式(4)から観測幅は分解能と検出器画素数に比例することが分かる。したがって、
分解能が同じであれば検出器画素数が多い方が観測幅は広くなる。
赤外検出器としては現在利用可能なものは、最大でも~1000 画素程度であるため、GSD の 2000 倍以上の観測幅を達成するためには、検出器を下図に示すように、必要な観 測幅となるようにスタガ配置する必要がある。
図 2.1.1-3 検出器スタガ配置による観測幅拡大の例
ただし、スタガ配列はアライメント調整などの問題があるため、できれば多画素素子 開発を実施し、できるだけスタガ配列する検出器素子数を減らすことが望ましいと考 える。
(2) 衛星搭載用光学センサにおける撮像方式について
衛星搭載用光学センサにおける撮像方式は大きく分けて以下の3つに分類される。
(1)whiskbroom (2)pushbroom (3)staring
アロングトラック
クロストラック
(University of Zurich webページより)
図 2.1.1-4 光学センサの撮像方式
各撮像方式の特長を以下に示す。
ア whiskbroom
アクチュエータなどメカニカルな方法で、クロストラック方向に IFOV をスキャンす る。IFOV は1素子の検出器か、一列のアレイ検出器で構成する。アロングトラック方 向は衛星の移動によりスキャンする。アロングトラック方向に観測の空白域が生じな いようにするためには,クロストラック方向のメカニカルスキャンを高速で実施せね ばならず、検出器の積分時間は非常に限られる。(検出器積分時間=1ライン撮像時 間/(観測幅/分解能)*画素数)
イ pushbroom
電気スキャン方式により、クロストラック方向のスキャンを実施する、検出器の画素 数は、観測幅のセル数と等しくなる。アロングトラック方向は衛星の移動によりスキ ャンする。このためライン撮像時間とほぼ同じ時間まで検出器積分時間を長くするこ とができる。
ウ staring
電気スキャンにより、クロストラック方向、アロングトラック方向の観測幅全域を 1 度に撮像する。クロストラック方向、アロングトラック方向のiFOVは2元検出器 の1画素に対応する。衛星の姿勢制御やミラーなどによりデジタルカメラ方式で撮像 することが可能で、3方式のなかで一番検出器積分時間を長くすることができる。
赤外センサにおける分解能と1画素積分時間の関係を下図に示す。
0 5 10 15 20 25
0 20 40 60 80 100 120 140 160
分解能[m]
1画素積分時間[ms]
700 600 500
400 300 250
200 150 軌道高度[km]
現状の非冷却検出器時定数
90m
pushbloom方式
冷却検出器の飽和時間
図 2.1.1-5 赤外センサにおける分解能と1画素積分時間の関係
非冷却検出器では、時定数の制約があり、pushbroom 方式では将来的にも 60m 程度が 限界と考えられる。これ以上の高分解能化を図るためには、1画素当りの積分時間が 稼げる staring 方式の採用が必須になる。
冷却検出器では、検出感度が高く積分時間を非常に短くできるために、whiskbroom方 式も採用可能である。一方、冷却検出器では画素飽和時間により分解能の設定が影響 を受けることに留意する必要がある。
(3) staring 方式を採用した場合検出素子に要求される事項
衛星の対地速度は軌道高度により変化するが、現在考えている軌道高度の範囲(300
~1000km)では、対地速度の変化はあまりない。pushbroom 型での1画素積分時間は、
(分解能)/(対地速度)で求められるので、分解能を設定すると積分時間は決定さ れることになる。したがって地上分解能を 10mと設定すると、1 ライン撮像周期は約 1.3ms 程度となる。
staring 方式では、アロングトラック方向の画素数を増やすことにより、衛星の姿勢 制御を加えることで積分時間を延ばすことが可能となる。したがって、最低 10 ライ ン程度あれば、検出器積分時間を、検出器の熱時定数程度にすることが可能である。
これに加えて、衛星の姿勢安定のために各シーン間に 0.5s 程度を要するとすれば、
ライン数としては 400 ライン程度は必要と考える。
以上より、衛星用に搭載する場合は、アロングトラック方向のライン数としてはマー ジンを考慮して 1000 ライン程度は必要と考えられる。
非冷却検出器はエリア検出器画素数が多くなれば、高分解能衛星搭載の実現性が高く なる。
(4) マルチスペクトルセンサ_冷却検出器を用いた場合
マルチスペクトルセンサで冷却検出器を用いた場合の実現可能な予測性能の検討結 果を以下に示す。
表 2.1.1-1 予測性能