訪問インタビュー調査報告
訪問日時 平成20年10月1日(水)10:30〜 12:00
場 所 株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション 京都本社 応対者 株式会社ジーエス・ユアサ コーポレーション
研究開発センター 第三開発部
1.自動車用二次電池に関する取組状況
(1) 開発中の自動車用二次電池
① 当社では,古くから電気自動車(BEV)用の鉛電池を生産していた経緯がある。また,
ニッケル水素電池に関しては,実際の採用実績はないものの,ハイブリッド車(HEV)
用二次電池を開発している。リチウムイオン電池に関しては,主にBEV,plug-in HEV
(PHEV)用のリチウムイオン二次電池を開発・製造・販売する会社として,2007 月12月12日,ジーエス・ユアサパワーサプライ(当社の100%出資会社,以下GS ユアサ),三菱商事,三菱自動車工業と合弁でリチウムエナジージャパン(LEJ)と いう新会社を設立した。
② LEJは,本社を京都府南区(当社京都本社内)に置き,資本金20億円(初期の資本 金5億円)。出資比率は,GSユアサ,三菱商事,三菱自動車工業でそれぞれ51%,
34%,15%である。8月6日には,滋賀県草津市内に新工場の用地・建屋を確保し,
量産ラインの整備を開始したと発表した。2008 年度中に全ての設備を設置し,量産 設備の試験稼働を完了して,2009 年度初頭より BEV 用リチウムイオン二次電池
「LEV50」を年産20万セル(三菱自工製iMiEV 2,000台相当)生産する計画である。
このように,BEV用リチウムイオン二次電池に関しては,量産準備段階にある。
③ FCV用の二次電池としては,2006 年度まで5箇年のNEDO事業として研究開発を 進め,目標をおおむね達成することができた。実際上,FCV用としてはHEV用と同 じ二次電池で良いと思われる。HEV 用リチウムイオン二次電池としては,6Ah のセ ル「EH6」を開発した。
④ 2007 年度からは,PHEV 用等次世代自動車用二次電池を開発する 5 箇年予定の NEDOプロジェクトである「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発」に参画し ている。この中のリチウムイオン電池モジュールの開発には,当社をはじめ,日立ビー クルエナジー,日立製作所,松下電池工業が参画している。
(2) BEV用リチウムイオン二次電池の開発状況
① LEJ が生産・販売する BEV用リチウムイオン二次電池「LEV50」は,GS ユアサが 量産する大型リチウムイオン電池LIMシリーズをベースに,構造,電極材料などを見 直すことにより,エネルギー密度や出力密度を向上させたものである。三菱自工が 2010年までに市場投入を目指す電気自動車iMiEVへの供給を予定しているほか,他 社のBEV用途や電力貯蔵目的等の産業用途にも供給が可能である。(図ⅩⅤ-1,表Ⅹ
Ⅴ-1)
② 「LEV50」のエネルギー密度は,セルベースで109 Wh/kg,モジュールベースで99 Wh/kg,セルベースでの出力密度は550 W/kg(SOC50%,25℃)である。
③ 耐久性に関しては,当社における推計手法によれば,25℃の使用条件において10年,
1000サイクル以上の寿命があると推計される。具体的には,25℃におけるカレンダー 寿命試験において10年後の残存容量が65%,25℃で1000サイクル充放電後の残存
容量が88%と推計されている。
④ 急速充電特性としては,25℃,30分でSOC 80%までの充電が可能である。
⑤ GSユアサパワーサプライは,2008年10月1日よりiMiEV2台を三菱自工から借り 受け,2009 年 12月末までの予定で BEV に関する実証試験を開始した。1台は GS ユアサが業務車両としての適合性を評価するための走行データの収集・分析を行う実 証試験車として用いるほか,BEVの展示会やイベント等での車両展示や同乗走行に用 いる予定であり,他の1台は,広域データ収集のため,GS ユアサ以外に共同研究を 再委託する予定である。
⑥ 本電池の目標に関し,当面の課題はない。長期的には,エネルギー密度の向上や更な る長寿命化,低コスト化のため,開発は継続していく。
⑦ iMiEVについては,モジュール化までは当社が担当し,パック化は当面三菱自工と共 同で行うことになる。
⑧ 産業用を含めて引き合いは旺盛である。たとえば産業用途としては,液晶工場や半導 体工場内の無人搬送車AGV(Automatic Guided Vehicle)用の二次電池や,無停電装 置などの電源システム用などがある。鉄道用としては,LRTに搭載し,架線がないと ころでも走行できるようにしたり,通常の鉄道でも,駅や車両に設置し,発電所から の遠隔地において変電所の代わりに発車時の出力不足を補ったり,回生エネルギー蓄 電用に用いたりするものがある。
図 XV-1 BEV 用リチウムイオン二次電池
表 XV-1 BEV 用リチウムイオン二次電池の仕様
形 式 L E V 5 0 ( 単 セ ル ) L E V 5 0 - 4 ( モ ジ ュ ー ル )
電 圧 ( V ) 3.7 14.8
容 量 ( A h ) 50 50
寸 法 ( m m )
長 さ 171 175
幅 43.8 194
高 さ 113.5 116
質 量 ( kg ) 1.7 7.5
(3) HEV用,PHEV用リチウム二次電池の開発状況
① 当社は,HEV用途に最適化した6Ahのリチウム二次電池「EH6」を開発している(図
ⅩⅤ-2,表ⅩⅤ-2)。「EH6」は,以下に示すように,高出力,長寿命,広い稼働温 度領域といった優れた性能を有する。
② 25℃,SOC 50%における 10秒間の出力は1,200W(3,600W/㎏),−30℃であっ ても120Wを発生する。
③ SOC 20〜80%の広い領域で,最大電流200Aの発生が可能である。
④ 当社の電池寿命モデルによると,15年,10,000時間利用後の残存容量は70%以上と 推計される。この性能は,この電池が HEV 用として要求される性能を十分に満たす ことができることを示している。
⑤ 本電池は,当面の開発目標を満たしており,短期的に解決すべき課題はない。
⑥ コストに関しては,2006 年度に終了した FCV 用二次電池の開発を目指した NEDO プロジェクトにおいて,年間100万台の生産規模で,モジュールベースで50円/Wh をコスト目標にしていたが,この目標を達成できるという結論を出している。
⑦ PHEV用リチウムイオン二次電池に関しては,2007年度からNEDOの「次世代自動 車用高性能蓄電システム技術開発」に参画し,開発を進めている。開発目標は,3kW 級パック電池の換算値として以下のとおりであり,0.3kWh のモジュールを作製する こととしている。
・重量エネルギー密度:100 Wh/kg
・重量出力密度:2,000 W/kg
・体積エネルギー密度:120 Wh/L
・体積出力密度:2,400 W/L
・寿命:10年以上
・充放電効率:95%以上
・コスト:4万円/kWhの見通しを示すこと(100万パック/年の生産時)
・安全性:車載時の濫用に耐えること
図 XV-2 EH6 セル
表 XV-2 EH6 の仕様 正極材料 LiNiCoMnO2
負極材料 炭素
容量 6 Ah
電圧 3.7 V
サイズ 112×21×82.6(mm)
エネルギー密度 67.1 Wh/kg 体積エネルギー密度 114.3 Wh/ℓ
※ 2008年12月17日,㈱GSユアサコーポレーションと本田技研工業㈱は,HEV用を中心とした高性 能リチウムイオン電池の製造・販売,および研究開発を行う合弁会社設立を目的として基本合意した と発表した。出費比率はGSユアサが51%,ホンダが49%とする予定。本社は京都市南区,工場は GSユアサの長田野事業所(京都府福知山市)に新設する予定。新会社が製造する電池は「EH6」を ベースに,構造や電極材料などを見直すことによって次世代HEVに最適な性能を実現する予定だと いう。
(4) その他の用途について
① 人工衛星に搭載する二次電池としては,現在ニッケル水素電池が5割程度のシェアを 占めており,より軽量で長寿命なリチウムイオン電池に替わりつつある。当社には,
50Ah,100Ah,175Ah の人工衛星リチウムイオン二次電池のライナップがあり,既
に実際に軌道上で運用されているものがある。これらの電池は,メンテナンスフリー で地上を含めて15年の寿命を有する。
② 深海艇にも搭載され,深度 6500mの潜水時には,約 7000 気圧が直接かかる環境に おいて,すでに5年の間,問題なしに運用されている実績がある。
2.PEFC に関する取り組みについて
(1) PEFC用低白金電極に関する技術開発について
① 当社では,2000年度から当時のミレニアムプロジェクトに参画し,5年間にわたり超 少量白金系触媒担持電極(ULPLE)に関する基礎研究を実施した。その後,2005年 度から2007年度までの3年間において,NEDO「固体高分子形燃料電池実用化戦略 的技術開発」に参画し,この新電極の量産基礎技術を開発してきた。
② 新電極は,カーボンとイオノマーを混合し,それを白金アンミン錯体溶液の中に浸漬 したのち,水素で白金の錯イオンを還元することによって製作される。その結果,イ オノマー中の反応に寄与するクラスター部分のカーボン担体に選択的に白金触媒を 担持することができるので,白金量の低減が可能になる。
③ この方法では,新電極の量産化が困難であった。その量産化を検討したのが,NEDO の3年間のプロジェクトであった。従来の白金担持カーボン電極では,白金担持カー ボンとイオノマーを混ぜ固体電解質膜あるいはガス拡散層(GDL)に塗布するための 触媒ペーストを製作する。当社は,新電極と同じ触媒担持構造をもつ粉末“超少量白 金系触媒担持カーボン粉末(ULPLC)”とある種の溶媒とを混ぜることによって触 媒ペーストを製作できるようにした結果,新電極の量産化を可能にした。
④ NEDOプロジェクトにおける超少量白金系触媒担持電極の性能目標は,白金担持量を 従来電極の 1/3 に低減すること,および電位変動に伴う電極の電気化学的に活性な 表面積の減少を抑制することであった。ULPLC の造粒条件,撥水剤の含有率および 電極の形成条件を最適化することで,いずれの目標も達成することができた(図ⅩⅤ -3,図ⅩⅤ-4)。
⑤ ULPLCを用いた電極では,撥水剤を入れることによって,活性な表面積の維持率を
高めることができ,図ⅩⅤ-4に示すように0.6Vから1.0Vの3万回の電位掃引サイク ル後の維持率は 92%となる。また,撥水剤を添加しない場合でも十分に 80%の維持 率をクリアできる。
⑥ ULPLC の用途は特定していない。ただし,当社としては市場の大きい FCV に最も
期待している。イオノマー等のコストダウンが図られるためにも,FCVの普及が不可 欠であると考えている。
⑦ どのような形でビジネスを展開するかは現在検討中である。一番川上の部分でのビジ ネスを想定すると,ULPLC そのものの販売が考えられ,一番川下を想定すると,ス タックでの販売が考えられる。
⑧ その中間として,電解質膜に電極を塗布したもの,あるいはGDL に電極を塗布した ものがあり,その次の段階としては,MEAを販売することが考えられる。
⑨ 販売先として,ベンチャー企業が多いマイクロFCの分野なども考えられ,そうした 企業ではスタックでの提供を希望するようなケースも考えられる。スタック化につい ても,当社内で作製し評価することが可能である。当社は,カーボンセパレータ流路 を大電流時と低電流時のときに可変にするという独自のガス流路可変機能を備えた セパレータの技術も有している。