日機連 19 高度化- 8
平成19年度
次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサ
に関する調査研究報告書
平成20年3月
社団法人 日 本 機 械 工 業 連 合 会
財団法人 資源探査用観測システム
・宇宙環境利用研究開発機構
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
序
我が国機械工業における技術開発は、戦後、既存技術の改良改善に注力することから 始まり、やがて独自の技術・製品開発へと進化し、近年では、科学分野にも多大な実績 をあげるまでになってきております。 しかしながら世界的なメガコンペティションの進展に伴い、中国を始めとするアジア 近隣諸国の工業化の進展と技術レベルの向上、さらにはロシア、インドなどBRICs 諸国の追い上げがめざましい中で、我が国機械工業は生産拠点の海外移転による空洞化 問題が進み、技術・ものづくり立国を標榜する我が国の産業技術力の弱体化など将来に 対する懸念が台頭してきております。 これらの国内外の動向に起因する諸課題に加え、環境問題、少子高齢化社会対策等、 今後解決を迫られる課題も山積しており、この課題の解決に向けて、従来にも増してま すます技術開発に対する期待は高まっており、機械業界をあげて取り組む必要に迫られ ております。 これからのグローバルな技術開発競争の中で、我が国が勝ち残ってゆくためにはこの 力をさらに発展させて、新しいコンセプトの提唱やブレークスルーにつながる独創的な 成果を挙げ、世界をリードする技術大国を目指してゆく必要があります。幸い機械工業 の各企業における研究開発、技術開発にかける意気込みにかげりはなく、方向を見極め、 ねらいを定めた開発により、今後大きな成果につながるものと確信いたしております。 こうした背景に鑑み、当会では機械工業に係わる技術開発動向等の補助事業のテーマ の一つとして財団法人資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構に「次世代 衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究」を調査委託いたしました。本 報告書は、この研究成果であり、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚です。 平成20年3月 社団法人 日本機械工業連合会 会 長 金 井 務序
我が国は、これまで多くの地球観測衛星の打ち上げ及び運用を行ってきており、地上か らは得られない宇宙からの各種画像データは、環境や資源等の地球上の様々な事象を観測 するために広く利用されています。当財団におきましても、1992 年に打ち上げられたJE RS-1搭載のOPS及びSARを始めとして、ADEOS搭載のIMG、米国Terr a搭載のASTER、更に 2007 年 1 月に打ち上げに成功したALOS搭載のPALSAR 等、多くの地球観測センサを開発し、地球環境の継続的な監視、災害時のグローバルな状 況把握等に貢献してきております。 人工衛星から取得した地球観測データを用いて様々な解析を行う衛星リモートセンシン グにおいては、電波から光の領域に渡る様々な波長の電磁波を画像データとして取得する イメージングセンサが重要な役割を果たしています。なかでも、熱赤外領域の波長の光を 画像として捉えるサーマルイメージングセンサは、昼夜を問わず地球の熱的事象を観測す ることを可能とするため、環境監視、資源探査、災害監視、気象観測等、社会の安全・安 心にとって欠くべからざるセンサとして活用されています。本調査研究は、当財団が開発 し1999年12月に打ち上げ後現在運用中のTerra搭載ASTERを構成する三つ のセンサの一つであるサーマルイメージングセンサ(TIR)の後継を想定し、より高性 能な次世代の衛星搭載サーマルイメージングセンサについて、調査研究を実施したもので す。 本報告書にまとめられた成果が、今後衛星搭載サーマルイメージングセンサの開発を行 うに際しての仕様設定等において、有用なデータを提供することができれば幸いです。 最後に、当財団法人資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構に対して、本 調査研究の機会を提供いただいた、社団法人日本機械工業連合会、日本自転車振興会なら びに関係の方々に厚く御礼申し上げます。 平成20年3月 財団法人 資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構 理 事 長 野間口 有目次 事業運営組織 ⅳ 総論 1 1.調査研究目的 2 2.調査研究体制 3 3.調査研究内容 4 4.調査研究項目・スケジュール 5 各論 6 1. 技術動向調査 7 2. 概略方式の検討 50 3. 開発課題の検討 97 4. まとめ 103
事業運営組織 本調査研究は、財団法人 資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構内に「次 世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究委員会」を設置して運営し、 委員会における助言を調査研究成果に反映した。 平成 19 年度 次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究 委員会 委員名簿 氏名 所属 委員長 梅干野 晃 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 教授 委員 外岡 秀行 茨城大学 学術情報局 IT 基盤センター IT システム運用部門長 准教授 委員 丹下 義夫 宇宙航空研究開発機構 宇宙利用推進本部 地球観測研究センター 技術領域統括 委員 山口 靖 名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 教授 (順不同、敬称略) 事務局: 沖野 英明、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構、専務理事 大木 永光、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構、担当部長 久家 秀樹、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構、開発主幹 森岡 章次、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構、開発主査
1. 調査研究目的
熱赤外領域を利用した衛星リモートセンシングの分野においては、数十メートルの空 間分解能で陸域観測等を行う LANDSAT ETM+や TERRA ASTER/TIR 等、数百から1キロメート ル程度の空間分解能で地表面温度分布観測等を行う AQUA/TERRA MODIS や NPOESS/VIIRS 等、 数キロメートルの空間分解能で広域の気象観測を行う MTSAT/GOES Imager 等、更に軍用の 偵察衛星や早期警戒衛星に至るまで、非常に多様なシステムが運用ないし開発されている。 これらの熱赤外リモートセンシングデータにより、昼夜を問わず温度に係わる事象が 観測可能なため、山火事や火山噴火等の災害監視、ヒートアイランド現象や海面温度分布 等の環境変化の監視、建造物の運用状況監視等、社会の安全、安心に密接に関わる情報を 取得することが可能となる。また、複数バンドを使用することにより岩石等を識別できる ことから資源探査にも極めて効果的である。このように熱赤外領域を利用した衛星リモー トセンシングは、安全・安心な生活の実現、環境との調和、資源の確保といった社会ニー ズへの対応が可能な技術として今後益々利用拡大が予想される。 一方、これらの高度化するユーザニーズに答えていくためには、衛星に搭載され熱赤 外領域の画像データを取得するサーマルイメージングセンサ(熱赤外センサ)の更なる高 機能性能化並びにデータ継続性が重要である。 本調査研究は、上記背景を踏まえ、技術動向調査や概略システム構想検討を実施する ことにより、当機構が開発し運用中である ASTER の熱赤外放射計(ASTER/TIR)の後継となる 次世代の衛星搭載サーマルイメージングセンサについて、今後の開発の方向性や課題を明 らかにすることを目的する。
2.調査研究体制 本調査研究は、下記体制により実施した。 平成 19 年度 次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究 調査研究体制 (財)資源探査用観測システム・宇宙環境 利用研究開発機構(JAROS) (社)日本機械工業連合会 次世代衛星搭載サーマルイメージング センサに関する調査研究委員会 三菱電機(株) 日本電気(株) また、(財)資源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構内に熱赤外域のリモート センシングに関する有識者からなる「次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関す る調査研究委員会」を設置して運営し、委員会における助言を調査研究成果に反映した。 平成 19 年度次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究委員会 委員名簿 氏名 所属 委員長 梅干野 晃 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 環境理工学創造専攻 教授 委員 外岡 秀行 茨城大学 学術情報局 IT 基盤センター IT システム運用部門長 准教授 委員 丹下 義夫 宇宙航空研究開発機構 宇宙利用推進本部 地球観測研究センター 技術領域統括 委員 山口 靖 名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 教授 (順不同、敬称略)
3.調査研究内容 ASTER(熱赤外域に5バンドを有する衛星搭載放射計)の経験を元に、ヒートアイランド等 の環境監視や建造物の運用状況監視等を目的とした周回軌道から高分解能の熱赤外画像を 継続取得する方式(周回高分解能センサ)、及び山火事等の災害監視や早期警戒を目的とし た静止軌道から地表面温度変化を常時監視する方式(静止常時観測センサ)に関し、これ らの技術動向調査、概略方式の検討、実現するための課題の検討を実施した。 (1) 技術動向調査 国内外における衛星搭載サーマルイメージングセンサについて最新の開発動向や技 術動向の調査を実施した。 (2) 概略方式の検討 周回軌道から高分解能の熱赤外画像を継続取得するシステム及び静止軌道から地表 面温度変化を常時監視するシステムに関して、システム構成、概略仕様等の検討を実 施した。 (3) 開発課題の検討 上記(2)の概略仕様を実現するために必要な技術開発項目の検討を実施し、実現可 能性、開発課題を明確にした。
4.調査研究項目・スケジュール 調査研究内容の各項目について以下のスケジュールにて検討を実施した。 次世代衛星搭載サーマルイメージングセンサに関する調査研究委員会は、10 月及び 3 月の 二回開催した。
半期別・月別
上半期
下半期
平
平
成
成
19
20
年
年
/
/
項目
7
8
9
10
11
12
1
2
3
①技術動向調査 ②概略方式の検討 ③開発課題の検討 ④委員会開催○
○
⑤報告書作成1 技術動向調査 衛星搭載サーマルイメージングセンサが実用化されている例としては、周回衛星によ るリモートセンシング目的及び静止衛星による気象観測、早期警戒衛星などが代表的 である。 高分解能化に主眼を置く用途では周回衛星の利用が中心となるが、周回衛星では再訪 待ち時間が制約となるため、観測頻度向上のためには機数増などの対策が必要(早期警 戒目的の STSS 等)である。 気象観測や早期警戒衛星のようにグローバル監視、常時監視、リアルタイム性等が重 視される用途では静止衛星の利用が主体となっている。 本章では、周回高分解能センサと静止常時観測センサについて技術動向を述べる。 1.1 周回高分解能センサ 熱赤外領域を利用する周回衛星システムとして多様なシステムが運用されている。サ ーマルイメージングセンサ(熱赤外センサ)搭載衛星の例を表 1.1-1 に示す。 実 用 化 さ れ て い る 例 と し て は 、 地 表 分 解 能 数 十 メ ー ト ル ク ラ ス の TERRA 搭 載 ASTER/TIR、数百メートルクラスの BIRD 搭載 HSRS、数千メートルクラスの SEASAT 搭 載 VIRR 等、資源、火山、海洋等の地球観測/リモートセンシングを目的とするもの が中心である。
また、偵察目的として(仏)HELIOS-IIA に赤外バンドの検出機能が搭載されているとい う情報があり、軍用にも重用されていると考えられるが、詳細は不明である。 本節では、地表分解能 90mの TERRA 搭載 ASTER/TIR を初めとする高分解能熱赤外セン サとして、米国 NASA の LANDSAT 搭載 ETM+(エンハンスドセマティックマッパープラス @Landsat-7)、米国 DOE が開発したサーマルイメージングセンサ MTI(Multispectral Thermal Imager)、我国の ASTER/TIR について述べる。最も高分解能の MTI について は代表例として詳しく記述する。
また 2014 年初頭の打ち上げを目指して 2007 年から米国 JPL にて本格的な検討が開始 された HyspIRI の TIR についても調査結果を述べる。
表 1.1-1 熱赤外センサ搭載衛星例 1.1.1 LandSat 1972 年以来シリーズで打ち上げられている地球観測衛星であり、膨大な蓄積データは 様々な分野で利用されている。 1号機(72)、2号機(75)、3号機(78) 4号機(82)、5号機(84) :Thematic Mapper 搭載 6号機(軌道投入失敗)、7号機(99) :ETM+搭載 (a)1~3 号機 (b)4、5 号機 図 1.1.1-1 Landsat シリーズ 外観(1/2)
(c) 6、7 号機 図 1.1.1-1 Landsat シリーズ 外観(2/2) 表 1.1.1-1 Landsat-7 搭載 ETM+ 主要諸元 打上げ時期 1999.4.15 運用中 軌道高度 705km 軌道 太陽同期準回帰軌道 搭載センサ ETM+ 観測幅 185km 次号機については紆余曲折があったものの調達フェーズに入っているが、熱赤外バンドは LANDSAT 次号機から後述の HyspIRI へ移された形となっている。
1.1.2 MTI (1)概 要 ●大量破壊兵器製造施設の検出・識別を目的とする将来システムの軌道上技術実証を 目指す研究開発プロジェクト 実証項目 ・先進のマルチスペクトル/熱赤外センサ ・アルゴリズム、画像処理 ●可視から熱赤外に亘る 15 バンドのセンサを搭載 ●打ち上げ 2000 年 3 月 12 日、Taurus rocket により打ち上げ。 ●ミッション状況 2007 年現在運用中であるが最近は機器の不具合及び資金制約により非常に限定され た運用となっている。 図 1.1.2-1 衛星外観 (2)組 織 ●スポンサー
衛星開発・運用 : DoE Office of Nonproliferation and National Security 打ち上げ : DoD Air Force Space Test Program
●プロジェクト母体
Sandia National Laboratories, Los Alamos National Laboratory, Savannah River Technology
・Air Force Space Test Progam, Air Force Research Laboratory, National Institute of Standards and Technology
・Ball Aerospace, Raytheon, TRW (3)ミッション (a) 条約モニタリング支援 ・核兵器、化学兵器等の製造過程において生成されるガス、廃棄物質の検出・識別 ・施設や活動状況に関する情報(表面温度、物質、水質、植生活性度を含む)の抽 出 (b) 将来の DoD 作戦支援/ターゲッティングシステムの開発に資する MTI 技術・デー タの取得 (c) 民間応用への寄与 ・全球変動研究プログラム ・有害廃棄物の調査・識別 ・化学物質流出のマッピング ・資源探査 ・農作物活性度、収穫評価 ・湖沼、河川における熱汚染 ・火山活動監視
蓄積された処理ダストの検出・識別(blue の領域) → 施設の識別
図 1.1.2-2 撮像写真例(1/3)
水温の検出 → 施設の識別 図 1.1.2-2 撮像写真例(2/3)
熱赤外画像例 : WSRC-MS-2000-00921,“Thermal Targets for Satellite
Calibration“,Eliel Villa-Aleman,et al.,Westinghouse Savannah River Company , Aiken, SC 29808
Turkey Point Power Plant H.B. Robinson Power Plant
Comanche Peak Power Plant Crater Lake 図 1.1.2-2 撮像写真例(3/3)
(4)光学系アセンブリ ・光学系アセンブリは望遠鏡構体、光学系、2 重ドアに組み込まれた校正源、内部校正 源ホイールアセンブリ、焦点調整機構(2 次鏡駆動)、その他アクチュエータ/機構、 温度制御のためのサーミスタ/ヒータからなる。 ・光学系は、開口径 36cm、F/3.5 のアナスティグマティック軸外し 3 枚鏡であり、面 間隔を安定化するために低膨張複合材に収められ、キネマティックマウントにより 3 点支持されている。遮蔽のない設計となっており、回折限界に近い結像性能の達成 と散乱/熱放射等視野内迷光の抑制を実現している。 ・3 次鏡は 1 次鏡及び 2 次鏡による中間像を検出器上に再結像するとともに開口絞りの 像をコールドシールド開口上に結ばせて開口整合をとっており、装置内部自己放射 赤外線の検出器への入射を遮断している。また、光学系自体を 275K と低温に制御し ており、検出器への不要光の入射を極力抑制し、NEΔT の向上を図っている。
1次鏡
2次鏡
3次鏡
検出器
図 1.1.2-3 光学系構成コールドシールド
開口
1次鏡
2次鏡
3次鏡
検出器
コールドシールド
開口
開口整合光学系
1次鏡、2次鏡
中間像
3次鏡
コールドシールド
検出器
開口整合光学系
1次鏡、2次鏡
中間像
3次鏡
コールドシールド
検出器
開口整合でない光学系
視野中心の画素に入射
する内部放射光
(5)センサ概要 ・センサの透視図と機能ブロック図を夫々図 1.2.1 と図 1.2.2 に示す。 ・センサは開口 36cm 軸外し望遠鏡を有する光学系アセンブリ、2 重ドアに組み込まれ た校正源および内部校正源ホイール、75K の焦点面に設置されたリニア検出器アレー を有する焦点面アセンブリ、制御/読み出し回路等からなる。 表 1.1.2-1 バンド構成と仕様 1.2E-6 3.9E-6 3.2E-6 4.4E-6 6.6E-7 1.3E-7 4.8E-6 5.2E-7 1.7E-5 6.0E-6 3.0E-5 2.3E-5 3.2E-5 2.8E-5 4.4E-5 NER (W/cm2/sr/μm) 3 1 1 1 1 1 3 3 3 3 3 3 3 3 3 ラジオメトリック 精度(%) 20 2.08 ~2.35 O 20 10.2 ~10.7 N 20 8.40 ~8.85 M 20 8.00 ~8.40 L 20 4.87 ~4.07 K 20 3.50 ~4.10 J 20 1.55 ~1.75 I 20 1.36 ~1.39 H 20 0.99 ~1.04 G 20 0.91 ~0.97 F 20 0.86 ~0.90 E 5 0.76 ~0.86 D 5 0.62~0.68 C 5 0.52 ~0.60 B GSD (m) 波長(μm) バンド 5 0.45~0.52 A
図 1.1.2-4 透視図
冷凍機回路
冷凍機
焦点面回路
デュワー
検出器 フィルタ
コールドシールド窓
内部校正源ホイール
望遠鏡回路
校正用黒体/散乱体
付き2重ドア
望遠鏡構体
36cm開口
冷凍機回路
冷凍機
焦点面回路
デュワー
検出器 フィルタ
コールドシールド窓
内部校正源ホイール
望遠鏡回路
校正用黒体/散乱体
付き2重ドア
望遠鏡構体
36cm開口
図 1.1.2-5 機能ブロック図(6)焦点面アセンブリ ・焦点面アセンブリの透視図を下図に示す。コールドシールドが高いために熱負荷や 構造面では不利であるが、開口整合化が容易となり、シェーディングが抑制される という利点がある。 ・センサチップアセンブリを下図に示す。可視近赤外のバンド A~D に関しては検出器 と読み出し回路(ROIC)はモノリシック構造となっている。他のバンドは検出素子 は ROIC にバンプ接合されている。 ROIC はプリアンプ機能とシリアル出力機能を有している。 ・パルスチューブ冷凍機により焦点面は 75K、コールドシールドは 117K に冷却される。 可視近赤外の検出素子は本来冷却の必要はないが、同一焦点面に配置することによ り光路を分離するビームスプリッタを廃し、ハードウエアを簡素化している。長尺 検出器の製造が困難なため 3 つのセンサチップをスタガ配置して観測幅を確保して いる。 ・各バンドの波長帯は検出素子の上に設置された干渉膜フィルタで決定される。
BaF2窓
デュワ壁
熱放射シールド
コールドシールド
フィルタ
センサチップアセンブリ
台座
光学系アセンブリI/F
BaF2窓
デュワ壁
熱放射シールド
コールドシールド
フィルタ
センサチップアセンブリ
台座
光学系アセンブリI/F
図 1.1.2-6 焦点面構成(7)校正系 ・センサの全開口を使った end-to-end 校正を実施するために開口ドアに 2 種類の校正 源が設置されている。 地表面を撮像しないときドアは閉じられておりセンサは黒体校正パネルを観測でき る。黒体校正パネルは赤外バンドの校正に用いられる。表面は Chemglaze Z306 がコ ーティングされて高放射率化され、また温度制御されている。 太陽校正パネルは可視~短波長赤外バンドの校正に用いられる。Z93P 白色ペンキで コーティングされており、開口ドアを 45 度に半開し黒体校正パネルを展開すること により、太陽光がセンサに導かれる。太陽光比率ラジオメータは直達太陽光と校正 パネル反射光の強度を可視近赤外 5 バンドで測定するものであり、太陽校正パネル の反射率をモニタするために用いられる。 ・光学系の内部には回転ホイールで構成された内部校正源(Quick Look 校正装置)が 設置されている。これは焦点面の直ぐ前に設置され、撮像の前後に短期ドリフトや 1/f 雑音を除去するために用いられる。回転ホイールは以下に示す 5 つのポジション を持っている。 +撮像用に用いられる単なる開口 +ナルシサス鏡:検出器が冷却された自分自身(焦点面)を見るための鏡。非撮像 時にクーラの熱負荷を削減するため、あるいは暗時リファレンスを得るために用 いられる。 +280K 及び 360K の黒体光源 +折返し鏡:6W ハロゲンランプを有する積分球の出力光を検出器に導く。 ・回転ホイールのステップモータ、ハーモニックドライブ、クラッチは冗長構成とな っている。
1次鏡
3次鏡
太陽光比率ラジオメータ
太陽校正パネル
黒体校正パネル
内部校正源ホイール
(2黒体、2ランプ、1ナルシサス鏡)
1次鏡
3次鏡
太陽光比率ラジオメータ
太陽校正パネル
黒体校正パネル
内部校正源ホイール
(2黒体、2ランプ、1ナルシサス鏡)
図 1.1.2-7 センサ校正系1.1.3 ASTER/TIR
ASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)は、(財)資 源探査用観測システム・宇宙環境利用研究開発機構によって開発され、NASA の衛星 TERRA(EOS-AM1)に搭載された光学センサであり、1999 年 12 月 18 日に ATLASⅡAS ロケット で打ち上げられた。ASTER は、可視近赤外放射計(VNIR)、短波長赤外放射計(SWIR)、熱赤 外放射計(TIR)の三センサから構成されている。設計寿命5年を大幅に超えて現在なお運 用されており、撮像シーン数は 2007 年 11 月には 140 万シーンを越えている。 MODIS
ASTER
CERES MOPITT MISR Flight direction Earth1.Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection Radiometer (ASTER) 2.Clouds and the Earth's Radiant Energy System (CERES)
3.Multi-angle Imaging Spectroradiometer (MISR) 4.Moderate Resolution Spectroradiometer (MODIS)
5.Measurements of Pollution in the Troposphere (MOPITT)
CSP VNIR(electrical) MPU VNIR(optics) SWIR
TIR
1.Visible and Near Infrared radiometer (VNIR) 2.Short Wave Infrared Radiometer (SWIR)
3.Thermal Infrared Radiometer (TIR) 4.Common Signal Processor (CSP) 5.Master Power Unit(MPU)
図 1.1.3-2 ASTER 外観 ASTER は次のような特徴を有している。 z 可視から熱赤外まで 14 バンドをカバーしている。 z 高いジオメトリックとラジオメトリック分解能を有する。 z VNIR はステレオ視機能を有する。 z 広い領域をカバーするポインティング機能を有する。 SWIR/TIR : +/-8.55deg VNIR : +/-24deg z SWIR と TIR は高性能長寿命スターリングサイクル冷却器を有する。 (寿命 50,000 時間) z 日米サイエンティストの要求を満足している。 ASTER/TIR は、熱赤外領域の5バンドをカバーする高分解能のサーマルイメージングセンサ (熱赤外センサ)である。ASTER/TIR を含む ASTER の諸元を表 1.1.3-1 に示す。
表 1.1.3-1 ASTER 諸元
Item
VNIR
SWIR
TIR
Scan
Pushbroom
Pushbroom
Whiskbroom
Telescope optics
Refractive(Schmidt)
D=82.25mm(Nadir)
D=94.28mm(Backward)
Refractive
D=190mm
Refractive(Newtonian)
D=240mm
Spectrum separation
Dichroic and band pass Filter
Band pass filter
band pass filter
Focal plane (Detector)
Si-CCD
5000 x 4
PtSi-CCD
2048 x 6
HgCdTe(PC)
10 x 5
Cryocooler(Temperature)
not cooled
Stirling cycle, 77 K
Stirling cycle, 80 K
Cross-track pointing
Telescope rotation
Pointing mirror rotatiog Scan mirror rotatiog
±24°
±8.55°
±8.55°
Thermal control
Radiation
Cold plate
Cold plate
Calibration method
2 sets of Halogen lamps and
monitor diodes
2 sets of Halogen lamps
and monitor diodes
270K-340K
Black body
図 1.1.3-3 に ASTER/TIR の外観および寸法・質量・消費電力を、図 1.1.3-4 に透視図を示 す。校正用のオンボード黒体を有しており、校正時にはスキャンミラーが反転して黒体か らの赤外光を望遠鏡側に導く。検出器は冷却器(cooler)上方に位置しており、冷却器に より約 80K に冷却される。
図 1.1.3-3 ASTER/TIR 外観
Earth
Cooler(proved 5 years life time)
On-board Black Body
Scan Mirror
Telescope
1.1.4 HyspIRI/TIR
最近の動向として、National Research Council の今後 10 年の地球科学ミッションに関す るサーベイ(2007 年)を受けて、2007 年から NASA/JPL が概念設計を開始した HyspIRI/TIR について述べる。HyspIRI(Hyperspectral Infrared Imager)は、可視近赤外と短波長赤 外領域をカバーするハイパースペクトルセンサと熱赤外領域をカバーするマルチスペクト ルセンサ(サーマルイメージングセンサ)とを組み合わせたセンサの総称である。可視近赤 外/短波長赤外ハイパースペクトルセンサは Plant Physiology and Functional Types(PPFT)、 熱赤外マルチスペクトルセンサは multispectral Thermal InfraRed scanner(TIR)と呼ばれ ている。現在のところ、2014 年初頭の打ち上げを目指し、開発に着手しようとしている。 図 1.1.4-1 HyspIRI HyspIRI/TIR の主要ミッションとされているのは、次の五つの研究領域である。 ・ 火山 ・ 大規模火災 ・ 水利用 ・ 都市化
・ 地表面の性質と変化 これらのサイエンス要求を満たすための TIR の仕様案は以下のとおりである。 図 1.1.4-2 HyspIRI/TIR の仕様案 上記仕様を満たすセンサの構成案を図 1.1.4-3 に示す。 図 1.1.4-3 HyspIRI/TIR の構成案 広い観測幅を確保するため ASTER/TIR と同様にミラースキャンによるウィスクブルーム方 式の採用が想定されている。
1.2 静止常時観測センサ
静止軌道からの熱赤外観測は、低軌道周回衛星に比べ高度が高く、高地表分解能の観測に は低軌道周回衛星の方が適している。 静止軌道からの観測は、常時観測・リアルタイム 観測というメリットが活かせる用途に限られている。 そのような用途として、世界中の 観測ネットワークが整備されている静止気象観測衛星(Goes,MTSAT 等)と早期警戒衛星 (DSP:Defense Support Program、SBIRS 等)1)があげられる。 静止高度からの観測の約 1/2 は夜間になるため、常時観測という観点から、日照に左右されない熱赤外観測が重要であ る。
1.2.1 静止気象衛星
静止気象衛星は、宇宙利用の初期から静止観測の利点を生かし、低軌道の観測衛星 ERTS/Landsat と並行して開発され、1974 年の SMS/GOES をはじめにヨーロッパの Meteosat, 日本の GMS/MTSAT インドの INSAT とロシア/中国が開発している(図 1.2.1-1)。 表 1.2.1-1 に計画中のものを含む静止気象衛星のサマリーを示す。 米国は、当初ヒューズ社のスピ ン衛星を使用していたが、Ford 社(のちの Loral 社)が INSAT で三軸衛星搭載の放射計で成 功し、小型の放射計で GMS に匹敵する高性能化に成功すると、GOES-8 から三軸衛星にさら に高性能化したイメージャとサウンダーを搭載し画像だけでなく、大気温度プロファイル や水蒸気観測を含む詳細な気象観測を実現した。 日本は、初期のスピン型の GOES シリー ズと同じタイプの GMS を運用してきたが、MTSAT-1 として、GOES-8 と同型の三軸衛星搭載 のイメージャの導入を計画したが、H2A の事故により MTSAT-1 は失われ、2005 年の MTSAT-1R, 2006 年の MTSAT-2 で初めて三軸衛星搭載の高性能放射計に移行した。
MTSAT-1 の打ち上げ失敗の結果、代替機として製作された MTSAT-1R は、JAMI と呼ばれる イメージャを搭載しているが、これまでのイメージャとは異なった高性能の多画素(赤外 バンドでバンドあたり 84 画素)の検出器を採用し、光学系を小型化したコンパクトなセン
サとしてこれまでのイメージャとは異なったコンセプトで開発された3)。
一方、ヨーロッパ(EUMETSAT)は、METEOSAT, MSG(Meteosat Second Generation)とスピン 衛星での観測を継続してきた。 表 1.2.1-2 に示すように、三軸衛星技術的には難易度が 高いが高性能を得られる。 MSG では、放射計を大口径化することで高性能化を図ってきた 4)が、さらなる高精度化の要求にこたえるため、MTG(Meteosat Third Generation)5)では、 三軸衛星を採用する方向になっている。
静止気象観測が始まり 35 年以上が経過し、この間、イメージャはユーザの要求にこたえ る形で次のような高性能化が進められている。
z 観測時間の短縮 z 多バンド化 GOES における、地表及び雲頂温度を測定する熱赤外バンドでの高空間分解能化は、9km から、8km、GOES-9~16 までは 4km に向上し、GOES-R では、2km 化が計画されている。 観測時間は、当初全球観測で 25 分(30 分の繰り返し撮像が実現できる)であったが、GOES-9 以降は、15 分程度に短縮されている。 さらに、三軸衛星と二軸の機械走査式ミラーを採 用したフレキシビリティを生かし、任意の矩形領域を撮像することが可能になっている。 この機能を使用すると 3000km×3000km のメソスケール観測を約 40 秒で実現できる。 こ れは、1000km×1000km の領域を 10 秒以下で撮像可能ということであり、ほぼリアルタイ ムの画像観測が実現されている。
さらに、GOES-R のイメージャ(ABI, Advanced Baseline Imager)では、全球を 5 分で撮像 する能力を実現する。
何れの場合にも、画像からのプロダクト生成のためにラジオメトリック分解能は、同程 度の要求がされており、熱赤外の温度観測チャンネルで、0.1K から 0.2Kが一般的であ る。
GOES では、このような要求の高度化に対して、GOES 1-7 から GOES 8-Q へは、スピン衛 星搭載から三軸衛星搭載というシステム的な改善で実現し、その後の GOES-R 以降につい ては、高性能のアレイ検出器の採用で実現しようとしている。
アメリカ
日本
ヨーロッパ
インド
ロシア
中国
1970
1980
1990
2000
SMS
GOES 1-7
GOES 8-12
GOES
13-GMS 1-5
MTSAT 1R, 2
METEOSAT
MSG
INSAT 1
INSAT 2/3
GOMS
FY-2
図 1.2.1-1 静止気象観測衛星の開発実績表 1.2.1-1 静止気象センサのサマリー(1/3) 0.5(VIS) 2(IR) 1(VIS:HighRes) 3(VIS-IR) 2.5(VIS) 5(IR) 0.5(VIS) 1(VIS/SWIR) 2(IR) 1(VIS) 4/8(IR) 0.75(VIS) 6.9/13.8(IR) 0.8(VIS) 9(IR) イメージャの 地表分解能 (km) 11ch 波長範囲 0.55-14.4 0.4-0.9 5.7-7.1 10.5-12.5 16ch 波長範囲 0.45-13.6 0.55-0.75 3.8 -4.0 6.5 -7.0 10.2-11.2 11.5-12.5 0.55-0.75 3.84-4.06 6.40-7.08 10.4-12.1 12.5-12.8 0.55-0.7 10.5-12.6 イメージャの 観測波長 (μm) イメージャ イメージャ (SEVIRI) 地球放射収支 測定(GERB) イメージャ (MVIRI) イメージャ (ABI) サウンダ (HES) イメージャ サウンダ イメージャ・サ ウンダ (VAS) イメージャ (VISSR) 搭載観測センサ 三軸 スピン スピン 三軸 三軸 スピン スピン 姿勢制御方式 未 2002.08 2005.12 1977.11 ~ 1997.09 未 1994.04 ~ 2006.05 1980.09 1981.05 1983.06 1987.02 1974.05 1975.02 1975.10 1977.06 1978.06 打上年 ヨーロッパ ヨーロッパ ヨーロッパ 米国 米国 米国 米国 国名 MTG METEOSAT 8,9(MSG) METEOSAT 1-7 GOES R-GOES8-13,O-Q GOES 4-7 SMS1,2 GOES1-3 名称 0.5(VIS) 2(IR) 1(VIS:HighRes) 3(VIS-IR) 2.5(VIS) 5(IR) 0.5(VIS) 1(VIS/SWIR) 2(IR) 1(VIS) 4/8(IR) 0.75(VIS) 6.9/13.8(IR) 0.8(VIS) 9(IR) イメージャの 地表分解能 (km) 11ch 波長範囲 0.55-14.4 0.4-0.9 5.7-7.1 10.5-12.5 16ch 波長範囲 0.45-13.6 0.55-0.75 3.8 -4.0 6.5 -7.0 10.2-11.2 11.5-12.5 0.55-0.75 3.84-4.06 6.40-7.08 10.4-12.1 12.5-12.8 0.55-0.7 10.5-12.6 イメージャの 観測波長 (μm) イメージャ イメージャ (SEVIRI) 地球放射収支 測定(GERB) イメージャ (MVIRI) イメージャ (ABI) サウンダ (HES) イメージャ サウンダ イメージャ・サ ウンダ (VAS) イメージャ (VISSR) 搭載観測センサ 三軸 スピン スピン 三軸 三軸 スピン スピン 姿勢制御方式 未 2002.08 2005.12 1977.11 ~ 1997.09 未 1994.04 ~ 2006.05 1980.09 1981.05 1983.06 1987.02 1974.05 1975.02 1975.10 1977.06 1978.06 打上年 ヨーロッパ ヨーロッパ ヨーロッパ 米国 米国 米国 米国 国名 MTG METEOSAT 8,9(MSG) METEOSAT 1-7 GOES R-GOES8-13,O-Q GOES 4-7 SMS1,2 GOES1-3 名称
表 1.2.1-1 静止気象センサのサマリー(2/3) 1.25(VIS) 5(IR) 1.25(VIS) 5(IR) VIS(1.25) IR(6.25) 1(VIS) 4/8(IR) 2(VIS) 8(IR) 2(VIS) 8(IR) 2.75(VIS) 11(IR) イメージャの 地表分解能(km) 0.55-0.75 3.5-4.0 6.2-7.6 10.3-11.3 11.5-12.5 0.5-1.05 6.2-7.6 10.5-12.5 0.46-0.7 6.0-7.0 10.5-12.5 0.55-0.75 1.55-1.7 3.80-4.00 6.50-7.00 10.2-11.3 11.5-12.5 0.55-0.75 5.7-7.1 10.5-12.5 0.55-0.75 10.5-12.5 0.55-0.75 10.5-12.5 イメージャの 観測波長(μm) イメージャ イメージャ イメージャ イメージャ サウンダ イメージャ (VHRR) CCDカメラ (全球撮像) イメージャ (VHRR) イメージャ (VHRR) 搭載観測センサ スピン スピン 三軸 三軸 三軸 三軸 三軸 姿勢制御方式 未? 2000.06 1994.06 未 未 1999.04 2003.04 1992.07 1993.07 1982.04 1983.08 1987.07 1990.06 打上年 中国 中国 ロシア インド インド インド インド 国名 FY-2D FY-2 (風雲2号) GOMS N1,N2 INSAT ? INSAT 2E、3A INSAT 2A-2B INSAT-1A-1D 名称 1.25(VIS) 5(IR) 1.25(VIS) 5(IR) VIS(1.25) IR(6.25) 1(VIS) 4/8(IR) 2(VIS) 8(IR) 2(VIS) 8(IR) 2.75(VIS) 11(IR) イメージャの 地表分解能(km) 0.55-0.75 3.5-4.0 6.2-7.6 10.3-11.3 11.5-12.5 0.5-1.05 6.2-7.6 10.5-12.5 0.46-0.7 6.0-7.0 10.5-12.5 0.55-0.75 1.55-1.7 3.80-4.00 6.50-7.00 10.2-11.3 11.5-12.5 0.55-0.75 5.7-7.1 10.5-12.5 0.55-0.75 10.5-12.5 0.55-0.75 10.5-12.5 イメージャの 観測波長(μm) イメージャ イメージャ イメージャ イメージャ サウンダ イメージャ (VHRR) CCDカメラ (全球撮像) イメージャ (VHRR) イメージャ (VHRR) 搭載観測センサ スピン スピン 三軸 三軸 三軸 三軸 三軸 姿勢制御方式 未? 2000.06 1994.06 未 未 1999.04 2003.04 1992.07 1993.07 1982.04 1983.08 1987.07 1990.06 打上年 中国 中国 ロシア インド インド インド インド 国名 FY-2D FY-2 (風雲2号) GOMS N1,N2 INSAT ? INSAT 2E、3A INSAT 2A-2B INSAT-1A-1D 名称
1(VIS) 4(IR) 1(VIS) 4(IR) 1.25(VIS) 5(IR) 1.25(VIS) 5(IR) イメージャの 地表分解能(km) 0.55-0.8 3.5-4.0 6.5-7.0 10.3-11.3 11.5-12.5 0.55-0.8 3.5-4.0 6.5-7.0 10.3-11.3 11.5-12.5 0.5-0.9 6.5-7.0 10.5-11.5 11.5-12.5 0.5-0.75 10.5-12.5 イメージャの 観測波長(μm) イメージャ イメージャ (JAMI) イメージャ (VISSR) イメージャ (VISSR) 搭載観測センサ 3軸 3軸 スピン スピン 姿勢制御方式 2006.2 2005.2 1995.03 1977.07 1981.08 1984.08 1989.09 打上年 日本 日本 日本 日本 国名 MTSAT 1,2 (ひまわり7) MTSAT 1R (ひまわり6) GMS 5 (ひまわり5) GMS 1-4 (ひまわり1-4) 名称 1(VIS) 4(IR) 1(VIS) 4(IR) 1.25(VIS) 5(IR) 1.25(VIS) 5(IR) イメージャの 地表分解能(km) 0.55-0.8 3.5-4.0 6.5-7.0 10.3-11.3 11.5-12.5 0.55-0.8 3.5-4.0 6.5-7.0 10.3-11.3 11.5-12.5 0.5-0.9 6.5-7.0 10.5-11.5 11.5-12.5 0.5-0.75 10.5-12.5 イメージャの 観測波長(μm) イメージャ イメージャ (JAMI) イメージャ (VISSR) イメージャ (VISSR) 搭載観測センサ 3軸 3軸 スピン スピン 姿勢制御方式 2006.2 2005.2 1995.03 1977.07 1981.08 1984.08 1989.09 打上年 日本 日本 日本 日本 国名 MTSAT 1,2 (ひまわり7) MTSAT 1R (ひまわり6) GMS 5 (ひまわり5) GMS 1-4 (ひまわり1-4) 名称 表 1.2.1-1 静止気象センサのサマリー(2/3)
表 1.2.1-2 スピン衛星と三軸制御衛星搭載イメージャの比較 スピン型静止気象衛星/イメージャ 三軸制御静止気象衛星/イメージャ 姿勢制御 スピン安定方式をとるため、比較的単 純な姿勢制御系で高安定性が得られ る。 高安定な高度な三軸姿勢制御が必 要。姿勢外乱に対して種々の安定化 が必要。 使用電力 スピン衛星であるため、太陽電池の使 用効率が低く大電力が得にくい。 三軸安定のため、太陽電池パドルを 常時太陽に向けておけるため、利用 電力が多い ラジオメトリ ック分解能 地球を観測できる時間が、1 スピン 360 度の内の 18 度であるため、同じ 性能のセンサを使用して常時地球を 観測する場合に比べラジオメトリッ ク分解能が 1/4.4 に低下する。 常時地球を指向して観測できるた め、同じセンサを使って、スピン衛 星より高分解能の観測ができる。 通信 通信のために、デスパン機構を用いて アンテナを地球試行する必要がある。 通信アンテナは、衛星固定でよく大 容量のデータ伝送が容易。
(1) ヨーロッパ(EUMETSAT)
ヨーロッパの気象観測衛星のロードマップを図 1.2.1-2 に示す。このうち MSG につ いて概略を説明する。
静止衛星
周回衛星
MSG : Meteosat Second Generation(satellite),MTG:Meteosat Third Generation (satellite),
EPS : EUMETSAT Polar System ,OSTM:Ocean Surface Topography Mission, GMES : Global Monitoring for Environment and Security)
図 1.2.1-2 ヨーロッパでの気象観測衛星ロードマップ
(1.1)MSG (Meteosat Second Generation) システム ● 宇宙セグメント
宇宙セグメントは ESA の責任の下でアルカテル社率いる欧州企業連合により製造され た 3 機の衛星からなる。
ESA の任務は EUMETSAT の要求基準に基づき最初の衛星を開発すること、並びに EUMETSAT の代理として MSG-2、MSG-3 の購入である。
各衛星のノミナル寿命は 7 年間であり、3 機により 12 年間の運用を確保する予定であ る。
MSG は新センサ SEVIRI (Spinning Enhanced Visible and Infrared Imager)、並びに GERB(Geostationary Earth Radiation Budget instrument)を搭載している。
◇ MSG 衛星 ・12 チャンネル・イメージング・ラジオメータ ・100rpm スピン安定化 ・2 液スラスタ推進システム ・7 年間の station-keeping ・消費電力 600W ・軌道上質量 2010kg ・アリアン 4、5 に適合設計 図 1.2.1-3 MSG 衛星
◇ 搭載センサ:SEVIRI (Spinning Enhanced Visible and Infrared Imager) SEVIRI は 12 チャンネルのイメージング・ラジオメータである。
1~11 チャンネルは全球(full disc)を 15 分間隔以下(ノミナル 12 分)で観測でき る。高分解能の HRV (High Resolution Visible)は東西方向には全球の半分、南北方向
には全球をカバーすることができる。(下図参照)15 分間の観測で発生するデータ量は 2.4Gbit である。 図 1.2.1-4 SEVIRI のカバレッジ HRV は衛星直下で空間分解能 1.67km、サンプリング間隔 1km である。その他のチャン ネルは空間分解能 4.8km、サンプリング間隔 3km である。レベル 1.5 イメージデータ のチャンネル間レジストレーション精度は赤外チャンネルで 0.75km 以下、可視/近赤 外チャンネルで 0.6km 以下である。 光学系は主鏡開口径が 51cm の 3 枚鏡である。IR 検出器の焦点面は放射冷却機で冷却 され、85K 又は 95K に制御される。 HRV の検出素子数は 9、その他のチャンネルは 3 である。可視/近赤外の光学ベンチの 温度は 293K、装置質量は 260kg、消費電力は 150W である。
SEVIRI の 12 チャンネルの波長帯を下表に示す。 表 1.2.1-3 SEVIRI の波長帯 GOES VISSRと同様。非常に薄い巻雲の高度 推定。対流圏下部の温度情報。 AVHRR等で知られるスプリットウィンドウ。海 面/地表面温度計測、雲頂温度計測、巻雲/火 山雲の検出。 HIRS、GOESと同様。数値気象予報の入力とし て利用。成層圏下部の風速、オゾン全量分布 の時間変化のモニタ。 HIRSと同様。巻雲に関する定量的情報、氷雲 /水雲の区別。 水蒸気と風の計測、半透明な雲の高度推定支 援。 AVHRRと同様。低層雲/霧の検出、夜間にお ける陸/海面温度計測の支援。 雲と雪の弁別、エアロゾル情報等 AVHRRと同様。雲の検出/追跡、シーン同定、 エアロゾル/地表面/植生のモニタに利用。 備考 3 オゾン 9.38~9.94 IR9.7 8 3 水蒸気 6.85~7.85 WV7.3 6 3 水蒸気 5.35~7.15 WV6.2 5 1 3 3 3 3 3 3 3 3 GSD(km) (窓) 0.5~0.9 HRV 12 二酸化炭素 12.40~14.40 IR13.4 11 (窓) 11.00~13.00 IR12.0 10 (窓) 9.80~11.80 IR10.8 9 (窓) 8.30~9.10 IR8.7 7 (窓) 3.48~4.36 IR3.9 4 (窓) 1.50~1.78 NIR1.6 3 (窓) 0.74~0.88 VIS0.8 2 VIS0.6 0.56~0.71 (窓) 1 吸収ガス 波長帯(μm) チャンネル GOES VISSRと同様。非常に薄い巻雲の高度 推定。対流圏下部の温度情報。 AVHRR等で知られるスプリットウィンドウ。海 面/地表面温度計測、雲頂温度計測、巻雲/火 山雲の検出。 HIRS、GOESと同様。数値気象予報の入力とし て利用。成層圏下部の風速、オゾン全量分布 の時間変化のモニタ。 HIRSと同様。巻雲に関する定量的情報、氷雲 /水雲の区別。 水蒸気と風の計測、半透明な雲の高度推定支 援。 AVHRRと同様。低層雲/霧の検出、夜間にお ける陸/海面温度計測の支援。 雲と雪の弁別、エアロゾル情報等 AVHRRと同様。雲の検出/追跡、シーン同定、 エアロゾル/地表面/植生のモニタに利用。 備考 3 オゾン 9.38~9.94 IR9.7 8 3 水蒸気 6.85~7.85 WV7.3 6 3 水蒸気 5.35~7.15 WV6.2 5 1 3 3 3 3 3 3 3 3 GSD(km) (窓) 0.5~0.9 HRV 12 二酸化炭素 12.40~14.40 IR13.4 11 (窓) 11.00~13.00 IR12.0 10 (窓) 9.80~11.80 IR10.8 9 (窓) 8.30~9.10 IR8.7 7 (窓) 3.48~4.36 IR3.9 4 (窓) 1.50~1.78 NIR1.6 3 (窓) 0.74~0.88 VIS0.8 2 VIS0.6 0.56~0.71 (窓) 1 吸収ガス 波長帯(μm) チャンネル 赤外域 8 チャンネルのウェイティングファンクションを以下に示す。これより雲、地 球表面、水蒸気、オゾンに対する有用な情報が得られることが分かる。 WMO(国際気象機関)は MSG 以上の性能を有するイメージャ、サウンダの搭載を各国 に推奨している。 図 1.2.1-5 SEVIRI のスペクトル応答
(2) ロシア
● GOMS (Geostationary Operational Meteorological Satellite)
東経 76°50’に位置する静止気象観測衛星であり、以下の特徴を有する。 ・STR (Scanning Television Radiometer)を搭載
・衛星直下点を中心に半径 60°50’のエリア内の地球表面及び雲の可視、 赤外画像 をリアルタイムで取得 ・変化する大気プロセスの動きを連続観測 ・実運用ベースで危険な自然現象を検出 ・幾つかの高度レベルにおける風速/風向及び海面温度を測定 図 1.2.1-6 GOMS 表 1.2.1-4 STR の諸元 15 15 画像走査時間(分) 30 30 画像取得周期(分) 8 8 ビット数(bit) 6.25 1.25 衛星直下点における分解能(km) 160.5 31.5 瞬時視野角(μrad) 赤外I:10.5-12.5μm 赤外II(GOMS-2から) :6.0-7.0μm 赤外 0.46-0.7μm 波長帯 可視
(3) 中国
● FY-2 (Feng-yun sat-2)
FY-2 は Shanghai Institute of Satellite Engineering により開発された静止気象観 測衛星であり、米国ヒューズ社により開発された日本の GMS や米国 GOES-3/7 に非常 に似ている。円筒状ボディの寸法はφ1.6m×2.1m であり、姿勢は 100rpm の速度でス ピン安定化される。
主ペイロードは VIISR(Visible and Infrared Spin Scan Radiometer)である。スキ ャンミラーをステップ状に駆動することにより 1 時間毎に全球観測を実施する。 図 1.2.1-7 FY-2 表 1.2.1-5 VISSR の可視チャンネルの諸元 深宇宙、太陽 深宇宙、太陽 校正 64 64 量子化階調 主系4、従系4 主系4、従系4 検出素子数 1.5(0.5%) 50(95%) 6.5(2.5%) 43(95%) S/N 0-98 0-95 ダイナミックレンジ(%) 1.25 1.44 GSD(km) 35 40 IFOV(μrad) 0.50-0.75 FY-2C,D,E 0.50-1.05 波長帯(μm) FY-2A,B
表 1.2.1-6 VISSR の熱赤外、水蒸気チャンネルの諸元 WV IR3 IR2 WV IR1 IR 地上校正精度:1K、光源:深宇宙/惑星、頻度:1回/2全球観測。 光源:黒体、頻度:1回/3全球観測。 校正 1024 1024 1024 1024 256 256 量子化階調 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 検出素子数 0.6-0.5 0.5-0.3 0.4-0.2 0.4-0.2 1.0 0.6 温度分解能(K) 180-280 180-330 180-330 180-330 190-290 180-330 ダイナミックレンジ(K) 5 5 5 5 5.76 5.76 GSD(km) 140 140 140 140 160 160 IFOV(μrad) 波長帯(μm) 10.5-12.5 6.3-7.6 10.3-11.3 11.5-12.5 3.5-4.0 6.3-7.6 FY-2C,D,E FY-2A,B WV IR3 IR2 WV IR1 IR 地上校正精度:1K、光源:深宇宙/惑星、頻度:1回/2全球観測。 光源:黒体、頻度:1回/3全球観測。 校正 1024 1024 1024 1024 256 256 量子化階調 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 主系1、従系1 検出素子数 0.6-0.5 0.5-0.3 0.4-0.2 0.4-0.2 1.0 0.6 温度分解能(K) 180-280 180-330 180-330 180-330 190-290 180-330 ダイナミックレンジ(K) 5 5 5 5 5.76 5.76 GSD(km) 140 140 140 140 160 160 IFOV(μrad) 波長帯(μm) 10.5-12.5 6.3-7.6 10.3-11.3 11.5-12.5 3.5-4.0 6.3-7.6 FY-2C,D,E FY-2A,B ● 将来計画 第 2 世代の静止気象衛星 FY-4 は 3 軸制御、イメージャ(パッシブクーラ、12 チャン ネル、中国観測時間:5 分)及び FTIR サウンダ搭載、の見込み。最初の 2 つの実験衛 星 FY-4A/B が 2012/14 に打ち上げられ、2016 年から 2 年ごとに 4 機の実用衛星が打ち 上げられる計画である。
(4) インド ● INSAT-3A INSAT-3 は通信、放送、気象、捜索・救助を提供する多目的衛星である。 図 1.2.1-8 INSAT-3 表 1.2.1-7 INSAT-3 諸元 CCD camera VHRR
(Very High Resolution Radiometer) 観測波長帯:0.63-0.69μm (可視) 0.77-0.86μm (近赤外) 1.55-1.70μm (短波長赤外) 地表分解能:1km 観測波長帯:0.55-0.75μm (可視) 5.7-7.1μm (水蒸気) 10.5-12.5μm (赤外) 地表分解能:2km (可視)・8km (赤外、水蒸気) (at nadir) 観測範囲:全球(full disc) 観測間隔:0.5 hour データレート:400kbps 観測機器 15年 設計寿命 高度:35,980 km、位置:東経93.5度 軌道 Ariane 5G 打上げ機 2003.04.09 打上げ日 CCD camera VHRR
(Very High Resolution Radiometer) 観測波長帯:0.63-0.69μm (可視) 0.77-0.86μm (近赤外) 1.55-1.70μm (短波長赤外) 地表分解能:1km 観測波長帯:0.55-0.75μm (可視) 5.7-7.1μm (水蒸気) 10.5-12.5μm (赤外) 地表分解能:2km (可視)・8km (赤外、水蒸気) (at nadir) 観測範囲:全球(full disc) 観測間隔:0.5 hour データレート:400kbps 観測機器 15年 設計寿命 高度:35,980 km、位置:東経93.5度 軌道 Ariane 5G 打上げ機 2003.04.09 打上げ日
● INSAT-3D 2007 年打上予定の INSAT-3D には 6 チャンネルのイメージャと 19 チャンネルのサウン ダが搭載される予定である。 イメージャ、サウンダの仕様は GOES のそれと類似しており、未確認であるが ITT 社 のものを導入している可能性が考えられる。 表 1.2.1-8 INSAT-3D センサ諸元 19チャンネル・サウンダ 6チャンネル・イメージャ <観測波長帯> <分解能> 短波長赤外 6チャンネル 10km 中波長赤外 5チャンネル 10km 長波長赤外 7チャンネル 10km 可視 1チャンネル 10km <観測波長帯> <分解能> 可視 0.55-0.75μm 1km 短波長赤外 1.55-1.70μm 1km 中波長赤外 3.70-3.95μm 4km 水蒸気 6.50-7.10μm 8km 熱赤外1 10.3-11.3μm 4km 熱赤外2 11.3-12.5μm 4km 観測範囲:全球(full disc) 観測間隔:0.5 hour 観測機器
(5) アメリカ
● GOES-N (Geostationary Operational Environmental Satellite)
GOES-N(GOES-13)は、2006 年に打ち上げられた軌道上の米国最新の気象衛星である。
図 1.2.1-9 GOES-N
● GOES-N イメージャ
図 1.2.1-10 GOES-N イメージャ
イメージャは可視 1 チャンネル、赤外 4 チャンネルからなる。 各チャンネルは同軸に配置され、2 軸に回転駆動可能な平面鏡により地球を走査する。 望遠鏡は開口径 31.1cm の主鏡及び開口径 5.3cm の 2 次鏡からなるカセグレン光学系 であり、F 値は 6.8 である。 入射光はダイクロイックビームスプリッタにより各チャンネルに分離される。赤外の 各チャンネルは背景光を抑制するためにコールドフィルタにより波長選択される。検 出器は放射冷却器により冷却される。 下表にイメージャの諸元を示す。 表 1.2.1-9 GOES-N イメージャの諸元 水蒸気 海面温度、 水蒸気 雲の高度 夜間の雲検出 雲検出 用途 深宇宙、内部黒体 校正 2.62Mbps データレート ライン間:0.1K以下、検出器間:0.2K以下、チャンネル間:0.2K 以下、黒体校正間:0.35K以下 相対精度 1K以下 入力の5%以下 絶対精度 HgCdTe HgCdTe HgCdTe InSb Si 検出器 4-320K 4-320K 4-320K 4--335K 0-100% ダイナミックレンジ 10 10 10 10 10 量子化ビット数(bit) 全球/26分 観測範囲/周期 4 4 8 (GOES-O,Pは4) 4 1 地表分解能(km) 5.80-7.30 10.2-11.2 13.0-13.7 3.73-4.07 0.52-0.71 Ch1(VS) Ch2(SW) Ch3(IR2) Ch4(IR1) Ch5(WV) 波長帯(μm)
● GOES-N サウンダ
サウンダは LWIR 域 7 チャンネル、MWIR 域 5 チャンネル、SWIR 域6チャンネル、可視 1 チャンネルの全 19 チャンネルからなる。 光学系はイメージャと同様である。 入射光はダイクロイックビームスプリッタにより LWIR、MWIR、SWIR、可視に分離され、 更に 10Hzde 回転する直径 28.2cm のフィルターホイールにより各チャンネルの信号が 時分割で検出される。フィルターホイールは 212K に冷却されている。 次ページにサウンダの諸元を示す。 図 1.2.1-12 GOES-N サウンダ 図 1.2.1-13 GOES-N サウンダ光学系
表 1.2.1-10 GOES-N サウンダの諸元 Si 雲 - 0.7 19 VIS InSb 低温域温度 中高温域温度 高温域温度 境界層温度 表面温度 表目温度、水分 4-310 4-295 4-275 4-330 4-335 4-335 4.57 4.52 4.45 4.13 3.98 3.74 13 14 15 16 17 18 SWIR HgCdTe 表面温度 オゾン全量 低濃度水分 中濃度水分 高濃度水分 4-335 4-310 4-300 4-285 4-265 11.03 9.71 7.43 7.02 6.51 8 9 10 11 12 MWIR HgCdTe 成層圏温度 成層圏温度 高温域温度 中高温域温度 低温域温度 全放射量 表面温度 4-260 4-260 4-270 4-290 4-300 4-315 4-330 14.71 14.37 14.06 13.64 13.37 12.66 12.02 1 2 3 4 5 6 7 LWIR 検出器 用 途 ダイナミックレンジ(K) 波長(μm) Ch 40kbps データレート 3000km×3000km/42分 観測レート ライン間:0.25K以下 検出器間:0.40K以下 チャンネル間:0.29K以下 校正間:0.60K以下 相対精度 IR:1K以下 VIS:入力の±5%以内 絶対精度 13bit 量子化ビット数 深宇宙、内部黒体 校正 10km 地表分解能 性能 項目
● 次世代システム:GOES-R
Boeing、Northrop Grumma、Lockheed martin の 3 社が概念検討中であり、打上時期は 2012~2014 年となる見込みであるが、延びる可能性もある模様である。
● 次世代イメージャ:ABI(Advanced Baseline Imager)
GOES-R に搭載されるイメージャ ABI は米国 ITT 社が受注しており、納期 2010 年で PFM1 台、FM2 台を開発する計画である。諸元を次ページに示す。
図 1.2.1-14 ABI
表 1.2.1-12 ABI の諸元 Ch 波長帯(μm) ダイナミックレンジ上限 NEΔT/SNR 1 0.45-0.49 652W/m2/sr/um 2 0.59-0.69 515W/m2/sr/um 3 0.8455-0.8845 305W/m2/sr/um 4 1.3705-1.3855 114W/m2/sr/um 5 1.58-1.64 77W/m2/sr/um 6 2.225-2.275 24W/m2/sr/um 300:1@100%アルベド 7 3.8-4.0 400K 8 5.77-6.6 300K 9 6.75-7.15 300K 10 7.24-7.44 320K 11 8.3-8.7 330K 12 9.42-9.8 300K 13 10.1-10.6 330K 14 10.8-11.6 330K 15 11.8-12.8 330K 0.1K@300K 16 13.0-13.6 305K 0.3K@300K ・全球(full disc)観測周期:5 分又は 15 分 ・3000km×3000km 観測周期:30 秒 ・データレート:66.6Mbps(ロスレス圧縮) ・校正 <Ch1-6>絶対精度:3%、ドリフト:0.5%、校正間:0.2% <Ch7-16>絶対精度:1K ● サウンダ
NOAA の要求でフーリエ分光型の HES(Hyperspectral Environmental Suite )の概念 検討(Formulation phase)が進められていたが、2006 年 9 月に今後の実装検討 (Implementation phase)が取り消された模様である。理由は、地上処理のアルゴリ ズムが確立されていないことなど、地上側の開発にセンサの 2 倍規模の費用を要する ためのようである。未だ新しい要求は明確になっていないものの、マルチバンドタイ プのものになる模様である。
1.2.2 早期警戒衛星 静止常時観測サーマルイメージングセンサの気象観測以外の用途として早期警戒衛星があ る。弾道弾等の発射を検出するための静止または高高度周回システムとして、多様なシス テムが運用されている。ここでは主として米国のシステムの概要を示す。 早期警戒衛星は、限られた情報しかオープンにされていないが概略下記の性能を有してい る1)2)。 z ロケットモータ/ブースターのプルーム検知のため特定の波長域を使用 SWIR(2.7μ m 帯)と MWIR(4.3μm) z 高いリアルタイム性: 10 秒程度 z 地表分解能(~1km) (1) 早期警戒衛星の概要 ● ミッション 早期警戒衛星は、先見情報収集、警戒情報取得、火器管制データ取得、追尾・要撃の 機能の集合体である防衛システムのうち、弾道弾等の発射及び飛来を警戒し、更に要 撃のための会合計算に必要な情報得るためのキューイングを目的とするセンサシス テムである。
● 波長 検出波長帯は、飛翔体の弾道飛しょうのための加速時のプルームが高温であることと、 太陽光の影響緩和を考慮して、赤外領域のうちで特に短波長~中波長赤外が一般的と されている。 放射輝度( 対数表 示 ) 大気透 過 率 0.1 1 10 波長(μm) 太陽 (5900K) ミサイルプルーム (2300K) 常温物体(300K) センサ波長範囲 太陽 ルーム(2000K) 地面(20℃黒体) ミサイルプ 放射輝度( 対数表 示 ) 大気透 過 率 0.1 1 10 波長(μm) 太陽 (5900K) ミサイルプルーム (2300K) 常温物体(300K) センサ波長範囲 太陽 ミサイルプルーム(2000K) 地面(20℃黒体) 図 1.2.2-2 センサの波長範囲 ● 軌道 静止軌道運用をするものに加えて高高度周回軌道運用するものがある。 静止軌道運用をするものは、複数機運用により地表全域の常続監視警戒を可能にする。 代表的な例として、米 DSP 及び SBIRS-High(GEO)がある。 高高度周回軌道運用するものは、静止軌道運用の弱点となる高緯度地域での高精度な 観測精度の実現を可能にする。代表的な例として、米 SBIRS-High(HEO)がある。
(2) DSP(Defense Support Program)
● 1970 年代より打ち上げられ運用中。2007 年には DSP-23 が打ち上げられた。 ● 主として弾道弾等の発射警戒を目的とする。
● アップグレードが繰り返えされ、後継として開発中/打上中の SBIRS に代わる まで、現在も運用中である。
図 1.2.2-3 DSP
出典: SID DRELL SYMPOSIUM,”The Nuclear Danger from Shortfalls in the Capabilities of Russian Early Warning Satellites: A Cooperative Russian-US Remedy” 表 1.2.2-1 世代毎の特徴 世代 構成 年代 主な特徴 第一世代 準静止軌道&静止軌道 1970~ ・2000 画素 SWIR-PbS ・φ92cm Schimidt 型光学系 ・地球全域警戒監視 第二世代 静止軌道 1975 ・2000 画素 SWIR-PbS ・φ92cm Schimidt 型光学系 ・地球全域警戒監視 ~現代 静止軌道 1976~ ・φ92cm Schimidt 型光学系 ・ 6000 画 素 SWIR-PbS+MWIR-HgCdTe ・地球全域警戒監視
出典: USAF 他,“The Defense Support Program “28 Years of Service”,”, A Pictorial Chronology 1970-1998
2 概略方式の検討 周回高分解能センサ並びに静止常時観測センサにおいて、主要なシステムパラメータのト レードオフを可能とし、実現可能なシステム性能の見通しを得るためパラメータスタディ を中心に実施した。 2.1 周回高分解能センサ 2.1.1 センサシステム性能の検討 (1) 軌道高度分解能/観測幅と光学系パラメータの関係 軌道高度分解能/観測幅と光学系パラメータの関係式を求めるために、ここで関係 する各パラメータを以下の様に定義する。以下のパラメータは種々の関係式で結ば れる。 GSD : 分解能 H : 衛星軌道高度 λ : 観測中心波長 FOV : 観測幅 f : 光学系焦点距離 D : 光学系開口径 d : 検出器画素ピッチ n : 検出器画素数 分解能を規定するレーリーの関係式より次式が成立する。
GSD
H
D
= 22
1
.
⋅
λ
(1) 式(1)より、開口径は分解能、センサの観測波長領域、軌道高度で定まるため、 光学系の焦点距離や検出器画素ピッチとは関係なく設定できる。0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 2 4 6 8 10 12 14 分解能[m] 開口径 [m ] 700 500 300 250 200 150 軌道高度[km] レーリーの関係式 中心波長:10μm 図 2.1.1-1 赤外センサにおける分解能と開口径の関係 上記図より軌道高度 700km とすると、以下の開口径が必要となる。 分解能 10m→約 0.85m 分解能 6.4m→約 1.4m H-IIA での打ち上げを考えた場合、1m 以下では機軸方向並行に開口面を配置できるが、 1m 以上では機軸方向垂直に開口面を配置する必要がでてくる。この場合、フェアリン グ開頭時のコンタミ発生などを考慮すると。1.4m 以上の搭載は困難と考える。
光学系の焦点距離と他パラメータとの関係としては、幾何的な関係から次式が成立す る。
GSD
d
H
f
=
⋅
(2) 式(2)より、軌道高度と地上分解能を設定すると、検出器画素ピッチと焦点距離が 比例関係となる。 式(2)から、検出器の画素ピッチを縮小すると、光学系の焦点距離が短くなり、光 学系の焦点距離は光学センサのサイズに直結するため、検出器の画素ピッチを縮小す れば光学センサの小型化が可能となる。 光学系の重要なパラメータとして F 値があり、次式が成立する。D
f
F
=
(3) 検出器入射面の輝度は、F 値の2乗に反比例する。一次鏡の大きさを同じとした場合、 検出器の画素ピッチを縮小すれば、焦点距離が小さくなり光学センサの検出器への入 射強度が増大する。一方、暗時雑音は減少するため、S/N、NEΔT が向上する。0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 20 40 60 80 100 120 140 160 分解能[m] 焦点距離[m ] 700 600 500 400 300 250 200 150 軌道高度[km] 図 2.1.1-2 赤外センサにおける分解能と焦点距離の関係 図から分かるように、分解能を 10m以下と設定すると、光学系の焦点距離は急激に大きく なっていく。したがって、センサ全体のサイズも急激に大きくなり、ひいてはコストも上 昇する。
観測幅に関しては、次式が成立する。
GSD
n
FOV
=
⋅
(4) 式(4)から観測幅は分解能と検出器画素数に比例することが分かる。したがって、 分解能が同じであれば検出器画素数が多い方が観測幅は広くなる。 赤外検出器としては現在利用可能なものは、最大でも~1000 画素程度であるため、GSD の 2000 倍以上の観測幅を達成するためには、検出器を下図に示すように、必要な観 測幅となるようにスタガ配置する必要がある。 図 2.1.1-3 検出器スタガ配置による観測幅拡大の例 ただし、スタガ配列はアライメント調整などの問題があるため、できれば多画素素子 開発を実施し、できるだけスタガ配列する検出器素子数を減らすことが望ましいと考 える。(2) 衛星搭載用光学センサにおける撮像方式について
衛星搭載用光学センサにおける撮像方式は大きく分けて以下の3つに分類される。
(1)whiskbroom (2)pushbroom
(3)staring
アロングトラッククロストラック
(University of Zurich webページより)
図 2.1.1-4 光学センサの撮像方式 各撮像方式の特長を以下に示す。 ア whiskbroom アクチュエータなどメカニカルな方法で、クロストラック方向に IFOV をスキャンす る。IFOV は1素子の検出器か、一列のアレイ検出器で構成する。アロングトラック方 向は衛星の移動によりスキャンする。アロングトラック方向に観測の空白域が生じな いようにするためには,クロストラック方向のメカニカルスキャンを高速で実施せね ばならず、検出器の積分時間は非常に限られる。(検出器積分時間=1ライン撮像時 間/(観測幅/分解能)*画素数) イ pushbroom 電気スキャン方式により、クロストラック方向のスキャンを実施する、検出器の画素 数は、観測幅のセル数と等しくなる。アロングトラック方向は衛星の移動によりスキ ャンする。このためライン撮像時間とほぼ同じ時間まで検出器積分時間を長くするこ とができる。
ウ staring 電気スキャンにより、クロストラック方向、アロングトラック方向の観測幅全域を 1 度に撮像する。クロストラック方向、アロングトラック方向のiFOVは2元検出器 の1画素に対応する。衛星の姿勢制御やミラーなどによりデジタルカメラ方式で撮像 することが可能で、3方式のなかで一番検出器積分時間を長くすることができる。 赤外センサにおける分解能と1画素積分時間の関係を下図に示す。 0 5 10 15 20 25 0 20 40 60 80 100 120 140 160 分解能[m] 1 画 素積 分時 間[m s] 700 600 500 400 300 250 200 150 軌道高度[km] 現状の非冷却検出器時定数 90m pushbloom方式 冷却検出器の飽和時間 図 2.1.1-5 赤外センサにおける分解能と1画素積分時間の関係 非冷却検出器では、時定数の制約があり、pushbroom 方式では将来的にも 60m 程度が 限界と考えられる。これ以上の高分解能化を図るためには、1画素当りの積分時間が 稼げる staring 方式の採用が必須になる。 冷却検出器では、検出感度が高く積分時間を非常に短くできるために、whiskbroom方 式も採用可能である。一方、冷却検出器では画素飽和時間により分解能の設定が影響 を受けることに留意する必要がある。