25 3) 不純物の毒性試験
ヒトにおける本薬の 14 C 標識体(0.1~10 μg/mL)の血漿タンパク結合率(平均値、平衡透析法、
以下同様)は
82.3~82.6 %であり、カルボン酸体(0.1~10 μg/mL)については 52.7~55.0 %であっ
た。ヒトにおける本薬の14
C
標識体(0.1~10μg/mL)の血球移行率(平均値)は、24.8~29.1 %であ
った。ヒト凍結肝細胞を用いた代謝プロファイルの検討の結果、主代謝物としてカルボン酸体(検出さ れた総放射能に対する割合として
30.9 %、以下同様)が検出され、その他の代謝物として一級水酸
化体(1.1 %)、二級水酸化体(0.6 %)及びケトン体代謝物(3.7 %)が検出された。ヒト肝細胞で 認められたすべての代謝物は、ラット、マウス又はサル肝細胞中のいずれかで検出されており、ヒ ト特異的な代謝物は認められなかった。ヒト
CYP
発現系36及びヒト凍結肝細胞を用いて、各CYP
分子種に選択的な阻害剤を併用して本 薬の代謝に関与する酵素を検討した結果、一級水酸化体への代謝にはCYP2C18、4A11
及び4F3B、
二級水酸化体への代謝には
CYP2C18、3A4
及び3A5
が関与していることが示唆された。ヒト血漿中の主要代謝物であるカルボン酸体は一級水酸化体から生成すると考えられるが、この 関連酵素は肝臓の可溶性画分とミクロソーム画分の両方に存在し、可溶性画分では補酵素として
NAD
+を要求し、4-methylpyrazole 添加により生成が阻害されることからアルコール脱水素酵素(ADH)と推察されたが、ミクロソーム画分の代謝酵素は推定されなかった。
ヒト凍結肝細胞を用いて本薬(0.5~50 µmol/L)の
CYP1A2
及び3A4
に対する誘導能を検討した 結果、CYP1A2について、陽性対照であるβ-ナフトフラボン(5 µmol/L)の CYP1A2
活性は陰性対 照であるDimethyl sulfoxide(以下、「DMSO」)の 141.6~220.2
倍であった一方、本薬ではDMSO
の0.7~1.4
倍であった。CYP3A4
について、陽性対照であるリファンピシン(10 µmol/L)のCYP3A4
活性は陰性対照であるDMSO
の3.9~8.7
倍であった一方、本薬ではDMSO
の0.6~1.5
倍であった。ヒト非凍結肝細胞を用いて本薬(0.5~50 µmol/L)の
CYP2B6
に対する誘導能を検討した結果、陽 性対照であるフェノバルビタール(500又は1000 µmol/L)の mRNA
誘導率は陰性対照であるDMSO
の9.8~17.4
倍であった一方、本薬ではDMSO
の0.8~1.1
倍であった。ヒト肝ミクロソームを用いて本薬(0.2~50 µmol/L)の各
CYP
分子種37に対する阻害作用を検討 した結果、検討したCYP
分子種の活性に対する本薬のIC
50は>50 µmol/Lであった。ヒト肝ミクロ ソームを用いて代謝物であるカルボン酸体(0.2~50 µmol/L)の各CYP
分子種37に対する阻害作用 を検討した結果、CYP2C19活性に対するIC
50が27.1 µmol/L
であった以外はすべて>50 µmol/Lであ った。ヒト有機アニオントランスポーター(以下、「OAT」)
1
又は有機カチオントランスポーター(以 下、「OCT」)2を発現させたCHO
細胞を用いて本薬(5又は10 µmol/L)の細胞内取り込みを検
討した結果、本薬の能動的な輸送は認められなかった。ヒトOAT1
を発現させたCHO
細胞を用い てOAT1
の基質であるパラアミノ馬尿酸(5 µmol/L)に対する本薬及びカルボン酸体の阻害作用を 検討した結果、本薬及びカルボン酸体ともに300 µmol/L
までパラアミノ馬尿酸の取り込みを阻害し なかっ た。また、 ヒトOCT2
を発現さ せたCHO
細胞を用 いてOCT2
の基質で あるMPP
+(methylphenylpyridinium+)及びメトホルミン(各
5 µmol/L)に対する本薬及び代謝物であるカルボ
ン酸体の阻害作用を検討した結果、本薬及びカルボン酸体ともにMPP
+の取り込みを100 µmol/L
ま で、メトホルミンの取り込みを300 µmol/L
まで阻害しなかった。36 CYP1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C18、2C19、2D6、2E1、3A4、3A5、4A11、4F2及び4F3B発現系を用いて検討された。
37 CYP1A2、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6及び3A4/5について検討された。なお、CYP2B6について、本薬は0.8~50 μmol/Lの条件下 で検討された。
31
ヒト
OAT3
を発現させたヒト胎児腎臓由来HEK293
細胞を用いて本薬(5 µmol/L)の細胞内取り 込みを検討した結果、本薬の能動的な輸送は認められなかった。有機アニオントランスポーターポリペプチド(以下、「OATP」)1B1又は
OATP1B3
を発現させ たCHO
細胞を用いて本薬(5 µmol/L)の細胞内取り込みを検討した結果、本薬の能動的な輸送は認 められなかった。本薬はOATP1B1
の基質(シンバスタチン及びフルバスタチン(各1 µmol/L))
の取り込みを阻害したが、
IC
50はそれぞれ480
及び370 µmol/L
であり、カルボン酸体のIC
50はいず れも500 µmol/L
超であった。ヒト多剤耐性蛋白質
1(以下、「MDR1」)を発現させたブタ腎上皮細胞由来 LLC-PK1
細胞を用 いて、本薬(7.5 µmol/L)及びカルボン酸体(4.5 µmol/L)の頂側膜(Apical)側から基底膜(Basal)側への輸送能(A→B輸送)及びその逆の輸送(B→A輸送)について検討した結果、透過係数比(B
→A/A→B輸送比)は本薬では
8.87、カルボン酸体では 0.57
であった。また、MDR1の阻害剤であ るエラクリダール(0.5 µmol/L)により本薬の透過係数比は1.07
に低下した。MDR1の基質である ジゴキシン(tracer concentration)に対する本薬及びカルボン酸体(1~30 µmol/L)の阻害作用を検 討した結果、本薬及びカルボン酸体ともにジゴキシンの輸送を阻害しなかった。(2)健康成人における検討
1)
第I
相単回投与試験(5.3.3.1-1:CSG001JP試験<2007年9
月~12月>)日本人及び外国人健康成人男性(目標被験者数:日本人
56
例、外国人24
例)を対象に、本剤を 単回経口投与したときの安全性、忍容性、薬物動態、薬力学及び食事の影響を検討するため、プラ セボ対照無作為化二重盲検用量漸増試験が実施された。用法・用量は、日本人被験者はステップ
1
において、プラセボ又は本剤10 mg
を空腹時に単回経 口投与とされ、次ステップへの移行が妥当と判断された場合には移行することとされた。ステップ2~7
にはそれぞれプラセボ又は本剤20、40、80、160、320
及び640 mg
が空腹時に単回経口投与 された。外国人被験者はステップ1'~3'にそれぞれプラセボ又は本剤 20、80
及び10 mg
が空腹時 に単回経口投与された。食事の影響は、ステップ3
において検討され、同一被験者に本剤40 mg
が空腹時、食事15
分前、食事開始30
分後(以下、「食事30
分後」)に経口投与とされ、各投与 の間隔は7~14
日間とされた。各ステップの被験者8
例のうち、プラセボ群に2
例、本剤群に6
例が無作為に割り付けられた。総投与例数
80
例(日本人56
例、外国人24
例)全例が薬力学及び安全性の解析対象集団とされ、本剤が投与された
60
例(日本人42
例、外国人18
例)が薬物動態解析対象集団とされた。薬物動態について、本剤を単回経口投与したときの本薬未変化体の薬物動態パラメータは、表 13 のとおりであった。
表 13 本剤を単回経口投与したときの本薬未変化体の薬物動態パラメータ 用量
(mg) 被験者 Cmax
(ng/mL)
AUCinf
(ng・h/mL)
tmaxb)
(h)
t1/2
(h)
CL/F
(L/h)
V/F
(L)
fe
(%)
10
日本人 310±63.7 1330±444 1.00
(0.50-1.50) 5.71±0.68 9.06±5.66 70.2±29.7 24.5±6.13 外国人 220±39.6 1040±329 1.00
(1.00-1.00) 6.09±0.73 10.4±3.13 89.4±19.9 19.1±3.83 20
日本人 506±61.4 1900±264 1.00
(1.00-1.00) 5.29±0.51 10.7±1.58 81.0±8.94 18.2±2.56 外国人 394±52.4 1820±394 1.00
(0.50-1.50) 5.70±0.33 11.4±2.56 93.7±18.7 19.4±4.98 40a) 日本人 1210±133 5640±1170 1.00
(1.00-1.00) 5.77±0.60 7.34±1.43 60.2±7.58 25.5±5.81 80
日本人 1930±420 8830±1670 1.00
(0.50-1.50) 5.73±0.70 9.33±1.82 75.9±9.43 23.2±4.72 外国人 1570±310 7090±2260 1.00
(0.50-1.50) 5.36±0.58 12.3±3.85 92.9±23.1 17.1±1.72 160 日本人 3710±1240 21800±5580 1.00
(1.00-1.00) 5.63±0.52 7.72±1.78 61.9±11.3 26.6±4.46 320 日本人 6740±598 38100±7680 1.00
(1.00-2.00) 5.53±0.36 8.71±1.97 68.9±12.4 24.7±3.29 640 日本人 11900±1130 99100±26800 2.00
(1.00-3.00) 6.06±0.67 6.77±1.42 58.2±8.82 27.4±3.77 平均値±標準偏差、n=6
Cmax:最高血漿中濃度、AUCinf:無限大時間まで外挿した血漿中濃度-時間曲線下面積、tmax:最高血漿中濃度到達時間、t1/2:消失半減期、
CL/F:経口クリアランス、V/F:みかけの分布容積、fe:尿中排泄率 a) 食事の影響の検討(ステップ3)における空腹時投与時の値 b) 中央値(最小値-最大値)
本薬の代謝物であるケトン体代謝物の薬物動態について、tmax(中央値)及び
t
1/2(平均値)は日 本人で1.25~3.00
及び7.42~10.9 h、外国人で 1.5
及び7.59~11.0 h
であった。本薬未変化体に対す るケトン体代謝物のAUC
infの比はすべての投与量で5 %程度であった。日本人及び外国人で本薬
未変化体とケトン体代謝物のAUC
infの比に違いは認められなかった。投与48
時間後までのケトン 体代謝物の累積尿中排泄率の投与群ごとの平均値は日本人では投与量の4.73~5.52 %、外国人では 4.49~5.39 %であった。
食事の影響について、本剤
40 mg
を空腹時、食事15
分前及び食事30
分後に投与したときの血漿 中本薬未変化体の薬物動態パラメータは表 14のとおりであった。表 14 本剤40 mgを空腹時、食事15分前及び食事30分後に投与したときの血漿中本薬未変化体の薬物動態パラメータ 投与タイミング Cmax
(ng/mL)
AUCinf
(ng・h/mL)
tmaxa)
(h)
t1/2
(h)
空腹時 1210±133 5640±1170 1.00(1.00-1.00) 5.77±0.60 食事15分前 857±173 4780±754 1.00(0.50-1.50) 5.83±0.61 食事30分後 620±36.3 4920±707 3.00(2.00-5.00) 5.69±0.42 平均値±標準偏差、n=6
Cmax:最高血漿中濃度、AUCinf:無限大時間まで外挿した血漿中濃度-時間曲線下面積、tmax:最高血漿中濃度到達時間、t1/2: 消失半減期
a) 中央値(最小値-最大値)
C
max及びAUC
infの空腹時投与時に対する比とその90 %信頼区間は、食事 15
分前投与時で0.70
[0.60, 0.81]及び
0.85
[0.79, 0.92]、食事30
分後投与時で0.51
[0.44, 0.60]及び0.88
[0.82, 0.95]であった。
薬力学について、本剤を単回経口投与したときの累積尿糖排泄量は表 15のとおりであった。
33
表 15 本剤を単回経口投与したときの累積尿糖排泄量 用量
(mg) 被験者 投与24時間後までの 累積尿糖排泄量(g)
投与48時間後までの 累積尿糖排泄量(g)
10 日本人 45.2±9.1 53.5±13.4
外国人 44.6±7.7 54.6±15.1
20 日本人 56.8±5.4 69.9±11.0
外国人 47.3±10.9 55.9±15.5
40a) 日本人 59.1±10.9 89.4±22.7
80 日本人 66.2±11.2 117.1±20.2
外国人 66.2±8.1 96.8±8.0
160 日本人 64.2±8.6 118.3±18.8
320 日本人 73.3±9.9 137.1±22.2
640 日本人 78.8±10.9 149.2±24.2
平均値±標準偏差、n=6
a) 食事の影響の検討(ステップ3)における空腹時投与時の値
また、空腹時、食事
15
分前及び食事30
分後に本剤40 mg
を投与したときの1
日累積尿糖排泄量(平均値±標準偏差)は
59.1±10.9、59.6±7.1
及び60.2±9.7 g
であった。安全性について、有害事象は日本人では、プラセボ群の
6/14
例に6
件、10 mg
群の4/6
例に4
件、40 mg
群(食事の影響の検討(ステップ3)における空腹時投与時)の 5/6
例に5
件、20、80、160及び
320 mg
群の各6/6
例に各6
件認められた。なお、いずれの有害事象も血中ケトン体増加であり、軽度であったが、副作用と判断された。外国人では、プラセボ群の
5/6
例に6
件(血中ケトン 体増加4
例、血中ケトン体増加/C-反応性蛋白増加1
例)、10 mg群の6/6
例に7
件(血中ケトン体 増加5
例、AST
増加/ALT増加1
例)、20
及び80 mg
の各6/6
例に各6
件(血中ケトン体増加6
例)認められた。いずれの有害事象も軽度であったが、副作用と判断された。食事の影響の検討での有 害事象は、空腹時投与時でプラセボ群の
2/2
例に2
件、本剤群の5/6
例に5
件、食事15
分前投与 時でプラセボ群0/2
例、本剤群0/6
例、食事30
分後投与時でプラセボ群0/2
例、本剤群の2/6
例に2
件認められた。いずれの有害事象も血中ケトン体増加であり、軽度であったが、副作用と判断さ れた。死亡例、重篤な有害事象及び投与中止に至った有害事象は認められず、バイタルサイン及び 心電図において臨床的に問題となる変化は認められなかった。2)
第I
相反復投与試験(5.3.3.1-2:CSG002JP試験<2008年4
月~6月>)日本人健康成人男性(目標被験者数
24
例)を対象に、本剤を反復経口投与したときの安全性、忍容性、薬物動態及び薬力学を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検用量漸増試験が実施 された。
用法・用量は、ステップ
1
では、プラセボ又は本剤2.5 mg
を朝食15
分前に1
日1
回7
日間経口 投与とされた。ステップ2
ではプラセボ又は本剤20 mg、ステップ 3
ではプラセボ又は本剤80 mg
を朝食15
分前に1
日1
回7
日間経口投与とされた。各ステップの被験者8
例のうち、プラセボ群 に2
例、本剤群に6
例が無作為に割り付けられた。総投与例数
24
例全例が薬力学及び安全性の解析対象集団とされ、本剤が投与された18
例が薬物 動態解析対象集団とされた。薬物動態について、本剤を反復経口投与したときの本薬未変化体の薬物動態パラメータは、表 16 のとおりであった。