弟サン・オ兄サン・オ孫サン・オシュウトサン・etc)」
の「アナタ・暦・オ前・拙宅・etc」は,
G・ffのうち,それぞれreferされる家族成員との関係であてはま る者なら,だれでもよい。 これは, B方式でも同じ。 (ここでの 「オ宅」は,二入門代名詞である。」
〈2) 「渡辺サンノ オ父サン(・オジイサン・御主人・奥サン・息子サン ・弟サン・オ兄サン・オ孫サン・オシュウトサン・etc」 この場合 の「渡辺サン」も,A・B・C・D・E・F・G・H:のうち,それ ぞれreferされる家族成員との関係であてはまる者なら,だれでも よい。これは,B方式でも岡じ。
<3> 「太郎サン(・花子サン)ノ オ父サン(・オジイサン・御主人・奥 サン・息子サン・弟サン・オ兄サン・オ孫サン・オシュウトサン・
etcj この場合の「太郎サン」は, A・C・E・Gのうちの,同 じく「花子サン」はB・D・F・Hのうち,それぞれreferされる 家族成員との関係であてはまる老なら,だれでもよい。これは,B 方式でも同じ。
このreferenceの方式では,「アナタ・諮・オ前・糊口・渡辺サン・太郎サ 一88一
二人称代名詞や話し相手 の姓(渡辺)・名前(太郎 または花子)や職名などを 冠して,たとえば次のよう にreferする方式だ。これ をA方式とする。
(1> 「アナタ (・i欝・
オ前・オ宅・
etc)ノ オ父サ ン(・オジイサ ン・御主人。奥 サン・息子サン この場合
A・B・C・D・E・F
ン・花子サン・職名・etcjによって指し示される個人 (渡辺太郎か花子)を 原点にして,彼(彼女)と,referされる他の家族成員との続柄にぴったり対
.応ずる個人親族語が選択される。選択,つまりreferenceの基準は,あくまで も当の話し相手(太郎か花子)を原点にした個人中心の原理である。このA方 式は,第2節で述べた「個人親族語本来の志望」によるreferenceである。
〈2)B方式
もう一つの方式であるB方式は,たとえば次のようにreferする方式だ。
(4) 「アナタ(・鷺・オ前・etc)ノ家(イエ・ウチ)ノオ父サン(・オ ジイサン・御主人・奥サン・息子サン・弟サン・オ兄サン・オ孫サ ン・オシュウトサン・etc」
(5) 「渡辺サンノ家(イエ・ウチ」ノ オ父サン(・オジイサン・御主入 ・奥サン・息子サン・弟サン・オ兄サン・オ孫サン・オシュウトサ ン・etcj
〈6) 「太郎サン(・花子サン)ノ家(イエ・ウチ)ノ オ父サン(・オジ イサン・御主入。奥サン・息子サン・弟サン・オ兄サン・オ孫サン ・オシュウトサン・etc」
(7) 「オ宅ノ オ父サン(・オジイサン・御主人・奥サン・息子サン・弟 サン・オ兄サン・オ孫サン・オシュウトサン・etc」 (ここでの 「オ宅」は,A方式の(!>の「オ宅」と違って,「あなたの家(イエ ・ウチ)」という意味の「オ宅」である。)。
つまり,「アナタ・潜・立前・渡辺サン・太郎サン・花子サン・職名・ etc」
・によって揚し示される当の話し相手ではない。その相手が所丸している家(・
家族)を引き合いに出して,それをノ格の飾り名詞とし,その後に適当な個人 親族語をつづけてreferするという方式だ。(4>⑤⑥のノ格の飾り名詞は,東京
.方言ではしばしば次のようになる。
(4 ) 「アンダンテ(・キミンチ・オマエンチ)ノ 〜」
(5 ) 「渡辺サンチノ 〜」
(6 ) 「太郎サンチ(・花子サンチ)ノ 〜」
話し相手である太郎や花子が自分の家族についてreferする場合も,上述の 一89一
ことに準じて,三つの方式がある。
(a) 「ワタシ(・ボク・オレ・etc)ノ 個人親族語」
(b) 「ワタシ(・ボク・オレ・etc)ノ家(イエ・ウチ)ノ 個人親族語∫
(C) 「ウチノ 個入親族語」
(b)は,東京方書では,しばしば次のようになる。
(bノ) 「ワタシンチ(・ボクンチ・オレンチ・etc」ノ 個人親族語」
「家(イエ・ウチ)」の代りに,「トコ・トコロ」を使うこともある。たと えば,次のような具合にである。
(8) 「アナタノトコ(・5コw」ノ 国人親族語」
⑨ 「ワタシノトコ(・トコロ)ノ 個人親族語」
⑯ 「渡辺サンノトコ(・トコロ)ノ 個人親族語」
⑪ 「太郎サン(・花子サン)ノトコ(・トコロ)ノ 個人親族語」
東京方言では,これらはしばしば次のようになる。
(8 ) 「アナタントコ (・トコロ)ノ 〜」
(9 ) 「ワタシントコ(・トコロ)ノ 〜」
(10t) (渡辺サントコ (・トコロ」ノ 〜」
(!1t) 「太郎サン(・花子サン)トコ(・トコロ)ノ 〜」
卑し相手である太郎や花子が自分の家族についてreferする場合も,上に準 じて次のような方式がある。
「ワタシ(・ボク・オレ・etcjノトコ(・トコロ)ノ 個人親族語」
「ワタシントコ(・ボクントコ・オレントコ・etc)ノ 個人親族語」
「ワタシントコロ (・ボタントコロ・オレントコロ・etc) ノ 個人親族 藷」
以上,AB 1つの方式のうち, A方式については,第2節「詞人親族語本来 の原理によるもの」の中ですでに述べているので,ここではくり返さない。問 題はB方式だ。以下このB方式の検討にはいるが,その前にまず次のことを考 えてみたい。
わたしたち国立天宮研究所の職員は,所外の人との会話の中で,林大所長を たとえば次のようにreferすることができる。
一90一
○○OO ○○○
「ワタシ(・ボク・オレ・etc)ノ 研究所ノ 所長」
「ワタシ(・ボク・オレ・etc)ノトコロ(・トコ)ノ 所長」
「ワタシタチ(・ボクタチ・オレタチ・etc)ノ研究所ノ 所長」
「ワタシタチ(・ボクタチ・オレタチ・etc) ノトコロ (・トコ)ノ 所長」
「ワタシタチ(・ボクタチ・オレタチ・etc)ノ 所長」
rウチノ研究所ノ 所長」
「ウチノ 所長」
しかし,次のようにreferすることはできない。
× 「ワタシ(・ボク・オレ・etc)ノ 所長」
研究所の外部の人は,わたしに向かって,林所長をたとえば次のようにrefer することができる。
「アナタ(・キミ・オマエ・etc)ノ研究所ノ 所長」
「アナタ(・キミ・オマエ・etc>ノトコロ (・トコ)ノ 所長」
「アナタタチ(・キミタチ・オマエタチ・etc)ノ研究所ノ 所長」
「アナタタチ(・キミタチ・オマエタチ・etc)ノトコロ (・トコ)
ノ 所長」
「アナタタチ(・キミタチ・オマエタチ・etc)ノ 所長」
「渡辺サンノ研究所ノ 所長」
「渡辺サンノトコロ (・トコ)ノ 断長」
「渡辺サンタチノ研究所ノ 所長」
「渡辺サンタチノトコロ(・トコ)ノ 所長」
「渡辺サンタチノ 所長」
「オ宅ノ研究所ノ 所長」
「オ宅ノ 所長」
しかし,次のようにreferすることはできない。
× 「アナタ (・キミ・オマエ・etc)ノ 所長」
X 「波辺サンノ 所長」
なぜなら,所長は,研究所の職員の一人であるわたしとの関係において所長 一一 91 一一
であるのではなく,研究所という組織(集団)との関係において所長であるか らだ。別のことばでいえば,所長以外の全職員(所員)である「わたしたち」
との関係において所長であるからだ。この「わたしたち」は,話し相手である 所外の第三者の立場からすれば,「あなたたち」であり,「渡辺さんたち」であ
るということになる。だからこそ, 「ワタシ(・アナタ・渡辺サン・etc)ノ 所長」とはいえないが,「ワタシタチ(・アナタタチ・渡辺サンタチ・etc)ノ 所長」とはいえるのだ。また, 「ワタシ(・アナタ・ボク・キミ・オマエ・
渡辺サン)ノ トコロ(・トコ),ノ 所長」ということができるのは,「トコ ロ」や「トコ」をつけることによって,そこに言語的に集団化・組織化の手続 きがとられているからである。
東京方言では,このほかに「ウチノ 所長」「オ宅ノ 所長」ともreferす ることができる。ただし,この場合の「ウチ」と「オ宅」は,以上に述べたこ とからして,その指し示す人間は,決して単数ではない。複数である。「わた し」や「あなた」ではない。 「わたしたち」であり,「あなたたち」である。
以上,林所長を所長としてreferする際に認められるreferenceの原理は,
どこまでも国立国語研究所という集団(組織)を基準にした集団の原理であ る。父・母・むすご・長男・祖父・祖母・孫……などを意味する個人親族語を
「アナタノ オ父サン」「ボクノ 母」「渡辺サンノ 御長男」「花子サンノ オシュウトサン(・御主人)」などと使用する際に認められる個人を基準に
した個人の原理とは全く異質のものだ。「所長」ばかりでない。「校長・学長
・委員長・社長・会長・大毘・長官・周長・部長・課長・研究室長・係長・課 員・係員・……」など,集団(組織)の中での成員的地位を指し示す語は,すべ てこの集団を基準にした集団の原理に基づいて使用されなければならない。こ れを個人中心の原理によるreferenceに対して,集団中心の原理によるrefer−
enceと呼をまう。
さて話を前にもどす。A方式は,いうまでもなく個人中心の原理による referenceである。 B方式は,外観上,つまりその連語論的な組合せの形は,
集団中心の原理をとっている。少なくともそのノ格の飾り名詞は,(4)(5)(6)(4 )
(5 )(6 )(7)(89〜90ページ)のどれもそうである。しかし,このノ格の飾り名
詞によって飾られる名詞は,所長・校長・学長・社長・会長・部長・課長・研 究室長…・一fsど,集団(組織)の中での成員的地位を指し示す単語ではない。
それとは全く性格が違う個人親 族語だ。ここに,このB方式の特色がある。つ まりB方式は,外観上は家や家族という集団中心の原理をよそおいながら,そ の実,意味的にはA方式の個人中心の原理によるreferenceと基本的には少し
も変わっていないのである。
大事なところなので,いくつか例をあげて,もっとくわしく説明しよう。
(1)88ページの第1図で,渡辺家以外の第三君は,A・Bに向かって, E・F G・HをA・B二つの方式によって東京方書では次のようにreferすることが できる。 (第1図のAを太郎,同じくBを花子とする。)
(A) 「アナタ(・キミ・オマエ・オ宅・渡辺サン・太郎サン・花子サン)
ノ オ孫サン」
(B> 「アンダンテ(・キミンチ・オマエンチ・渡辺サンチ・太郎サンチ・
花子サンチ・壁心)ノ オ孫サン」
第/図で,㈲の方式によってreferされる人物は, E・F・G・H以外には 存在しない。(B)の方式によってreferされる人物も, E・F・G・H以外には 存在しない。つまり囚と(B)は,意味的には全く同じである。
(1 )第1図で,AとBは,第三者に対してE・F・G・ffをA・B二つの方 式によって次のようにreferすることができる。
(a) 「ワタシ(・ボク・オレ)ノ 孫」
(b) 「ワタシンチ(・ボクンチ・オレンチ・ウチ)ノ 孫」
渡辺家で,E・F・G・Hを(a)のようにreferできるのは, AとBとだけで ある。(b)のようにreferできるのも, AとBだけである。つまり(a)と0き)は,意 味的には全く同じである。
(2)第三悲は,C・Dに向かって, E・F・G・Hのことを次のようにrefer することができる。 (Cが太郎で,Dが花子。)
(A) 「アナタ(・キミ・オマエ・オ宅・渡辺サン・太郎サン・花子サン)
ノ ムスコサント ムスメサン」
⑧ 「アンダンテ(・キミンチ・オマエンチ・太郎サンチt花子サンチ・
一93一