NAD+ NADLl+H+ 02
TCAc,cle ̲ll CH,̲C',0 ̲ll cH,̲C,y∵一一
\scoA BphX2 \fT BphX3 +
ctyc ,vo TCA c,cle Ll..I.
図2 J'. I,send()al(allgeneS KF7()7株のビフェニル代謝bphオペロン
域を欠失しており,また富栄養培地で繰り返し培養すると高頻度にビフェ ニル資化欠損株が出現する。1995年, LeeらによりKF715株からサリチル 酸代謝遺伝子がクローニングされた9,1。)。そこでKF715株のビフェニル代 謝遺伝子群とサリチル酸代謝遺伝子群との位置相関についてKF715株コ スミドを用いて染色体地図を作成した。その結果,ビフェニルから安息香 酸への代謝に関与するbph遺伝子群の下流およそ10kbに,サリチル酸代 謝∫αJ遺伝子群が存在することを明らかにした。次に, KF715株を富栄養 培地で繰り返し培養を行い,資化欠損株の取得を試みた。親株KF715株
(Bph+Sal十Ben+)は,ビフェニル(Bph),サリチル酸(Sat),安息香酸(Ben) を単一炭素源としてよく生育する.KF715株をL培地で100世代まで繰り 返し培養を行い,得られたコロニーについて資化能を調べた。その結果,以 下の3種類の資化能欠損株が出現した。即ち,ビフェニル及びサリチル酸 資化能を欠損したBph Sal Ben+樵(KF715Ml株),ビフェニルの資化能 のみを欠損したBph Sal十Ben+樵(KF715M2株),安息香酸資化能のみを 欠損したBph+Sal+Ben 株(KF715M3株)である。資化欠損は,組換えに よる遺伝子発現制御の変異や遺伝子脱落等に起因することが考えられるo
ビフェニル/サリチル酸代謝遺伝子群をコードする自己可動化国子bph‑salエレメント 43
そこで,野生株KF715株と得られた資化欠損株のゲノムDNAをパルス フィールドゲル電気泳動(PFGE)により解析した。その結果,資化欠損株 と野生株の泳動パターンに大きな違いが認められた(図3)。同じ表現型で もPFGEプロファイルに違いが見られたことから,繰り返し培養により染 色体にダイナミックな再編成が生起したことが明らかとなった。また,サ ザン解析により資化欠損株では分解系遺伝子が染色体上から脱落してい
た。
そこで, KF715株および変異株染色体コスミドを用いて欠失領域を解析 したところ, KF715M2株(Bph‑Sal+Ben+)の欠矢はbph遺伝子とその上 流30kbにわたる40kbで生じていた。また, KF715Ml株(Bph Sal‑
Ben')の欠矢はKF715Ml株の欠失領域(40 kb)に加え, bph遺伝子とsal 遺伝子の間10kb,∬J遺伝子とその下流を含めた20kb,計70kbで生じて いた(図4)。
7‑I‑i‑;<S夢;当惑;鍔':iIFf;:;;8t?;篭,雲等tkiEt'‑芽響isIQ;.fit
図3 P.P〟lida KF715株のビフェニル資化欠損株ゲノムのSpeI消化パルス フィールド電気泳動(PFGE)プロファイル
3種類の欠損株KF715Ml (Bph Sal Ben+), KF715M2(Bph Sal+Ben+), KF715M3(Bph十Sal+Ben )からそれぞれ3株ないし4株のPFGEを示
す。 KF715, P. ♪utida KF715 ; KF707, P. psetEdoalcalzkenes KF707 ;
KF701, PseZEdomonas graminis KF701.
44
P. pu血血KF715 (もpll十)
蚕×妄
P. pu肋AC30 (trp , Rif Idomor
domor /・̀
p. p〟肋AC30::bph mph+, trp , Rif r )
(AC30Bp叶)
P. pu肋AC30 (trp , Rif r )
TYCipieh I
撃でこき
P. pu肋KT2440 (met , ST
(donor)
recipieht
p. pu肋KT2440::bph mph+, met , Smr ) o(T2440Bph+)
pt =雫
tr&nscotuugAnt
p. pu肋KT2440 (met , Smr)
‑ :;器.a,.bkkbb)ph/sol
図4 接合伝達によるbph‑sal elementの水平伝幡
4.ビフェニル・サリチル酸代謝遺伝子の自己可動化
先に我々は,分離したビフェニル/PCB分解菌Pseudomonas,
Achromobacter, AIcalなenes, MorarellaおよびArthrobacter属細菌の
bph遺伝子クラスターの相関関係を遺伝学及び免疫学的方法により解析 し,その結果を4つのグループに分類した。即ち,解析した16菌株のうち 6種類のPseudomonas属細菌と1種類のAIcaligenes属細菌がKF707株
ビフェニル/サリチル酸代謝遺伝子群をコードする自己可動化因子bph‑salエレメント 45
と同じbph遺伝子クラスターを形成していた(グループⅠ)。残りの菌株の うち3菌株は, KF715株に見られるようにKF707株bphABCDと相同性 が高いが, bphXを欠失しているもの(グ)i,‑プII), 3菌株はKF707株 bphABCDと相同性が低いもの(グループIV), 3菌株はKF707株bphABI CDと全く相同性がないものであった(グループⅤ)。異なるビフェニル/
PCB分解菌において極めて類似したbph遺伝子クラスターが存在するこ とはbph遺伝子が土壌細菌問で水平伝播したことを示唆している8)。その 後,世界各地で単離されたビフェニル資化細菌においても, bph遺伝子クラ スターの構造の類似性が報告されている.そこで, bph遺伝子の水平伝播を 実験的に生起させ,その機構の解明を行うことを目的に, KF715株を供与 菌,ビフェニル資化能の無いP.putida AC30trp株を受容菌として接合実 験を行った。その結果,高頻度にビフェニル資化能を獲得したAC30Bph株 が取得された(図5)。また,ビフェニル資化能を獲得したAC30Bph株を 供与菌として,ビフェニル資化能の無いP. putida KT2440met株を受容菌 として再度接合実験を行ったところ,同様にビフェニル資化能を獲得した KT2440Bph株を取得した。得られた接合伝達株は,供与菌及び受容菌とと もにPFGEによりタイピングし,さらにbph遺伝子をプローブとするサザ ン解析を行った。その結果,野生株及び接合伝達株にシグナルが検出され た。接合伝達株は,ビフェニルに加えサリチル酸にもよく生育し,ビフェ
図5 bph‑sol elementの構造と欠失領域
pKF6337, pKF6246およびpKF6500はP.♪utida KF715ゲノムからの コスミド; pKF6465はP,putida AC30Bphからのコスミド
46
ニルおよびサリチル酸代謝遺伝子群が同時に転移することが明らかとなっ たoこの転移因子をbph‑sal elementと名づけた。KF715株及びAC30Bph 株のコスミドを用いた解析から, bph‑sal elementの大きさについて解析 したところ,可動領域はbph遺伝子の上流およそ40kb, bph遺伝子(10 kb), bph遺伝子とsal遺伝子の間10kb, sal遺伝子とその下流を含めた30 kbの計90kbであった(図4)。
5. bph‑salエレメント欠矢と可動仙=/関与する因子
細菌間で遺伝子を水平伝播するには, driver's seatとなる遺伝子がプラ スミドあるいは染色体に存在する場合が考えられる。プラスミドが可動化 に関与する遺伝子を保持している場合,これは接合型プラスミド(con‑
jugativeplasmid)となる。接合型プラスミドの可動化機構は, Fプラスミ ドで明らかにされているようにローリングサークル複製様式で受容菌へ伝 達される。一方,染色体上の因子が接合により可動化する場合,接合トラ ンスポゾン(conjugative transposon)と称する。最初に兄いだされた接合 トランスポゾンはグラム陽性細菌EnterococcuLq・ faecalisおよびStrepto‑
C()L・CuS Pneumoniaeからで, Tn916は構造と機能が詳細に研究されてい る11,12)。その後グラム陰性細菌BacleriodeLb‑からも発見された13)。これらの 多くがテトラサイクリン耐性をコードしているがBacteroides属細菌の接 合型トランスポゾンは65‑150kbと極めて巨大である。これまでに接合ト ランスポゾンの可動化機構は,まず,因子が染色体上から切り出され,いっ たん不安定な環状体を形成し,ローリングサーク)i,複製様式に類似した機 構で受容菌へ転移する。その後,受容菌に転移した因子は染色体へ挿入さ れる14)。この切り出しと挿入にインテグラ‑ゼが関与する。
KF715株, AC3Otrp株, AC30Bph株の場合いずれもbph‑sal elementは
染色体上に存在することから,接合トランスポゾンとして機能しているも のと考えられる。また, AC30BphからKT2440metへビフェニル/サリチ
ル酸資化性が伝達される事実は,この因子上に自己可動化するための全て の遺伝子が存在することを示唆している。史に全ての接合実験で得られた 接合伝達株のPFGEの泳動写真及びサザン解析シグナルは,明らかにコ
ビフェニル/サリチル酸代謝遺伝子群をコードする自己可動化因子bPjl‑Salエレメント 47
ピー数を上げていた.現在, bph‑sal elementの90 kbの全塩基配列を決定 中であるが,これまでにbph/sal遺伝子群の外に既知の挿入配列(IS)と60
‑700/.相同な領域が4つおよび264bpのリピート配列が認められた。
KF715株のbph一一Sal element内での高頻度の欠失現象はこのエレメント 内に複数存在するISや繰り返し配列に起因するものと考えられる。 sal遺 伝子が複数,染色体およびプラスミド上に存在することがサザン解析から 確認されたが,これもISを介した再編成現象の結果であろう。また類似の ISが全染色体に多数認められることから,これらがbph‑salエレメントの みならずゲノム全体の再編成に関与するのであろう。 3‑クロロ安息香酸分
解菌Pseudomona∫ sp. B13株の接合トランスポゾンclc elementに存在す るインテグラ‑ゼはこのエレメントの可動化に関与すると考えられてい る15)。これと700/o相同な遺伝子がbph遺伝子群の上流に認められた。また 部位特異的組換え酵素に類似した配列などが兄いだされており,これらが
bph‑salelementの自己可動化に関与していると考えられる。図6にbph‑
salelementの接合型トランスポゾンとしての機能を模式的に描いた。すな わち, bph‑salelementは染色体から切り出され,環状化し接合により受容 菌へ転移し染色体あるいはプラスミドへ挿入されるであろう。また場合に
bph‑Sat element (90kb)
Jm lS chron10SOnle
ot.T lexcision
re̲insertioTt irtto chromoso正妃
・◎
< coupliJIg Sequenceputative cilYtdw intemediate
segregation
transferrhg iJItO Other strdrLS by conjtlgation
図6 bph‑S.al elementの切り出し,環状化,転移の模式凶
48
よっては,いったん環状化した後,自身のゲノム中に挿入される場合も考 えられる。
KF715株のbph‑salelementが自己可動因子であることから,本研究室 で北九州ビフェニル工場から同時に単離されたビフェニル/PCB分解菌に ついてbph‑sol elementの存在を検討した。まず,接合伝達に必須である と推定されるインテグラ‑ゼ遺伝子(tnt)をプローブにサザン解析を行っ た。その結果,いくつかの菌についてシグナルが検出され,またbph/sal遺 伝子をプローブとするサザン解析でもシグナルが検出された。この結果か
らbph‑sal elementが異なる属種の土壌微生物に広く存在していることが 明らかとなった。今後, bph‑salelementの全塩基配列を決定し,自己可動 化に関与する遺伝子の構造と機能,転移のメカニズムの解明を行う予定で
ある。
6.おわ り に
本稿ではP.putida KF715株を材料にビフェニル/サリチル酸分解系遺 伝子群の欠失現象とbph‑sol elementの接合トランスポゾンとしての機能 を記述した。ビフェニル資化菌は自然界に広く分布しており,その遺伝子 クラスターは類似し,共通の祖先に由来している。ビフェニル代謝遺伝子 が接合トランスポゾンとして土壌細菌間を水平伝播し,新たな宿主で再編 成されることは想像に難くない。微生物は環境に適応しながら進化するが,
どのようなメカニズムで新規な分解機能を獲得するのかは,基礎科学の面 で魅力あるテーマであり,同時に地球上での物質循環を考える上で,また 環境浄化・修復の応用面でも極めて重要である。今後,この方面の研究の 更なる進展が期待される。
参考文献
1)古川謙介,陶山明子:難分解性有機ハロゲン化合物の微生物分解.化学と生
物. 390‑397 (2000)
2) Tsuda, M., Tan, H. M" Nishi, A., and Furukawa, K : Mobile catanolic genes in bacteria. J. Biosci. Bioeng., 87, 401‑41() (1999)I
3) Nishi, A., Tominaga, K., and Furukawa, K : A 90‑kirobase conjugative