図 4. (a) He, (b) Ne, (c) Ar ガスパフ入射前のイオン飽和電流 2D スペクトル 及び(d) He, (e) Ne, (f) Ar ガスパフ入射後のイオン飽和電流 2D スペクトル
図 4 には,ガスパフ入射前後の周波数―周方向モード数スペクトルの比較を示 す.He ガスパフでは,4kHz のモードパワーが増え,高周波成分が減る.また,
m=-1 の Mediator のパワーが減る.Ne ガスパフは,その前後でイオン飽和電流 のスペクトルにほとんど変化が見られない.Ar のケースでは,全体的にスペク トルピークが低周波側にシフトしている.ガスパフ後のスペクトルは,単純に ソースガス圧を上げた際の放電のスペクトルと良い一致を示す.
He と Ne を比較すると,中性ガス数,プロファイルの変化はよく似たものである のにも関わらず,He では乱流スペクトルに有意な変化が見られ,Ne では見られ なかった.今後は入射ガス量のスキャンを行い,入射ガス種の違いが揺動スペ クトルにどの様に影響を及ぼすかを議論する.
3. まとめ
直線プラズマ装置 PANTA において中性ガスパフ装置を開発した.He,Ne,Ar パフ
実験を行い,次に列挙する変化を得た.
・イオン飽和電流プロファイル:ほとんど変化なし
・浮遊電離プロファイル:勾配が微増
・揺動スペクトル:ほとんど変化なし 3. He gas puff:
・イオン飽和電流プロファイル:密度が全体的に増えた
・浮遊電離プロファイル:勾配が減
・揺動スペクトル:ガス入射後は,ソースガス圧を上げた際の揺動スペクト ルとよく一致した.
研究組織
稲垣滋(九大応力研) ,佐々木真(九大応力研)
電磁的ジャイロ運動論解析結果に基づく乱流輸送係数を用いたダイナミクスシミュレーション
核融合科学研究所 登田慎一郎 磁気核融合エネルギーを実現するためには、乱流輸送の定量的な予測は最も重要な課題の一つで ある。最近、トロイダルプラズマにおいて乱流輸送に関して、多くのジャイロ運動論的シミュレー ションが行われている。トカマク、ヘリカルプラズマにおけるジャイロ運動論的解析結果は実験観 測結果と比較されている。トカマクプラズマでは、時刻ステップごとに直接ジャイロ運動論的解 析と結合させる輸送シミュレーションが大域的にされている。ヘリカルプラズマにおけるジャイ ロ運動論的シミュレーションはトカマクプラズマと比べて、はるかに大きい計算資源を使う。なぜ なら、前者はヘリカルリップル構造を捉えるために、磁力線に沿った多くのメッシュ点を必要とす る。特にヘリカルプラズマでは、非線形ジャイロ運動論的シミュレーションを統合輸送シミュレー ションコードと結合させるのは簡単でないので、高速に非線形解析結果を近似することができる 予測モデルが望まれている。乱流輸送に関する予測モデルは、大型ヘリカル装置
(LHD)
での統合 輸送コードの中で他のシミュレーションコード(例えば新古典輸送コード)と、低計算資源を用い て、結合することができる。LHD
においてジャイロ運動論的シミュレーションのイオン乱流時間 スケール∼ 10μs
と輸送シミュレーションの時間スケール∼ 100ms
は大きく違うので、ジャイロ運 動論的輸送モデルを用いた動的輸送シミュレーションを行うのはチャレンジングな研究課題であ る。本研究では、粒子、熱輸送の拡散係数や流束をモデル化するために、数値シミュレーションによ り、電子とイオンの両方のジャイロ運動論的方程式を解析した
[1]
。最初に、イオン温度勾配(ITG)
モードが不安定化しているときに、LHD
の高イオン温度放電において、非線形シミュレーション から電子、イオン熱拡散係数を概算した。乱流ポテンシャル揺動と帯状流ポテンシャル揺動に関す るモデル関数を電子、イオン熱拡散係数について示した。次に、線形成長率と帯状流の線形応答に 関する特徴的な量(帯状流崩壊時間)を評価するために、線形ジャイロ運動論的シミュレーション を行う。モデル関数の二つの量(乱流ポテンシャル揺動と帯状流ポテンシャル揺動)は、混合長概 算に関係する線形量と帯状流崩壊時間で近似される。線形シミュレーション結果を熱拡散係数モデ ルに用いることにより、電子、イオン乱流拡散係数に対する非線形シミュレーション結果を再現す ることができた。密度勾配が、LHD
プラズマでは径方向の数点で、ゼロに近くなるので、粒子輸 送に関する信頼できる拡散係数モデルは示すことができなかった。非線形シミュレーション結果を 定量的に再現するために、電子、イオン熱輸送に関する準線形流束モデルを提唱した。非線形シ ミュレーション結果である電子、イオン熱流束は、熱拡散係数のモデルの正確さと同程度で、準線 形流束モデルにより再現される。さらに、LHD
での平坦化した密度分布でさえも適用できる準線 形粒子流束モデルを提唱した。したがって、ジャイロ運動論的解析結果に基づく、熱拡散係数モデ30FP‑4
核融合力学分野 一般研究
解析結果を再現するために概算されるとき、線形解析結果である流束と揺動ポテンシャルの比が、
混合長概算に関係する線形量と帯状流崩壊時間に加えて必要である。輸送シミュレーションコード に流束と揺動ポテンシャルの比を取り入れるのは現在のところ困難である。輸送コードにイオン の熱拡散係数モデルを取り入れる方法はすでに報告している
[2]
。乱流輸送について、ジャイロ運動論的解析結果に基づいた熱拡散係数モデルや準線形流束モデルを 用いて、動的な輸送シミュレーションを行った
[3]
。新古典輸送についてはDGN/LHD
データベー スを用いている。イオン温度に関する動的シミュレーションの際に、イオンの熱輸送を評価する ために、イオン熱拡散係数モデルを用いた。電子運動についてもジャイロ運動論的方程式の解析 を行うと、LHD
でのショットナンバー88343
での高イオン温度プラズマの実験結果と矛盾しない、イオン温度分布に関するシミュレーション結果が得られることがわかった。また、乱流輸送が新 古典輸送よりも優位である。そして、実験結果のイオン温度分布と比べると、輸送について硬直
性(
stiffness
)が強いことを示した。低イオン温度プラズマについても同様の解析を行い、イオン温度分布の実験結果が、シミュレーション結果と矛盾しない。この時、イオン温度勾配不安定性 による乱流輸送が新古典輸送より小さい領域が広い。また、電子熱拡散係数モデルと電子準線形 熱流束モデルを用いて、高イオン温度プラズマと低イオン温度プラズマについて、電子温度分布 に関するシミュレーションを行い、実験結果と比較できるシミュレーション結果を得た。この時、
電子準線形流束モデルは、イオン熱拡散係数モデルを用いて、電子準線形熱流束とイオン準線形 熱流束の比から評価される。電子熱輸送モデリングの際、イオン温度勾配不安定性に対しての電 子温度勾配を含める研究は今後行われる。ジャイロ運動論的乱流輸送モデルを輸送シミュレーショ ンに、低計算機資源で取り入れる方法
[2]
を用いた。非線形結果を再現する簡約化モデルを用いた 時に、輸送シミュレーション結果である温度分布は、実験結果と矛盾しないことがわかった。[1] S. Toda et al., Phys. PlasmasVol. 26 012510 (2019)
[2] S. Toda et al., Journal of Physics: Conference Series 561, 012020 (2014)
[3] S. Toda et al., Plasma and Fusion Research submitted (2019); The 27th International Toki Con-ference on Plasma and Fusion Research and The 13th Asia Pacific Plasma Theory ConCon-ference, November 19-22, 2018, P1-26
金属間化合物における空孔型欠陥と水素原子の相互作用に関する研究
大阪府立大学工学研究科 堀史説
はじめに
物質中の水素の材料への影響は様々な分野で重要な問題である。特に水素脆化や水素貯 蔵などの観点から重要な課題の一つである。核融合炉など大量の放射線に晒され結晶とし て損傷を受けるような特殊な環境下では、その挙動がプラズマの安定化、熱伝導および強 度などの材料特性劣化を促進するなど密接な関係を有しており、これらの相互作用につい て様々な研究が進められている。このような材料中の水素の状態は他の元素に比べて非常 に難しく、微量検出や欠陥との結合捕獲状態などの評価は限られた手法で特定のものに限 られて来た。加えて合金中の格子欠陥も必ずしも単純な状態で存在するわけではない。こ のような格子欠陥に対して陽電子消滅法は原子レベルでの空孔の検出に優れ、対消滅時の 局所的な電子密度分布を簡便に詳細な評価が可能である。
一方、現実問題として体心立方格子(bcc)からなる金属では水素同位体の貯留が大きな問 題になっている。例えばタングステンに照射によって空孔型欠陥が導入されると、多量の 水素が捕獲されるという報告がある。しかし
bcc
金属が必ずしも同様の水素捕獲が起こる 訳ではない。我々のこれまでの研究で同じbcc
構造を有する金属間化合物でも空孔当りに 複数の水素原子が捕獲安定化する合金系があることが計算によって求められている。B2
型 規則構造を有するFe-Al
合金での多量水素捕獲と考えられる空孔挙動を陽電子でも捉えて きた。同様にB2
型構造を有するFe-Rh
合金においては鉄とロジウムの弾き出し閾エネル ギーが大きく異なるため欠陥種の制御が容易であると考え、これまでは電子線照射前後の 陽電子寿命測定と水素放出の実験を行い、Fe-Al
同様に空孔への水素捕獲が確認された。今年度はさらに同時計数ドップラー測定などを積み重ね、照射による空孔種生成の比率お よびそれらへの水素捕獲についてより詳しく検討した。
実験方法
アーク溶解にて作成した等比組成(化学量論組成)の
Fe-Rh
合金インゴットをおよそ10 mm
×10 mm
×1 mm
の板状に切出し表面を鏡面研磨した。この試料を3
×10
-4Pa
の真空 中で600
℃、120
時間の焼鈍を行均一化熱処理したものを用い、エックス線回折によりB2
単相で特に今回は未照射でできるだけ残留空孔のない試料を事前に陽電子消滅測定で確認 した試料を用い電子線照射に供した。電子線照射は京都大学複合原子力研究所(KURRI)
に て線形型電子線型加速器を用いて8MeV
の電子線を照射温度35
〜40
℃で照射量1×10
18e
-/cm
2の照射を行った。照射後の試料にチオシアン酸アンモニウム溶液を用いた電解水素チ ャージによる水素の注入を0.3A/cm
2で10
時間行った。これらの試料に対して、X
線回折、陽電子消滅寿命測定、同時計数ドップラー広がり測定
(CDB)
定を行った。今回はCDB
曲線 の最小二乗によるフィッティングにより空孔の電子状態から空孔周囲の元素比の解析を試 みた。30FP‑5
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