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Figure 2-1 石油系炭化水素で汚染されていない土地から収集したさまざまな土壌サンプルにおける総細菌およびHDBの分布

(Fukuhara et al. 2013の実験データを改変)

試料 No.

HDB 数

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Figure 2-2 好気性条件下での一般的な炭化水素分解の経路

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Figure 2-3 異なる種の石油系炭化水素の相対的な生分解性

短・中鎖アルカン(<C20)

長鎖アルカン(>C20)

芳香族炭化水素

(例、トルエン、ベンゼンなど)

長鎖シクロアルカン

(例、ドデシルシクロヘキサン)

多環芳香族炭化水素

(例、ピレン、アスファルテンなど)

分解 性( 降順

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対象の炭化水素 初発酸化のための酵素 参考文献

Short-chain alkanes (C2–C10) 1. Non-heme iron monooxygenase 2. Copper-containing monooxygenase

3. Heme-iron monooxygenase (or cytochrome P450)

van Beilen et al. 1994 Hamamura et al. 1999 Maier et al. 2001 Short to medium length chain alkanes (C5–C20) 1. AlkB related alkane hydroxylases vanBeilen et al. 2003 Long-chain alkanes (>C20) 1. Heme-monooxygenase (P450 type)

2. Non-heme iron monooxygenase (AlkB-related) 3. Flavin-binding monooxygenase (AlmA)

4. Thermophilic flavin-dependent monooxygenase (LadA)

vanBeilen et al. 2006 Nie et al. 2011 Maeng et al. 1996

Feng et al. 2007, Li et al. 2008

Aromatic hydrocarbons 1. Fe-dioxygenase

2. Fe-monooxygenase 3. Flavin-monooxygenase

Larkin et al. 1999 Kim et al. 2008 van Beilenet al. 2002

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2 節 実験材料および方法

2.2.1 長鎖c-アルカン分解菌

長鎖c-アルカン分解菌Rhodococcus属細菌は、これまでの研究で単離してきた11菌

株(R. erythropolis NDKK1、R. erythropolis NDKK2、R. erythropolis NDKK5、R. erythropolis NDKK6、R. erythropolis NDKK7、R. erythropolis NDKK48、R. erythropolis ODNM1C、R.

erythropolis NDKY82A、R. erythropolis ODMI54、R. erythropolis ODNM2B、R. erythropolis NDMI144)を用いた(Kubota et al. 2008)。

長鎖c-アルカン分解菌Gordonia属細菌は、これまでの研究で単離してきた5菌株

(Gordonia sp. NDKK46、Gordonia sp. NDKY2B、Gordonia sp. NDKY2C、Gordonia sp.

NDKY76A、Gordonia sp. YS5)を使用した(Kubota et al. 2008)。菌株はLB培地を用い、

30℃、120 rpmで振とう培養した。

2.2.2 炭化水素分解菌株の同定と

これまでに研究で単離した長鎖c-アルカン分解菌Gordonia属細菌5菌株(Gordonia sp. NDKK46、Gordonia sp. NDKY2B、Gordonia sp. NDKY2C、Gordonia sp. NDKY76A、

Gordonia sp. YS5)は使用した。これらの株は、LB培地で、30℃で200 rpmにて振とう

培養した(Koma et al. 2001)。培養物から全DNAを抽出し、16S rRNA遺伝子配列を決 定した(Iwamoto et al. 2001、Sanpa et al. 2006)。配列決定した5株について、ClustalW

(バージョン2.1)を使用して系統解析を行った。隣接結合法と1000回反復で計算し たブートストラップ値より系統樹を構築した。alkBの配列も30系統について決定し た。それぞれalkBの存在を確認するために、Table2-2に示すプライマーを使用して PCRを実施した。alkB遺伝子[alkB G type] PCR産物は、約1,300 bpであった。 DNA シークエンスで決定した塩基配列はGenetyx Macフォーマットで保存し、NCBIが提供し ているサービスBlast Search(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/blast.cgi)を用いて相同性の 高い遺伝子の検索を行った。

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名称 塩基配列 Tm値(℃) 参考文献

20-F 5’-GTAATCGTCGGCCAGTAGAGTTTGATCCTGGCTC-3’ 78 Miyake et al. 2003

1510-R alkG-F alkG-R

5’-CAGGAAACAGCTATGACCGGCTACCTTGTTACGACT-3’

5’-GCCCGATTGTCTAGACAACGGACA-3’

5’-TAATCGCAGCCCGGGCAACGGAATG-3’

77 72 65

Miyake et al. 2003 西八条、2005 西八条、2005

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2.2.3 長鎖c-アルカン分解能の分析

バイオレメディエーションの実験では R. erythropolis NDKK6 を用いた。この細菌の

長鎖c-アルカン分解能力の評価は、第1章第2節の1.2.3と同様の方法で行った。

2.2.4 土壌中の炭化水素分解菌の定量

いくつかの炭化水素分解菌は、炭化水素分解における初発酸化に関わる酵素であるア ルカンヒドロキシラーゼをコードする、alkB遺伝子を有していることが報告されている

(Vomberg and Klinner 2000、Hara et al. 2004)。また、R. erythropolisは、種特異的なアル カンヒドロキシラーゼ遺伝子である alkB R2 を保持していることが分かっている

(Fukuhara et al. 2013)。そこで、alkB R2をターゲットとしたreal-time PCRによって、

NDKK6株数の定量を行った。

(1) 検量線用サンプルの調製

R. erythropolis NDKK6株の菌数を定量するために、alkB R2のreal-time PCRにおける 検量線を作成した。まずR. erythropolis NDKK6株を培養し、菌数測定を行った。次に、

ガラスピペットを用いて50 mL容チューブへこれらの菌液50 mLを加え、高速冷却遠 心機(Supurema 25、トミー精工、東京)で4,000 rpm、4°C、10分の条件で遠心分離し た。ガラスピペットを用いて45 mLの上清を除去した後、10倍濃縮の菌液を作製した。

その後、DNA抽出し、アガロースゲルを用いた電気泳動を行った。

(2) DNAの精製

DNAの精製では、トランスイルミネーター(MID-170、アズワン、大阪)を用いてア ガロースゲルにUV を照射した。その後、DNAバンドをカッターで切り出し、そのゲ ルを、ガラスウールを詰めた1 mLチップを用いて作製したゲル抽出キットに入れ、1.7 mLマイクロチューブにセットし、5,000 rpm、20°C、10分の条件で遠心分離した。チュ ーブに溶液の0.1倍量の3 M酢酸ナトリウム溶液及び2.5倍量の100 %エタノールを加 え、遠心(14,000 rpm、20°C、10分)した。溶液を除去し、70 %エタノール500 µLを 加え、遠心(14,000 rpm、20°C、5分)した。溶液を除去し、水滴が完全に無くなるまで 静置した。超純水10 µLをチューブに加え、テンプレートDNAとした。

(3) alkB R2 real-time PCR(qPCR)

alkB R2 real-time PCR(qPCR)では、まずテンプレートDNAの101 ~ 103倍希釈液を 作製した。Real-time PCR用の8連チューブを使用し、テンプレートDNAの原液及び希 釈液それぞれの反応液(Table2-3)を作製した。リアルタイムPCR(7300 Real-time PCR

System、Applied Biosystems、CA、アメリカ) にチューブをセットしてPCRサイクル条

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件(Table2-4)を設定し、alkB R2 real-time PCRを行い、増幅曲線及び解離曲線を確認し た。alkB R2 real-time PCRに用いたR. erythropolis検出用プライマーの配列を表Table2-5 に示す。また、使用したKAPA-SYBR及びROX high はKAPA-SYBR qPCR-kit(KAPA

BIOSYSTEMS、MA、アメリカ)のプロトコールに従って用いた。反応後、各DNAの

増殖曲線の Threshold 値を 0.2 に設定して解析を行い、解析結果から各サンプルの

Threshold値までのサイクル数(Ct値)を求めた。

(4) NDKK6株数の定量

NDKK6 株数の定量では、アガロースゲルの DNAバンドを切り出し、同様の方法で

DNAの精製を行った。Template DNAを用いて、alkB R2 real-time PCRを行った。各サン プルのCt 値を確認し、作成した検量線を用いて混合バイオマス1 g中のNDKK6 株数 を算出した。

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Table2-3 alkB R2 real-time PCRの反応液

試薬 容量 (µL)

KAPA-SYBR 10.0

Forward Primer alkB R2 (10 µM) 0.4

Reverse Primer alkB R2 (10 µM) 0.4

ROX high 0.4

Template DNA 1.0

超純水 6.6

40 Table2-4 alkB R2 real-time PCRサイクル条件

PCRステップ 温度 反応時間

Predenature 95°C 10 min

Denature 95°C 15 sec

Annealing/Extension 60°C 30 sec

※Denature~ Annealing/Extensionを40サイクル行う。

41 Table2-5 プライマーalkB R2の塩基配列

プライマー 塩基配列

Forward Primer alkB R2 5’-CGGTTGTGTCGCAGGAATC-3’

Reverse Primer alkB R2 5’-AACGACTGCGCCAGAGTGAT-3’

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2.2.5 土壌中の有機物量と総細菌数、窒素循環活性の定量

様々な圃場より採取した 235 の土壌サンプルについて、土壌中の有機物量に関わる TC および TN について調べた。また、窒素循環活性に関わる総細菌数、アンモニア酸 化活性、亜硝酸酸化活性についても分析した(Adhikari et al. 2015)。

2.2.6 有機物調整によるバイオレメディエーションの促進実験

野外から有機物量の多い土壌と少ない土壌の2種類を採取した。バイオレメディエー ション実験で使用した土壌(TC値は10,000 mg/kg-土壌、炭化水素なし)は、砂質土(TC

値は200 mg/kg-土壌)とシルト質土壌(TC値は39,000 mg/kg-土壌)であった。バイオ

レメディエーション実験は、土壌2 kgを使用して、次の条件でおこなった。

炭化水素汚染土壌(5,000 mg/kg)は、自動車用エンジンオイル(ENEOSタイプスー パーオイルT10、新日本石油、東京)を土壌に添加することにより調製した。バイオス ティミュレーションの無機条件は、4倍濃縮改質SW(4×MSW)培地改変SW培地(1 Lあたり:1.21 g NH4NO3、14.3 g Na2HPO4・12H2O、5.44 g KH2PO4、0.5 g NaCl、0.247 g MgSO4、2.78 mg FeSO4・7H2O、14.7 mg CaCl2・2H2O、2.01 mg ZnSO4∙7H2O、0.15 mg [NH4]6Mo7O24・4H2O、2 mg CuSO4・5H2O、0.4 mg CoCl2・6H2O、1.49 mg MnSO4・5H2O、

0.5 g Polypeptone, 0.25 g Yeast Extract)を添加した。バイオスティミュレーションの有機 条件は、鶏糞(5%w/w、アグリエヌワイ、兵庫)を添加し、土壌のTC値は、炭化水素 を含まない約20,000 mg/kg土壌に調整した。肥料中の総細菌数および土着のHDB数は、

それぞれ4.3×1010 cells/gおよび1.4×108 cells/gであった。

バイオオーグメンテーションの無機条件は、4×MSW(1%v/w)およびR. erythropolis

NDKK6(1×108 cells/g)を添加した。有機条件のバイオオーグメンテーションの条件は、

鶏糞(5%w/w)およびR. erythropolis NDKK6(1×108 cells/g)を投与した。 1、3、7、14、

21、および28日後に、総細菌数、土着HDB数、R. erythropolis NDKK6菌数および炭化

水素濃度を分析した。

2.2.7 土壌のサンプリングと準備

リン循環の評価用として用いた土壌サンプルは232の農地から収集した。日本、アフ ガニスタン、フランスの様々な農地からサンプルを収集した。フランスのサンプルは、

果樹園の土壌サンプルであった。日本、フランス、アフガニスタンの一般的な気候は、

それぞれ温帯、温帯、亜熱帯である。サンプルは、表面の塊とリター層を除去した後、

約15 cmの深さから採取した。土壌サンプルは、いずれも乾燥させずにサンプリングし

た後、立命館大学(草津、滋賀)の研究室に運び、分析まで4℃で冷蔵保存した。日本 の土壌サンプルは1週間以内に、フランスとアフガニスタンからのサンプルはサンプリ

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ング後4週間以内に運搬し、分析に供した。分析前には2 mmメッシュのステンレス製 スクリーンでふるいにかけた。

2.2.8 土壌のpHおよび金属濃度(FeAlCa)の測定

土壌pH(土壌:水=1:2.5、w/v)は、pHメーター(LAQUA F-72、堀場製作所、京

都)で測定した。土壌からFeを抽出するために、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)

メソッドを使用した (Lindsay et al. 1978)。同様に、Ca は酢酸アンモニウム法

(Schollenberger et al. 1945)で抽出され、抽出物中のFeおよびCa濃度は原子吸光分光 光度計(Z2300、日立ハイテク、東京)を使用して測定した。最後に、Al濃度は土壌サ ンプルKClで抽出した後、滴定法を使用して定量した(Mclean et al. 1965)。 Fe、Ca、

およびAlの形態は、これまでの報告(Schollenberger et al. 1945、de Boer et al. 1973、Lin et al. 1960)に従って「利用可能なFe(Available Fe)」、「交換可能なAl(Exchangable Al)」、 および「交換可能なCa(Exchangable Ca)」と命名した。

2.2.9 微生物量とリン循環活性の分析

土壌中の微生物量は、Slow-stirring法によって分析した(Aoshima et al. 2006)。リン 循環活性は既報に従って評価した(Horii et al. 2013)。リン循環活性は、有機リン基質

(フィチン酸)の添加後の土壌中の可溶性リンの増加率から決定する。リン循環活性は 下記の手順で測定した。

i . 1 gの土壌を4本の遠心管に入れた。

ii. 150 µ Lのフィチン酸溶液(3.3 mgの有機リンを含む)を2本のチューブに追加し

(チューブP)、残りの2本のチューブに150 Lの蒸留水を追加した(チューブW)。

iii. フィチン酸添加チューブ(Tube P0)および蒸留水添加チューブ(Tube W0)につい

て蒸留水またはフィチン酸溶液の添加直後に水抽出性リンをモリブデンブルー法 で分析した(Holman et al. 1943)。

iv. 残ったフィチン酸と蒸留水を加えたチューブ(それぞれチューブP3とW3)を25℃

で3日間インキュベートし、水で抽出可能なリンを分析した。

v. リン循環活性は、次の式を使用して計算した。

Phosphorus circulation activity (points ) =

(Soluble P in Tube P3−Soluble P in Tube P0) − (Soluble P in Tube W3−Soluble P in Tube W0) Added P in Tube P × 100

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