは同じだが赤線で記した 部分が提案方式によって変化した部分である。具体的には、補正回路より生成した補正電流 𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊が電流源𝐼𝑆𝐴𝑊に加わることによって、鋸歯状波𝑆𝐴𝑊の傾きが補正され、1 周期ごとの 振幅が一定となる。これより、鋸歯状波𝑆𝐴𝑊とエラーアンプの誤差電圧∆𝑉𝑜によって生成さ れるPWMは周波数変調に応じてOFF時間に加えON時間も変化することになる。すなわ ち、補正電流𝑑𝐼𝑆𝐴𝑊によって周波数変調は維持したまま本来の時比率𝐷が保たれるため、出 力電圧リプルは増大しない。以上より、補正電流による出力リプル低減方式(提案手法)を 採用することで、従来方式の問題点であったEMIノイズ低減と出力電圧リプル増大のトレ ードオフを解決できる。

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図3.12 提案方式概略回路図

図3.13 変調部動作波形

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