第 4 章 FOXSI 試作検出器の開発と性能評価 19
4.6 DSSD の ASIC 読み出しによる性能評価
前節までに述べた ASICパラメータの最適化を行ったのち、75 µmピッチDSSDのASIC読 みだしによる性能評価をおこなった。本節ではFOXSI用DSSDのエネルギー分解能およびエネ ルギーしきい値を調べる。
4.6.1 スペクトル性能
エネルギー分解能は、–20 、バイアス300 Vのもとで、p sideで0.5 keV、n side で1.5 keV (FWHM@14keV)を達成した。図4.18に241Amで取得した、片面の全ストリップを足し合わせ たスペクトルを示す。
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図4.18: 241Amを用いて取得したスペクトル。それぞれのサイドの全チャンネルのスペクトルを
足し合わせている。測定条件は –20 、300 V。
4.6.2 チャンネルごとの性能の一様性
次にチャンネルごとのエネルギー分解能の一様性を調べた。図4.19に読み出し可能な全チャン ネルのエネルギー分解能を示す。p sideでは最もエネルギー分解能の悪いチャンネルでFWHM 0.58 keV@14 keVであり、FOXSIの要求するエネルギー分解能 FWHM 1 keVを十分に満た している。n sideではFWHM値は0.9 keVから1.6 keVの間でばらつき、中央付近のチャンネ ルほど分解能が悪い傾向が見て取れる。なお、FWHMが0のチャンネルは、ワイヤーボンディ ングのミスのためにストリップがASIC に接続されていないチャンネルである。
図 4.19: チャンネルごとのエネルギー分解能の一様性
4.6.3 n side での位置決定精度
DSSD のエネルギーしきい値を考える。DSSDでは位置決定のために両面の信号を読み出す必 要がある。さらに各面で光子の反応したストリップを特定するためには、光子によるイベントで 発生した信号とペデスタルの信号と区別できなければならない。n side は p side に比べてエネ ルギー分解能が悪いため、n sideの性能が検出できる光子の低エネルギーしきい値を決める。
n side での位置決定を間違える確率は、5 keVの光子にたいして10−10%以下と見積もられる。
図4.20に、n sideでADC値の最も大きかったチャンネルを光子の反応したチャンネルとしたと きに、反応位置の決定を誤る確率を示した。ここで、ペデスタルのエネルギー分解能として最も 悲観的な値である1.6 keVを採用し、127ストリップのペデスタル値の少なくとも一つが、入射 光子のエネルギーを超える確率を計算した。この結果から、本実験で得られたDSSD n side の 性能は、エネルギーしきい値5 keV を十分達成するものであるという結論にいたる。
図4.20: 最も信号の大きいストリップを入射光子の反応したストリップと考えたときに、入射光
子の反応位置を間違える確率。n sideの各ストリップのペデスタルが独立にガウシアンに従うと したときに、少なくとも一つのペデスタル値が入射光子のエネルギーをこえる確率を計算した。
4.6.4 スペクトル性能の温度変化
FOXSI実験を想定したとき、スペクトル性能の温度にたいする感度を知ることは重要である。
ロケット内部の検出器部は、打ち上げ直前まで窒素冷却系が導入され、–30 程度まで冷やされ る。その後打ち上げ時に窒素を導入していたパイプが切断され、フライト中に数 、悲観的に見 積もって–10 程度までに検出器の温度が上昇すると予想される。
そこでスペクトル性能の温度変化を調べた。図4.21にエネルギー分解能とエネルギーしきい値 の温度依存性を示す。前述したように、p sideがエネルギー分解能を決め、n sideがしきい値を 決めることに注意する。要求性能である1 keV 以下のエネルギー分解能と 5 keV 以下のエネル ギーしきい値は、温度10 以下で満たされる。また、温度が変化してもゲインにはそれほど影 響を及ぼさない (図4.22)。241Am を用いた測定では、–20 と0 の場合で14 keVおよび 60 keVのピーク位置のずれは p side、n side とも1%以下であった。
図4.21: (左)p side のエネルギー分解能の温度依存性。(右)エネルギーしきい値の温度依存
性。ただしここでエネルギーしきい値を、図4.20をもとに n side で位置を間違える確率が 0.1
%以下になるエネルギーとしている。
図4.22: –20 と0 の温度下で取得した241Amのスペクトルの比較。
4.6.5 シャドーイメージの取得
撮像能力を調べるため、幅 100µm のスリットのシャドーイメージを取得した。DSSD の真 上4 mm の位置にスリットのあいたタングステンプレートを置き、さらに上135 mmから133Ba 線源を照射した。図4.23が配置図、図4.24が取得したイメージである。100 µmのスリットが はっきりと撮像できていることが分かる。イメージの上下の端に、交互にカウントの多い領域と 少ない領域が現れている。このパターンはp sideのボンディングパッドの配置とよく一致する。
n side のボンディングパッドは p stop部の外側に位置しているため、この領域に入射した光子
の検出効率は悪い。
図4.23: シャドーイメージ取得に用いたタングステンプレートと配置図
図4.24: タングステンプレートのシャドーイメージ。左上の部分に幅100µmのスリットが映っ
ている。133Ba線源を使用し、ADC値が最大のストリップで20 keV ∼40 keV のエネルギー損 失があり、かつ隣接するストリップでのエネルギー損失が5 keV 以下のイベントのみを使用。測 定温度は–20 、バイアス電圧 300 V。