99

Endoplasmic reticulum

ATF6 PERK

A TF 6

ATF6N

Golgi

Processing

XBP-1

mRNA

XBP-1s

XBP-1s

100

第四章

骨格筋における TGR5 の機能解析

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4-1. 緒言

前章では TGR5 の骨格筋における発現調節機構の解析を行い、いくつかの興 味深い結果を得る事が出来た。しかし骨格筋で TGR5 が発現上昇する事にどの ような意義が有るのかについては不明な点が多い。特にin vivoでの解析は不足 しており、骨格筋 TGR5 が生体で代謝改善に寄与すると言う決定的な証拠は未 だ存在しない。

そこで本章では骨格筋特異的に TGR5 を過剰発現したトランスジェニックマ ウスを作出し、そのフェノタイプ解析を中心に骨格筋における TGR5 の機能解 明を目指した。

4-2. 実験材料および手法

実験材料

・細胞培養試薬および細胞投与試薬

第二章、第三章と共通する試薬に関しては、2-2. 3-2.に準じる。

TLCA(taurolithocholic acid)、HBSS(粉末)はSigmaより購入した。

その他、特に指定の無い試薬に関しては、Wako、ナカライテスク、SIGMAの 特級、生化学実験用のものを用いた。

・抗体

本章で新たに使用する抗体のみ以下に示す。

抗S6K抗体(1: 1000)、抗Phospho-S6K(Thr 389)抗体(1: 1000)、抗Akt抗 体(1: 1000)、抗Phospho-Akt抗体(1: 1000)、抗IRS1抗体(1: 1000)、抗Phospho-IRS1

(Ser 307)抗体(1: 1000)はcell signalingより購入した。抗MyHC(MF-20)抗 体はR&D systemsより購入した。抗マウスIgG(FITC)抗体はJackson Immuno Researchより購入した。

ウエスタンブロッティングを行う際は、括弧内の濃度に希釈して用いた。

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・プラスミド

<ルシフェラーゼアッセイ用プラスミド>

[pGL4-CRE-Luc]

Invitrogenより購入した。

<トランスジェニックマウス作製用プラスミド>

[pBS-MCK promoter]

Addgeneより購入した(Plasmid #12528)。

[pBS-MCK promoter-3×Flag -hTGR5]

以前当研究室で作製されたpCMV-3×Flag-hTGR5を鋳型として、5’末端EcoRI、

3’末端に BamHIの制限サイトを付加したプライマーを用いて PCR 反応を行い、

pBS-MCK promoterのEcoRI / BamHIサイトに挿入した。

<アデノウイルス用プラスミド>

[pAd-CMV-3×Flag-hTGR5]

pCMV-3xFlag-hTGR5を鋳型として、5’末端にBglII、3’末端にNotIの制限サイ トを付加したプライマーを用いてPCR反応を行い、pENTR-1AのBglII / NotIサ イトに挿入した。このベクターと pAd-CMV-V5-DEST を Gateway LR clonase

(Invitrogen)により組み換える事で目的のアデノウイルスベクターを得た。

細胞培養試薬の調製

・TLCA

DMSOに溶解し、100 mMで-20℃保存した。

・チャコール処理FBSおよびHS

-20℃で凍結した血清を室温で融解した後、56℃で30分間インキュベートする

事で補体成分の非働化処理を行った。その後、Charcoal, Dextran Coated(SIGMA)

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を10 g加え、4℃で一晩穏やかに撹拌した。3,500 rpm、4℃で30分間遠心分離し、

フィルター滅菌した後50 mlチューブに分注し、-20℃で保存した。

その他の試薬調製は2-2.および3-2.に準じた。

初代培養筋衛星細胞の調製と分化誘導

・コラゲナーゼ溶液

HBSS(粉末、含フェノールレッド): 490 mg HEPES: 119 mg

NaHCO3 (sodium hydrogen carbonate): 17.5 mg

これらを約40mlのddwに溶解し、コラゲナーゼを100 mg加え、スターラー で1時間程度撹拌した。1N以下のNaOHでpH 7.5に調整し、ddwで50 mlにメ スアップ。最後にフィルター滅菌を行った。

・Growth medium(GM)

DMEM(High Glucose), 20% FBS, P/St

・Differentiation medium(DM)

DMEM(High Glucose), 5% HS, P/St

6-8週齢のマウス後肢より腓腹筋、大腿四頭筋を採取し、PBS で wash した。

この際、ピンセットを用いて結合組織や脂肪組織を出来る限り丁寧に除いた。

筋組織を一辺1-2 mm程度になるまでミンスし、コラゲナーゼ溶液に浸した。こ れを37℃で60分間、穏やかに撹拌しながらインキュベートし、その後20 回程 度ピペッティングを行う事で組織を懸濁した。これを 400×g で 6 分間遠心し、

上清を除いた。ここに5 mlのGMを加え、ピペッティングにより撹拌した後、

再び400×gで6分間遠心。上清を除き、得られたペレットに5 mlのGMを加え

懸濁。セルストレイナーでフィルターろ過し、得られた細胞をコラーゲンコー

トした12 wellプレートに播種した。

細胞が80-90 % confluencyに達した時点でDMに交換し、分化誘導を開始した。

DMは2日毎に交換し、4日間分化誘導を行う事で筋管細胞を得た。

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細胞培養

必要に応じて、培地に含まれるFBSやHSをチャコール処理している。

その他は2-2. 3-2.に準じた。

C2C12細胞の免疫染色(ミオシン重鎖)

まず細胞をPBS で2 回 washし、4% パラホルムアルデヒド(PBS)で 15 分 間固定処理した。PBSでwashし、0.5% Triton X-100(PBS)を加え、5 分間イ ンキュベートする事で透過処理を行った。再びPBSでwashし、3% BSA溶液(PBS)

で60分ブロッキングを行った。続いて3% BSA溶液に抗MyHC(MF-20)抗体 を1/100希釈した溶液で60分間一次抗体処理を行った。PBSでwashした後、3%

BSA溶液に抗マウスIgG(FITC)抗体を1/200希釈した溶液で30分間、遮光し ながら二次抗体処理を行った。PBSで wash した後、DAPIを含む封入剤を用い て封入し、蛍光顕微鏡を用いて撮影した。

アデノウイルスによる遺伝子導入 3-2.に準じた。

RNA抽出

2-2.に準じた。

逆転写反応(Reverse Transcription; RT)

2-2.に準じた。

Real-time PCR 2-2.に準じた。

なお、本章で新たに使用するプライマーは以下に示す。その他の遺伝子は、

全てTaqMan® probeで測定した。

Atrogin1 Sense: 5’- GCAAACACTGCCACATTCTCTC -3’

Antisense: 5’- CTTGAGGGGAAAGTGAGACG -3’

IGF-1 Sense: 5’- GGTGGATGCTCTTCAGTTCGT-3’

Antisense: 5’- AGTACATCTCCAGTCTCCTCAGATCA-3’

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MEF2A Sense: 5’- ACACGCATAATGGATG

AGAGGAACCGAC-3’

Antisense: 5’- CAACGATATCCGAGTT

CGTCCTGCTTTC-3’

MEF2C Sense: 5’-AGATACCCACAACACACCACGCGCC -3’

Antisense: 5’-ATCCTTCAGAGAGTCGCATGCGCTT -3’

MuRF1 Sense: 5’- ACCTGCTGGTGGAAAACATC -3’

Antisense: 5’- CTTCGTGTTCCTTGCACATC -3’

Sik1 Sense: 5’- TCCACCACCAAATCTCACCG -3’

Antisense: 5’- GTTTCGGCGCTGCCTCTTC -3’

ウエスタンブロッティング 2-2.に準じた。

アガロースゲル電気泳動 2-2.に準じた。

アガロースゲルからのDNA断片回収 2-2.に準じた。

制限酵素処理 2-2.に準じた。

ライゲーション 2-2.に準じた。

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大腸菌の形質転換(トランスフォーメーション)

2-2.に準じた。

プラスミドミニプレップ(粗精製)

2-2.に準じた。

プラスミドラージプレップ(細胞内遺伝子導入用)

2-2.に準じた。

ルシフェラーゼアッセイ 3-2.に準じた。

トランスジェニックマウスの作出

pBS-MCK promoter-3×Flag -hTGR5をXmnIで処理し直鎖状にした後、日本エス エルシー株式会社に委託しマイクロインジェクション法によりトランスジェニ ックマウス(C57BL/6系統)を得た。

Genotyping

マウスの尾組織を1-3 mm程度採取し、1.5 mlチューブ中で300 µlの50 mM NaOH を加え、時折撹拌しながら 95℃で 30-60 分間インキュベートした。1M Tris-HCl (pH 8.0)を30 µl加えて混和し、13,000 rpm、4℃で5分間遠心分離した。得られた上清を DNA溶液とした。

DNA溶液を以下に示すプライマーを用いてPCR反応に供し、反応後の溶液をアガ ロースゲルで電気泳動する事により遺伝子型を判別した。

・Control primer (mTGR5, 847 bp)

Sense 5’-CTAGCAACAGCAGATGCTCCTG -3’

Antisense 5’-TCTTGGCACATGGAGGGTCC -3’

・Transgene primer (3xflag hTGR5, 491 bp)

Sense 5’-TGGACTACAAAGACCATGACGGTG -3’

Antisense 5’-CAGACTGGCAAAGAGCAGG -3’

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マウスを用いた動物実験

・飼育条件

2-2.に準じた。

トランスジェニックマウスに関しては、全てヘテロで維持した。

・実験条件

<A lineトランスジェニックマウスの通常飼育下でのフェノタイプ解析>

オスの A line トランスジェニックマウス(n=10)および同腹仔の野生型マウ ス(n=8)を4週齢より通常食で単頭飼育した。8週齢に達した時点で体重を測 定し、経口糖負荷試験(oral glucose trelance test: OGTT)を行った。

また 8 週齢における組織重量を測定したが、これは飼育条件は同一であるが OGTTを行っていない別の群のマウスを用いた(n=8-10)。

<A lineトランスジェニックマウスへの長期抗脂肪食負荷試験>

オスの A line トランスジェニックマウス(n=13)および同腹仔の野生型マウ ス(n=12)に対し、4週齢に達した時点で高脂肪食(60 kcal%Fat, High fat diet: HFD)

(Research diets)の投与を開始した。4日毎に体重及び摂食量を測定し、摂食量 を測定時の体重で除し、一日当たり、体重当たりの摂食量を算出した。HFD 投 与から 8 週間後に OGTT を行い、更に 3 週間後にインスリン負荷試験(insulin trelance test: ITT)を行った。ITTから20日後、4時間の絶食を挟みマウスの解 剖を行った。得られた組織は直ちに液体窒素で凍結し、実験に用いるまで-80℃

で保管した。

<B lineトランスジェニックマウスへの長期抗脂肪食負荷試験>

オスの B line トランスジェニックマウス(n=10)および同腹仔の野生型マウ

ス(n=8)を4週齢に達した時点で通常食飼育を開始し、30日後からHFD投与 を行った。通常食飼育時は5日に1度、HFD飼育時は4日に1度体重及び摂食 量を測定した。HFD投与開始から10週間後にOGTTを実施し、更に3週間後に ITTを行った。ITTから4週間後に、4時間の絶食を挟みマウスの解剖を行った。

回収した組織はすぐに液体窒素で凍結し、実験に用いるまで-80℃で保管した。

・OGTT

OGTTを行うマウスは前日の 20:00より絶食とし、16 時間後からOGTTを開

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始した。生理食塩水(大塚製薬)20 mlに対しグルコースを4 g溶解し、これを マウスの体重1 gあたり10 µl経口投与した。0 、15、30、60、120分後に尾静 脈より血液を採取し、ブリーズ2(Bayer)を用いて経時的に血糖値を測定した。

・ITT

生理食塩水 20 mlに対しインスリン(humulin R100)(Eli Lilly)を15 µl加え た溶液を、11:00より6時間絶食処理を行ったマウスに体重1 gあたり10 µl腹腔 内投与した(0.75 IU insulin/g BW)。0 、20、40、60、90、120分後に尾静脈より 血液を採取し、ブリーズ2を用いて経時的に血糖値を測定した。

・血中成分の測定

血中成分の測定には以下のキットを使用した。

<血糖値>

グルコースCIIテストワコー(Wako)

<血中TG値>

トリグリセリド E-テストワコー(Wako)

<血中遊離脂肪酸値>

NEFA C-テストワコー(Wako)

<インスリン値>

レビス®インスリン-マウスT (シバヤギ)

統計処理

2-2.に準じた。

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4-3. 実験結果

骨格筋特異的3×Flag hTGR5発現トランスジェニックマウスの作出

TGR5の骨格筋における機能を解析するにあたり、まず骨格筋特異的に3×Flag

hTGR5を発現するトランスジェニックマウスを作出した。骨格筋特異的にTGR5

を発現させるために、MCK(Muscle creatine kinase)遺伝子のプロモーター及び 転写開始点から翻訳開始点の直前までの領域を含むプラスミドの下流に 3×Flag

hTGR5遺伝子を挿入し、これをマイクロインジェクション法によりマウスDNA

に組み込んだ。得られた産仔32匹をジェノタイピングし、うち4匹にトランス ジーンの挿入を確認した。この4匹に関して、A-D ラインとした。

次に、それぞれのラインに関して目的のタンパク質が発現しているか確認する ため、8週齢に達した各ライン、オスのマウスより腓腹筋を採取し、ウエスタン ブロットに供した。その結果、A および B ラインで強い発現が確認された

(Fig.4-1)。更にAラインのマウスに関して組織間での発現比較を行ったところ、

骨格筋に特異的な発現が確認された(Fig.4-2A)。MCKプロモーターを用いて骨 格筋特異的なトランスジェニックマウスを作製した場合、骨格筋の種類により 発現量が異なる場合が有り、白筋に比べて赤筋では発現量が低くなる傾向が有 る(141)。本トランスジェニックマウスでもやはり白筋の腓腹筋や大腿四頭筋 で発現が高く、赤筋であるひらめ筋では発現量が低くなっており、過去の報告 と一致する結果になった(Fig.4-2B)。

トランスジェニックマウスは骨格筋が肥大化する

Aラインのトランスジェニックマウスを用いて、フェノタイプ解析を行った。

オスのトランスジェニックマウスおよび同腹仔の野生型マウスを通常食で飼育 し、8週齢に達した時点での体重、及び摂食量を測定したが、両群で大きな差は 見られなかった(Fig.4-3A, B)。またこの時、経口糖負荷試験 (oral glucose trelance

test: OGTT)により耐糖能を比較したが、有意な差は確認されなかった(Fig.4-3C)。

続いて、組織重量の比較を行った。マウスより腓腹筋、大腿四頭筋、ひらめ筋、

肝臓、精巣上体脂肪組織を採取し両群で重量に比較を行ったところ、ひらめ筋、

肝臓、精巣上体脂肪組織では差が認められなかったが、白筋である腓腹筋、大 腿四頭筋で有意な重量増加が確認された(Fig.4-4)。

筋肥大に関わる代表的な因子のひとつに、mTORC1 が挙げられる(74)。

mTORC1 は生理的には摂食時に活性化し、タンパク質の合成を促進する事で骨

In document 博士論文 生活習慣病予防に向けた 骨格筋代謝調節機構の分子基盤 東京大学大学院農学生命科学研究科 応用生命化学専攻食品生化学研究室 平成 26 年度博士課程修了 佐々木崇 指導教員佐藤隆一郎 (Page 101-120)

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