Gas inlet to carbon rod
2.2 B/C/N および B/C 材料の作製
前述したCVD装置で、B/C/NおよびB/C膜をカーボンサセプター上に堆積させ作製した。
CVD装置とその周辺の機器、ガス流入ラインおよびガス排出ラインをFig. 2.2に示す。B/C/N およびB/C材料の作製手順をFig. 2.3(反応時間2時間の場合)に示す。B/C/NおよびB/C材 料は出発原料が異なってはいるが、基本的に作製手順は同様である。
CVD装置の反応管内にN2ガス(純度99.99 %)を上部と下部から流入することによりN2雰 囲気にした。反応管内に流入されたN2ガスは、活性炭および冷却トラップを介してアスピ レーターで吸引して、ニードルバルブによって反応管内の圧力をほぼ大気圧のまま、カー ボンサセプターを高周波誘導加熱により2170 Kまで40分掛けて昇温して1時間保持し、サ セプターに吸着していた有機物や水分を除去した。その後、作製温度まで20分かけて降温 して、カーボンサセプターの温度を安定させるため 1 時間保持した。その後、反応管内の
圧力を1.05 × 105 Paにし、上部の反応ガス流入口から出発原料のガスを導入した。B/C/N材
料の場合は、出発原料であるBCl3(住友精化株式会社;純度99.999 %)とCH3CN(和光純薬工 業株式会社;純度99.5 %)の蒸気をモル比BCl3 : CH3CN = 1 : 1(40 sccm : 40 sccm)あるいは2 : 1(80 sccm : 40 sccm)で2 ~ 12時間導入してカーボンサセプター上に、1470 K、1770 Kおよび
2070 Kの3通りの温度でB/C/N膜を堆積させた。
一方、B/C材料の場合は、出発原料であるBCl3とC2H4(ジャパンファインプロダクツ株式 会社;純度99.9 %)をモル比BCl3 : C2H4 = 4 : 3(46 sccm : 34 sccm)あるいは1 : 3(12 sccm : 34
sccm)で6時間導入してカーボンサセプター上に、1670 Kを除いた1170 ~ 1770 Kの範囲内
で B/C 膜を堆積させた。反応後は、出発原料のガスを止め、反応管内の圧力をほぼ大気圧 のまま、未反応の出発原料のガスを取り除くためにN2ガスを15分間上部と下部から流入し た。その後、反応管内の圧力はそのままでカーボンサセプターの温度を降温させた後、N2 ガスを止め、装置を解体してB/C/Nおよび B/C膜を堆積させたカーボンサセプターを取り 出した。
反応終了後、作製した膜を、サセプターから剥がし、乳鉢で粉砕し、ステンレスメッシ ュを使用して 45 μm 以下の粉末にして回収した。本論文では、B/C/N 材料の場合、モル比 BCl3 : CH3CN = 1 : 1および2 : 1 で作製した材料をそれぞれB/C/N(1470 ~ 2070 K, 1 : 1)およ びB/C/N(1470 ~ 2070 K, 2 : 1)と呼ぶことがある。一方、B/C材料の場合、モル比BCl3 : C2H4
= 4 : 3および1 : 3で作製した材料をそれぞれB/C(1170 ~ 1770 K, 4 : 3)およびB/C(1170 ~ 1270 K, 1 : 3)と呼ぶことがある。
Fig. 2.2 CVD apparatus and gas line.
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
Carbon susceptor Carbon rod
Radio-frequency coil High voltage inverter Thermocontroller Radiation thermometer Quartz tube
Cooling water Mirror
BCl3 gas cylinder
⑪
⑫
⑬
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
⑲
C2H4 gas cylinder N2 gas cylinder Mass flow controller Flow meter
Bubller (CH3CN) Bourdon gauge Activated carbon trap Cold trap
Oil-sealed rotary vacuum pump or Aspirator
④
③
⑤
⑥
⑧
⑨
⑩
⑪
⑬
⑬
⑬
⑭
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
⑲
⑫
①
⑦
②
④
③
⑤
⑥
⑧
⑨
⑩
⑪
⑬
⑬
⑬
⑭
⑭
⑮
⑯
⑰
⑱
⑲
⑫
①
⑦
②
B/C/N 材料を作製する場合、CH3CN の蒸気をカーボンサセプター上に堆積させたことを 述べたが、常温では液体であるため、高純度N2ガス(太陽日酸株式会社;純度99.9995 %以 上)でバブリングして気化させてから装置内へ流入する必要がある。その際、CH3CNのバブ リングに必要な N2 ガスの流量を決定するために、まず次式に示したアントワンの式で CH3CNの蒸気圧を求めた。
) / ) (
mmHg /
log(
℃t C A B
p
(5)
)
10
( C t A Bp
ここで、pは蒸気圧[mmHg]、tは温度[℃]、A,B,Cは物質によるアントワン定数である。CH3CN のアントワン定数[88]をTable 2.1に示す。
Table 2.1 Antoine constant Antoine constant
A B C
CH CN 7.0735 1279.2 224.02
Fig. 2.3 Reaction process for preparation of B/C/N and B/C materials.
Time / min
Temperature / K
0 40 100120 180 300 315 345
270 1770
2170 Heating Cooling Source gas
introduction Evacuation (N2)
Cooling
N2
Time / min
Temperature / K
0 40 100120 180 300 315 345
270 1770
2170 Heating Cooling Source gas
introduction Evacuation (N2)
Cooling
N2
次に上の(5)式で求めた蒸気圧を使用して、CH3CN のバブリングに必要な N2ガスの流量を 次式に示した分圧の法則で求めた。なお、B/C/N 厚膜の作製は常圧(760 mmHg)で行なうも のとして計算した。xはN2ガスの流量[cc/min]、pは蒸気圧[mmHg]、yは任意の反応ガス流 量[cc/min]である。
x : y = (760 - p) : p (6)
アントワンの式からCH3CN のバブリングに必要な N2ガスの流量を導き出すことができる が、本実験での CH3CN の減少量と誤差があったため、B/C/N 材料を作製した後の CH3CN の減少量からバブリングに必要なN2ガスの流量を導きだした。
BCl3ガスの流量の制御には、マスフローコントローラーを使用した。また、BCl3ガスは
沸点が282.5 Kであることからガス流入時にライン内で液化するおそれがある。そのため、
あらかじめラインに電熱線を巻いておき、スライダック(株式会社 YAMABISHI:V-130-5) を使用してラインを320 K程度に温めてから流入する必要があった。