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図1 7ェ二ルプロバノイド生合成経路

る本経路の初発段階の鍵酵素であり, PALをコードする遺伝子を防御遺伝 子の一つとして着目した。

PALをコードする遺伝子はこれまでに単子葉・双子葉を問わず数多くの 植物種より単離されており,いずれも小さな多重遺伝子ファミリーを形成 している3‑5)。エンドウにおいてもPAL遺伝子は少なくとも3つのメン バーから構成されており,これまでに2つのメンバーPsP4Ll, PsPAL2 (Pisum卓atiuum些些)の全塩基配列が決定された6)0 PsPAL遺伝子群の 転写量は,エンドウ褐紋病菌(Myc()sphaerella pinodes)の柄胞子分泌液中 に含まれる防御誘導因子(エリシター)の処理により増高する一方で,同 液中に含まれる防御抑制因子(サブレツサー)が共存すると抑制される7).

このことは,エンドウに感染できない非病原菌・感染を成立させる病原菌 の攻撃に対する植物の抵抗反応の発揮・回避と本遺伝子の発現誘導・抑制 とが密接に相関することを意味する。そこで, PsPALlのプロモーターの

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下流にレポーター遺伝子として大腸菌由来のβ‑glucuronidase (GUS)追 伝子を連結し,このキメラ遺伝子を導入したトランスジェニック・タバコ を用いて, in plantaにおけるPsPALlの発現様式とその制御配列の同定 に着手した。

3.トランスジェニック・タバコにおけるPsPALlプロモー ター: : GUS遺伝子の発現様式および病原菌・非病原菌に

対する応答

トランスジェニック・タバコにおけるPsPALlの活性をGUSの発現(活 性)を指標に解析した結果,根≫茎>葉の順位となる発現特異性を示した。

また,タバコに感染できないウリ類疫病菌(Phytophthora capsici) (非病原 菌)の攻撃により迅速なGUSの活性化が誘起されたのに対して,病原菌で

あるタバコ疫病菌(Phytophthwa parasitica ver. nicotianae)を接種した

際には,「非病原菌の接種よりも時間的に遅く,微弱な活性が誘導されたに 過ぎなかった8)。このようなタバコにおける拙4Llの発現特異性および 病原菌・非病原菌に対する応答はエンドウにおいても同様であったことか ら9),本プロモーターはタバコとエンドウで類似した制御機構が働いてお り,トランスジェニック・タバコを用いた解析は非常に有効であると判断 できた。

4. PsPALlプロモーターの発現特異性および非病原菌応答に 関わるシスエレメントの同定

PsPALlプロモーターの器官特異的発現および非病原菌の攻撃による活 性化,すなわち非病原菌応答に関わるシスエレメントを探索すべく, Liga‑

tion‑Mediated Polymerase Chain Reaction (LMPCR)演lo)によるin uiuo DMS footprinting解析を行い,核タンパク質が相互作用する配列の 同定を試みた。本遺伝子の根における恒常的な活性化には, Box‑Ⅰと名付 けたアデニン・シトシン(AC)に富む配列が関与することが示された。さ らに,タバコの非病原菌であるウリ類疫病菌の攻撃に対する応答には Box」に加え,別のACに富む配列であるBox‑ⅠⅠ,さらにアデニン・チミ

植物防御遺伝子の発現調節機構と細菌病耐性植物の分子育種の試み109

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図2 in vivo DMS footprinting解析による非病原菌応答性シスエレメントの

特定

モツタ接種(対象区)と非病原菌接種によるバンドの強度を比較すること で,核タンパク質が結合する配列を特定した。

ン(AT)に富む2種の配列(Box‑IVおよびBox‑Ⅴ)が関与することが 示された11) (図2)。興味あることに, Box‑Ⅰ,‑ⅠⅠおよび‑ⅠVはパセリやイ ンゲン,Arabidopsisを始めとする他植物のPALプロモーターに共通に保 存されている配列であることが判明した(図3)0

5.共通保存配列を対象としたインターナルデリーションプロ

モーターの活性

核タンパク質が相互作用すると考えられる4種の配列を単独,或いは,複 合的に除去したインターナルデリーションプロモーターを構築し,その発 現特異性および非病原菌応答の変化をGUS発現を指標に解析した。まず, 器官特異的発現に関わるであろうとされるBox‑Ⅰを削除したdB‑Iの痛 性を調べたところ,インタクトなプロモーターと比較して根および葉にお ける活性が著しく低減した。ところが,面白いことに茎ではBox‑Ⅰの削除 により活性が有意に上昇することが判明した(図4)。組織化学的染色によ

110

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図3 植物のフェこルプロバノイド合成系酵素遺伝子のプロモーターの共通保 存配列とMyb転写因子の認識配列

りGUSの発現部位を肉眼で観察したところ,dB‑1は根における活性が染 色限度以下にまで低下したが,茎では維管束組織で活性化することが明か となった12).以上の結果から, Box‑Ⅰは根におけるPsPALlの恒常的な高 発現に関わる一方,茎では負の制御に関わるものと考えられる.ゲルシフ

ト・アッセイによりBox‑Ⅰと根,葉または茎から抽出した核タンパク質と の相互作用を調べた結果,茎の核タンパク質は,根または葉の核タンパク 質を供した際には検出されない特異的なBox‑Ⅰとの複合体を形成した。こ の複合体形成が維管束組織における負の制御に働くのではないかと考えら

れる。

インゲンPAL2, PAL3プロモーターには, PsPALlプロモーターの Box‑Ⅰに酷似した配列が3種(AC‑I, 」I, ‑III)存在し, AC‑Ⅰ, ‑IIの変異

プロモーターが,根端組織における活性を低減させるが,茎の飾部におけ る活性を顕著に上昇させることが報告されている13・14)。さらに, PALと同

植物防御遺伝子の発現調節機構と細菌病耐性植物の分子育種の試み1ll

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図4 Box‑Ⅰ欠損プロモーター(dB‑1)の根・茎・葉における活性変動

様にフェニルプロパノイド経路の酵素である4‑coumarate: Co且‑ 1igase (4CL)をコードするパセリ由来の4CL‑1遺伝子のプロモーターに関して ち, Box‑Ⅰ様配列(Box‑P)を欠損させると維管束組織の発現パターンが 変化することが明らかにされている15)。以上のことから,フェニルプロパノ イド合成系酵素遺伝子のプロモーターに保存されているACに富む配列 が,共通して器官・組織特異的発現パターンの制御,特に,根端における 正の制御と維管束組織に限定した負の制御に密接に関わる可能性が予想さ

れる。

インタクトなPsPALlプロモーターは,タバコの非病原菌を接種すると basal活性と比較して6‑7倍もの相対活性を示す。これに対して, Box‑Ⅰ およびBox‑ⅠⅠを単独,あるいは双方を削除した場合では,非病原菌に対す る応答性が消失する結果となった。一方,ATに富む配列であるBox‑ⅠⅤお よびBox‑Vを単独,あるいは複合的に除去させるとbasal活性が有意に 低下したが,非病原菌に対する応答性は低いながらも保持していた(図5)0

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図5 インターナルデリーションプロモーターの非病原菌応答性

また, Box‑ⅠⅤおよびBox‑Ⅴを欠損させたプロモーターが植物体全体に おける活性を顕著に低下させることが示された。以上のデリーションプロ モーターの活性測定結果から, Box‑ⅠがBox11と共に非病原菌応答に必 須のシスエレメントと成り得ること,また, Box‑ⅠⅤおよびBox‑Ⅴが,器

官・組織非特異的なエンハンサーとして植物体全体における活性を増高さ せることが明らかとなった。

Box‑ⅠⅠはBox‑Ⅰと同様にACに富む配列で両配列共に他植物のフェニ ルプロパノイド合成系酵素遺伝子のプロモーターに共通に兄い出される保 存配列であり,類似したポジションに配置されている。本配列には, A(A/

C)C(A/T)A(A/C)Cのtype‑ⅠI Mybコンセンサス配列(MBSII)が内在 されており(図3),これは転写国子の一種である"Myb"の認識配列であ る。 Mybをコードする遺伝子は動物だけでなく植物にも存在し,現在まで に,植物のMybホモログが形態形成の制御16・17),乾燥ストレス応答18・19),さ らには病原ウイルス認識後の抵抗反応誘導20)にも機能することが報告さ れている. PAL遺伝子の発現とMybとの相互関係については,実際に MybがインゲンのPAL2プロモーター上のBox‑I類似配列をターゲッ ト配列として作用し,本プロモーターを活性化させることが明らかにされ ている21)。しかしながら,このMybの発現は花に限定されていることか ら,PALの働きを介して合成されるアントシアニンの蓄積量に関わると考 えられており,防御誘導におけるPAL遺伝子の活性化とMybとの関係に

楠物防御遺伝子の発現調節機構と細菌病耐性植物の分子育種の試み113

ついては不明である。

6. PsPALlプロモーター上のシスエレメントの機能を応用し た細菌病耐性植物の分子育種の試み

土壌中には多様な植物病原細菌が棲息しており,これらは主に植物の根 や下位茎の付傷部分から侵入し,感染する。ナス科植物に感染するナス科

青枯れ病菌(Ralstonia solanacearum)は土壌病原細菌の一種であり,ト マトやナス,タバコに重篤な被害を引き起こすが,末だ有効な防除策が確 立していないのが現状である。

そこで, PsPALlプロモーター上のシスエレメントの機能を応用した分 子育種により, R. solanacearumの病害防除を試みた。本プロモーターの Box‑I, ‑II, ‑IVをタンデムに6リピートさせた改変プロモーター(6リ

ピートプロモーター)を作製し,その下流にR.solanacearumに感染するバ クテリオファージ由来の溶菌タンパク質をコードする遺伝子を連結した.

すなわち,このキメラ遺伝子を導入したタバコにおいて,細菌が感染を試 みる"梶"で溶菌タンパク質を大量に発現させると同時に,菌の攻撃により さらに発現量を増加させるシステムの確立を目指した。トランスージェニッ ク・タバコにおいて,本プロモーターは予想通り根で高発現を誘起し,菌 の攻撃に応答することが確認できた。そこで,トランスジェニック・タバ コの根から抽出した粗タンパク質とR. solanacearum懸濁液を混合し,減 少する細菌数を算出した結果, 6リピートプロモーターによる制御は植物 体全体で高発現を誘導するカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプ

ロモーターよりも効果的に細菌数を減少させた.さらに, i.n vivoでの有効 性を調べるために,ルシアェラーゼ遺伝子を導入し発光能を付与したR.

solanacearumをトランスジェニック・タバコの根に接種し,植物内のR.

solanacearum濃度を発光強度を指標にして防除効果を評価した。その結 果,通常のタバコに本菌を接種した際には時間の経過と共に発光強度が高 まり,細菌が増殖したのに対して,トランスジェニック・タバコでは,発 光が弱くなることが観察された。さらに,その防除効果はCaMV35Sプロ モーターによる制御よりも高いことが確認できた(図6)0

ドキュメント内 遺伝情報のダイナミズムとその分子機構 (ページ 113-158)

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