XIII. 新日本石油株式会社殿訪問インタビュー調査報告
1. FC 関連事業の概要と組織体制
① 新エネルギーシステム事業本部にある当 FC・ソーラー事業部では,燃料電池と太陽 電池,床暖房(商品名「ゆかい〜な」)事業を行っている。その販売組織としては,全 国各地域の11の支店を活用している。
② 研究開発組織としては,研究開発本部の下に各種の要素研究を行っている中央技術研 究所があり,その中に,PEFCやSOFCの研究開発を行っているFC開発研究所,水 素の輸送や貯蔵を研究している水素・新エネルギー研究所がある。燃料油関係の研究 や,触媒に関する研究もここで行っている。
③ 2008年4月,定置用燃料電池システムの開発企画,設計,製造管理を行う会社として,
群馬県の大泉町の三洋電機の工場内に三洋電機と合弁でENEOSセルテックを設立し た。家庭用PEFCシステムの設置は,設置工事会社であるNIPPOが実施している。
④ 実際の製造組立は,三洋電機大泉工場内の三洋東京マニファクチャリングが行ってい る。これは三洋電機の子会社であり,FCのみならず,他の従来製品の組み立ても行っ ている会社である。
2.定置用燃料電池に関する取り組み状況
2−1 家庭用PEFCシステムの開発・設置状況
① 2009年度からの家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの本格販売を控え,家 庭用燃料電池を広く認知してもらうため,FC メーカ・エネルギー事業者において商 品名称が「エネファーム」に統一された。
② 当社の製品ラインナップには,LPガス仕様,灯油仕様,都市ガス仕様の1kW級のシ ステムがある。都市ガス機はもともと三洋電機が開発していたものもあり,新会社設 立後も引き継いで販売していく計画である。今年度の大規模実証事業でも,都市ガス 機 11 台を大都市圏以外の地域に設置する予定である。LP ガス,都市ガス仕様機は
ENEOS セルテック,灯油仕様機は荏原バラードの FC システムを組み込んだもので
ある。(図ⅩⅢ-1)
③ 新 FC 灯油と称した極低硫黄分の灯油を燃料にした灯油仕様機を大規模実証機に用 いているが,現状の灯油仕様機の燃料としては,硫黄分 10ppm 以下を想定して開発 を進めている。国内で生産される灯油は,ガソリンと軽油と同様 10ppm 以下になっ ているが,海外から輸入する灯油はその限りではない。そのため,現状では,単純に 市販の灯油を FC の燃料に用いることは難しいので,業界内として灯油燃料として硫
黄分を10ppm以下とする方向で現在議論が進められている。
④ 灯油燃料機は,ガス機に比べて改質温度が高く,より熱量を必要とするため,発電効 率は低くなる。その分,排熱が多くなるため,排熱回収効率が高いという特徴がある。
⑤ NEFの大規模実証事業については,当社は2008年度までに累積で1,328台を設置し,
事業全体(3,307台)の4 割を占めている。システムメーカ別にみると,ENEOS セ ルテック製は 2008 年度末で1,253台となっている。モニター世帯とは,経済性の有 効性を確認してもらうことで,モニター希望者には電気使用量を尋ね,一件一件検討 を行い,経済的なメリットが出そうな家庭をモニターとして選んでいる。
⑥ 寒冷地への対応として,灯油仕様の新開発システムのフィールド試験を実施している。
燃料電池ユニットは,屋外の屋根の下に置き,給湯タンクはお湯を冷めさせないよう に屋内に設置し,耐久性などについて現在実証を行っている。
⑦ 業務用のPEFCシステムについては,2004年度から実証研究を進め,2006年度から は実用機の設置試験を行ってきたが,当面は家庭用に注力する方針である。
⑧ 将来の性能目標としては, 2015 年度までに家電製品となるように,高い効率と 10 年間の耐久性,小売価格50万円を目指していく。
⑨ 低コスト化に向けては,構造の簡略化と部品点数の削減,それらの大量生産化が最も 効いてくると考えており,こうした改良は,軽量化などにもつながってくる。
図 XIII-1 家庭用燃料電池(PEFC)のラインナップ
2−2 PEFCシステムの大規模導入事例
① 大規模実証事業の一環として,今治市(愛媛県)の簡易ガス団地へ集中設置した事例 を図ⅩⅢ-2に示す。2007年度の11月から2月に,30台の家庭用システムを各家庭 に導入した。
② 図ⅩⅢ-3は,同じく大規模実証事業の一環であるが,福岡県の「水素タウン」プロジェ クトと連携して,合計150台を福岡県の簡易ガス団地に集中設置するものである。
図 XIII-2 簡易ガス団地への導入事例
図 XIII-3 福岡県「水素タウン」への大規模集中設置
2−3 SOFCに関する取り組み状況
① SOFCに関する取り組みとしては,2007年度からNEFの「固体酸化物形燃料電池実 証研究」において,LPG仕様および灯油仕様の700Wのシステムを提供し,設置・運 転試験を実施している。
② 高い発電効率という特長を活かせば,電気の使用量の多い家庭には,SOFCシステム を導入していくという可能性が考えられる。また,脱硫や水素製造における触媒を低 減することができることはよりコンパクト化が可能であり,排熱温度が高いことはお 湯を高温で維持でき,更なるコンパクト化が可能となる。そのため,電気需要と連続 運転のSOFCが適している可能性も考えられる。
③ 2010年度にかけては,1〜10kW級のフィールドテストを実施し,2011年度から市 場導入する計画である。
④ 現状では,SOFCはPEFCシステムに比べてまだコストが高い状況にある。
3.総合エネルギープロバイダーのコンセプト
当社は,燃料・エネルギーの供給のみならず,燃料電池,太陽光,蓄電池という3種類 の電池(電池3兄弟)を提供するとともに,環境にやさしいエネルギーシステムを開発・
展開し,社会に貢献したいと考えている。(図ⅩⅢ-4)
図 XIII-4 総合エネルギープロバイダーのイメージ
4.水素供給インフラ構築に向けた取り組み状況
(1) 横浜・旭水素ステーションの状況
① 横浜・旭水素ステーション(図ⅩⅢ-5)における供給実績は,2006 年度で約 250kg で充填回数約150回,2007年度では約180kg,充填回数約120回であった。
② 定格負荷時におけるエネルギー効率は, 2006年度で61.4%(LHV),2007年度では
58.7%であった。2007 年度は,触媒の劣化によって効率がやや低下した。2007 年度
においては,アイドル運転(低負荷運転)でのデータを取得し,負荷変動全体を把握 した。
③ 9月末にトヨタのFCHV-advのリースを受けた。引き続き(中央研究所)所長車とし て,利用していく。横浜・旭水素ステーションは来年 1 月に 70MPa 化が完了し,2 月初頭に利用開始予定である。
図 XIII-5 横浜・旭水素ステーションの概略フロー図
(2) 水素インフラ構築に向けた技術開発
① 水素インフラ構築に向けた技術開発として,NEDOプロジェクトにおいて,トレーラ での水素輸送用の400気圧CFRP高圧水素容器の開発や,さらに将来を見据えた水素 吸蔵材とのハイブリッド容器のための水素吸蔵材の開発を行っている。
② その他には,PECの研究プロジェクトとして,有機ハイドライド(メチルシクロヘキ サンとトルエン)型水素ステーションの検討を行っている。製油所でトルエンに水素 を添加してメチルシクロヘキサン化して水素ステーションに配送し,水素ステーショ ンで小型水素発生装置で水素を取り出すシステムである。
③ 2008年5月26日に電力会社,石油会社,鉄鋼・化学会社など24社が出資して,二 酸化炭素地下貯留(CCS)の実証事業を調査するための会社として日本 CCS 調査株 式会社が設立され,当社は出資および参画した。製油所の水素製造装置から分離・回 収されている高純度CO2は,2009年度以降の実証実験における有望なCO2供給源の 一つとして位置づけられており,当社として実証実験に参画する予定である。
(3) FCCJシナリオ,圧力70MPa化について
① FCCJ の中でシナリオの実現に向けてどういうアクションが必要かについての具体的 な策について現在議論しているところである。当社としては,シナリオにあわせ,最 大限の努力,協力をしていく。
② 水素の圧力については,FCCJ の中でも最適圧力についての検討会が始まったため,
インフラ側としての意見を出し,最適な圧力の検討に役立ちたいと考えている。
(4) 将来の水素供給システムについて
① オンサイト水素製造とオフサイト水素製造のどちらかだけということはないと考えら れる。ただし,製油所の水素が大きな供給源となると考えられるので,それが主体に なっていく場所とオンサイトの方が効率が良いところもあると考えられる。
② 例えば,コンビナートの近傍や都市などのライフラインがあって水素の導管が供給で きるような地域においてはパイプラインによる水素の供給が考えられる。そうした時 には,純水素の定置用 FC の可能性も出てくる。水素パイプラインが引けない地域で はトレーラで運ぶことも考えられるが,ローカルなところでは,むしろ都市ガスや LPG,ナフサなどのオンサイト改質タイプが有効であると考えられる。